スタンドからはじまる異世界狂想曲 作:杜王町JOJO
黒豹は絶命する。
何に貫かれたのか分からないだろう。
しかし 死の直前で
俺の
俺は、生き物を殺した。
人間を食らう。生き物を殺した。
「……
ビクッと驚く。
まるで心の内を悟られたように。
「……そう、だよね。
「……え?」
「ここに来るまでに、いや君に会うまで、なるべくこの子たちを怪我させないように来てたけど、擦り傷とかはすぐに出来ちゃってね。戦ってるとやっぱりそういう小さな怪我とかしてしまう」
サトゥーは周囲に敵がいないことを確認しながらも、俺に近付いて、腰に手を当てて、体温を感じさせてくれる。
生きている人間の体温だ。
「それでも、君の能力でいつの間にか治してくれていたのは、気付いてたよ」
「……ハハ……目が良すぎ、だぜ」
気付かれないよう、《クレイジーダイヤモンド》の攻撃で間を空けた数秒間の内に治してたのに、サトゥーには気付かれてたか。そこだけでも常人じゃないと感じさせられるぜ。
そして、腰の手から伝わる体温が地味に安心感を感じさてくれる。
「ジョジョー! ご主人様をたすけてくれてありがとー!」
「ありがとーなのです! 強いのです凄いのです!」
「本当にありがとうございます。感服致します」
獣娘たちも俺に寄ってきて礼を言ってくれる。
タマとポチが両端にくっついてくれて、更に体温を感じさせられると、この子供たちを守れたんだと、実感する。
「あ、泣いてるー」
「どこか怪我したのです!?」
俺は、気軽に泣いてるところを見せることは男として見せたくなかったが、覆すことが出来ないのは性格だ。
感情的になる俺は、顔に出ちまう。
「……バッキャロウ……これは汗なんだぜ」
恥ずかしいより、安心を覚えてしまう。
俺はまだまだ
(けっ。リザとサトゥーはまるで成長する子供のようにほがらかに見やがって……見返してやるぜ)
それからは、またもサトゥーが先導して部屋へと向かう。
すると、沢山の蜘蛛の糸みたいなものにくるまっている空間に繋がる。
「あ、明らかに人が丸々入ってそうな膨らみが……」
開けてびっくり死体……とか本当に勘弁願いたい。
サトゥーからこのダンジョンに落ちた理由を聞いているから、ダンジョンに巻き込まれた人々かもしれないん。
《クレイジーダイヤモンド》は、死んだ人は
「生命が終わったものは……もう戻らない」
クレイジーダイヤモンドで蜘蛛の糸を引きちぎりながら進む。
サトゥーやリザたちも手分けして生きている人が居ないか探すことになったが、
「敵だ! ポチ、タマ、リザ、ジョースケくん! 救助を一旦中止して迎撃準備!」
「マジかよ!」
索敵能力高すぎるだろ!
「そんでよぉ! サトゥー! 俺のことはよぉ、気軽に
クレイジーダイヤモンドを出現させ、俺の決まったポージングで構える。
「ハハ……あぁ、頼むよ、
「へっ」
俄然、闘志が湧いてきたぜ。
「ポチやタマは囚われた人たちを解放していってくれ。リザは二人の守備を頼む」
サトゥーがそう指示を出すと、本人も武器を取り出して前に出る。
そうしてる間に敵がやってくる。
「来んじゃねぇよ、お前ら!」
《クレイジーダイヤモンド》の高速のパンチが襲い掛かってくるモンスターたちを次々と打ち倒していく。
そのほとんどが蜘蛛だった。その巨大な体に嫌悪以上に恐怖を抱く顔や牙、そして鋭利な甲殻の
容赦の無い《クレイジーダイヤモンド》のパンチで片付けられるくらい弱いモンスターたち。
サトゥーの援護もあって、早く片付けられた。
敵も居なくなったことで、救助を優先することにすると、
「触るな獣人! 自分でやるからその短剣をよこせ!」
そんな怒号が洞窟を響かせた。
どうやら、ポチが助けた青年らしき人物がそれを不服に思ったのか、大仰に『よこせ』と叫ぶ。
コイツ、助けられてるのにそんなこと言えるのか。恥や感謝の気持ちっていうものが無いのか?
それに『獣人』と言ったか?
