スタンドからはじまる異世界狂想曲 作:杜王町JOJO
『やっぱり……おまえ……頭悪いだろ?』
「いやぁ、あの~すみませんね」
「…………」
これは参った。話が通じるのか分からん。
「……俺の名前は
怒って銃を向けられるのもしょうがない。
向こうは俺があの巨大虫を投げ飛ばしたように見えた筈だからだ。
それならば妥当に原因となる俺に敵意や警戒を向けるのも当然。
しかし、これだけは言いたかった。
深く頭を下げ謝罪する。
反応は、一拍置いてから、息を吐き出す音が聞こえてからだった。
「……いや、こちらもうちの子が先を確認せずに突っ込んだことも一因ある。だから頭を上げてくれないか」
その年下の少年とも思えない落ち着いた声音と口調で語りかけてくる。
俺は静かに頭を上げる。
「もしかして……君は、
「……え?」
質問の意図が分からなかった。
ここは日本ではないのか?
と、いうか夢長いな。今までで最長新記録である。
しかし、目の前の少年が言っていた意味が後から来た少女たちで分かった。
「若旦那様! 大丈夫ですか!」
「だいじょうぶー?」
「……う、ん?」
猫の耳らしきものを頭にした少女と、爬虫類とも思える肌をした少女が駆け寄ってきたのだ。
目を疑う。
俺は漫画などよく読む方だ。これも親譲りなのだが、これはもしかしてだ。
「……異世界系の夢を見てるのか、俺は」
「まったく同じ意見を言うね、君も」
そう反応してくれるのは、目の前の少年からだった。
黒い、そう、ここのファンタジーな世界に合う旅人が着てそうな服を見事に着こなした少年。
「私の名前はサトゥーと言います。あの、すみませんがもう一度名前をお聞かせ願いますか?」
なんとも営業的な笑顔でそう言ってくる少年に、やはり年下とは思えぬ『考え』を持ってそうな人物に見えた俺だったが、正直に答えるしかないでしょこれは。
「
「そこまで聞いてないけど……そうか、
その反応だけで分かった。
「……これは夢じゃないと……?」
「……それは、わからない。正直ね」
……嗚呼。なんということか。
俺は自ら『異世界行けたらなー』なんて社会の家畜と成り果てる前の、現実逃避する前の学生だったんだぞ!?
なぜゆえにこうなった!?
こういうのは漫画やアニメだけにしてくれ!
「……グレートだぜ。まったく」
落ち込む俺に、サトゥーと名乗った少年の後ろから、チラチラと犬耳の女の子が見てくる。
「よぅ、こんちは」
「……うぅ……こんにちは、なのです」
これはビビられてる。しかし、ヤンキー風を吹かしていた俺だったが、実際はオタクな一面を持つ自分としては、獣耳娘は可愛い過ぎてヤバイ。
「俺の名前は上助ってんだ。よろしくな」
「……ジョースケ……様なのです?」
(……〝さま〟……?)
よく見れば服もボロボロである。
そして最悪なことに、漫画やラノベなんかじゃ、こういう獣耳の人間を『亜人』とかぬかして、差別などしていることが希なのである。
そこで許せないことがあるとすれば、
「……奴隷ですか」
現代日本では考えられない『奴隷』という言葉と意味。
もしかしたら、と最悪な事を考える。
しかし、これもまた向こうは考えを見抜いたのか。
「勘違いしないでもらいたいが、私の奴隷じゃない。今はこの緊急時ということもあり、一緒に行動しているんだよ」
サトゥーがそれを言って、獣耳娘たちから避け、俺に挨拶させようする。
「私はリザと申します」
「タマはタマー!」
「ポチはポチなのです!」
なるほど。
それは分かりやすい……いや、分かりやす過ぎる。
「名前がペットのそれじゃねぇか! リザさんは違うけども!」
「……名前のセンスは問わないでくれ」
ここで口論することは最善ではないことを教えてくれたサトゥーは、とりあえずここから脱出するまでは一緒に行動するべく、俺もこの一行に加わった。
「一人は心細かったから凄く助かるっす」
「うん、
あれ?
俺が
思わず聞き返そうかなと思っていると、さっそく移動するべく色んな部屋にへと向かった。
一緒に行動していると、段々とこのサトゥーという男が、まるで地図を見ているかのようにスイスイと進んでいくことに疑問を持つようになる。
しかし、本当にこういうダンジョンみたいなところを得意としているのかもしれないので、心の内に潜む程度にしておく。
部屋を何通りした後、モンスター……巨大虫の仲間などと戦っていくにつれて、俺は隠すことなく
最初はかなり驚かれていたが、なんか魔法名っぽいのをリザが説明してたが、よく分からなかったので取り合えず首肯しておいた。
進んでいくと、女の子たちに疲労の顔が出てきていた。
「サトゥー、ちょっと彼女たちを休めた方が良いじゃねーの?」
「えっ?」
サトゥーは少し驚いた顔になって彼女たちを見る。
「本当だ……よし、ここで休憩しよう」
リザたちの顔色を一人ひとり窺って、必要なものをまるで
なにそれ!?
どうやって取り出した!?
