Fate/staynight [Midnight Walker]【本編完結】   作:秋塚翔

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四話時点でのお気に入り登録数300人突破、日間ランキング21位ですってよ奥さん。
連載当初の伸び幅から東方fgoほど人気は出ないなと思いきや、まさかまさか東方fgo越えしてしまいました。これもひとえに私の作品を読んでくれた皆々様のお陰ですね。これからもMWを宜しくお願いします!

今回から色文字にも着手。お陰で区別化を図れて助かった。この表現は外せない。


#5 不夜

 左手に幾重も絡まり合った赤い紐が、その場に少女を繋ぎ止める。

 

 

 

 ──カワイソウ

 

 

 

 暗く湿っぽい、洞窟らしき空間に声が響く。同情を模した死へと導く誘いの言葉。

 

 

 

 ──オイテイカナイデ

 

 

 

 上から少女の親友そっくりなものが、幾つも落ちては潰れていく。見るに堪えない光景。

 少女の目先には、助けたかったその親友の変貌した異形が花咲いたような形相でこちらににじり寄ってきている。

 

 

 

 ──ずっトいっショニ

 

 

 

 手にしたハサミで紐を切る。しかしまた、新たな紐が飛び出してきて左手に絡み付く。また切る。また絡まる。切る。絡まる。切る。絡まる──

 

 ──…………

 

 やがて、果てしない行為にハサミを握る手を下ろした少女は異形と化した親友へと向き直る。

 いつも明るく、置いてかれるくらい元気で、どんな時も笑っていた大切な友達。それが今は見る影も無く、抑えられない負の感情のまま少女に恐ろしげな一つ目を向ける。その表情は分かる訳ない筈だが、不思議と悲しんでいるように感じた。こんなことしたくない、と……

 それは少女も同じ気持ちだ。だから意を決し、いつも手を繋いでくれた親友に想いを投げ掛ける。助けられなくて、一緒にいられなくて、ごめんなさい。もうやめて。こんなの、■■■■■……! と。

 

 次の瞬間、最後の言葉を口にした少女の左腕は赤い紐もろとも、鮮血を上げて大きなハサミに断ち切られた──

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

「ワンッ!」

「うおわっ!?」

 

 起きざまの吠え声に士郎は仰天。寝惚ける頭が一気に覚醒する。

 士郎の布団に飛び乗っていたフワフワした毛並みの子犬は、そうした士郎から役目を終えたとばかりにあどけない顔をして飛び降りていった。

 

「な、何だこの犬……?」

「おはよう。勝手に上がらせてもらってるわ」

「うわぁぁぁっ!?」

 

 二度目の起き抜け仰天。呆けた士郎に向けて声を掛けてきたのは凛だった。

 自室で正座し、寝ている自分の枕元にいた美少女の姿に士郎はすっとんきょうな声を上げる。だが、驚きはそれだけに留まらない。

 

「あぁ、気を付けなさい? すぐ横でウォーカーが寝てるわよ」

「なんでさーーーっ!?」

「スゥ……スゥ……」

 

 本日三度目。後にも先にも最高記録だろう。布団を捲ったら女の子が自分の横で寝ているなど、思春期の士郎には受け止めきれない事態だ。

 そんな士郎の慌てぶりを余所に、先ほどの子犬がウォーカーの顔をペロリと一舐め。するとサーヴァント故に本来睡眠は必要ないためか、ウォーカーはすぐに気付いて目を覚ました。

 

「あ、もう起きて大丈夫なの? 良かったぁ……」

 

 士郎の様子を見やり、安堵した表情を浮かべるウォーカー。対して驚き冷め止まない士郎は、彼女が抱き上げる犬を指差して明後日の方向ばりに問う。

 

「その犬、お前のなのか?」

「うん。チャコって名前なの。とっても賢くて勇敢なんだよ!」

「クゥン」

「本当に良い子よ。衛宮君が心配で霊体化せず寝ちゃったご主人様を、独りでに出てきて見守ってたんだもの。サーヴァントじゃないのが惜しい忠実さだわ」

 

 言って凛はウォーカーに抱えられた犬、チャコを撫でる。慣れている辺り、士郎達が目覚めるまで可愛がられていたのだろうか。

 それから落ち着いた士郎に、凛はあれからどうしたのか説明を行った。ランサーに貫かれた傷が開いて気を失った事、家に運んで治療していたら傷口が自然と塞がった事。何故そうなったのかの憶測など……

