「はぁ………」
私、一色いろは、一生の不覚である。
なんて言うと深刻になってしまうが(いや私にとっては十分に深刻なんですよ?ほんとうですよ?あと誰ですか私の一生なんて軽そうとか思った人、先生怒らないから手をあげて)、せんぱいのことを好きになってしまったのだ。なんで私があんなのを。あんな目が腐っていて性格も腐っていて。そりゃあクリスマスイベントのときにさりげなく荷物持ってくれたりとか面倒とか言いながら最後まで付き合ってくれたりとかいいとこもをありますけどね。あとあと、読書してるときの表情とか本の持ち方とか雰囲気とかかっこよかったり。
「うぅ………」
思い出しただけで顔が熱くなる。完全に自爆である。いろは、イン、ベッドの状態でジタバタである。後半とかただ単にせんぱいを褒めてただけだしね。
「まったく、なんであの人はあんなに」
あんなに、優しいんだ。基本面倒とか言っていてもところどころに私に対しての優しさがあって、ほんと、ほんとに、えへへ………。
こんな感じで毎日脳内が変なことになってるんですよ、はい。
私がこんな恋愛にドはまりするとはね、世も末だね。これはせんぱいに責任をとってもらってもらわないと。
Q.責任ってどうやってとってもらうの?
A.そんなの決まってるじゃん、けっこーーーー
「うにゃぁーーーーー‼︎‼︎」
やばいやばい恥ずかしい恥ずかしい!なにこれなにこれ!?
ほんとどうしてくれるんですかせんぱい!1人でいるときはこんなんなんですよ!これはもういつでも一緒にいてもらわないとですね、ええ、ええ、仕方ありません。そうです、同棲してもらわーーーー
「はわわわわ」
恥ずかしい恥ずかしい、一緒に暮らすとかやばいよ、私もたないよ。なんですかせんぱいいきなり同棲とかちょっとどころじゃなく私の体がもたないので順を追ってとりあえずデートを何回か重ねて私がせんぱいと一緒にいるのに慣れてからにしてくださいお願いしますごめんなさい。
………もはやただの告白である。
あーあとあれかな。せんぱい家だと性格変わったりするのかなやっぱり。一緒に暮らすと甘えてくれたりするのかな?なにそれすごく魅力的。ぜひともしていただきたいです。
「えへへ………」
明日はどうやってせんぱいに攻撃しようかな〜。せんぱいなんだかんだ言っても照れてるからかわいいんだよね、ほんとかわいい。
「好きです、せんぱい」
きゃー!きゃー!
いい加減伝えてしまえばいいのに。伝えたいよねーやっぱり。タイミングさえ合えば伝えたい。でも、でも、なぁ。せんぱいのことだから逃げるよね、うん。チキンめ。調理して食べちゃうぞ。でも私はせんぱいを食べるよりもせんぱいに食べてほしーーーーー
「はふぅ」
もうだめ。
寝よう。
寝れるかな………。
そして私は部屋のドアを少し開けて、中で1人ジタバタしている私を見てニヤニヤしている母に気づかないのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
さて、私は今学校にいます。ということで私の最近の日課の待ち伏せについて紹介しましょう。せんぱいの来る自転車置き場で待機して、せんぱいが来たら攻撃、であります。まぁみなさんの想像の通りだと思いますね。ほら、そういうことかわいい女の子にされたら惚れるじゃないですか?まぁあの猫背(せんぱい)には通用しないんですけどね!
