Fate/staynight [Midnight Walker]【本編完結】 作:秋塚翔
Σ( ・ω・;)アッイタ
大変長らくお待たせしましたーーー!(土下座)
さんざんFGO編やるよ、アンケートしてね、お楽しみにとやっときながらこの体たらく。じんわり増えてるお気に入り登録者数に「ヤベぇよヤベぇよ」しながらも新作手掛けて脱線しまくってた事を深くお詫びします。
ここから本気出す。どうぞご覧ください。
出逢い/再会
「マシュ、こっち!」
「は、はいっ!」
炎上する都市の中を、二人の少女がひた走る。
白い制服に身を包んだ少女と、大きな盾を携えた鎧姿の少女。白い制服の少女の先導で、少女たちは逃げるように燃え上がる街を駆け抜けていく。
やがて丁度良い瓦礫の遮蔽物を見受けると、そこに素早く潜り込み息を殺す。
程なくして、ガチャガチャと空虚な足音が近付き、人型の骨の群れが押し寄せる。得物を手に、少女らを追ってきた骨の兵隊は、しかし隠れた少女らには気付かずに通り過ぎていく。
それからもうしばらく様子を見て、安全を確認した大盾の少女──マシュが安堵の声を漏らした。
「敵性反応、遠ざかりました」
「助かったあ……」
緊張していた体の力を抜き、白い制服の少女こと立香は小休止がてら瓦礫に身を委ねる。
「見事な采配です、マスター。この力にはまだ慣れていないので、あの数には対処しかねました」
「まー、伊達にかくれんぼや鬼ごっこで腕を磨いてなかったからね。引き際の見極めはお任せあれだよ」
「……とは言え、このまま隠れている訳にもいきませんね。今度は私の後からついてきてください」
「分かった。マシュに任せる」
警戒しながら外に出る。依然敵性反応はないが、油断は禁物だ。マシュは手にしたばかりの英霊の能力を出来る限り引き出しながら、道なき道を進み出す。
「──それにしても、聖杯を発見したとして……本来複数人で行うこのミッションを、私たち二名のみで果たせるのでしょうか……?」
ふと、先を行くマシュの口から不安の言葉が出てくる。
空間特異点F。人類史が未来に観測されなくなった事態の解決に向けて発見されたこの異物に、本来であれば多くのマスター候補生が送り込まれるはずだったが、不慮の事故で立香のマシュだけがこの時代に漂流した。
少ない人員、限りある資源、足りない戦力。合理的に見て、そう不安が溢れるのは当然だろう。
その言葉に、後ろについて歩く立香は気丈に応える。
「とりあえず出来ることをしよう。何もできないかもしれないし、する事はないのかもしれない。でも、そんなのは進まないと分からないもの。とにかく私たちは、私たちのやれることをするだけだ」
前向きでしかない返答に、マシュは思わずキョトンとして立ち止まる。
「……驚きました。確かマスター、先輩は一般枠からの参加と聞きましたが、今の言葉からはとてもそうは思えません。以前にも同じ経験をしているのですか?」
「まさか。ただ、私は諦めたくないだけだよ。助けられた命だしね。こんなところで終わったら、その人への恩が返せなくなる。だから、前を向いて進むの」
言いながら、立香は自分の胸元に利き手を添える。
そこには小さなペンダントが、見える形で下げられていた。
イミテーションの指輪が括られた、見るからに安っぽいペンダント。しかし立香にとって、それは何よりも大切なものであった。命の恩人からもらった宝物。
そっとそれに触れ、一つ息を吐く立香。不思議と勇気が湧いてくる気がした。いつも不安な時や、怖くて仕方ない時に行う
その迷いない目に、マシュは一瞬羨望の眼差しで見とれる──
「おや、マシュに……藤丸立香くん、だったかな? こんなところで会えるとは奇遇だね」
と。余りにも唐突に、場違いなほどのんびりした声が少女たちに投げ掛けられた。
即座に盾を構えたマシュだが、その声の主に目を見開く。
「レフ教授……!?」
しかし、信頼あるその人柄は変わらぬはずが、この場においては違和感しかない。燃え盛る炎の色を背景に、こちらへ笑いかける様は、得体が知れない警戒を煽る。
「君たちもここに飛ばされてきたのか。さっきもオルガと会ってね。酷く取り乱していたよ」
「オルガマリー所長が? 彼女も無事なんですか――」
「まったく……どいつもこいつも、私の手を煩わせてくれる予想外の事ばかりで頭に来るよ」
レフの表情が歪む。
目を剥き、嫌悪と怒りに口を裂いた顔付きは、もはや誰もが知る彼とはかけ離れていた。
