Fate/staynight [Midnight Walker]【本編完結】   作:秋塚翔

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長らくお待たせしました。更新していない間、バサランテやサリエリが来てはしゃいだり、念願のジャックちゃんが来て大歓喜したり、アポイベ旨ぇ!と画面の前でレジスタンスのライダー顔してたり悠々自適にサボっtゲフンゲフン執筆に詰まってた秋塚翔です。ぐだイベは不参加気味。

ようやく形になって投稿。どうぞご覧ください!


#7 闇夜

「……?」

 

 出掛ける支度をしていたハルは、不意に異質な魔力を感じ取った。

 セイバーとも、もちろん自分の……この時間帯にランダムで現れる"よまわりさん"やお化けとも違う魔力。そう言った類いの感知は得意ではないが、悪意に似ているものなら経験上分かる。これは何かを傷付けようとする気配だ。

 ハルは奇妙な毛玉や落書きじみたお面、不気味な木目のある木材やひび割れたスマートフォンなど、拾い集めてきた宝物(コレクション)の一部が飾られている離れの部屋を出ると、すっかり夜の色に染まった庭へと降り立ち魔力を辿っていった。

 

「──貴女も来ましたか、ウォーカー」

 

 辿り着いた先、蔵の前にはセイバーが立っていた。どうやら彼女も魔力を感じて駆け付けたようだ。

 何があったの? と聞くより早く、ハルは見た。蔵の中に張り巡らされた、ピアノ線のように細い糸を。それらは開かれた扉から差し込む月光を反射し、キラキラと存在を表している。

 

「これは……?」

「恐らく魔術で繰られた操糸の類いでしょう。これでシロウは拐われたようです……あの山へ」

 

 答えながら、セイバーは蔵の小窓から伸びる糸の束を目で追う。ピンと張られた糸の束は、確かに山の方へと結ばれていた。いつも蔵で強化の魔術の鍛練をしていた士郎が、この糸で連れ去られたのは明白だ。

 『糸』『山』『拐われた』……ハルの脳裏に嫌な記憶が蘇る。

 

「私はあの山に向かいます。ウォーカー、貴女はどうしますか?」

「あ……私も行く!」

「分かりました。それでは二手に分かれて行きましょう」

 

 そう言い、一瞬で武装したセイバーは屋敷の塀を越え、重量を感じさせない軽快さで飛び出した。

 遅れてハルも動き出す。あの山にある寺までは、もうマッピングを済ませてある。近くの地蔵から移動(ワープ)すれば一飛びだ。セイバーもそれを承知していて先に向かったのだろう。下手をすれば彼女より早く到着する。

 士郎さんが心配、早く行かないと──ハルはそう急いで歩き出した時、()()は突如として聞こえてきた。

 

 

 

 ──戻ってください。

 

 

 

 それは、声。男とも女とも、若いとも老いてるとも、そもそも"声"なのかすら分からないものがハルの耳だけに届く。それと同時にハルは何の気なしに数歩後ろに()()()()()()()()

 ……ハルは知っている。これは、呪いだ。あの街の、あの山で対峙した"お化け"の呪詛。霊基に刻まれた『山の残響(スキル)』である。

 また数歩、進んでみる。

 

 

 

 ──戻ってください。

 

 

 

 『声』が響く。まるでハルの行動が間違っていて、それを正しい方に導いてるかのような指示の言葉(チュートリアル)。聞こえるはずがない、しかし違和感なく耳に届いたその声にハルの体は自然とまた後退の行動を取る。

 この声に従っちゃダメだ──思い出すは、あの時の情景。枝に下げられた赤い犬用リードと、足場となる箱。あの不吉極まりないものに、『声』の導くまま手を伸ばそうとした体験。

 従えば最期、あの時みたいに……ユイのように、"死"へと導かれる。これは聞いちゃいけない声だ。しかし、それが分かっててなお、ハルの体は『声』に従い向かうべき方と逆を行こうとする。

 

「……ワンッ! ワンワン!」

 

