Fate/staynight [Midnight Walker]【本編完結】   作:秋塚翔

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たいっっっへん長らくお待たせいたしました!満を持しての遂に最終回です!

満足行く出来にするまで長く、筆が乗ると異常に早くなる私。今回は更新が三ヶ月以上掛かった癖に、書き始めてから二日で完成しました。うーん、極端。

最近コロナ禍で皆さん大変かと思いますが、私の作品で少しでも癒される事を祈って、どうぞご覧ください!


#24 終夜

「いってきまーす!」

 

 衛宮邸の玄関に、少女の活発な声が上がる。

 時刻は深夜を回ったところ。(見た目だけなら)幼い少女が出歩くような時間帯でもないのだが、その日課を仕方なく容認する士郎は、少女──イリヤを見送るべく家事を中断して玄関に足を運ぶ。

 

「気を付けて行くんだぞ。ちゃんと朝までには帰ってきて、もし何かあればすぐ戻ってこいよ?」

「もう、何度も言わなくっても分かってるってば。私が死んだらシロウも死んじゃうのは分かるけど、心配しすぎだわ」

「バカっ、俺は本気でイリヤを心配して……!」

「それこそ分かってる。冗談よ。私はシロウのお姉ちゃんなんだから、弟を泣かせるような事はしないわ!」

 

 悪戯っぽく笑って、胸を張って言うイリヤ。血は繋がっておらず、生まれも育ちも別々だが、父を同じとする姉弟の間柄である事に誇りを持っている様子だ。

 が、それに対して士郎は──

 桜から手作りして贈られた可愛らしい服、大河から貰ったトラのナップサック、凛が作った魔力で照らす宝石の懐中電灯を持ったイリヤの、とても姉らしからぬ格好につい笑いを堪えた。

 

「あーっ、また笑った!」

「悪い。バカにしてる訳じゃなくて、やっぱりちぐはぐだからさ、つい……」

「酷いわ、シロウ。私はこれ気に入ってるのに」

 

 頬を膨らませ、憎らしげに睨むイリヤ。けれどやはり服装のせいか、小さな姉の威厳は生憎と見られない。

 不満気味のイリヤが仕方なく諦めてもう一度「いってきます」を言い、玄関を出る。それを改めて「気を付けてな」と投げ掛けて士郎は見送った──

 

 

 

 

 

 あの戦いから早いもので半年。あの出来事を機に、士郎の周りでは多少なり変化があった。

 

 まずはイリヤ。ランサーの施したルーン魔術により士郎と心臓の機能を共有、人並みの生を受けた彼女はあれから士郎の家で暮らすようになっている。

 凛曰く、二人が離れていたら魔術に良くない影響があるかもしれないと言う措置と、イリヤなりのアインツベルンとの決別の顕れがその状況に落ち着けられた。

 アインツベルンの後継者ではなく、イリヤスフィールと言う一人の少女になったイリヤは、それから良く夜に出歩くようになった。一族の責務を押し付けられていた頃は見出だせなかった"自分"と言うものを探すため、自分を救ってくれたハルの真似をしてとりあえず始めた事。たとえそれで見付からずとも、誰でもないイリヤ自身で決めた事だ。きっと無意味なものではなく、いつか本当に"自分"と言うものを見付けられるきっかけになるかもしれない。

 

 凛と士郎は、聖杯戦争が終わって協定が解かれた今も交流が続いている。彼女がロンドンの時計塔に喚ばれ、日本を離れてしまってからも。

 時折、帰ってきてはイリヤに施された魔術の調子を確認しに来る。名目ではそう理由付けているが、士郎が何の気なしに聞くと「何よ、士郎のバカ」と拗ねがちに返された。いかに一晩を共に死線を潜り抜けたとは言え、長年の宿敵の安否を、私財を叩いて遠い異国から確かめに来るのは何か副因があっての事だろうが、まさか自分に関係するとは今の士郎にも気付けない。

 あと、桜との仲も以前に増して良好な様子。まだ日本にいた頃は一緒に衛宮邸の厨房に立ち、料理を作ってくれていたほどだ。その時、実の姉妹だと知らされた後は、士郎の手引きで桜に「姉さん」と呼ばせた際は、顔を背けて喜びを堪えていたのを見ている。

 

 慎二はあれから、周囲や桜への態度が軟化した。

 相変わらずお調子者で自尊心は強い様子だが、内に秘めていた劣等感は吹っ切れ、最近は間桐家の復権を目指して魔術刻印を復元できないか研究しているらしい。曰く「僕を散々バカにしたジジィや遠坂を見返してやる!」と意気込んでいるようだ。

 一族が何代もかけて築き上げた魔術刻印をすぐ復元できるか、そもそも間桐──マキリが復権を果たしたら問題は無いか、大体慎二はまだ魔術師が何たるかを理解してないと凛が呆れ返る一方で、士郎は一抹の期待を過らせていた。

 慎二が『マキリ』ではなく『間桐』を魔術世界にのしあがらせたい事、今の慎二が以前までの慎二ではない──実はあれから、イリヤの様子をちょくちょく見に来たりしていて、イリヤとはすっかり憎まれ口を叩き合う仲だったりする──事が士郎から見て、ちょっとした可能性を感じている。