「用済みのカルデアを爆破し、邪魔なものは全て排除したはずが、一人は未練がましく現世にしがみつき、一人は言うことも聞かず生き残り、そして君たちもまた我々の偉業に紛れた虫ケラのように現れた。今さら結末は変わらないが、
そう一方的に述べたレフの言葉に示し合わせるかのように、"それ"は来た。
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ──
羽音。
無数の羽音が近付く。
次いで、辺りの焼け焦げる臭いを押し退けるように腐臭が漂う。
間もなく姿を現した"それ"は、夥しい蟲で形作られた老人だった。
「オオオォ……肉だ、肉だ、肉ダぁ……ようやく、生きているニクをミツケたァ……」
身構える立香とマシュを見下ろし、生理的な嫌悪感をもたらす蟲を纏う妖怪じみた老人は、目玉を不規則に揺れ動かして唸る。
「これは……!?」
「なに、たかだか五百年ぽっちの妄執の怨念さ。この土地にこびりついていた、下らない執念の成れの果てだよ」
事も無げに言うレフは、既に手が届かないところまで浮き上がり、別れの挨拶代わりとばかりにシルクハットを下げていた。
「私は忙しい身でね。君たちの始末はそれに任せよう。滅びるしか能のない人間同士、仲良く共食いをしていたまえ」
最大級の侮蔑を込めながら、音もなくレフが消える。
残された妄執の怨念──魔人の亡霊は、構わず立香たちに狙いをつけて蟲で出来た巨腕を振り上げた。
「マスター! 戦闘を開始します! 下がって!」
直後、振り下ろされた巨腕をマシュは盾で防ぐ。ブチブチと嫌な音、感触。怖気が走るも、素早く腕を振り払い攻勢に転じる。
「取り換えねば、トリカえねば……! ワシはまだ生キタイ、
魔人が手を伸ばす。それをマシュが弾き、砕く。だが痛みを感じないのか、また腕を蟲で構築して掴みかかろうとしてくる。
「あッ!?」
また、魔人は狂い果ててなお知性は残されていた。
体から分散された蟲が、それらのみで腕を形成して死角からマシュを襲撃。ギリギリで防いだが、本体の腕が頭上から迫り、マシュは地面に叩き落とされる。
「マシュ!」
「ぐうッ……!」
「マスター! っ……!」
マシュが助けに向かおうとするも、牙をガチガチと鳴らす蟲に阻まれる。
「肉、肉、肉ゥ。これで、ワシはまた聖杯をォォォ」
譫言のように呻く魔人に首を掴まれて、立香は苦しむ。
引き剥がせない。助けもない。実感される死の足音。
死ぬ?ここで?こんなところで?何もできず?
ダメだ──と思えど、どうする事もできない状況。意識が遠のく。落ちていく。消えていく……
暗い、昏い、冥い。
全てから取り残されたような真っ暗な場所で、立香は佇む。
酷く寒い。酷く眠い。温もりと思考が徐々に奪われていく感覚を覚える。
これは『死』だ。
いつもすぐ傍にあって、決して味方にしてはいけない生きては死ぬ生物にある概念。
立香は今、自分が死の淵にいる事を自覚した。
帰らなければ。戻らなければ。けれど、無限の闇は立香を還れない場所へと沈ませていく。どうすればいいか、その思考をも掠れさせる。寒い、眠い、落ちる──
──光が見えた。
淡いオレンジ色の輝き。それは立香の胸元から発せられていた。
温かい。目が冴えていく。澱んでいた意識が浮上した立香は、手を伸ばした。光の差す方へ。まだ自分がいるべき世界に。
その手を、小さな右手が握り返した──
炎上する景色から、"赤"が消え去る。
静寂になった世界は風景ごと塗り変わった。
どこか時代を感じさせる夜の町並みに書き替えられた世界で、魔人は初めて周囲に反応を示す。
そうして思考の外となり、解放された立香の傍には一人の少女がいた。
青いリボンにピンクのナップサック、左腕がない少女は呆然とする立香に問いかける。
「こんばんは。貴女が私のマスターさん?」
「あ……」
立香は言葉を失う。見紛うはずがない。あの時と寸分変わらぬ姿。あの夜に、ちょうどこの町この時代に一人きりの自分を助けてくれた少女。それが今ここにサーヴァントとして再会を遂げた。
何か、また何を言おうと迷う。けれどそれを待たずして歪んだ叫びが上がる。
「シ、シぃ、死いいいィィィッ!!」
魔人は塗り替えられた世界に過剰な反応を吐露する。
「おのれェ! またしても我が前に立つかッ! なんと恐ろしい! なんと忌々しい! ワシは、ワシはァ、ワシはまだ死なんぞォッ!!」
絶叫した魔人が滅茶苦茶に暴れだす。
すると、少女は立香の手を引いて魔人から一目散に逃げ出した。お陰で、直後に繰り出された魔人の一撃を回避する事ができる。