うーん、そろそろ違うやり方、例えば某自称若手の未婚教師直伝のえぐりこむように打つべしとか、もちろんかばんで。なんでこんなこと教えてるんですか平塚先生、もっと合理的な防犯対策を教えてほしかった。平塚先生って言っちゃってるし。はやくだれかもらってあげてください、せんぱいは私がもらうのでそれ以外のひとで。
それにしても。
「………遅い」
いつもならもう来ている時間なのにせんぱいはまだ来てない。もしかして今日はいつもよりも早く学校に来てたのかな?だとしたらこんな寒空の下待ってなくったってよかったじゃん!生徒会室にせんぱい呼んでいちゃつけたじゃん!なんでせんぱい一言連絡くれなかったんですか。なんなんですか焦らしですかそういうのは付き合って親密度を上げてからにしてくださいごめんなさい(ちなみに連絡先はお互いに交換してません)。
もう行こ。ST始まっちゃうし。せんぱいに朝会えなくてエネルギーが足りないので授業は寝ても仕方ないよねっ☆べっ、べつに昨日せんぱいのこと考えすぎて寝れなかったってわけじゃないんだからねっ、勘違いしないでよねっ。というツンデレキャラはせんぱい好きなのかな。雪ノ下先輩に罵られておしゃべりしてるの楽しそうだしなー。あれ?これせんぱいただのドMじゃない?もしそうなら私は口撃できないからまずいですね。せんぱいにけいいをつねにひょうしているわたしにそんなことできないですね。せんぱい、ノーマルに戻ってきてくださいなんなら行きすぎてSでもいいですよ!私は受け止めますよ!私がされたいだけですね、はい。
そんなことを考えてSTを終えた私のクラスが1時間目の授業を迎えようとしているときに、私はそれを放棄したのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
………はい。よく寝れました。結局今日の授業を受けた記憶がないまま放課後です。せんぱい成分を補充できないとこうなるのか。これは毎日会わねば。
まぁ過去は振り返っても仕方ないのでとりあえずせんぱいに会うために奉仕部に行きましょうそうしましょう。サッカー部はこんな寒い中やって怪我をして傷物になっては大変なので自主的に休んでいます。まぁ選手じゃないから怪我なんてしないんですけどね。生徒会はまぁなんとかなるでしょう。副会長優秀だしね。最近書記ちゃんといちゃいちゃしててなんかあれだけど。あれだけど!私だってあんなふうにせんぱいといちゃいちゃしたい!ちなみに会計君は周囲すべての空気に流されて場に溶け込み存在感をなくす術を持っているので黙々と作業してくれてます。あれ、実は会計君はせんぱいだった?まぁ会計君は目が腐ってないのでせんぱいではないですね。
さて、せんぱい成分を補充しに行くとしましょう。
ということでやってきた特別棟。そこに私の大好きな部活の奉仕部があり、そこには愛しのせんぱいがいるのです。そうです、私のせんぱいです。あの2人には負けません。まな板さんとおばかさんには負けないんだから!でもそれ以上にプラスポイントがあるんですよね2人とも。はぁ………。
「こんにちはー」
いろは、入場。
「こんにちは、一色さん」
そうやって返してくれるのは奉仕部部長、雪ノ下雪乃先輩。きれいとしか言いようのない声の響き、見た目。流れるような髪。などなど外見において彼女より優ってる人なんてそうはいないだろう。ある部分を除いて。陽さん先輩はああなのになんで雪ノ下先輩はーーー
「一色さん?さっきから立ったままでどうしたのかしら?なにかあったのなら話してみたら?」
なんか後ろから禍々しいオーラが見えるんですけど私なにもしてないですよね?考えてることがお見通しなのかななにそれ怖い。雪ノ下先輩の前では胸の話はしないでおこう。いや、この場合してすらないですよね、考えただけですよね。日本では思想や良心の自由は保障されているはず。さすが、雪ノ下閣下の治める特別塔。もはや日本のルールは適用されないんですね。ほんと、特別塔という名前でいい気がします。
「特になにもないですよー」
そう返して私は定位置に座る。最初この部屋に来たときとは全然違う位置。先輩と結衣先輩に挟まれた位置、それが今の私の位置だ。そしてノックをせずに入ってきても特になにも言わないあたり、私のことを奉仕部の一員として見てくれてたりするのかな?たぶんそうだよね、いらっしゃいじゃなくてただの挨拶にもなってるし。嬉しい。
それはそうと。
「なんかみなさん来るの遅くないですか?」
いつもなら結衣先輩はまだしもせんぱいなら絶対に座ってる。せんぱいがいないのだ。
「由比ヶ浜さんは三浦さんと遊びに行って今日は来ないそうよ。それから彼女が言っていたのだけれど、比企谷君は学校を休んだそうよ、熱を出して」
私に衝撃の真実が告げられた瞬間だった。
それと、雪ノ下先輩とせんぱいって連絡取らないの?
