Fate/staynight [Midnight Walker]【本編完結】 作:秋塚翔
まさかfate観てると思ったらまどマギになるとは思わなんだ。
後半をちょっと急ぎすぎました。また拘り癖が出そうだったもので。今回はオリジナル展開だから仕方ないにしても着々と文字数が増えている事に不安を感じつつ、それなりに良い出来ではあると思うのでご覧あれ!
それは、少女が見たとある街の夜の一面。現実世界に具現化された恐怖と悔恨の景色。
若干時代を感じさせる街並みには、この世のものとは思えない魑魅魍魎の類いが跋扈している。
母親を求めてさ迷う子供の霊、
落書きじみた様が逆に不気味な人型の異形、
大きな口から牙を剥く奇形の犬、
血に塗れた鉈を引き摺る白面の怪異、
道を阻む地面に生えたクジラじみた頭部など──
無数に蔓延るそれらが抱く感情は生への執着か、邪な悪意か、度の過ぎた悪戯心か。少なくとも人間の存在が許されざる異界がそこには広がっていた。
イリヤはその様変わりした空間を見渡し、驚愕と警戒を示す。
「まさか、固有結界? こんな所で……」
固有結界──術者の心象風景で現実を塗り潰す大魔術。一時的でも、世界を一変させてしまう魔法に近い代物だ。
それがまさかこんな局面で、しかもサーヴァントとは思わなかった(見た目だけは)自分より幼い少女が使うとは……冷静に思考を働かせるイリヤに、驚きに準じた狼狽は無い。彼女のサーヴァントであるバーサーカーも狂戦士ならではか、変異した世界にも全く動じてなかった。あるのは、新たな敵であるウォーカーをも倒す視野に入れる事のみ。
「バーサーカー、まずはセイバーを潰しなさい!」
命令を聞き届けたバーサーカーが、再びセイバーに詰め寄る。セイバーも突然変わった世界に驚くも、騎士として毅然と身構えた。そうするセイバーを仕留めんと、横から襲ってきた『お化け』を蹴散らそうとしたバーサーカーは、
次の瞬間、セイバーの眼前であえなく
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「遠坂! こっちだ!」
「え、ええ!」
士郎は凛の手を引いて塀の陰に身を潜める。その横を白い丸顔の怪異が通り過ぎた。そうして追い掛けてきた異形をやり過ごし、士郎は息を吐くと凛に質問を投げ掛ける。
「あれは一体何なんだ? これが、ウォーカーの宝具?」
「間違いなくそうね。固有結界とは恐れ入るわ……これがあの子の見てきたものから形作られた世界ならゾッとするわね」
街頭に照らされて姿を明かす異形の数々を覗き見、凛はブルリと肩を震わせる。様々な悪趣味じみた使い魔や人造生物を見聞きしてきた凛ですら、本能的に恐怖を覚える光景。しかも、あれらは物理も魔術も全く通じないと来ている。バーサーカーとは別種の、意味の分からない畏怖がそこにあった。
「とにかく安全な場所に……」
《そんなもの、この空間内にあると思うか?》
「! ……アーチャー!?」
聞き覚えのある声が響き、士郎達が隠れる路地裏にアーチャーが霊体化から姿を現す。
「貴方、どうしてココに?」
「どうもこうも、市街地の離れた狙撃ポイントで援護していたところを引き込まれてしまってこのザマだ。すぐに別のポイントを探したが、唯一目を付けた"山"は侵入を拒否されてね。仕方無くマスターを護りに来たと言う次第だ」
「侵入を拒否……?」
ふと気になった言葉を繰り返した士郎を余所に、状況説明したアーチャーは虚空を見上げる。方向的には恐らくバーサーカーとセイバー、あとウォーカーの魔力を感知しているのだろう。そうしたアーチャーは自嘲気味に付け加えた。
「まぁ、私の助力などこの宝具には不要だろうがね。これはウォーカーが支配……いいや、彼女すら油断すれば食い殺される殺す事に特化したおぞましい宝具なのだろうからな」
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判断を見誤った! ──イリヤは歯噛みする。
凛のアーチャーはさておき、三騎士の中でも最優と名高いセイバーを倒すのが先決だと思っていたイリヤ。マスターも
