Fate/staynight [Midnight Walker]【本編完結】 作:秋塚翔
前回二ヶ月、今回六日で更新と言う不規則さ。鬼門を通りすぎたと言うべきか、何とかもおだてりゃ木に登ると言うか……とりあえず調子に乗ってる今こそスパートかけてお送り致します。それではどうぞご覧ください!
……このおちゃらけた前書きが、作品のシリアスさ壊してないだろうか?
「はあァッ!」
セイバーの一撃が、踊り子の姿をした真っ黒い影を一刀両断にする。
影はとろりと溶けるように沈み、消滅。そこへ間髪入れず別の影──高笑いを上げる剣闘士らしき大男──が、セイバーに小振りの剣を振り下ろしてくる。
「──ッらあ!!」
それをランサーの文字通り横槍が仕留める。また一騎、英雄の皮を被った『ナニか』は消え去るも、次々と同類のそれらがこちらに向かってきていた。その様は、まさに軽い地獄と言えよう。
「チッ、こいつは予想外にしても行き過ぎだな……まさか英霊をここまで呼び出しちまうとは」
「いいえ、最早これらは英霊ではありません。英雄を侮辱する、その姿を貼り付けただけの悪霊です」
恐らくは英霊の座から霊基や力のみを抜き出し、それらを手下に被せた形なのだろう。自我も無ければ、無論残留意思も無い
「…………」
そんな憤慨するセイバーの一方、空から支援攻撃をするキャスターは、眼下の怪異サーヴァントの群れを別視点から見ていた。
様子を見る限り、怪異サーヴァントは存在として不完全なためか、軽い一撃だけで簡単に消滅してしまうほど脆い。宝具や
──縁結び。キャスターの頭にある懸念が過る。
山の神は聖杯戦争を縁に、ありとあらゆる戦いで召喚されたサーヴァントを怪異化させて喚んだ。ならばそこから更に、
「どうした、キャスター」
と、不意に足許の葛木から声を投げ掛けられ、キャスターは思考から浮上する。
魔術で保護・強化された拳で、たった今子供と男の影を殴り飛ばして倒した葛木。本を携えていたと言う事は文学系の、それも作家の英霊だったのだろうか。魔術でなく素手で襲ってきた辺り、中身のお化けは扱いを分かっていない。
「いえ……少し考え事が過ぎてしまいました。考えるだけ無駄な事です、お気になさらず」
「油断するな。弓矢を使うものもいる、飛び道具には注意しろ」
無感情な口振りで言い、葛木はまた淡々と襲い来る怪異サーヴァントを屠っていく。
そう、無駄な事だ──キャスターは自分自身に言い聞かせる。
憶測でしかない、しかしあの山の神ならやりかねず、正しくともどうしようもない事柄だ。ならば、最悪の事態にならないよう、ハル達の仕事が早く済む事を祈るしかない。今はとにかく粘らなければ。
そう意識を改めた矢先、次々と怪異サーヴァントが生まれ出る肉壁から、また新たなそれが誕生する。それは、この地獄がまだ序の口であったと示すような、また一段山の神が獣の力に馴染んだ証。
「Ar……thur……」
「ち、ちウゥ、え……」
「卿らは……!?」
「ふ、フフ、フフふ……」
「おいおい……趣味が悪ぃぞ……!」
「メディ、ア……アぁ、メディアァ……」
「ッ……!」
目玉だらけの鎧に身を包む二つの影、鞭の握られた手をだらしなく下げた女王らしき影、情けなく地を這う尊大な雰囲気の男。因縁深き者達の異形なる姿に、セイバー達は戦慄する──
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蜘蛛らの目を盗み近付いた凛は、木々の間に張り巡らされる赤い糸束へとハサミを入れる。すると鉄のように固いはずの糸は、まるで木綿の如くあっさり切れた。
同時に、シュー……と辺りを巡回する蜘蛛が溶けるように消える。無事にまた一本切り終えた凛は、息を吐いて頷く。
「よし……」
「凛さん、こっちも全部切ったよ」
するとちょうど、ハルも安全になった凛の元へやって来る。それに凛は笑みを返す。
「ご苦労様。これでこの辺は粗方片付いたけど……慎二達の方は大丈夫かしら」
言って、夜空を見上げる凛。空に開かれた聖杯の孔は、今なお山の神に人間の悪性──泥を注ぎ続けている様子だ。その分、山の神は増長する。できれば慎二とイリヤも無事で、首尾良く事が進んでいれば良いが。
しかし心配ばかりしていられない。何のためか出鱈目に張られた縁の糸は、まだまだ沢山ある。こちらも早く済ませなければ。セイバーや士郎達のためにも。
と、別の場所に向かおうとした二人の耳に、柳洞寺から凄まじい音が届く。
──ドガアァッ!!
「! 士郎さん、アーチャーさん……」
「……無事でいなさいよ。せっかく覚悟決めて私の力分けたんだから、アーチャー共々死んだら承知しないからね」
──ドガアァッ!!