私の疑問は尽きない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は今、せんぱいの家の前にいます。そして手には先ほどお店で買ってきた果物の入った袋を下げています。そうです、お見舞いです。私はお見舞いに来たのです。小町ちゃんに連絡したらぜひとも来てくださいとのことだったので来ています。雪ノ下先輩と2人きりでそっち系になると思った人・期待した人、残念でしたー。今回はそういうお話じゃないんですよっ☆
では鳴らしますか。ぴんぽーん。
「はーい、どちら様ですかー」
返ってくる小町ちゃんの声。相変わらず声だけでわかるかわいさ。
「いろはだよー。言ってた通りお見舞いに来たよー」
………なんかかわいさの質が違う気がする。私のことをあざといあざといと先輩が言う理由がわかってしまう気がする。いやまぁわかってましたけどね。
「いろは先輩いらっしゃいでーす!わざわざありがとうございますー」
入ってどうぞという感じに招き入れてくれる小町ちゃん。ほんとかわいい。妹にしたい。
「気にしないでいいよー。これ果物ね。せんぱい体調どうなの?」
一色いろは、比企谷家にイン!
「果物ありがとうございます!兄はだいぶやられちゃってますね。なかなかに熱が高くて。明日もたぶん学校無理そうです」
ありゃりゃ。それは大変。さらに続けて言葉が来る。
「ほんとは兄をいろは先輩と2人きりにしたかったんですけど、さすがに怖いので下にいますからなにかあったら呼んでください、兄は自分の部屋にいますから勝手に入ってください」
部屋には特に案内はされない。2週間前にせんぱいの家に、つまりこの家に来たことがあるからだ。小町ちゃんの合格パーティに呼ばれたときに来たのだ。わざわざ呼んでもらってとても嬉しかった。ちなみに小町ちゃんにはそのときにせんぱいへの想いはばれてます。なぜ?そしてそのときに連絡先も交換してる。
「ありがとね、小町ちゃん」
まぁ部屋で2人きりでも充分だもの。2人きり、せんぱいと、2人きり。えへへ………。
階段で登ろうとしたときに小町ちゃんがてけてけと寄ってきて(かわいい)、小町ちゃんの顔が私の顔の横に急に飛び込んできた。なんかホラーみたいな言い方になったんだけど。
「兄をよろしくお願いしますね、いろはお義姉ちゃんっ」
「くぅぅぅ………」
ささやかれた言葉に、私はやられた。やばい、2人きりを想像してただでさえせんぱいが頭にいたのにこんなことを言われると、その、いろいろとやばい。たぶん顔真っ赤だろうしなにやっていいかわかんないからたぶんきょろきょろしてるしでパニック中。そして小町ちゃんは去っていく。こんなことを言いながら。
「うへへへ、お義姉ちゃんがかわいい。うへへへへ」
………こ、小町ちゃん、その言い方はいろいろとまずいよ。
さてと、ではせんぱいの部屋に入るとしましょう。こんこん。
………
…………
……………
返事なし。ということは入っていいということですね、せんぱいっ。おじゃましまーす(返事がなかったら入っていいルールは私こと一色いろはにしか扱えないからみんなはやらないようにね!)。
「せんぱーい、かわいいかわいい後輩のいろはちゃんがお見舞いに来てあげましたよー、嬉しいですよねー?」
声の上ずりはなかなかのものである。
「あー、ありがとな、一色」
………
「どうした一色、適当に座れよ」
「あ、はい」
ずるくないですかせんぱい!?なんなんですかこれ!?いつもなら、なんでいるだのなんで来ただのはやく帰れだのあざといあざといだのと冷たくあしらうのに(あれ、せんぱい私に冷たくない?そんなことない?)。私はベッドの横にちょこん。
「せんぱい体調はどうですか?」
聞いといてあれだけどとてもよさそうには見えない。つらそう。
「まぁそこそこには治ってきた。だからまぁ大丈夫だ、問題ない」
せんぱいは言いながら体を起こしてきた。いやいやいや。
「せんぱい、寝ててくださいよ」
「大事な客が来てんだから寝ながらはまずいだろ」
大事だって!大事な客だって!私のこと大事な客だって!大切な後輩だって!俺の女だって!(そこまでは言ってない。はですよ大事なのは。そこまで'は'言ってないですよ。いつかは言わせてやりましょう。)
「別にそんなの気にしないでくださいよ」
「してないから、してないから、大丈夫だから」
「そんなわけないじゃないですか。顔真っ赤にして熱ひどいんですよね?」
体を押して戻そうとする。せんぱい力強いな、諦めて寝てください。
ってあれ?