が、違った。私情を挟んで判断ミスをしてしまった。まさか、三騎目のサーヴァントの宝具でバーサーカーが
("死ぬ"と言う結果だけを理屈抜きに与える宝具……そんな英霊がいるなんて想定外だわ)
セイバーと衝突する寸前、横槍を入れてきた怪異に触れたバーサーカーが鮮血を吹き出したのを思い返し、イリヤは苦渋に顔を歪ませる。あの後も矢継ぎ早に悲痛な叫びを上げて落下する女の霊や、揺れ動く気味悪い怪異から次々襲われ、バーサーカーは三つも命のストックを消費していた。
一度目の死から立ち直る間に、相対していたセイバーは街中に紛れ、もうこの場には居ない。だが今のイリヤには関係無かった。彼女が狙いを改めたのは、最強と信じたバーサーカーを三度も殺した世界を維持する
ウォーカーは人間の子供と大差無い能力値だが、宝具やスキルを用いた『逃げ回る』事に長けたサーヴァントだ。ランサーのような戦士すら出し抜いたその利点は、お化けから逃げ隠れしてきた実績から来ている。
「■■■■■ッ!!」
ズン、ズン、と重い足音を立ててバーサーカーが逃げていたウォーカーの前に再び現れる。スペックが軒並み人間レベルのウォーカーを見付けるのは造作も無い。バーサーカーはウォーカーを発見するなり、絶叫して猛然と飛び掛かってきた。
まさに怪物の気迫。並のサーヴァントなら迫力だけで思わず足がすくみ動けなかっただろう。しかしウォーカーにとってそんな恐ろしい存在なんて、
「……!」
鬼気迫るバーサーカーの姿を目視し、一目散に逃げ出すウォーカー。懐中電灯の明かりでお化けを捉えて掻い潜っていく。
バーサーカーもまた三度も死ねば狂ってようと戦士の勘が働く。見えない怪異を『心眼』で避け、すぐに追い付いたウォーカーめがけて──マスターの命令や狂化の影響が彼の禁忌を上回り──斧剣を振り下ろす。
刹那、ウォーカーの姿はバーサーカーの視界から
「!?」
ガァンッ! ──標的を失った一撃は、凄まじい音を立ててアスファルトの地面に打ち込まれる。しかし、軽く地面を割るほどの一撃は道路を少しも傷付けてはいなかった。
どうやらこの空間内での破壊行為はシャットアウトされるようだ……そんな事は二の次どころか思考の外に置き、バーサーカーはキョロキョロと辺りを見回す。ウォーカーの姿は何処にも無い。令呪や技能で逃げたか? そう本能で考えたバーサーカーが歩を進めると、すぐ脇にあった草むらからウォーカーが飛び出して反対側に駆けていった。
「……■■■■■ーッ!!」
獲物を見付け、空気を震わせて叫んだバーサーカーがウォーカーを追う。狙ったものは構わず叩き潰す。まさしく破壊兵器のような行動基準で巨人は子供を追跡する。そこに理性があったなら、たとえアサシンでも彼の手を煩わせず捕らわれただろう。だが、お化けと同じ感じならばウォーカーにも勝機はあった。
反対側へ逃げたウォーカーが駆け込んだのは道端に設けられた地蔵。それに触れると、
「『
一言唱え、白い光に包まれてまたも姿を眩ましてしまった。
「■■■……■■ッ! ■■■■■ーーーッ!」
二度目、いや三度目になる取り逃し。バーサーカーは未だ何も刈り取れていない斧剣を狂気のまま地蔵に叩き付ける。無論、地蔵すらその破壊的な攻撃に傷一つ付かない。
と、そんなバーサーカーの耳に突き当たりの道から小さな足音が聞こえてきた。見ればバーサーカーのいる道路を横切るウォーカーの姿。それを見て戦士として、マスターに倒せと命じられた身として思うがまま彼は疾駆する。
マスターの敵は、倒す──
絶対に逃がさない──
必ず捕らえる、マスターのために!──
怒りより忠誠を優先してウォーカーを追い掛ける。一度は見捨てられようと、守って信じてくれたマスターの願いを叶えるためにも敵は絶対に倒す。
そうして角を曲がったバーサーカーは、『とうめいななにか』に躓いた。
「──はあァァァッ!」
大きさも重さも不明な『なにか』。それによってバランスを崩したところに何処から現れたか、セイバーが好機とばかりに剣を振るう。不意な事が立て続けに起きたバーサーカーは反応が遅れ、呆気なく胴体を一閃のもと裂かれたのだった。
