Fate/staynight [Midnight Walker]【本編完結】   作:秋塚翔

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またお待たせしました。FGOのイベントやら何やらで怠けすぎましたぜ……
最近再びイラスト描きに熱を上げてます。独学で拙いですが、渋にハルちゃんのセイントグラフ絵を投稿しました。興味ある方は是非ご覧下さい。画力が欲しいなぁ。

今回は少し短め。内容が内容だけに、長すぎるのもアレかなと。


#21 逢魔ヶ夜・参

「──っ……」

 

 簡単な探知の魔術を繰り、見落とした糸は無いか探るイリヤ。その顔には、隠せない苦痛が窺えた。

 魔術を使う──そんな息をするように何て事の無いはずの作業が、今のイリヤにとってはかなりの負担になっているのだ。

 山の神が聖杯の核と共に出ていく際、一緒にイリヤの魔術回路をも抜き取っていた。聖杯の覚醒には、器となる魔術師が必要──恐らくはそれを知ってて、器自体は擬似的に用意できるため、魔術回路だけその大部分を奪ったのだろう。結果、イリヤは単純な魔術の行使すら上手くできなくなっている。

 

「お、おい、大丈夫か?」

「平気……もうこの辺りのは、片付いたみたい。次に、行きましょう……」

 

 流石に心配の声を投げ掛ける慎二。それに強がって応えたイリヤは、痛みを堪えながら立ち上がろうとする。けれど、思った以上の消耗だったか力が入らず、膝を突いてしまう。

 その時だった。繁みの奥から、幾つもの黒い球が音も無く現れる。

 

「ひぃッ!?」

「……!」

 

 目玉のある、黒い球の群れ。それらは驚く慎二とイリヤを見付けるや、突如歯の生え揃う口に変貌。ガチガチと歯を鳴らし、貪欲そうに迫ってきた。

 

「──逃げて!」

「はあっ?」

「私が囮になるから! 早く!」

 

 ここで諸共やられれば糸を切る者が減り、その分凜達やセイバー達、或いは士郎らが危険に晒される。ならば慎二だけでも、と言う考えからのイリヤの言葉。

 どうせこれ以前に無くなっていた命だ。足手纏いになるくらいなら、せめて誰かの助けになって死ぬのも意義ある最期だろう。せいぜい苦しまずに死ねたら良いな、などと楽観的に思いながら、イリヤは迫る死を受け入れる──

 直後、慎二がイリヤを強引に抱え上げ、一目散に駆け出した。

 

「!? な、何で……」

「お前! 僕がそう言われて、素直に逃げると思ってたんだろ!? ──そうは行くか! 一人で逃げ帰って、衛宮と遠坂に侮られるのはシャクだ。意地でも見直させてやるからなッ!」

 

 慎二は怒り混じりに叫び、力の限り迫る死の危機から逃れる。その様は追ってくるお化けにビビり、面白ダサいものになっていた。やってる事は大したものなのに、物凄く締まらない。

 けど、それが良い。下手に無償な善人ぶるより、少なくともイリヤには一時の協力関係を組むに足る信用がここに生まれていた。

 

「さっさとこれ終わらせて、とっとと日常に戻ってやる! こんなのはもう御免だ! ああ帰りにお土産持って桜を労うか日頃苦労かけてるしなだから左右から来るな追い掛けんな助けてぇぇぇぇぇッ!!」

「……かっこわる」

 

 ただ、やはり頼りにならないのは玉にキズな相方だった──

 

 

 

 ──見付けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オジョウサマ

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 髑髏面の暗殺者が、緩慢な動きで毒を撒き散らす。

 獣の雰囲気を持つ狩人が、出鱈目に矢を放つ。

 二振りの槍で特攻を仕掛けてくる男は、血らしきものを目から流しながら何かに憤った演技。

 本来は華やかであろう皇帝のシルエットは、その様は見る影も無く剣を振るう。

 狐の耳を生やした天女らしき女が、同類を巻き込みながら刀を操る。

 狂気を感じさす着物姿の女は、扇子を広げて青い炎を蛇や竜の如くうねらせる。

 力を御せていないのか、人形と自らが凍りながらも冷気を吹く少女。

 怒りに任せて、美しかったはずの女が棘付き鉄球を投げ放つ。

 火縄銃を無数に浮かばせ、しかし乱戦の中で湖の水に濡れて撃ち出せず肉弾戦を行う女武将。

 セイバーを含め、刀剣を持った同類を見るや帽子を被った怪人物が暗殺を仕掛ける。

 ──過去や未来、異なる世界線や白紙の歴史に呼び出され、或いは生み出された英霊が山の神の尖兵たる怪異サーヴァントとして現れる。それらをセイバー達が決死の覚悟で湖から先に進軍させぬよう押し止めていた。