いきなりせんぱいの力が弱くなってせんぱいが寝た。そしてそれなりの力をかけてた私は勢いのままにベッドの上へ、せんぱいの上へ。あ、あれ。あれれ?なんで私せんぱい押し倒してるみたいな構図になってるの?あれれ?それでたいていこういうときって、
「お兄ちゃーん、いろは先輩からもらった果物、だ、よー………」
………これは終わりましたな。ははっ☆
「小町、空気読めなくてすみません。いろはお義姉ちゃん、果物ここに置いておくので、その、ほどほどに」
「んなっ、ちょっ、小町ちゃ、ちょっ、待っ」
小町ちゃん消えるのはやいよ。誤解が………。というかほどほどってなに!?なにをほどほどにするの!?
「一色、その、そろそろ降りてもらえると助かる。その、いろいろ、あれだ」
なにこのせんぱい超かわいい、持って帰りたい。熱のせいとはいえ顔真っ赤な状態で顔は横向けて。やばい、なんか、私の中で、その、あれが、その、いろいろと、やばい。
「なんですかー、かわいい後輩に押し倒されてこんなに嬉しいことがほかにあるんですかー」
ちょっとなに言ってるのかしら一色さん。はやくそこをどいてください。私の心臓やばいんです。一色さん、はやくどいて。勝手に動かないでよー。
「………さすがに恥ずかしいからどいてくれ」
流し目でそんなことを言われてしまった。ゾクゾクしてくるものがある。いつもは無愛想な表情が多いあのせんぱいが、今は弱気の正直者に。これはやばいですよ、やばいですよみなさん!
………正直者、か。
私はことんと頭をせんぱいの胸に落とす。
「え、いや、あの、一色さん?どうしちゃったんですか?え?」
いつもはこんなこと言えないから、正直な、余裕のない、今のせんぱいになら、今まで言いたかったことが言える。
「せんぱい、ありがとうございました。せんぱいに生徒会長勧められて、それで今、とても幸せです。大変なこともありますけど、それでも、やりがいがあって。それまでの私じゃ絶対に経験できませんでした。せんぱいのおかげです。学校が今楽しいのは、こんなに毎日楽しいのは、今の私が私でいられているのは、せんぱいのおかげなんです。だから、ありがとうございました、これからも、よろしくお願いします」
そう、私はずっと言いたかったんだ。クリスマスイベントが終わってから、ずっと。こんな形じゃないと言えないだなんて、ずるい気がするけど、でも、こういう形じゃないと言えない。私にだって恥ずかしさがある。思ってることを、伝えるのは恥ずかしい。だから言えなかった。でも、言えた。やっと、言えた。言えたんだ。
「いや、俺は別にお前のためにやったわけじゃ」
ふふっ、ほんとに、このせんぱいは、せんぱいだなぁ。
「それでも、ですよ。ほら、結果だけ見てください。せんぱいがはめたかわいい後輩が今や成長して楽しく生徒会長をやってる。それだけのことですよ?せんぱいがきっかけですよね?」
せんぱい好きそうだもんね、結果を見るの。
「いや、それでも、俺はお前の時間を奪ったことに変わりはないだろ、サッカー部全然行けてないだろ。あとはめたって言うな」
そんなこと考えてるのか、このせんぱいは。せんぱいにも罪悪感はあるんだね。まぁどんな形であれせんぱいが私を考えてくれていたのは嬉しい、そして恥ずかしい。あとはめられたのは事実ですよね?
「いいですよ、サッカー部は。葉山先輩以上に好きな人できましたし。サッカー部にいる理由も今はあんまりないかなぁって。好きな人にアタックするのと生徒会で忙しいですしねっ」
軽い女だと、思われたりはしないだろうか。あれだけ好き好き言っておいて、告白しておいて、諦めないとまで言っておいて。そこまで言っておいて。まだそれから数えるほどしか経ってないのに。それなのに、せんぱいのことを、好きになるなんて。せんぱいに惹かれるだなんて。
それにしても、言っちゃったね、ははは。せんぱいにアタックで忙しいんですもの。せんぱいのこと、好きだって、言っちゃったんだよね。
「そうか、まぁ頑張れよ」
………あれ?
「葉山以上に想われるだなんてそいつも幸せだな」
………あれれ?