 

「──手を組む? 俺と遠坂が?」

 

 そして締めに出た提案に、士郎は眉を潜めた。

 昨晩、敵として宣言したはずの凛から掌を返した申し出。当人は士郎のオウム返しした言葉を訂正する。

 

「正しくは私と衛宮君、それとウォーカーよ。昨日のサーヴァント、バーサーカーは恐らくこの聖杯戦争で飛び切りの障害になる。あれを何とかするには、私達が同盟を組んで互いの利点で互いの欠点を補った方が得策よ」

「利点で、欠点を?」

「私達は魔術戦や白兵戦はこなせるけど、あんな化け物を相手取るには決定打に欠ける。そっちはセイバーの力量こそ申し分ないけど、マスターの衛宮君が未熟者で半人前。そしてウォーカーは性能こそ上手く立ち回れば脅威だけど、マスター不在や本人自体に戦う力が無いのがネック──これらを補い合えば、他の陣営にも太刀打ちできるわ」

 

 自分を含めたそれぞれを分析し、結論付ける凛。全く見当違いなんてない的確な指摘だった。

 

「ウォーカーとは既に話をつけてて、あとは衛宮君も乗るなら同盟は成立するわ。どう? 悪い話ではないと思うけど」

 

 確かに、と士郎は心中で同感する。

 何もしないで聖杯戦争の終わりを待つと言う選択肢は無い以上、凛達と手を組むのが最善手だ。むざむざ殺されるか、協力者を得て殺さない形で終結になるよう努めるか。答えは一つしかない。

 なのだが……一つ、士郎には先に聞いておきたい事柄が頭を過った。それを、すぐ隣でちょこんと座るウォーカーに問い掛ける。

 

「……なぁ、確かウォーカーって夜しか動けないんだったよな?」

「え? ……う、うん。今は我慢してるけど、朝が来たら魔力が減るから霊体じゃないと消えちゃうの。マスターがいれば魔力を分けてもらって昼間も動けるんだけど……」

 

 ウォーカークラスの固有スキル『散策』は英霊の実績に応じた条件下でのマスターからの魔力供給を必要としない。つまりその条件下では、幾ら魔力を消費しても枯渇しないのである。ウォーカーの場合、その条件は『夕暮れから日の出までの夜間』。それを外れるとウォーカーはマスターのいないサーヴァントと変わらず、霊体化してないと昼間は現界維持に魔力を消費していずれ消えてしまう。

 それを再確認した士郎。続いての問い掛けを口にする。

 

「なら、もし俺がお前のマスターになるって言ったらどうだ?」

「はあぁっ!?」

 

 と、身を乗り出して声を上げたのは凛。有り得ない! と怒髪天を衝いている様子だ。

 怒りを見せる凛にたぎろぎながら、士郎はそう言うにあたった理由を語る。

 

「だってウォーカーの宝具は脅威なんだろ? なら使いどころを指揮する奴が必要だ。それに俺はともかく、遠坂も申し分ないって太鼓判を押すセイバーと組めば……」

「それはそうだけどそうじゃない! 貴方、自分がいかに常識外れな発想してるか分かる!? ただでさえ魂を再現して固定化させてるサーヴァントって存在は強大なの。それを人間一人の魔力で維持するだけでも考慮しなくちゃいけないのに、二騎も持とうなんてアインツベルンでも考えないわ!」

「そこは……ほら、ウォーカーは夜の間ならマスター無しでも魔力を補えるし、昼間はなるべく必要時以外では霊体化してもらえば……」

「理屈は通るけどリスクもそれなりよ! このエセ魔術師!」

「エセって……あの神父と同じ呼び方するなよ」

「私からすれば一緒よ! 全く、どうしてこんな素人がセイバーを引き当てるのかしら……!」

 

 ブツブツと呟きながら凛は苛立ちを態度に表す。なにせ自分の範疇外の提案が出されたのだ。まるで人手が足りないなら二人に増えれば良いじゃん、と言われるような発想。凛だけでなく並の魔術師なら誰もが非常識と憤るだろう。

