さぁさぁ行きましょう!
ではどうぞ。
「せんぱい」
「………んだよ」
「女の子に慣れる練習、しません?」
「………はい?」
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「はぁ………」
何度目かわからないため息をついた。
きっと今までにこんなにたくさんのため息をついたことなんてない。
「はぁ………」
だからこうやって一回つくたんびに私のため息記録は更新されていくのです。
さて、こうやってわたくしこと一色いろはがため息を幾度となくついているのには理由があります。それは、せんぱいのことです。せんぱいというのはもちろん、あの、目の腐ったあやつです。自称ぼっちのあやつです。
なーにがぼっちだ。
「せんぱいのばかー!」
雪ノ下先輩に結衣先輩、それとたぶん城廻先輩や陽さん先輩もだよね。せんぱいに好意持ってるのって。私も、その、好きなわけでして。
しかし、みんなに比べて私は完全に出遅れている。例えて言うなら、みんなアニメ一期から出てるのに私だけ二期からの、しかも最初のオープニングにすら出て来ずに、3話からようやく登場という、みたいな。
それに、私はせんぱいとどうなりたいかというのもわからない。彼女になりたくないわけじゃない。でも、じゃああの人たちと戦いたいかと言われれば違うと答えてしまうし、勝ちたいという気が起きる気もしない。
「なー!!」
これもそれも、全部なぁなぁにしてるせんぱいが悪いんだ!まぁ本人はなぁなぁにしてる気なんてないんだろうけど。
「どうしよ………」
もういっか。考えても仕方ないし。
それに、せんぱいがとっととだれかとくっついてくれればこんな悩みからも解放されるわけだし。
「んん?」
そうか、誰かと付き合えばいいのか、せんぱいが。
よしっ、せんぱいのかわいいかわいい後輩が、せんぱいのために一肌脱ぎますか。
ではでは、作戦決行です!
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そうして私は翌日、せんぱいに生徒会の仕事を手伝ってもらうように奉仕部にお願いしに行った。
もちろん雪ノ下先輩や結衣先輩は睨んでましたけどね、せんぱいを。いい気味です。いろんな女の子を弄んだ罰です、そのくらいは受けてくださいね。
「んで一色。なんで俺は手伝わされたんだ?」
「せんぱいってすっごく利用しやす。せんぱいってすっごく頼りになるじゃないですかー。だからついついお願いしちゃうんですよ」
「あのね、言い直しても無駄だから。利用しやすいってはっきり聞こえてるから」
「てへっ」
「うぜぇ」
むぅ。私の渾身のてへっ、を見ておいて嬉しそうどころかうざったいという反応をしやがって。なんでそんな反応をするんでしょうかこのせんぱいは。まったく、ひどいひどい。他の人にしたら絶対に堕ちるのに。堕ちないのなんて葉山先輩とせんぱいくらいですよ。
「今日は相談があったんですよ」
「うえぇ」
まーたいやそうな顔をする。でもこれはせんぱいのためなのだ。せんぱいのために、してあげるのだ。
「せんぱい。いつになったら彼女作るんですか?」
「ぶふっ」
けほっけほっと咳をしてます。まぁそりゃ、たしかにいきなりのことだったとは思いますけど、そんなに驚くようなことなんでしょうかね、私にはわかりません。まぁそんなせんぱいを見れて幸せですけどね。だって、ほかの人の知らない反応じゃないですか、きっと。
「せんぱいって、今たくさんの女の人に好意を寄せられてるじゃないですか?」
「いや、そんなことなーー」
ーーなんだろう、この気持ち。
「せんぱいだってわかってるんじゃないんですか?薄々は」
「いや、でもーー」
ーーせんぱいにはなにも言わせたくない。せんぱいの苦しさは今までいろいろと聞いてきた。
「せんぱい、そろそろ、いいんじゃないですか?もう、過去のことなんて、引きずらなくても」
「でも、俺はーー」
ーーせんぱいがずっと苦しい思いをしなくちゃいけないなんて、おかしいじゃないですか。
「あの人たちを、信じることすらできないんですか?」
「っ………」
ーーせんぱいにだって、幸せになる権利があるんですよ。
「まぁ、でもやっぱりいきなり向き合うことは難しいと思います」
私は昨日考えたのだ。せんぱいがどうやったらあの人たちの誰かと付き合おうとするのかを。
「せんぱい」
「………んだよ」
「女の子に慣れる練習、しません?」
「………はい?」
きっと、人に対しての慣れがないんだ。せんぱいには。だからそれを手伝ってあげよう。
「私としばらく恋人のように振舞って、それでゆっくりと慣れていきましょう」
「いやお前なに言ってんの?」
「これは決定事項です!いいですね!」
「………はい、わかりました。一色様」
うんうん、せんぱいもわかってきましたね。さぁ盛り上がっていきましょう!