「こんなことしてるとそいつに嫌われるぞ、はやく降りた方がいい」
………あれあれ?
「え、あの、せんぱ………」
「それにしても、いつも奉仕部にいるし土日も連れ回されてばっかだし暇なのかと思ってたけど、ちゃんと好きな奴んところにいたんだな」
………まじかこの人。
「まぁ、応援してるわ」
………この人なんなの。
「俺にできることがあったら言ってくれ。かわいい後輩のためだ、ほどほどのことはしてやる」
かわいい(後輩)だって!せんぱいがかわいい(後輩)だって!私のことかわいい(後輩)だって!あと小町ちゃんが言ってたほどほどっていうのはこのことだったのかー。
………いやいやいや、あなた自分で言ってましたよね?明らかにせんぱいと一緒にいる時間長いですよね?他の人といる時間なんてないですよね?それで気付きません?頭働いてないんですか?あ、熱でしたねこの人☆いやせんぱいのことだから通常の状態でもこんな感じな気がする。いやたしかに直接言ってませんけど、それでも、普通、わかりません!?
「ねぇせんぱい、私だって怒ることくらいあるんですよ」
ついつい声が低くなってしまった。いや、でもさ、仕方なくない?
「え、な、え?」
せんぱい混乱してますね。いい気味です。そうやってなんで怒られたのかわかるまでしていればいいんです。私のことを想っていてくださいね、せんぱいっ。んじゃあまぁせんぱいに爆弾を打ち込んだところで帰るとしますかね。
あれ、体が動かない。
「ねぇせんぱい、せんぱいとあんだけ一緒にいて他の人といる時間なんてあると思ってるんですか?」
聞こえない聞こえなーい。私はこんなこと言ってないもーん。もうこれ絶対あれじゃん。最後まで言っちゃうじゃん。今日は言いたかったことだけ言うって決めてたのに。伝えたいことだけって、ありがとうって………はっ!
そこで私は思い出す。そう、昨日の寝る前のことを。
ーーーーーーーーーーーーー
「好きです、せんぱい」
きゃー!きゃー!
いい加減伝えてしまえばいいのに。伝えたいよねーやっぱり。タイミングさえ合えば伝えたい。
ーーーーーーーーーーーーー
………めっちゃ伝えたいって言ってますね、はい。
「私の好きな人ってせんぱいなんですよ?葉山先輩以上に想われてる幸せ者はせんぱいなんですよ?」
逝ってしまった、間違えた。言ってしまった。いや、魂が逝く的な意味ではあってるのか。とにかく、いろいろとやばい。
「え、はい?」
もういいや、ここまできたら言っちゃおう。結果は、まぁ、いいや。
「私はせんぱいと付き合いたいです。はい、せんぱい、返事をどうぞ」
「え、いや、だからな。別に俺なんてそんな、それこそお前の………」
ぐぬぬぬ、ここで流されるのは悔しい。というかいやだ。
「せんぱい、女の子にここまで言わせておいて勘違いとか言ったらせんぱいを殺して私も死にますよ?勘違いだったら私の心臓こんなにうるさくないと思いますけど?」
そう言ってせんぱいの手を私の心臓の上へ持ってくる。
「はやく返事をしてください。別にふるならふるでいいですよ。絶対にふりむかせてあげますから」
強がりにもほどがある。ふられたら正直立ち直れないかもしれない。そのくらい、私は、せんぱいが。
「………俺もお前が好きだ、だから、その、お前がよければ、付き合ってくれ」
やっっっっっったーーーーーーーーーー!!!!!!!!!
「それじゃあ、これからよろしくお願いしますねっ、せんぱいっ」
すごく嬉しい。私、今日という日を一生忘れません!
ところでせんぱいはさっきからなにをそわそわしているんでしょうね。
「ところで一色さんや、いい加減手を離してくれないかね、その、あれだから………」
手?手がどうし、たっ、て………
「せんぱいのへんたーい!」
そして、せんぱいの部屋には、おそらく誰かの手が誰かの頰を叩いたであろうぱちんという音が鳴り響いた。
………私は今日という日を一生忘れないでしょう。いろいろな意味で。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「さきほどははたいてすみませんでした」
「あ、いや、その、いろいろすまん」
お互い(主に私)が落ち着きを取り戻し、謝罪。いやもうほんとすみません、病人なのに。
あ、そういえば。
「小町ちゃんが持ってきてくれた果物、食べますか?」
さきほどから完全に放置されていた果物にようやく気が向いた私。
「あ、あぁ頼む」
「はーい」
果物を持ってきて、はたと思いつく。
「せんぱいっ」
「ん?」
私は果物を刺したフォークをせんぱいの前に出して、こう言う。
「あーん」
………
…………
……………
「せんぱい、あーん」
………
…………
……………
「口開けてくださいよ、あーん」
………
…………
……………
なんで無反応!?
