Fate/staynight [Midnight Walker]【本編完結】   作:秋塚翔

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暇を持て余した番外編更新。
FGO編の始まり方は二次創作で煎じられまくっているため、少し難航中です。新たな味を見出だすまで、お待ちくだされば幸い。

士郎の家って、多分神秘の秘匿一番大変な場所だよね?ご近所さんには既に認識阻害魔術施されてそう。


零れ譚 風に乗る文

 かさり、と。

 実に軽い音を立てて、セイバーの足元に一つの紙飛行機が滑り落ちてきた。

 

「……?」

 

 自分しかいないはずの廊下にて、不自然かつ不審な落とし物であるそれを拾い上げるセイバー。聖杯からの知識で、現代の子供はこう言ったものを作って遊ぶのは知っているが……何故窓も締め切ったこの場所にこんなものがあるのか?

 

「セイバーさん、どうしたの?」

「ああ、ハル。これは貴女の所有物ですか?」

 

 すると丁度通り掛かってきたのは、ハル。セイバーは手にある紙飛行機を掲げてハルに問う。

 ハルは一瞬首を傾げて分からない態度を示すも、すぐ合点が行って答えた。

 

「ごめんなさい。それ私のじゃないけど、私のせいで出てきたんだと思う……」

「? ……なるほど、例の現象の一環ですか」

 

 セイバーもその返答に一瞬怪訝な顔を浮かべるが、意味を解して納得した。

 ハルがこの衛宮邸に来て以来、ここではちょくちょくこんな『原因の分からない現象』、いわゆるポルターガイストのような事が起きたりする。

 それはハルがかつて住んでいた自分の家で起きていた事と同じ──物が落ちたり、瓶が上から降ってきて割れては消えたり、扉や襖が向こうから叩かれたり、猫や鼠が入り込んだり、はたまたハルの宝物であるカボチャが突然笑う、魚のミイラが泳ぐ、"よまわりさん"がハルの部屋の前に鎮座してる等々、不可解な現象が時たま起きては士郎やセイバー達を驚かしていた。大河がそれに遭遇した日には剣道五段の実力も何処へやら、阿鼻叫喚に包まれて士郎は宥めるのに苦労したものだ。

 

「それなら仕方ありませんね。私達英霊は、自分ではどうにもできない事が一つや二つあるものです。だから気に病む必要は無いのですよ」

「うん……」

 

 申し訳無さそうなハルに、セイバーは慈しむように微笑んで言う。士郎もまた、そう言う現象にはもう慣れてしまっており、大河や桜への誤魔化しをするのも気にした様子は無い。それでも、ハルはやはり迷惑を掛けている事にしょんぼりしてしまう。

 そこでセイバーは、手元のものに目を向けて話題を変える。

 

「ところで、今の子供はこう言ったものが好きなのですか? 私の時代には無かったものですから」

「うん、この時代は分からないけど、私が知ってるのだとそれに自分の事を書いて飛ばすのが、女の子の間で流行ってたんだ」

「自分の事を書いて、飛ばす……?」

 

 しっくり来ない反応を示すセイバー。それにハルは気を取り直し、「こっち来て」と自分に宛がわれた離れの部屋に案内する。

 中に入ると、少女の部屋にしては奇妙な物品が所狭しと飾られていた。それらがハルの『夜道で拾い集めし宝物(コレクション)』の一端なのを、何度かお呼ばれしているセイバーは知っている。

 ハルは、ナップサックから一枚の白い紙と鉛筆を取り出して見せた。

 

「ここにはね、何を書いても良いの。楽しい事、嫌な事、ナイショの話……それを書いたら、紙飛行機にして遠くへ飛ばすんだ」

「飛ばしてどうするのですか? 魔術で仲間に届くよう操作するとか?」

「誰でも読んで良いんだよ。誰が拾っても良い手紙。どんな人が書いてて、何が書かれてて、それを読むのがどんな人か、考えるだけでワクワクするんだ!」

 

 得意気に語るハルは、そう説明してから紙と鉛筆をセイバーに手渡す。そして自分用にともうワンセットそれを机に広げると、お手本とばかりに何かを書き始めた。

なるほど、そんな(まじな)いが──と、まだ少し理解が追い付いてないセイバーが、ハルに倣って鉛筆を手に、真っ白い紙へと面向かう。

 とは言え、"何でも"と言われて何を書けば良いのか。楽しい事なら現世に召喚されてから色々ある──士郎(シロウ)のご飯やハルと遊び歩いた時の事。嫌な事なら多少はある──前回召喚された時の事。

 そして、ナイショの話は──

 

「……ふむ」

 