俺もその原理どうなってんのか聞きに向かうと、サトゥーは『慌てなくても君のもあるよ』とにこやかに微笑む爽やかな少年に諭されるような感じで干し肉を貰った。
誰が干し肉食べたくてこんな詰め寄るもんかよ! と文句でも垂れようかと思いきや、リザたちがまるで感激するように涙流しながら干し肉を大切に食べていっていた。
「干し肉おいし~!!」
「肉は最強なのです!」
「ああ、干し肉っ! 噛めば噛むほどに旨味が口に広がります!」
凄く喜んでいる。ここで俺だけ騒ぐのは空気を読まない奴がするもんだぜ。
俺は、空気読むぜ。
聞きたいこともあったが、ここも後で聞こう。
きっと忘れそうだけど……。そしてこの干し肉を食べると少しだけ実感してしまう。
これは夢では無いんだと。
※
その後、三時間ほど睡眠を女の子たちと取る。
サトゥーは起きて周囲の警戒をしてくれると言ってくれたが、俺も起きていると言ったのに『君も眠いだろう。ちゃんと起こすから眠ってくれ。体力を回復して、彼女たちのサポートを願いたいからね』と上手く納得させられ眠ったが、そんなには眠れなかった。
ここがどういったところなのか不明の内は、安心しては眠れない。体力浪費で眠ることも何故か余りなかった。
それからは、何故か彼女たちは先程とは打って変わっての動き、
「ジョジョー! そっちにモンスター!」
「任せろって! 《クレイジーダイヤモンド》!」
俺の
やっぱり、
それといつの間にか犬猫娘たちには元の世界でも呼ばれていた『ジョジョ』と
個人的に良いが、なんともはや。
「いやぁ、凄いなぁ。君のスタンドって能力は」
「……う~ん、言葉に何か引っ掛かる」
「えっ!? なにがだい?」
「……なんか、なんか『僕は実は知ってるんだけどな』的なニュアンスを……なんでかなぁ、そう感じるんだよなぁ」
(……カンが鋭いぞ、ジョースケくん)
そうしていって、彼女たちが強くなっていくのでサポートするのも減ってきて、俺も戦闘に参加していき、部屋を次々と踏破していく。
しかも、獣耳娘たちだけでも大型のモンスターを倒せるほどにまで成長していた。
まるで、ゲームのレベル上げ並みに軽く成長すんだなぁ。
長年の経験とか、成長する速度が恐ろしいぞ?
ダンジョン内で見つけた武器や道具など、自称・行商人と名乗るサトゥーがまるで魔法の鞄と言う他ない異次元ポケットみたいに次々と入れていってるが、読んでたラノベ風に言うならば、チート能力だろう。
それと、やっぱりいくつかは何かを隠しているサトゥーであったが、基本良識を持っている。
色々と
それからはサトゥーの迷いなき勇み足に付き従いながら歩いていくと、何か一人で唸るサトゥー。
何か探索できるチート魔法でも持ってるのかね~。
そんなことを思っていると、
「……!?……みんな止まれ!」
「うおっ! なんだよ急に」
サトゥーは皆を静止させると、何やら冷や汗を流している。
「敵だ! さっき通った広間の部屋に戻るぞ! ジョースケくん! 悪いけど後方を気にしつつ着いてきてくれ!」
「何が何だかだが、了解!」
俺も人のこと言えないが、俺の
精確さと精密、パワーとスピード、そして視力も凄い。
明らかに《クレイジーダイヤモンド》が持つ能力の幅が格段に上がっている。
五感が鋭くなっている。
(まったく、気づくの早ぇなサトゥー。確かに荒い息使いに四足歩行の走る音が聞こえるぜ)
聴覚も鋭敏もなって、聞こえる。響くこのダンジョン内の洞窟で!猛スピードでやってくる。
「来た!」
「おぉ、何だありゃあ。黒豹か」
広いところまで移動したところで、やってきてのは獰猛に牙を覗かせる漆黒の豹のようなモンスター。額には角が生えているからか、やはり現実で見る豹とは
しかし、確認するや否や。
モンスターは一気にその場から跳躍してみせる。
それは最早、動物のスピードとは思えない早さ。
もし、元の世界であるなら一発でやられただろうが、こっちには心強い《
俺の変わりに、力となってくれる者が居る。
「
サトゥーに飛び掛かる黒豹モンスターに四発ほどのパンチを食らわせる。
岩盤も軽く砕けるこの拳撃に、お前は耐えられるか!?
呻き声を上げ、空中でバランスを崩した黒豹は壁にぶち当たる。
「大丈夫かよ、サトゥー!」
「あぁ、助かったよ」
しかし、黒豹は俄然どこかに行くこともなく、逆に火がついたのか、こちらを睨んで引く姿勢を微塵も見せない。
「チッ、このモンスターあり得んほど怒ってるよなぁ。俺のせいってのもあるけどよぉ。しつこいのは面倒だぜ」
だったら悪いが、本当に悪いがここで倒す。
「ここは俺に任せてくれよ、サトゥー」
「……大丈夫なのかい?」
「あぁ、任せてくれ」
構える。
案の定モンスターは怖いくらい牙を剥き出してまた常人には見えない速度で壁や天井などを蹴り飛んで飛来する。
まさに黒の弾丸。姿形が見えないほどに早い。
しかし、俺には
(来いよ、覚悟は決めた)
この世で最も優しい
(ごめんな、クレイジーダイヤモンド)
掌を握り、拳を作る。
一撃で殺せるように。
「一発だ」
全神経を集中させる。
失敗すれば、サトゥーがなんとかしてくれるが、万が一にも、万が一にもあの後ろに控える女子供たちが命を無くす可能性はゼロじゃない。
博愛主義は異世界なんて通じない。それは現実世界でも言えること。
だが、やはり躊躇する。
そんな考えがあれば怪我だけじゃ済まされない。
そんな覚悟は無礼千万。
だから、
「ドラァォァァァアアアア!!!」
今までの巨大虫モンスターには感じなかった、殺してしまう恐ろしさが襲われたが、
一撃で、倒した。
感想やコメントありがとうございます。
見るんじゃなくて観ることだ……。
聞くんじゃなく聴くことだ……。