「ではまず、私のことを名前で呼んでみましょう」
「は?いつも呼んでんだろ、やっぱり頭おかしくなっちゃったの?」
「名前ですよ、な・ま・え!いろはって呼んでください」
「………いろは、す」
「はいアウトー!!」
ということから始めていきました。
土日はデートに行ったりしましたし、学校の帰りは一緒に帰ったりしましたし、家ではメールや電話をしたりしました。
せんぱいの反応がほんとに中学生男子みたいなうぶさで楽しかったです。まぁ私も大して変わらなかったと思いますけどね。恋なんてたぶん今までしてこなかったんでしょうし。
そうして月日は流れていきました。けれど、私のこの練習は完全に失敗でした。
寝る前に明日はどんなことをしようかと楽しみになってしまいました。せんぱいに名前を呼んでもらえることが嬉しくなってしまいました。せんぱいの横にいるだけで、楽しくなってしまいました。そして最も悪くなったことは、ほかの人の知らないせんぱいを知ったときの優越感です。
雪ノ下先輩と話してるところを見たときも、結衣先輩と話してるところを見たときも、陽さん先輩と話してるところを見たときも、城廻先輩と話してるところを見たときも、そのすべてで、私は体が硬直しました。前に行くことはできず、かろうじてできたのは、その場から逃げ出すことだけでした。
私は、どうやらしたいことがあったみたいです。見つけました。見つけてしまいました。
「せんぱいと、付き合いたい………」
そんな、叶わないことを。
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私はせんぱいをいつも通り生徒会室に呼びました。
今日、私ははっきりと言います。言わなければいけません。
「なぁ一色。今日は今日でなにするんだ?」
ぶっきらぼうにそう言うせんぱい。その目に、その心に、私の姿はない。
「もう終わりにしましょう、練習。もう大丈夫そうですしね、せんぱい。あの人たちと、親しそうに話してるのを見かけましたよ」
「あぁ、終わりにするのか」
だから聞きたかったことをいろいろと聞こう。もうこれからは会わないのだから。会えないのだから。
「私との練習、どうでしたか?」
「まぁ、あれだな。楽しかった」
そんなことを言わないで。
なんでそう言うの、せんぱいは。
いつもみたいに、つまらなかったとか、普通とか、別にとか、そうやって答えてよ。
「せんぱい、一つ提案なんですけどね。このまま私と付き合うっていうのはどうですか?」
「………は⁉︎」
「こーんな美少女後輩と付き合えるんですよ?どうですか?」
心が冷えていくのがわかる。けれど、体の表面は熱くなっていく。
「え、いや、そーー」
「なーんて、冗談ですよっ。せんぱいはあの人たちの誰かと付き合ってくださいね。私との練習を無駄にしたら怒りますよ?」
せんぱいは口を開こうとする。でも、私は言わせない。ここでせんぱいの声を聞いたら、聞いてしまったら、立ち止まってしまう。また、今まで通りに、せんぱいに抱きついてしまう。私はもう戻ってはいけない。
「せんぱい、じゃあそういうことで頑張ってくださいね。私このあと用事あるのですぐ帰りますから鍵よろしくです!」
「て、お、おい!」
せんぱいはなにかを叫んでいる。
私はその場から、逃げるように立ち去る。
走った。とにかく、走った。靴を変えて、校舎を出たあとも、ただひたすらに私の家に向かって走った。途中、誰かに話しかけられた気がしたけど、なにも覚えてない。
泣いた、とにかく、泣いた。
家につき、部屋に入る。
開くのは携帯。ここしばらくせんぱいとのメールのやり取りに使っていた携帯だ。履歴にはせんぱいとのやり取りがつらつらと書いてある。
「消そう」
これを残してたら、私はきっと、いつまでも未練を残してしまう。葉山先輩が好きな、一色いろはに戻らなくてはいけない。
だから、せんぱいとの関わりはない。そもそも普通にしていたら関わらないような人だ。私との関わりなんてそもそもないのが普通なんだ。だから、せんぱいとの繋がりを切ったら、私は普通になるだけ。なにも問題じゃない。
「………できないよ」