「え、いや、口開けてくださいよ、やっぱり食欲ありませんでしたか?」
「いや、恥ずかしいじゃん?自分で食べるからいいよ別に」
「あーんっ」
とびきりの笑顔を披露してみる。せんぱいの意思は関係ありません。無視です無視。
やれやれと困った表情になったせんぱいは口を広げてくれた。
「おいしいですかー?」
「………あぁ」
一回やらせてもらえればあとは流れでいける。そう、せんぱいは流れに弱い。一回崩してしまえば簡単にいける。
「じゃあ次ですっ、あーん」
という感じに全部食べさせてあげた。恥ずかしがるせんぱいはとてもかわいくてよかったと思いました。たぶん私の顔真っ赤だけど。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あ、果物ありがとなわざわざ、あとお見舞い自体、ありがとな、一色」
「まぁ大好きなせんぱいのためですからね、苦労は惜しみませんよ」
やっぱりまっすぐにせんぱいからお礼を言われるというのはどこかこしょぐったい。熱治ったらこの時の記憶なくて付き合ってないとかにならないか心配なくらい正直だ。………大丈夫だよね?まぁ大丈夫か、さすがにせんぱいなんだし。大丈夫だよね?
「時間も時間だからもう帰れ、一色」
「え、あぁもうこんな時間」
時計を見ればもう7時を回っている。外はもう暗い。
「じゃあそろそろ帰りますね、せんぱい、お体はやく治してくださいね」
「ん、わかった、じゃあな」
「はいっ、さよならっ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして現在一色家。私は、部屋で、暴れています。
「うにゃーーーー!!」
私はせんぱいと付き合ったのだ!私はせんぱいの彼女なのだ!ついに、ついにやりましたよ!どうですかどうですか!これが一色いろはの力ですよ!えっへん!
そこで私の部屋の扉が叩かれる。
「いろはー、入るわよー」
母の声である。しかし今の状況を見られるわけにはいかない。布団とかもやばいけどなにより顔がやばい。ニヤニヤがやばい。
「え、ちょっと待っ」
がちゃっ、と音がして扉は開かれる。世の中は無情なり。返事くらいきちんと聞かないといけないと、いろは思います!
「さて、いいことがあったみたいだから聞きにきたよ」
いやなんで知ってんだこの人。しかし、親の勘なんぞ簡単に外れるものだということを教えて差し上げよう。
「え、なんのこと?」
特に噛んでないはず。せんぱいの前以外なら演技はできるはず。
「いやそういう演技いらないから。あたかもなにもなかったかのように振る舞う演技とかいらないから。私の勘はちゃんと当たるからね。ほらほら、全部話してみそ?」
うーん、ばればれですね。母は強し、というやつか。尻に敷かれる旦那の気持ちってこんなんなのかな。この逃げ場のない感じ、私は今追い詰められてる。いつもいつも情けないとか思っててごめんねお父さん。いつもこんな恐怖と対面してたんだね。お父さんにもう少し優しく接してあげようと思ったときでした。
いやしかし、しかしですよ。さすがに私もお母さんに今日の出来事を言うわけにはいかない。恥ずかしい。
「そ、そんなことないよー。なにもなかったよー?」
強行突破だっ!!!
「彼氏だね」
「はぅぅっ」
あれ!?なんで!?なんで知ってんの!?
「おっ、正解ー。いつも話してるせんぱいと付き合えたんだー。ほーん」
え、なに、いつも話してるって、なに。私全然話してないよ?ほんとだよ?
「いつもにこにこ顔で話してくるから嬉しさはわかるよー。うんうん、よかったよかった」
………私一言も喋ってないのに勝手に決められてた。でも反論できない!だって合ってるもん!