その間に蟲を蹴散らしたマシュが、魔人の注目を引くため力強い攻撃を見舞う。また無数の蟲に分散した魔人は自身を脅かす全てに敵視し、唸り声を吐いて仕掛ける。
「はあァッ!」
対するマシュは地面を抉る勢いで盾を水平に振るい、攻撃を弾き飛ばす。さっきまでの崩れた街中ではなく、舗装された道路だからか踏ん張りが利く。数の暴力、質量の雪崩で襲う魔人に優勢的な対応ができていた。
「グウウウッ……! 渡さん、渡さんぞ! アレはワシだけのもの! ニク、せいハイ、死……オオオォ、御オ尾お汚雄おオォぉォ……!」
「!」
蟲が寄り集まり、一際巨大な蟲となる。
粘液を振り撒きながら、腐臭を撒き散らしながら、魔人は最早肉体など関係なく押し潰すつもりでマシュへと牙を剥く。盾を握るマシュ。
が、刹那。その巨蟲の横っ面に、火の球が着弾した。
「ッ!? キャ、す……!」
更に。立香を置いて独り接近してきた先ほどの少女が、懐から何かを投げ込んだ。
それは──ホタル。小さな光を灯す蟲に、魔人は目を奪われて動きが止まる。
じょきん。
すかさず少女が、手に持ち替えた赤いハサミを以て、何もない場所を断ち切った。
果たして、魔人は崩壊を始める。
「……敵性存在、消滅を確認。戦闘を終了します」
息を吐いたマシュが盾を下ろす。そんなマシュに、少女が恐る恐る歩み寄って声をかけた。
「だいじょうぶですか?」
「あ、はい。多少ダメージはありますが、お陰で軽微に済みました」
柔らかく微笑むマシュ。少女も同じくはにかんで安心した様子。
そこへ、離れて見ていた立香が駆け寄る。
「マスター、ご無事ですか?」
「うん。マシュこそ。援護間に合わなくてゴメン」
「サーヴァントを召喚なされただけでも充分なサポートでした。お見事です、マスター」
マシュの言に、立香は召喚したサーヴァント──少女の方を見やる。
思わぬ再会。かける言葉は未だ見付からない。そもそも彼女は自分のことを覚えているか? 知っているか? ……ぐるぐる思考が巡る。
そんな懸念を拭い去ったのは、目の前の少女だった。
「ひさしぶり、"立香ちゃん"。また会えたね」
「! ……覚えてて、くれたんだ――"お姉ちゃん"」
目に涙が滲む。それは紛れもなくこの場で最も尊い感情からの涙だろう。
少女は、改めてマスターである立香に名乗る。
「サーヴァント・ウォーカー、ハルです。これからよろしく、マスター」
鉄塔の上。
そこから町を俯瞰する弓兵は、目の当たりした遥か遠くの光景に固く閉じた口を開く。
「そう、か」
矢を番えていた弓を下ろしてしまう影の弓兵。命を受けて部外者を射抜く役目を与えられた彼だが、それを放棄せざるを得ない者の存在を見て独白する。
「君はそちら側に着くか……いや、当然だな。
当然の結論に自分で思い至り、自嘲する。セイバーに敗れ、ただこの時代を停滞させるために弓を引く存在になった自分が、どうして先に進む彼女と肩を並べる可能性を夢想できようか。
ならば、と。弓兵は黒い思考を押し退けて自らの意思を告げる。
「漂流者と共にここまで来るがいい、ウォーカー。突き進む君たちの前に、私は障害として立ちはだかろう。我々を乗り越える事ができて初めて、君達の旅路は始まる。我々を越え、この果てしなき夜道を往くがいい」
試練であり、後に続く呪いのような宣告。それは聞こえずとも、少女達のこれからの旅路を運命付ける確信じみた言葉だった──
いかがだったでしょうか?
個人的に最後の一節はだいぶ前からインスピレーション湧いて書けていたので、かなり自信作と自負してます。
あるキャラについて気付いた方は、東○ドームシティでボクと握手。
本作の立香(ぐだ子)は、SN編#6.5で登場した立香の成長した姿です。ハルリスペクト勢。あの頃からかくれんぼや鬼ごっこで真面目に鍛え、本気で隠れれば気配遮断Bくらいはいける。ハルとの縁から、今後通常とは異なる因果を背負って始まるのがこのFGO編となります。
因みに今回、ここから先は続きません。あくまでFGO編は単発、またはイベント系を既存オリジナル両方でやるくらいです。主にホラゲー、フリゲー中心に。
詳しくは未定なので、アイデア提供してくれると嬉しい限りです。
それでは、だいぶ間を空けてからのスタートとなりましたが、これからをMWをどうぞ宜しくお願いします!
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