「! そんな、バーサーカー……!?」
そこに遅れてやって来たイリヤが、両断されたバーサーカーを目の当たりにして目を疑う。最強と信じる自身のサーヴァントの四度目になる『死』。彼女の表情には余裕が無くなり、子供っぽい泣き顔が浮き出る。
致命的な隙。ましてやこの空間では命取りな油断。なおもバーサーカーに命令しようと気を取られたそんなイリヤの背後に"お化け"が迫っていた。
──アァァァ……
「っ!? いや、来ないでっ……!」
気付いたイリヤが咄嗟に使い魔で滅しようとするも、使い魔の強力な攻撃もお化けには無効。一切通じない。
お化けはイリヤに迫る。殺すために。セイバーも敵には慈悲無しと傍観する。イリヤは確実に来る死に戦慄した。
「危ないっ!」
だが、それは来なかった。代わりに彼女が殺そうとしていた少年──士郎がイリヤを抱きかかえ、その場から離脱。すると遅れてウォーカーがお化けに対して塩を撒いた。神聖な塩を撒かれたお化けは居なくなるように消える。
気付けばウォーカーの宝具は解かれ、先ほどいた教会へと続く道路に戻っていた。
「大丈夫か!?」
「……どう、して……」
「バカ。目の前で死にそうな奴を見捨てられるか!」
イリヤの問いに怒鳴る士郎。恐らく元からイリヤを助けるつもりで駆け付けたのだろうか、でなければサーヴァントの戦う場に来る訳がない。
呆気に取られるイリヤ。だが凛がその場に合流してくると、士郎を突き飛ばしバーサーカーの下に駆け寄った。バーサーカーは既に死から復帰して立ち上がっている。
「……次は、こうは行かないんだから……!」
そう言い捨て、イリヤはバーサーカーの肩に乗り逃走。バーサーカーの筋力を以てしてあっという間に逃げ去り、静寂が訪れる。
「──っ……!」
「……! シロウ!?」
「衛宮君!?」
すると突然、士郎は喀血し倒れ込む。驚く一同が見るとランサーに刺された胸から血が滲んでいる。傷が開いたのだ。
士郎の意識はイリヤを助けられた安心感と共に再び途切れた──
バーサーカーに善戦!ここからHF同様にルート分岐ですかね。
ウォーカーの一つ目の宝具『怪異蔓延る深夜の街』。これはウォーカーも狙われ、制御不可な代わりに空間内の家屋などを壊せず、お化けは正攻法でなければ倒せない上に触れれば一撃死すると言う鬼畜仕様。どんなサーヴァントやマスターも、優劣関係無く殺せる地味に凶悪な宝具となります。ただし見ての通り初見殺し。次はバーサーカー相手にこうは行かないでしょう。
因みにお化けは宝具の一部ながら独立してるので、実質それぞれが同ランクの宝具として成り立っているためバーサーカーの宝具の隙を突けた、と言うのが訳です。
あとアーチャーが引き込まれたり『山の侵入を拒否された』と言ってましたが、これはどちらもウォーカーの意思によるもの。この心象世界はウォーカーのトラウマでもあるので、無意識的に繋がってる者同士が離れ離れになったり誰かが山に入る事を拒んでいるのです。
二つ目の宝具『記録された道祖神の恩恵』。ゲームのシステム的な宝具と言えば分かりやすいでしょうか。つまりワープとセーブです。セーブの説明はまた次の機会で。
前述の宝具と組み合わせれば、ウォーカーは地蔵の位置を幅広く把握してるので自由な移動が可能。もちろん現実世界でも使えます。歩く事を手段としたウォーカーの利点ですね。
実はもう一つ『とうめいななにか』を含めた三つ目の宝具を使っていましたが、それもまた次の機会……と言うか次回辺りにプロフィール載せられると思うのでその時に明かします。
後半はセイバーが急に来たり、何処からか士郎が飛び込んできたりでトントン拍子感が否めない。流れとしてはウォーカーワープ移動→たまたまセイバーと合流、バーサーカー撃破を頼む→一方で士郎はイリヤの身を案じて飛び出す→偶然近くてお化けに襲われるイリヤを見付け助ける……と言った形でした。これ文章にしたらややこしい。
次回は最強の守護獣(比喩)も登場。乞うご期待。宜しければ評価やコメントをいただけると執筆速度が上がります!