このあと、今日あったことを洗いざらいはかされました。
さすがに告白シーンはカットしたけどね!?しましたよ!?さすがに実の親に向かって言える内容じゃないからね!?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁ………」
なんか冒頭と同じ気がする。うん、なんかね、うん。疲れました。
「せんぱいの連絡先聞くの忘れてたー。うわー、もうやだー」
やっぱり付き合ったら寝る前におしゃべりしたいという理想はあるんですよ、私。寝っ転がって電話して、そしてお互いゆっくりと眠たくなっていって、片方が気持ちよさそうに寝落ちして、もう片方は返事がなくなってむすっとなって、でも寝息を聞いてまぁこういうのもいいなって思って満足に寝る。そして片方が起きたらもう片方が起きるまでそわそわして起きるのを待って、そして起きたらお互いにおはようって言って、学校で会う。みたいな。そういう理想はあるんですよ。今の世の中電話も無料ですしね、アプリ使えば。やってしまった感がやばいです。やばいですやばいですせんぱい助けてくださ〜い。
「寝よ」
いろいろあって疲れたので、まぁそれなりに悶えてからきちんと寝ました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして2日後の放課後。
さすがに2日連続してお見舞いに行くのはどうかと思ったので行きませんでした。それとまだ体調悪かったら朝の寒いときに拘束するのは悪いなと思ったのとそもそも今日ちゃんと来られるかもわからなかったので朝の待機はなしです。ちなみに昨日は奉仕部にせんぱいがいなかったのでお休みだったようです。
そんなわけで、せんぱい成分が補充できませんでした。もうだめです。やばいです。というわけでサッカー部や生徒会を自主的に休んで奉仕部に行くのも仕方がありませんね。ええ、仕方ありません。
「こんにちはー」
奉仕部に入ると、2日座っていなかったせんぱいの席に、せんぱいが座ってる。………やばい、超嬉しい。
「こんにちは、一色さん」
「やっはろーいろはちゃん!」
「………ん」
なんか最後だけ明らかに違いますねいろいろと。というかとりあえず文字を見ただけで誰が発言したかがわかるあたり奉仕部ってすごいですね。
「せんぱいお久しぶりですー」
せんぱいに抱きつきにいく。
「いやおととい会ったでしょ」
せんぱいはひらりとかわした。な、なぜだ。せんぱいは座りっぱなしだったはず。私はせんぱいに向かっていったはず。なのになぜかわされたんだ!?おかしい、これはおかしいですよ!抱きついてせんぱい成分を補充しようと思ってたのに!なんで避けるんですか!というかどうやって避けたんですか!
「あ、せんぱい。ちょっとお話したいことがあるのでいいですか?」
「え、やだ」
いや聞けよあなたの彼女ですよ?いやまぁとりあえずそれを確認したいんですけどね。まぁとりあえず覚えてるかの確認はしときましょう。ということでせんぱいの耳元で魔法の言葉をささやきます。
「………胸」
「っ、わかった、行く」
うん、ちゃんと覚えてるようですね。まぁ私も恥ずかしいのであれですけど。
「じゃあ雪ノ下先輩に結衣先輩、せんぱい借りていきますねー」
「はぁ、きちんと帰りまでには返してもらうわよ、その備品を」
「わかってますよー」
「いやちょっと待って俺って備品だったの?確かに入部届け書いた記憶ないけどさ。ひどくない?」
なんかせんぱいが吠えてるけど私は気にしません。そのまま引っ張って屋上、は寒いので適当な廊下の隅へ。さて、始めますかね。
「せんぱい、私たち、付き合いましたよね?」
うーん、なんか文字だけで見ると重い女に見えてしまう。別にそういうんじゃないんだけどなー。
「え、あ、まぁ、はい、そうですね、はい」
「………なんでそんな曖昧な返事なんですか」
いやほんとに覚えてなかったりするの?泣いちゃう。
「いや、恥ずかしい」
………せんぱいはいつも通りでした。
「それで、誰かに言ったりしました?」
「小町に根掘り葉掘り聞かれただけだ」
うん、まぁ、でしょうね。小町ちゃん察すの得意そうだし。
「どうしても、ある2人には言っておきたいんですけど、いいですか?」
これが本題である。いやさっきまでの会話も大事だったんだけどね。
「まぁあれだ、言いふらさなければいいよそいつらが。大丈夫なんだよな?」
「それについては問題ないです」
「じゃああとはお前の自己責任で頑張ってくれ。寒いからはやく戻りたい」
いや彼女と2人きりの状態でこの人なに言ってんですかね。いやまぁ寒いですけど。
「せんぱいは少し待っていてください。ちょっと先輩方にお話があるので」
「3分間待ってやる」
「いやもう少し長くお願いします。さすがにそれじゃ終わりません」
「いや無理。それ以上は寒くて耐えられない。あとなんか飲み物買ってくるけどなんかいるか?」
それ絶対往復で5分以上かかりますよね。ほんと捻くれた優しさだよね。
「あ、じゃあ適当に私に似合いそうなので」
「なにその大雑把な回答」
世の中の男子諸君。こういう何気ない優しさが女子の心を掴むんですよ、ソースは私。せんぱいにベタ惚れである。
では、いざ奉仕部へ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ただいまでーす」
私は帰ってきたー。さてさて、場面変わって奉仕部部室です。相変わらずかわいい女の子2人がゆりゆりしてました。これ私入ったらまずかったかな?
