Fate/staynight [Midnight Walker]【本編完結】   作:秋塚翔

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来週発売の、日本一ソフトウェアの贈る新作ゲーム『じんるいのみなさまへ』。皆さん知ってるでしょうか。
"日本一ソフトウェア製"の、"荒廃した秋葉原で女の子達がサバイバルする"ゲームと言う、不穏さを怪しまずにはいれないストーリーにwktkしてます。だってあの日本一ソフトウェアだもの。絶対ロクな事ない(確信)
内容次第では私の手掛ける作品が増える可能性。

 

と、言ったところで大変長らくお待たせしました!何とか二ヶ月は越えずに更新です。
やっと書き上げた、のですが……今回はちょっと個人的に満足の行く出来じゃありません。いかんせん情報量と要点の箇所が多くて、キャパオーバー気味になりましてね……とりあえず書きたい事は書いて、意味不明になるのは防いだつもりなので、生暖かい目でお読みくださいませ!

妥協する魔法の言葉
『fateも大概意味分からないのがある』
『楽しんだもん勝ち(開き直り)』


#19 逢魔ヶ夜・壱

 山門へと続く長い階段を駆け上がっていく士郎達。機動力に難のあるハルとイリヤは、それぞれ凛と慎二に背負われている。

 

 

「だらしないわね。置いてかれるわよ」

 

 

「ゼェ、ハァ……! む、無茶言うな! こっちは、お前らみたいな、化け物とは違うんだ!」

 

 

 人ひとり背負って階段を一気に昇るので、慎二は既にグロッキー気味。士郎はともかく、同じ条件の凛が息一つ上がってないのは、慎二の暴言も尤もだろう。

 それでも何とか辿り着いて、柳洞寺に侵入。一息吐こうとしたところで……閃光が慎二らを襲った。

 

 

「くッ!」

 

 

 ──ズドガァッ!!

 

 

 逸早く気付いた士郎が、それを投影した白い短剣で弾き飛ばす。余りの勢いに体を浮かすも、軌道を逸らして地面に衝突した閃光──血色に染まる宝剣は、不気味な魔力を散らして消滅する。

 そして、咄嗟に一同が見やる先。今しがた剣の飛んできた柳洞寺の屋根に、()()は染み出るように現れた。

 

 

 

 

「──フ、フハハ、フフハハはッ、フハ々はハハhaハ破はは歯ハm叭ハはは刃ハハハ──ッ!!」

 

 

 

 

 英雄王ギルガメッシュ。その、()()()()()

 影が直立したかのように真っ黒な立ち姿に、身体中から夥しい数の目が開いてこちらを見下ろす様は、最早ギルガメッシュとしての何もかもを感じさせない。赤い波紋を展開し、血の色に輝く宝具を向けながら壊れた哄笑を狂い叫ぶそれは、ギルガメッシュの形と力を被ったただの『怪異(お化け)』だ。

 

 

「ったく、神から離反しといて、今じゃ壊れた神様の尖兵かよ。皮肉にしても笑えねえぞ」

 

 

 実体化させた槍を構えて、ランサーが毒づく。意識すら取り込まれた本人であり偽者に言っても、無駄と理解しつつ。

 一方で想定"内"の事態に、ギルガメッシュ──あえて名付ければ、怪異ギルガメッシュと言うべきか──の前にアーチャーが立つ。双剣を手に、予定通り事を進めるべく動いた。

 

 

「ここは引き受ける。先へ行け」

 

 

「分かったわ。気を付けてね、アーチャー!」

 

 

 凛が応え、各自その場から分かれる。セイバー、ランサー、キャスター、葛木は湖へ。凛、慎二、イリヤ、ハルは林の中へ。

 だが、そこにアーチャーと共に残る少年が一人。士郎だ。

 

 

「何故お前はここにいる、衛宮士郎」

 

 

「言うまでもないだろ。()()()()()()、分かってるはずだ」

 

 

「……とんだ自信だな。我ながら反吐が出る」

 

 

「ああ、そうだろうな。だけど今はやるべき者が、やるべき事をやるべきだ」

 

 

 言葉を交わしながら、士郎とアーチャーはなおも狂った笑い声を上げる怪異ギルガメッシュを見上げていた。いかに変わり果てようと、戦争の如きその力は禍々しい形で表されている。戦争には戦争。今ここに相応しいのは、白と黒の双剣を握るこの二人の『衛宮士郎』だ。

 

 

「フッ……せいぜい、足手まといにはならん事だ」

 

 

「そんなの、言われるまでもない」

 

 