 

 ──ボココッ、ズルゥ

 

「! また……!」

 

 しかし、これすらまだ序の口。あらゆる縁を結ぶ山の神はあらゆる英霊を生み、また倒された怪異サーヴァントもすぐ替えを座から複製する。その中には、先に倒した近しい存在だった騎士や女王を模す姿もあった。

 時間をかければかけるほど追い詰められる、最悪の堂々巡り……加えて語りかけてくる声が、彼女らを苛む。

 

 ──もうやめていいんだよ

 

 ──苦しいなら、楽になったらいい

 

 ──みんなが待ってる

 

 ──おいで

 

 ──オイデオイデオイデ

 

「ッ……鬱陶しいな、こりゃ……!」

 

 事前にハルから聞いていても、油断すれば身を委ねたくなりそうな『山の声』。それを対魔力やルーン、魔術で防ぎながら多勢と戦うセイバー達は、限りなく劣勢であった。

 そしてとうとう、悪態を吐くランサーに魔の手が襲う。

 

 ──ボワァ!!

 

「がッ!?」

「ランサー!」

 

 複数の火球が着弾、ランサーは灼炎に包まれる。無事とは言えない火傷の体で攻撃された方向を見たランサーは……思わず目を疑った。

 

「ッ、俺だ、と……!?」

 

 杖を手にルーン文字を宙に刻む、フード姿の影──もう一人のクー・フーリン。それはこれ以上存在を保てなかったのか、ドロリと影の体を崩壊させる。

 恐らく何処かの時代で呼び出された、魔術師の一面が出た姿なのだろう。同じ存在すら同じ場に召喚可能としてしまう山の神の力……絶え間ない増長の証に、一行はその脅威を嫌が応でも再認識した。

 驚愕は立て続く。今度は葛木に外套を纏う髑髏面の暗殺者が迫り、その長い右腕を赤黒く輝かせる。

 

「ギ、ギキ……ザばー……ニー、ヤ……!」

 

 ──宝具!

 まさか、もうそこまで再現するまでに至っているとは。

 文字通りの魔手が葛木に迫る。不意にランサーとキャスターは、それに今では無いいつか、別の位相の光景を幻視した。

 刹那、キャスターが考える間も惜しいと自らの手に宿る()()を光らせる。すると更に眩い光が葛木の正面より発せられ、直後に命を掴み取らんとした異形の腕が舞った。

 片腕を切り飛ばされた怪異サーヴァントは、呻き声を上げて退却しようとするも、返す刃が追撃。上下に両断されたその形を崩す。

 葛木を守ったその男は、振るった物干し竿を肩に掛け、皮肉混じりにキャスターへ口を開いた。

 

「ようやく出番か。場を読んで引っ込んでいたが、些か勿体ぶりが過ぎるのではないか、女狐」

「黙りなさい。マスターを守ったのは褒めてあげます、それ以上が欲しいなら令呪の消費に合う仕事をしなさい」

 

 三画全てが掠れた手の甲のそれを見せ、キャスターは内心安堵する。思い付きの手だったが、上手く行った。

セイバーはその現れた者の姿に目を剥く。

 

「アサシン! 貴方は……」

「おうセイバー、まさか次に見えれば味方同士とはな。ほんの一時の助太刀となるが、今は肩と刃を並べようぞ」

 

 アサシン・佐々木小次郎。

 山門から解き放たれた無銘の門番は、不敵に笑んで山の神へと刀の鋒を差し向けた──




慎二を輝かせてみた。カッコいいかどうかは別として。
この等身大の人間味が慎二らしさだと思うの。

果てしなく増長していく山の神ビースト。実はカルデアの召喚システムを盗用してるからこそ、まだ不完全ながらクラスチェンジ鯖召喚も可能にしています。セイバー狙う暗殺者?あれ、一応別人っちゃ別人だから……
そしてHFの雪辱を晴らすようにして、満を持してアサ次郎参戦。山門に縛られる彼が、山門から解放されたらどうなるかは言わずもがな。役者も揃って、いよいよこちらもラストスパートです。それでも宝具を写せるようになった、CCCイベにおける初戦キアラみたいな無敵状態の山の神には現時点で勝ち目ありませんがね……

宜しければ評価やコメントをくださると、思わぬところで討伐数更新したバルバトスの周回スピード並に投稿が早くなるかもしれません。断末魔が長い、飽きたから早く死ね、と言われながら狩り尽くされたのにまた待望されてて、来年また復刻で採集されるの確定なバルバドス君カワイソス。そんな貴方が、私も大好きです(レジライ顔)
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