 と、そこへ聞き覚えのある鳴き声が浴びせられる。チャコだ。また独りでに出てきた愛犬は、小さな体を屈めてハルに吠えたてていた。怒ってるのではなく、まるでハルに気付けをするように。

 そうだ、あの時も。あの時もハルはチャコの声を聞いて、すんでのところで踏み留まれた。親友の書き置きを見て、なおも導く『声』に抗えた。

 この『声』は、あの時の焼き増しだ。先ほど、あの時の事を思い出したせいで呼び覚ましてしまった悪夢の再現、模倣。ハルが自らを苛むトラウマに過ぎない。

 

 一歩踏み出す。

 

 

 

 ──戻ってください。

 

 

 

 また一歩、

 

 

 

 ──もどってください。

 

 

 

 また一歩、

 

 

 

 ──引き返してください。

 

 

 

 一歩、

 

 

 

 ──もどってください

 

 

 

 一歩、

 

 

 

 ──もどどどどどどどど

 

 

 

 いやだ。

 

 

 

 ──オイデオイデオイデオイデオイデ

 

 

 

 いやだ。

 

 

 

 ──おいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおい

 

 

 

 いやだ!!

 

 遮るように拒否して踏み出した瞬間、もう声は聞こえなくなった。呪い(スキル)をはね除けたのだ。

 だが、それに喜んでる暇はなく、気を取り直したハルは先へ急ぐのであった──

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

「ぐあああああ──ッ!!」

 

 夜の柳洞寺に、苦痛からの絶叫が上がる。

 人気は無く、溜め込まれた魔力が霧がかって漂う山の上の寺に連れてこられた士郎は、令呪を奪われまいと必死に抵抗する。しかし未熟な魔術使いの抵抗など、目の前の魔女──キャスターのサーヴァントにとっては無駄な足掻きに過ぎなかった。

 

「あら、頑張るわね。そう言うのは嫌いじゃないわよ?」

 

 抗いに手こずる様子は無く、むしろ嘲る余裕すら見せて士郎の左手に宿る令呪を剥がしにかかるキャスター。魔術回路ごと引き抜かれる苦痛に叫ぶ士郎の姿に、目深に被ったフードから覗く口元を嗜虐に歪ませていた。

 士郎を拐い、令呪を奪おうとするキャスターの目的、それはクラス最優のセイバーを手に入れて、目障りなバーサーカーを倒してもらう事だ。加えてセイバーと言う手駒を得て、街の人間から吸い取った魔力の貯蔵を以てすれば聖杯戦争に勝利したも同然。聖杯を手にするのは目前だった。

 そうはさせまいと尚も抗う士郎だが、四肢を糸で拘束されて身動きが取れない状況下、このままでは奪われるのも時間の問題だ。何とかしなければ……!

 

 と、その時。紙飛行機が一つ、キャスターの前を横切った。

 

「? ……何かしら」

 

 ふわりと滑るように着地した、紙で折られた飛行機。人払いをし、英霊と言う概念を遮断する結界が張られた神殿の中では明らかに不自然なものだ。

 その不可解な物体にキャスターの意識が向く。普通ならば誰かいるのか、はたまた何かの罠かと警戒しただろう。ましてや魔術に精通するキャスターなら、なおさら勘繰っているはず……しかしキャスターは令呪を奪う手を止め、ただただ気になって紙飛行機に引き寄せられる。

 そんなキャスターと入れ替わる形で物陰から小さな影が飛び出し、士郎に接近してきた。

 

「ハル!」

「なッ……!?」

 

 小さな影──ハルの出現に、士郎とキャスターはそれぞれ驚きの反応を示す。

 士郎の元に駆け寄ったハルは、右手に握る朱塗りの大きなハサミで糸を切りにかかる。細いながらも、人一人の動きを封じる魔術による拘束。ハルの宝具(ハサミ)なら"糸"と言う点でも、断ち切るのは容易いだろう。

 が、問題が起きた。子供のハルは背が低く、四方から伸びる糸の一部は高い位置にある。つまり手が届かないのだ。並みのサーヴァントならどうとでもなるが、ハルにそんな力は無い。

 

 ──ズバァッ!!