 案外天才肌の慎二なら成し遂げて、マキリを反面教師に『間桐』を魔術世界に進出させてしまったりするかもしれない。

 

 葛木は特に変わった様子は無い。あの戦いの翌日も学校に来てテストの準備をしていたらしく(大河談)、変わりなく教師として今も生活している。

 ただ、桜が言うに「そう言うところが葛木先生らしい」ので、むしろ自然と言えた。

 

 因みに今聖杯戦争の監督役であった言峰は、キャスターに仕留められたと思っていたら無事であり、そこから特に関わる事なく聖杯戦争終了後は平然と神父を続けている、とは凛の証言だ。

 今後、聖杯戦争級の出来事が舞い込んでこない限りは顔を合わせる事も無いだろう、と凛と士郎は認識を一致させている。

 

 そして士郎は──変わらない。目指すものは変わらず、そのために何をするかもこれまでと同じだった。

 ただし、今回の事を経てその夢は、少し揺らいだのは言うまでもない。

 

 ──理想の果てにある答えを見た。

 理想を求め、力を求めて世界と契約を結び、死後を売り渡す事で万人を救うだけの力を得て、そして……それを過ちと悟った。

 現実は理想を食い潰し、多くを救った成果は、必ず少数を切り捨てた事実、そのために誰かを救わなかった真実を物語る。理想に裏切られ、現実に叩きのめされ、それでも人々を救うため戦った後は、救った者達からも手の平を返されて命を終えた。

 だが、売り渡した死後も決して解放されず、救いなき守護を繰り返す内、いつしかこの道を選択した過去の自分を恨み、憎み……殺す事のみを望みとするまでに至った残酷な答え。この目で見てしまった、未来の自分の姿。これから歩む、人生の末路。

 

 それをなぞって生きるかもしれない恐怖。何も分からないこれからを行く人生ではなく、地獄でしかない未来を向かうだけの人生に士郎の足はすくんだ。決心が、心が硝子になったように脆くなる。

 そんな少年が見たのは、同じくあの戦いで出逢った少女の姿。

 

 ある少女がいた。普通に生きて、人並みに思い悩むだけの少女は、どうしようもない事実を突き付けられながらも夜の町を巡り歩く。そして、その先に大切なものを失いながら、少女はそれでも前に進んだ。

 

 程度は違えど、同様の地獄を見た少年と少女。見せ付けられた地獄の先を見た少年は少女の姿を見て、決意を新たにする。

 正義の味方になる──同じでありながら、想い新たに抱いた決意。

 この先は地獄かもしれない。未来は違わず果てに辿り着き、またかつての己を過ちだったと思い至るかもしれない。或いはどうしようもないほどの魔性に触れ、失墜してしまうかもしれない。または何も為せず、何も出来ずして世界の隅で息絶えるかもしれない。

 

(それでも)

 

 それでも、この道を進んでいく。

 どんな地獄が待ち受けていようとも、どんな絶望が襲い掛かろうとも、どんな挫折が敷かれていようとも、士郎はもう迷わない。憧れた養父から受け継いだ夢を抱き、前に進む。それが衛宮士郎の義務であり、使命であり、自分の選んだ未来だ。

 

「……よしっ」

 

 イリヤを見送り、一つ心を引き締めると、士郎は中断した家事を片付けるべく居間に戻る。

 この一歩一歩が未来への道筋。人生という夜を歩いて行くように、士郎は今を生き、未来に生きていく──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fate/staynight [Midnight Walker]

 

~Fin~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




と言う訳で、MW完結!まずはここまで読んでくださり、コメントや評価をくださった方々に感謝を。そしてこの作品を完結させるまで書き上げられた様々な事柄にも感謝したい。

ハルと共に山の神が介入した聖杯戦争を終わらせ、少しばかり変化した日常に戻った士郎達。イリヤはこの後に夜道で喋るステッキを拾い、魔法少女になってウォーカーのクラスカードで夢幻召喚……と言うスピンオフを思い付きましたが、書きません。理由はプリヤを見ていないと言う痛恨の失態から。誰か書いてくれません?三次創作大歓迎。
慎二は吹っ切れたらこのくらいの改心はしそうだなと。実際できるかどうかは不明。実現させたら封印指定ものな気が……頑張れ、慎二くん(他人事)
士郎もハルとの出逢いをきっかけに正義の味方となる道を改めて選び、未来への夜道を行く。我ながら良い締め方だと思いますがどうでしょう?

話題を変えまして。
二次創作デビュー6年、初の完結に至った作品がこれです。最初は思い付き程度、誰かに読まれたら嬉しいなくらいで始めたものが、いつしか1700人のお気に入り登録者数を記録し、高い評価をいただき、日間ランキング上位に食い込み、推薦まで貰うと言う過去最大最高の快挙を成し遂げて、ようやく始めて完結させた作品に至りました。あれもこれも、夜廻シリーズと言う作品を教えてくれた恩人の放仮ごさん、そしてこの作品に可能性を感じてこれまで読んでくれた皆様に改めて感謝したいと思います。
さて、これからの話でありますが……MWはまだまだ続きます。宣言通りFGO編を予定しており、番外編も続々執筆している現在。ハルちゃんの型月夜廻は続きますのでご期待ください。
その件でアンケートを実施しますので、是非参加してくださるとこれからのMWがよりやり易い環境になるかと思います。
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