 得物を握り直し、士郎とアーチャーは怪異ギルガメッシュと対峙する。直後、数多の切っ先が殺意を持って境内に降り注いだ──

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 時は、衛宮邸での話し合いまで遡る。

 あの夜の事を語り終えたハルは、一つの宝具を実体化させて机に出す。それは士郎や凛、慎二らが一度は見た事のあるもの──赤い裁ちバサミだった。

 

 

「これが?」

 

 

「うん、縁切りの神様から借りてる私の四つ目の宝具」

 

 

 それこそ山の神に対抗する力。これがあったからこそ、ハルはあの夜を生き延びたと言える、ウォーカー・ハルの切り札だ。

 ところどころ刃溢れの窺える古びたハサミは、まるで人間の血を吸ったかのような赤さを衆目に映す。その色味に、縁で結ばれて現界したこの場のサーヴァント達は思わず怖れさせられる。

 

 

「話を総合すると、あの山の神は恐らく柳洞寺の何処かに、自分とこの土地とを無理矢理結び付けているはず。それを切り離せれば、その土地神としての強みを失って倒せると思うんだけど……この一本きりじゃ、可能性の一つから見るに心許ないわね」

 

 

 ハルの話から様々な想定を挙げ、対抗手段に一抹の不安を覚える凛。すると、不意に彼女の後ろからアーチャーが何やら動き出す。

 

 

「──『投影開始(トレース・オン)』」

 

 

「!」

 

 

 その単語に反応したのは、他ならぬ士郎である。

 投影魔術。紛れもなく自分と同じ魔術を行使したアーチャーは、素知らぬ顔で何かを作り出す。士郎含め、一堂がそれを黙って見届け……そうして出来上がったのは、三本の赤い裁ちバサミだった。

 

 

「ランクは大幅に落ちるが、質の悪い縁を断つ分には事足りるだろう」

 

 

 言って、再び凛の後ろに控えるアーチャー。士郎の中で一つの疑念が生まれる中、慎二が一番にそのハサミへと手を伸ばした。

 

 

「じゃあ僕がやってやるよ」

 

 

「えっ?」

 

 

「……何だよ遠坂、その有り得ないものを見るみたいな顔は」

 

 

「驚いた。てっきりもう尻込みしてると思ったら、意外とやる気あったのね」

 

 

「バ、バカにするなよ!? いつまでもやられっ放しの僕じゃないんだ!」

 

 

 慎二が凛に食ってかかる一方で、イリヤもまた複製されたハサミを手に取り、決意表明を口にする。

 

 

「私も、こっちで戦うわ。今は何もできなくなっちゃったけど、そんな私に生きる価値を教えてくれたハルのためなら何でもする。救ってくれたんだもの、今度は私の番」

 

 

 凛とは反対の隣で、ハルの手を握ってイリヤは言う。これは自分達の生きる世界を守るためであり、恩人であるハルを助けるための戦い。全てを失ったイリヤは、新しい目的に今を生きる。

 そして、後に覚悟を決めたハルと共に、一行は山の神撃破へと向かうのだった──

 

 

 

 

 

 

「──まぁ、予想通りではあったけど……ここまで滅茶苦茶だと嫌になるわね」

 

 

 林に向かったハル達。そこで凛はうんざりと言った様子で愚痴を溢す。

 木々を縫う形で張り巡らされているのは、太く赤い糸の束。かつてハルが洞窟の中で見たそれに似たものが、林のあちこちに施されていた。

 

 

「これが山の神と、この土地を結び付ける縁の糸ね。良くもまぁ、こんなに無理矢理繋げたもんだわ」

 

 

「じゃあ、これ全部切れば良いのね?」

 

 

「何だ、案外簡単じゃないか」

 

 

「……ううん、油断したらダメ」

 

 

 ほくそ笑む慎二にハルが言い、首のライトで林の奥に照らす。するとそこには、目玉に足が生えたような蜘蛛じみたものが蠢いていた。どうやらちゃんと警備が付いているようである。

 

 

「なら二手に分かれて、あれを避けながら切っていきましょう。ハルの話なら、糸を切れば周囲のあれも消えるはずだわ」

 

 

「分かった。それじゃ行きましょ、シンジ」

 

 

「な、何で僕がお前と!」

 

 

「リンと貴方じゃ喧嘩して見付かるじゃない。私もハルと一緒が良いけど、合理的に考えた結果よ」

 

 

 うぐぐ、と苦い顔をする慎二だが、仕方なく承諾。凛とハル、イリヤと慎二に分かれて個々に無数ある糸を切らんとする。

 山の神が土地と言う土台を得た以上、その力はサーヴァントを束ねてぶつけても強大すぎる。ハル達の役目はその差を無くす事。責任重大であるからこそ、彼女達は決死の覚悟で事に挑むのであった。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 セイバー達の役目は、湖に陣取る山の神の足留めと、ここぞの時のトドメ役だ。

