鈴木善治は探偵~オンボロアパート風雲録~   作:あずきシティ

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双電交通というバス

警官はそう言いながら俺に鍵を渡した。どうやらしばらくはこの町にいることになるらしい。

俺は与えられた あすなろ荘 に行き何がどうなってるかを考え直すことにした。

「くれぐれもこの町からでないように!」

警官よ。そればっかりしつこいぞ。

 

 

俺はしばらく寝床になるであろうあすなろ荘に入った。

なんとも小さな部屋だ。とりあえずこの部屋には寝に帰るだけになりそうだ。何より俺の無実を証明しなければ。俺が殺った証拠がなければ俺は捕まらないだろうがそれでは俺の無実も証明されない。夏休みの内に旅から帰りたいからな。さっさと解決しないといけない。

しかし、何が証拠になるのだろう。

というか俺の無実を証明しただけでは気分が悪いな。仕方無いな。名探偵のこの俺、鈴木善治が事件を解決してみせるぜ。

そうは思ったがそもそもどうなってドアが全開なまま玄関先で倒れているような事が起こるんだ?

強盗が押し入った。と考える物取りの犯行が妥当だろう。だがそれなら何故、夫婦が同じ場所、それも玄関先なのだろう?まさか心中か?

可能性として帰ってきた夫を妻が殺しそのまま自殺したと仮定すれば話は繋がるかもしれん。

腹が減ったな。昼時だしそもそも俺は昨日からなにも食べていない。俺は外に出る。

昔のままのような懐かしげのある定食屋があるのでそこに入ろうとしたが鍵がかかっている。まさか昼時にも関わらず閉まっているのかと思いきや中から声が聞こえた。

「殺人犯に食わせる飯はねぇ!」

まさかな、俺は無実を証明しない限り店にも入れないのか?

予想は当たっていたらしくこの町にある飲食店のうち定食屋、串カツ屋、焼肉屋、居酒屋では入店を拒否されお好み焼き屋にしか入れなかった。無実を証明するまではお好み焼きしか食べられないらしい。

仕方無くお好み焼きを食べた後、俺は交番に行った。ローズ刑事はおらず警官だけだったが。

「あの……事件について聞きたいのですが」

警官は俺のことを疑ってるらしいが質問には答えてくれた。

情報をまとめると死亡推定時刻は夜11時で死因はナイフで刺されたことによる大動脈断裂ショック、被害者はその部屋住んでいた夫婦らしい。

夜11時が死亡推定時刻ならその時間のアリバイを証明すればいい。俺は事件当日の夜11時を思い出した。

確か旅で疲れバス停で寝ようとしたがバスが来て追い出された……。

バス!?確かあのとき、運転手に話しかけられたはずだ!

 

 

俺はすぐ例のバス停に行った。

バス会社は「双電交通」という聞いたことの無いような会社でどうやらこの辺りで細々と生計を立てるバス会社のようだ。するとバスが来た。がらがらで誰も乗ってない。経営的な意味で大丈夫なのか?

運転手にアリバイ証言を頼みたいが仕事中に無理矢理、交番に連れて行くわけにもいかない。

とりあえずバスに乗る。

約10分程で終点に。

俺は運転手に話しかけようとしたが……ん?事件当日と運転手が違う。あの時は暗くてよくわからなかったが女性だったはずが今日はサングラスをかけた怪しげなオッサンになっている。

「すいません。一昨日の終バスの運転手さんを探してるんですが……」

運転手は意外に温和らしく気さくに答えてくれた。

「そったらこったぁ知らねぇっぺ。営業所さ行けばわかるだ。どけんしたと?」

「その終バスの時間に起きていた殺人事件で俺が無実の罪を着せられてしまったんです。アリバイ証明のために一緒にその運転手さんに交番まで来てほしいんですが……」

「それは大変なことだ!ん~次の折り返しまで40分……このバスで営業所まで送ったるだ!」

「え?大丈夫なんですか?」

「40分で帰れば大丈夫だ!それより君が殺人犯のままなことの方が問題だ!」

俺は運転手の厚意に甘え営業所まで送ってもらった。

「そういえば運転手さん、あなたはなにをしていたのですか?」

「オラは別の路線の終バスを担当してただ。確か君の言う事件があった30分後にアパートの前の道を走るバスだ」

バスの車内でした会話と言えばこれくらいだ。

割りとすぐ営業所に着いた。運転手に礼を言ったあと俺は営業所内に飛び込んだ

 

 

「すいません!一昨日の終バス担当の方はいらしゃいますか!?」

営業所にいた人全員に驚かれたのは言うまでもない。

「かくがくしかじかこれこれで一昨日の終バス担当の方を探してるんですが」

営業所のわりと偉いくらいにいそうな人が答えてくれた。

「どの路線か分かりますか?」

しまった。分からないぞ。

「あるいは現場がどこか分かりますか?」

俺が事件のあったアパートの名前を言うと

「それってアパートの真ん前かその近くにある公園の前の道を走るバスか分かるかな」

「公園の前の方です。」

「じゃあその路線の終バス運転手なら今日は夕方から乗務だが……出社してもらったらしばらく運転だからなぁ」

俺はがく然とした。アリバイ証人と予定が会うまで容疑者を続けなければならないらしい。見たところ、双電交通は社員もギリギリらしく有給休暇などはなさそうだ。

「もう出社してくる時間だ。交番に寄り道してもらおうか?」

営業所のお偉いさんはそう言い出した。

「え?いいんですか?」

「まぁ良いだろ。君の将来のほうが大切だ。時間には余裕をもって出社するよう言ってるしな」

「でもバスの運行に支障が出るんじゃ……」

「まぁ手短にすませてくれれば大丈夫だろう。彼女には私から電話しておくから君は交番に行きなされ。」

「あ……ありがとう……ございます。」

話がうまくトントン拍子に進む。普段の行いが良いからだろうな。

 

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