 セイバーはふと思い至り、書き記す。それは生前の苦悩や過ち──を、聖杯からの現代知識を総動員して差し障りなく変換した独白。神秘の秘匿に気を遣い、最悪誰かに見られても問題無いように書き綴り、やがて鉛筆を置いた。その一枚の紙には、アルトリア・ペンドラゴン(アーサー王)の本音の吐露が著されている。

 それを同じく書き上がったハルに見習い紙飛行機の形に仕上げると、揃って縁側に出た。

 

「良い風です。これなら上手く飛ばせば、遠くまで運んでくれるでしょう」

 

 季節柄、肌寒くも清々しい風。それを同じく感じながらまずハルが紙飛行機を飛ばす。

 風に乗って白い紙の飛行機が空を飛んでいく。やがてそれが見えなくなると、続いてセイバーが自分のそれを構える。

 ヒュッ──そんな風切りの音が聞こえてきそうな勢いで放られたセイバーの紙飛行機は、高く高く風に乗り飛んでいった。じきに姿を消したそれは、果たして何処に落ちるのか。最早(この時代にもまだ存在するならばの話だが)風の精にしか分かるまい。

 

「──……ふぅ」

 

 それを見届けたセイバーは、溜め息を一つ。

 やってみて分かったが、やはりこれは何の変哲も無い子供の遊びだ。別段何かの儀式でもなく、運気が上がったり願いが叶うなどの魔術的な意味合いもない。他愛の無い、子供が考えた単なる児戯。

 だが、だ。そんなものにセイバーは胸がすく感覚を覚えていた。

 紙に綴り上げた一人の王の後悔。それが風に乗り、拐われて、自分の手が離れた何処かに飛んで行く。果たしてその光景に感じたのは、独り善がりながらも不思議と胸のつっかえが抜けたような清々しさだった。

 

「? どうしたの、セイバーさん?」

 

 ハルが、呆然と紙飛行機の飛び去った空を眺めているセイバーの顔を覗き込む。

 彼女の行動は、セイバーのためを想っての事ではないのだろう。あくまでも遊びの一環、それにセイバーを誘ったに過ぎない。

 けれど──ハルの誘いが、セイバーの心に小さな波紋を作ってくれたのは事実。その全てを踏まえた上で、セイバーは不思議そうな表情を見せるハルと目線を合わせ、安らかな笑みを浮かべる。

 

「……何でもありません。ええ、何でも。そうであってこそ悩み、それを乗り越える()()なのでしょうね」

「セイバーさん?」

「ありがとう、ハル──私の願いは依然変わりありませんが、凝り固まっていた一つのしがらみが解けた気分です。重ねて、貴女に感謝を」

 

 顔を見合わせて感謝を述べるセイバー。その言葉をハルは素直に受け止め、同様に笑顔を溢した。

 セイバーはそんなハルに対し、少し照れ臭そうにして見せる。

 

「貴女は不思議だ。戦士で無ければ、魔術師でも無い、現代に生きる人々と変わりないはずなのに、不思議な魅力で皆を惹き寄せる。そんな貴女に、私もまた親愛と言うものを感じています」

「それって、セイバーさんと私が、友達って事?」

「ええ……私で良ければ、貴女とはそう言う間柄になりたいと思っています」

 

 ばつが悪そうにするセイバーに、ハルは少々考え込んでから答える。

 

「うん。私も、セイバーさんと友達になりたい」

「! そうですか……光栄です」

 

 再度顔を見合わせ、二人の少女は微笑み合う。

 すると、そこへ居間の方から声が。彼女達のマスターである士郎が、おやつ時を見計らって二人を呼んでいた。

 セイバーがハルの手を引く。

 

「行きましょう。今日のおやつはプリンとシュークリームと聞きました。半分ずつにして、分け合いましょうか」

「うん!」

 

 嬉々として居間へと向かうハルとセイバー。時代も在り方も異なる、たまたま同じ時代に召喚、同じマスターを持つ彼女達だが、少なくとも今この時だけは──姉妹にも似た、仲睦まじい友人同士であった。




ノベライズの紙飛行機は、中々情緒ある設定ですよね。個人的に結構好き。今回はそれを使って、セイバーのしがらみを晴らす話でした。
セイバーとハルは、髪色やイメージカラーが似てるから絡ませると一番しっくり来てお気に入り。姉妹みたいで尊くないですか?誰か描いて良いのよ(お約束)
まぁ、髪色と三つ編みと言う点で、どっかの聖女とも似合いますが……マジで妹にされそう(鮫)

話は変わるけど拙作は日本一ソフトウェアの新作『夜、灯す』を応援してます。百合×ホラーとかやってくれるじゃないか……FGO編的にもストーリーによっては──
あと蘇った鼠の復讐劇とか、少女地獄なるものでのアクションゲームとか、異彩かつ個性的なものも続々出てきますね。期待。……そろそろ俺、日本一ソフトウェアマニアな作者になりそう。
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