「くっ……!?」
射出された剣の凄まじい威力に圧され、士郎は得物の双剣に引っ張られた態勢で吹き飛ばされる。
続いて飛んでくる、第二射。倒れた士郎に代わり、これはアーチャーが投影した大剣を射ち出して相殺した。
「足を引っ張るなと言ったはずだが?」
「う、うるさい! でも、助かった」
「フン、次は無い……だからまともに手持ちの武器で受けるな。あれだけの宝具、生身で防ぎ続ければ五体無事ではいられんぞ」
さりげなく助言するアーチャーは、そうして屋根の上を見やる。そこには、変わらず壊れた哄笑を無意味に上げながら血色の蔵を展開する、怪異ギルガメッシュの姿があった。
「フハはハッ! ハはッ、ヒハハハハハァッ!!」
何が楽しいのか……いや、そもそもその笑いも形だけのものだろう。笑いながら、赤い波紋から真っ赤な宝具を覗かせ、無作為に放つ様はいっそ見るに堪えないおぞましさだ。
士郎もまたそれを立ち上がって見、今度は投影した武具で相殺しながら立ち回る。それを一点集中で追い狙う怪異ギルガメッシュ。
「……フッ!」
その単純さ故に、それをアーチャーは見逃さず死角から現れる。
矢を番えた弓を引き絞り、すかさず射ち込む。三本同時に射られた矢は、破壊力を伴って怪異ギルガメッシュを襲った。
「グ、ググク……」
煙が晴れ、現れた怪異ギルガメッシュは苦悶の声を漏らす。防御までは追い付かなかったようだが……何やら様子がおかしい。
それに士郎とアーチャーが訝しんだ時、怪異ギルガメッシュは……いや、
「……オ、ノれ、おのれ、おのれおのれおのれッ! 下劣な神の分際で、我を操ろうなどとォ!!」
憤怒の叫びを上げるギルガメッシュ。どうやらアーチャーの一撃が自我を呼び起こしたようだ。黒かった顔面は、怒りに染まる英雄王のものに戻る。
ギルガメッシュは、怒りのまま士郎らへ言葉を放つ。
「雑種、
「アイツ、何を勝手に……!」
「エアで我が身を滅ぼすなど、王の名折れだ! 迷っている暇などないぞ! くッ、おのれ……!」
そう言い残し、ギルガメッシュはまたその影に呑まれてしまう。再び狂笑を上げ、何もかも破壊せんと暴れる。
アーチャーは呆れたように息を吐いた。
「全く、噂に違わぬ横暴さだ。しかし、望みは叶えてやって損は無いな」
独りごち気味に呟き、そして士郎を見やる。
「衛宮士郎、お前と俺は同じ存在だ。それは分かっているな?」
「ああ……けど俺はお前とは違う。どんな事があろうとも絶望なんかしないし、理想に背いたりしない」
「何故そう思った? 何がお前にそう感じさせた」
試すような言葉。それを士郎はまるで分かっていたかのように答えた。
「──地獄を見た女の子がいた。その子は残酷な真実に絶望しないで、前に進んだ。どんな救われない答えを得ても、立ち止まらず真っ直ぐ先を見た。だから俺も前に進む、たとえどんな事がこれから起きようと」
誰の事か、アーチャーでなくても自ずと分かった。
「……そうか。上出来だ。ならば見せてみろ、お前の覚悟を。理想の自分をイメージしろ」
直後、怪異ギルガメッシュの攻撃が始まる。そのおぞましき血の閃光を、アーチャーと士郎は『
そうして二人の衛宮士郎は言葉を紡ぐ。魔力を疾らせ、または凛から継承された魔術刻印を輝かせて。自らの進む先、進んだ果ての心象世界を開く呪文を。
──I am the bone of my sword.
体は剣で出来ている
──Steel is my body, and fire is my blood.
血潮は鉄で 心は硝子
──I have created over a thousand blades.
幾たびの戦場を越えて不敗
──Unknown to Death.Nor known to Life.
ただの一度も敗走はなく、ただの一度も理解されない
──Have withstood pain to create many weapons.
彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う
──Yet, those hands will never hold anything.」
故に、生涯に意味はなく
──So as I pray, unlimited blade works.!
その体は、きっと剣で出来ていた!
最後の式句を唱えると共に、怪異ギルガメッシュを巻き込んで世界は一変する。
広がるは、空に巨大な歯車が浮かぶ果てしなき荒野の丘。無数の刀剣が突き刺さり、錆色の光に照されている。
それはとある英雄の行き着く果て。けれども青年にとっては伽藍洞のようにして理想を貫き通した先、正義の味方の心象風景だ。
二人の男は並んで丘の上に立つ。
没会話(元ネタ:実写版アベンジャーズ)
アーチャー「まだやれるか?」
士郎「……何だ、もう疲れたのか?」
この程度の呪い、抑えられずして何が王か!とばかりのギルガメッシュ。その免罪符を得て、処刑用BGMがアップを始めました。
見事にハル贔屓の仲間入り果たした士郎とアーチャー。主人公の人望補正を発揮したハルちゃんです。ある意味ハーレム形成してない?原初の王、女神候補二人、ブラウニーにオカンって個性濃すぎるけど。
同時詠唱で何か変化あるかどうか、原作には無かったので「一時的に士郎とアーチャーの心象世界が混ざった二人の固有結界」と言う感じにしてます。公式で没になるような形でやりませんように……
山の神戦。こちらはお気付きの方もいるかもしれませんが、出てきた怪異サーヴァントに法則があります。メタ的に言えばレアリティ。最後にランサーの縁者で師匠がいなかったのは、彼女が神霊だから。低レア→高レア→神霊→エクストラ→グランド→そして……の順に召喚制限が解かれていきます。嘘みたいだろ、まだ成長途中なんだぜ、コイツ……
そして魔力について。これは思い付いといて軽く引きました。下手したら最新作的にも70億どころじゃ足りないサーヴァント扱う魔力補える訳ですからね。そりゃ人類滅ぼせます。とんでもねえ化け物作ったなぁ(大汗)
次回、俺の大好きなアイツが輝くかも……?
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