 

 そうこう手間取っている内に、ハルの足元に光弾が撃ち込まれた。当たりこそしなかったが、至近距離の爆発に驚いて尻餅をつくハル。

 

「残念。ちょっと惑わされたけど……私をランサーのように出し抜くには、時間が足りなかったわね、おチビさん?」

 

 魔法陣を展開したキャスターが妖しい笑みを取り戻し、今度は正しくハルに標準を定める。もう紙飛行機には目もくれていない。

 小石、紙飛行機、マッチ棒、ホタルと言ったアイテムは対魔力のランクに関係無く対象を引き付けられる反面、その効果時間は短い。仮に身長などの障害が無くても、糸を切断するには間に合わないだろう。完全にハルの失策だ。

 

「貴女がウォーカーのサーヴァントね? この聖杯戦争のイレギュラー……不安要素を取り除くために、ここで消しておいた方が安心かしら?」

「っ、ハル! 俺の事はいい! 逃げろ!」

 

 士郎が声を上げる。だが、ハルは逃げない。逃げられる訳がない──もう"親しい人"を失いたくないから。

 一方、思わぬ侵入者に慌てたキャスターであったが、逆に飛んで火に入るとばかりにもう問題としていない。ここで始末するなり、奪った令呪で手駒にするなり思いのままだ。とりあえず陣地の中に入ってきた未知のサーヴァントと言う脅威、排除が得策と魔術を行使──

 

 ──ッシュドドドドド!!

 

「っ!?」

 

 しようとしたその時、上から無数の矢がキャスター目掛けて降り注いだ。

 すんでで察知したキャスターは、飛び退いて回避。地面に生えた矢が消滅していくと同時、境内に声が響く。

 

「ふん、とうに命は無いものと思っていたが……存外しぶといらしい」

「! お前、どうして……!」

 

 屋根の上、弓を携えた赤外套の男に士郎は気付く。跳躍し、ハル達の前に降り立ったのは、まさしくアーチャーだった。

 アーチャーは士郎の問いに答える。

 

「何、ただの通りすがりだ。それより糸は先程ので切れたはずだが」

 

 言われて、士郎は体が自由になっていたのを確認。精密な射撃が、キャスターを牽制すると共に拘束を解いていたのだ。

 対して牽制されたキャスター、またも思わぬ闖入者に再三狼狽える。

 

「アーチャーですって……? ええい、アサシンめ! 何をしていたの!?」

「そう仲間を責めるな。アサシンなら、今頃はセイバーの足止めの最中だ。私はその隙に入れさせてもらったのだよ」

「くっ……!」

 

 アーチャーの言葉に、苦虫を噛み潰したように表情を歪めるキャスター。英霊と言う概念を遮断する結界が張られた防護拠点内で、二騎のサーヴァントが侵入してきている事実。慎重的なキャスターには多大な予想外、イレギュラーである。

 最早令呪を奪うだとか、魔力を吸い取る問題ではない。敵の排除になりふり構っていられなかった。

 

「さて、巻き添えを食らいたくなくば、そこから動かない事だ。癇癪を起こした魔女の相手は、少々手荒になりそうなのでな」




ハルちゃん、頑張ったけどアーチャーに手柄を取られるの巻。
実はこのストーリー、一回書き直してます。最初はハルがキャスターを翻弄してアーチャーが助太刀、共闘する形でしたが、あれ?何か違う……?と思いまして有識者の方とLINEで話した結果、ハルらしい行動じゃないと気付き修正。今回の展開になりました。有識者の方マジでありがとう。

『山の残響』──言わば『頭痛持ち』や『病弱』と同じ、ハルのデメリットスキルです。精神的に弱った時、例のチュートリアルが殺しに来るシステム。あれは原作の視聴で初めて知った時「テメェが前作でポロ殺したのかァァァァァッ!」とブチ切れました。教えるシステムが黒幕ってズルい。

次回は主にキャスターvsアーチャー。少し変更したので、ここからどうハルを混ぜるかですね。まぁ、漠然とは考え付いてます。期待半分でお待ちください。宜しければ評価やコメントをくださいませ!
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