 士郎がそんな発想をするに至った理由は──さっきの夢だ。

 恐らくあれは、記憶の侵食。隣に寝ていたからこそ起きた記憶の再演だ。少女……ウォーカーの見た光景は、かつての自分と状況が似ていた。助けたくても助けられなかった、あの火事の時の幼く無力な自分と。

 だから助けたい、助けられるように。無力な少女(ウォーカー)に正義の味方みたく手を差し伸べ、離した手をまた繋げるように。

 

「……あの、私で良かったら、お願いします!」

「ちょっと!?」

 

 少し間を置き、そうウォーカーは言った。聖杯が欲しい、叶えたい願いがあるから。それは士郎達も聞いている。申し訳なさそうに、たどたどしく青いリボンを付けた頭を下げたそんなウォーカーに士郎は慈しむように笑いかける。

 その様子を見て一度は引き留めようとした凛だったが諦める。諦めて、同盟を組んだ身として助け船を出す。

 

「分かった。そこまでするなら私も止めない、どうなろうとね。ほら、魔力のパスを繋ぐだけで済む仮契約の手順を教えてあげる」

「悪い。助かるよ遠坂」

「全くよ。この埋め合わせはきっちりしてもらうから……ところで、どうせ同盟を組むんだし貴女の真名を教えてくれないかしら? 仮契約する上で必要だしね」

 

 そう述べた凛にウォーカーは躊躇せず「うん」と応じた。真名は英霊の弱点を把握する上で隠すべき要素だが、ウォーカーは未来から来たサーヴァント。わざわざ隠しても分かる者はいない。しかも明かす相手が仲間ならと、ウォーカーは改めて名乗る。

 

「──ハル。ウォーカーのサーヴァント、ハルだよ」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 冬木市郊外にあるアインツベルンの森、その奥地に建つアインツベルンの城。そこがバーサーカーのマスター、イリヤの居城だ。

 日本離れした洋風の城内。その一角に設けられたイリヤの私室には城主にして部屋主のイリヤがベッドで寝そべっていた。

 

(この私が、始まって間もないのに敗走するなんて……!)

 

 ベッドの上でイリヤは昨晩の戦闘を思い返す。

 小手調べに挨拶しに行ったつもりが、第三のサーヴァントやその宝具と言った予想外の存在でバーサーカーは四度も殺された。それでいて敵のマスター──よりにもよって衛宮士郎に助けられて逃げ帰ると言う失態。怒りと憎しみがより一層込み上げてくる。あの少年の顔を思い出すと、ますます……

 

「……お兄ちゃん、か……」

 

 まだ名前も知らない少年の呼び名を口にし、イリヤは寝返りして天井を見上げる。その顔は憂いを帯びていた。

 衛宮切嗣の忘れ形見。つまり、()()()()。母と自分を捨てて勝手に死んだ憎き父の息子である士郎の顔を思い浮かべると、怒りや憎しみの他に何かが沸き上がる。それが何か、イリヤには分からない。分からないからこそ、分かる感情に従い行動するのだ。

 

(まぁ、良いわ。まだ聖杯戦争は始まったばかり。もうあんな失態は犯さない。次はたっぷり苦しませてやるんだから)

 

 分かる感情を抱き、そう決意したイリヤはそのままウトウトと眠りに誘われる。昨晩の怒りで寝不足だ。魔力の回復も兼ね、自身の心音を何となく聞きながらイリヤは眠りに落ちていく。寂しさから生まれた負の感情を胸に──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──カワイソウ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




某兄弟動画のチャコ「(不穏の展開は)こちらです」

MWの真骨頂。これは外せなかった。本来この作品を始めた理由は、憎いアンチキショウを自らの手でぶっ潰したかったからですしね。ここからがfate×深夜廻の開幕と言っていいでしょう。

ウォーカーの仮契約と真名判明。どちらも今後の展開に必要でした。これで昼間も動かせるし、深夜廻サイドの話を絡めやすい。仮契約のfgo感が否めませんが、ちょっと自己解釈入ったのは不安点です。凛をあんな怒らせるほどだったのか……これだからfateにわかは困る(-_-;)

次回はウォーカー・ハルのプロフィール公開。ご期待を。宜しければ評価やコメントいただけると執筆速度が上がります!
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