「おかえりーいろはちゃん。ヒッキーは?」
「それについてなんですけど、お話がありまして」
うん、2人ともよくわかってませんね、その顔は。
「私、せんぱいと付き合うことになりました。という報告をするためにせんぱいには外してもらいました」
………
…………
……………
つ、辛い!沈黙は辛い!いやまぁわかってましたけどさ!あとからのこのことやってきた後輩に想い人取られたわけですし、まぁわかるんですけど。沈黙は辛い!あと言葉にしてみてわかったけどなんか私悪女感出てた。
「………そう」
沈黙を破ったのは透き通った声を奏でる雪ノ下先輩。
「………そっか。やっぱりいろはちゃん、ヒッキーのこと好きだったんだ」
さすがにばれてますよね。というか気づかないせんぱいがおかしいだけですね、はい。
しかし、これは謝った方がいいのか?でも謝るってなんか違うよね。これなんて言うのが正解なの?でもまぁなにか話さなければと思い口を開く。
「あ、あのっ」
「これで比企谷君が誰かと付き合うということがわかったわけだし、遠慮なくいけるわね」
………あれ?
「そうだねっ。なんかヒッキーって誰とも付き合いそうもなかったから、なんか行くに行けなかったけど、そうじゃないなら行けるねっ」
………あれあれ?
「ということだから一色さん。私たちは比企谷君をもらいにいくから少しの間貸してあげるわ。せいぜい楽しんでいるといいわ」
「うんっ、ヒッキーのこと堕としちゃうまでのちょっとだけ貸してあげる、私のヒッキーを」
………なんか強がりとか泣かないようにとか後輩のためとかそういう感情が一切見られないですね、はい。この人たち本気で言ってますね、主に目がそう言ってる。私の知ってるいつもの他の時空のSSと展開が違うんですけど!?
なんか、なんか。なに言っていいかわからなかった私の気まずさを返してください!
「え、いや、その、せんぱいはもう私のなので手を出されると困るというか無駄というか」
「比企谷君が私を見ればいいのよ。あなたよりも、私を見ればいいのよ。安心して、一色さん。すぐにあなたの所有物じゃなくなるわ」
………もうやだこの人たちっ!
どうやら私の恋の戦いは終わることを知らないようです。とほほですよとほほ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うーっす」
先輩の登場である。いつもなら嬉しさで心踊るわけですが、今回はそうはいきません。いや、先輩を見て踊ってはいるのですが、それ以上にね、はい。
「ねぇ比企谷君、今度の土曜日一緒に出かけないかしら?」
「あっ、じゃあ私はその次の日ね!ヒッキー!」
あれ、おふたりともいつのまにせんぱいの横に。というか、あの、ええと。
「なんでせんぱいに抱きついてるんですかー!」
あーもう‼︎なんなんですか‼︎なんなんですかいきなり‼︎
「なんでせんぱいニヤついてるんですか!なんで抱きつかせてるんですか!その場所は彼女たる私の場所ですよ!」
せんぱいから離れてくださーい‼︎
………これから大変そうです。というかもう大変。このあと、せんぱいがもみくちゃにされて、部活は終わった。
もっときれいに私勝利で終わらせてよ作者‼︎
いかがでした?
楽しく読んでもらえたのなら嬉しいことこの上ないです。
次がいつになるかはわかりませんが、そのときもまたお願いします!