普通になんて、今さらなれるわけがない。だって、私はあの、普通じゃないせんぱいに、比企谷八幡に、恋をしてしまったんだから。
もう、戻れない。恋は、ただただ苦しい。こんな思いをしたことなんてない。だから対処の仕方がわからない。
ーー散々泣いたあと、そのまま私は眠った。
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「ふぁ」
よく寝た。寝てしまった。まったく、不規則な生活は肌にも健康にも悪いというのに。
………でも、もう私を見てほしい人はいないんだよね。
そんなことを考えて沈んでいると、なにやら私の部屋にもう1人いる。というか、
「よう」
せんぱいだった。
「………え?」
えーっと。
ここはー、私の家だしー。見るからに私の部屋に似せた誰かの部屋とかではなく私の部屋だなー。
「………ん?」
えーっと。
ここはー、私の家だしー。見るからに私の部屋に似せた誰かの部屋とかではなく私の部屋だなー。
「………ふぇ?」
なんでせんぱいがいるのーー!!
なんで⁉︎なんでなんでなんで⁉︎
なになになになになになになになになになに⁉︎
なんなの⁉︎え、なんなの⁉︎
「なんで、ここにいるんですかせんぱい?」
「え、いや、なんかお前泣きながら走ってったし」
ほーん。それであとを追ってきたってことですか。
ほーん。それで私の部屋に入っていたということですか。
え?
「いや、だから、どうして私の部屋に入ってこれたんですか?」
「お前のお母さんが開けてくれた」
「そうですか」
うん。これはあとでお母様とお話し合いですね☆
いや、それはいいとして。私としてはせんぱいにいられるとまずい。話せるような、関われるような距離なのが、まずい。
帰っていただこう、早急に。じゃないと私がもたない。もう私はせんぱいのことを忘れたいんだ。もう、せんぱいのことを思いたくないんだ。
「私はなんともないから帰って大丈夫ですよ?ぐっすり寝れましたし」
うん、ぐっすり寝れた。泣いて疲れたんだ。泣かなくたって疲れてたけど。
ーー早く帰って
「まったく、せんぱいは心配性ですね。たかが後輩のめんどうなんて見なくたっていいんですよ?」
いつものあざといと言われる声で。私はもう大丈夫。大丈夫。大丈夫だから、大丈夫、大丈夫だから………。
ーーじゃないと
「女の子の部屋に男1人が上がるなんてまずいですよ?」
せんぱいだって彼女に浮気性、だなんて思われたくもなかろう。私もそんなふうに思わせたくもない。
ーー私が壊れる
「大丈夫ならせめて大丈夫そうにしろ。泣いてんじゃねぇかよお前」
そう言ってせんぱいは私の目元に指を運んで撫でる。その温かい、大きな手の先には、雫が少し。
そんなせんぱいの温かい、甘えたくなる、落ち着かせる行動に、私は酔う。
私、泣いてたんだね………。
「じゃあせんぱい。少し聞いてください」
「なんだ?」
いつものだるそうな声ではなく、しまった声に、せんぱいの優しさがとても感じられる。
どうしてこんな私に優しくしちゃうのかな、ほんと。
………もう、しょうがないよね。
「せんぱい、好きですよ」
人それぞれいろいろな悩みがあるわけですが、それへの対抗策も人それぞれです。
後悔のない選択を。
今回、個人的には、「はいアウトーー!!」が気に入ってます。
さてさて、更新頻度が落ちてきたわけですけど、これからはさらに落ちます。
大学が始まりまして。んで、違う話に割くくらいの時間しかないかなぁって具合になっていきます。
それと、今回、話の仕切りが
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から
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に変わりましたけど、どっちが良さげですかね?教えてくれると助かったりします。
それに、描き方について、ヒロインの一人称、八幡の一人称、いろいろな人の一人称、のどれが読みやすかったり読みたかったりしますか?そのあたりもできれば、お願いします。
ではでは、また会いましょう。さよなら!