怯えるタマにサトゥーと一緒に庇う。
「おいテメェ。今の状況分かって言ってんのか?」
イラつく反応だが、向こうもこの状況に混乱してるんじゃないかと落ち着いた対応をすると、
「あぁ!? わかってるから短剣をよこせって言ってんだろ!?」
何かおかしなのことでも聞いたような、それくらい何を言われたのか疑問に思わないほどに自然な感じにそう言ってくる奴に、逆に俺は不審に思った。
だが、サトゥーが何か事情を知っているのか、巧みな話術でその男を黙らせる。
その後にベルトン子爵家当主ジン・ベルトン、奴隷商人ニドーレンとさっきのうるさい男を合わせた三人を助けた。
「よし、それじゃあ先を進もう」
人数が増えて、魔法が使える貴族の人とかと合わせて戦力を増強出来たかと思ったら、そうはならなかった。
貴族の方は雑魚にわざわざ魔法を使うつもりは無いらしく、奴隷商人ニドーレンは自分の身を守るだけしか出来ない。
「獣人のガキより俺の方が何倍も強いぜ! 武器さえあればあんな魔物なんて!」
そう言っては見事な一撃をモンスターから受け、致命傷となる怪我さえ負った。
何がしてぇんだコイツ。
オマケにそのモンスターからとトドメを刺されそうになったときに助けたのがタマだったのだ。色々なことを言われただろうに、なんて良い子なんだポチ。
「ぐわぁあ! 痛ぇえよ!」
「勝手に突っ込んで、勝手に死にそうになってんじゃねぇぞバカ野郎!」
「これは肋骨が折れているかもしれませんね」
ニドーレンすげぇな。分かるのか。
「
「……フゥ……、ポチが助けなかったら今ごろとっくに死んでると思うけどね。なのにさっきの詫びなし今の礼もなし」
「くそくそっ! こんなところで死んでたまるか!」
サトゥーが俺も言いたいことを言ってくれるが、瀕死状態のやつをこれ以上責めても意味がない。
「ならば捨て置け。自力で歩けぬなら最早助からぬ。今は鎮圧に来ていた軍の連中と合流する方が重要だ」
流石は貴族さま。本気で言ってやがる。
しかし時代がものを言う。全てが自己責任なのだ。行動を起こし、その結果何が起きるのか、そのせいで自分にどれくらい降りかかる火の粉なのか、しっかりと先の先まで考えないといけない。
それなのに、コイツは自分の実力が分からないで突っ込んで死にかけている。
しかし、俺は呆れることなく、その蛮勇を素直に凄いと感じる。
よくぞモンスターという化け物に突っ込んでいけたな、と。
.
剣を握ったとしても、俺なら突っ込めない。恐怖で脚が動かないで居ただろう。
俺は
けど、
安全国日本ではモンスターなんて出ない。北海道に出てくる羆とかならモンスターと並ぶ怖さだが、よく突っ込んだ。
自分の物差しで考えてしまう俺は、コイツをバカ野郎と思いつつ、その蛮勇に拍手だった。
それに、タマとポチが俺の服を着かんで上目遣いで『どうにかしてあげて……』と訴えてきてやがる。
「教訓になったな。これに懲りたら学べよお前」
俺が掌を向けると同時に、《クレイジーダイヤモンド》の能力によって怪我した
それを見ていた貴族のジン・ベルトンとニドーレンは大層驚いた顔になって俺を見ていた。
「
サトゥーもやはり見捨てるつもりはなかったらしく、薬のようなものを持っていたが、大丈夫。
俺の《クレイジーダイヤモンド》なら治せる。
治した男はポカンと唖然としている。やっぱりこんなすぐに怪我を治すことはこの世界でも珍しいことのようだ。
そんな事が起きた後に、道を進んでいけば交戦をしている集団の声が聞こえた。
「この先で戦闘をしている音が聞こえる。俺が先に行って確めてくるから、サトゥーたちはソイツらと来い!」
「あ、本当なのです!」
「待って! 君は五感も優れているなぁ。でも君は強いけど一人はダメだ。……すみません、この先で戦闘が始まっているらしいので先に行ってきます。後方を気にしつつ追い付いてきてください」
それを告げると、俺たちはすぐに広場にへと向かう。
しかし、そこに聞こえてきたのは、戦う人たちの怒号と、
そして、そこで見えたのは、見覚えのあるスーツを着た男が一人、悠々とただ立っていた。
周りにあるのは爆散したモンスターの死体の一部。
その中に、ただ一人立っていた。
「……おまえ、は……まさか」
俺は
《クレイジーダイヤモンド》と共に、拳を握り、相手を睨んだ。
「お前は
「お前は
あの殺人鬼と、俺は会った。