 山の神とこの土地との繋がりをハル達が断ち切っている間、何も手を下さないとは限らない。そうでなくても、何をするか予測できないビーストと化した山の神を放置できないだろう。そこでセイバー達は、囮と撃破の役目を買って出ていた。

 

 

「俺も、戦場じゃ化け物になる逸話こそあるが……あそこまで気持ちの悪ぃバケモンは初めて見るぜ」

 

 

「宗一郎様、危なくなれば貴方だけでもすぐ退却を。私達の事は構わず、ご自分の身を案じてください」

 

 

「ああ、努力はしよう。だが、まずはいかに対処するかを考えろ」

 

 

「同感です……っ! 来ます!」

 

 

 湖の中心、キャスターが覗き見た時のまま鎮座する山の神。それの動きを直感スキルで察知したセイバーが不可視の剣を構える。

 ボコボコボコッ──山の神の膨張した肉体が泡立つように膨らむ。そこから産み出されるは、二つの見知った……そして変わり果てた影。

 

 

 ライダー・メデューサ

 

 

 バーサーカー・ヘラクレス

 

 

 先のギルガメッシュ同様、黒い影に無数の目を浮かばせてセイバー達の前に現れる。もうそこに、英雄としての面影は無い。怪異サーヴァントと言うべきだろうか。

ハルから聞いた山の神ならやりかねない、陰湿な所業──だが、それだけに留まらなかった。

 

 

 聖杯を取り込み、人類悪へと昇華した山の神。その獣に足る権能が今、徒に振るわれる。

 過去、四度の聖杯戦争があった。

 未来にて、史上最大と謳われる聖杯戦争が起こる。

 はたまた別の世界線では、形式や在り方は違えど様々な聖杯戦争が行われてきた。

 それらをもし、『聖杯戦争』と言う縁で繋げられたら? ……本来なら無理な話だ。けれど、結縁の獣となった山の神ならそれが"可能"となる。

 

 

 『ネガ・コネクト』

 

 

 縁結びの権能が昇華した、ビースト―の権能。あらゆる縁を、言いがかり的に結んで弄ぶ。世界すらも越えて。

 

 

 ──ズズズズズッ──

 

 

「おいおい、マジかよ……!?」

 

 

 一同は驚愕する。予想を遥かに凌駕した、山の神の悪辣さに。

 セイバー達が見る先、広大な湖の上には見渡す限りの──数多の怪異サーヴァントが身体中の目をこちらに向けていた……!




此よりは地獄。

と言う具合で決戦、逢魔ヶ夜の始まりです。
情報が多すぎて分かりにくい、本編で省いた部分をひとまずここで解説したいと思います。今までぼかしてたツケが回ってきた……

・怪異ギルガメッシュ、怪異サーヴァント
今回のやらかし案件第一号。元ネタは怪異化ユイで、モデルはハガレンのお父様です。
一応怪異ギルガメッシュと怪異サーヴァントは少し違って、怪異ギルは本体を取り込んで改造した形なので意識以外はまんまギルの性能まま。一方で怪異鯖は劣化シャドウサーヴァントと言った感じで、スキルも宝具も使えない紙耐久の贋作となります。ただどちらも戦闘能力は本物通り。本当にやらかしすぎた。

・山門から侵入した士郎達
省いた話として、実はキャスターの対霊結界はまだ健在と言うものがありました。山の神はそれをすり抜けたは良いけど出る事ができなくなり、士郎達はそれを利用して逃亡防止の檻代わりに……って事で山門から入った訳ですが、余り気にしないでください。多分結界さんの出番はもう無いから。

・山の神ビースト
『ネガ・コネクト』発動。つまり魔改造縁結びです。
そして今回のやらかし案件第二号、時代と世界越えた多重召喚(ただし怪異化)。全シリーズ網羅させる暴挙ですね。ここまで来るとメアリー・スー感が……
本当ならもう少し上手く描写するつもりでしたが、更新も考えて物足りないものになってしまった。それでもヤバさは伝わるかと。元ネタはプリヤドライの決戦。

こんな感じでしょうか。正直、今回は自信無さすぎて弁解ががががが……このくらいでナヨってるようでは、お気に入り登録千人越えは身に余ってますね(苦笑)
次回は反省活かして盛り返したい。ご期待とご声援宜しくお願いします!
宜しければ評価やコメントくださると、執筆速度は信用無いのでクオリティが上がるかもしれません。こちらも宜しくお願いします!

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