※映司視点
財団Xが出てきた事件の翌日。その時に手に入った6つのジュエルシードをプレシアさんに渡すためにフェイトちゃんたちと一緒に時の庭園に来ていた。あの日からプレシアさんはフェイトちゃんに手を上げることはなくなった。けど、そのかわりに会話は殆ど無く、ジュエルシードを受け取るとすぐに奥の部屋へと戻って行った
今日も同じく、ジュエルシードを受け取るとそのまま奥の部屋へと入って行こうとした。俺は慌ててそれを引き止める
「待ってください、プレシアさん!」
「なに?」
俺の静止にプレシアさんは気だるげに振り返った
「『プロジェクトF』って言えば、わかりますよね?聞きたいことがあるんです。2人で話せませんか?」
「どこでそれを。……いいわ、着いて来なさい」
俺の言葉にプレシアさんは訝しげな目で睨んでくるがその目が俺の後ろへと一瞬動くとそう言って奥の部屋へと歩き出した。俺もそれに続いて歩き出そうとした瞬間、俺の服の裾が引かれた
「映司、『プロジェクトF』ってなに?映司は母さんの何を知っているの?」
フェイトちゃんの顔は突然の出来事による混乱と俺に秘密にされていることがあると知った悲しみに染まっていた
俺のせいでそんな顔をさせてしまっている。その事に心が傷んだが、今フェイトちゃんに教えるわけにはいかない。それはフェイトちゃんを更に苦しめてしまうことになってしまう
俺は裾を握っているフェイトちゃんの手をとって膝を折って目を合わす
「ごめん、フェイトちゃん。今は言えない。けど、いつか絶対に言うから」
「……本当に?」
握っていた手を離してフェイトちゃんの頭を撫でる
「うん。今からプレシアさんと話すのもフェイトちゃんのためになるはずだ。だから、大丈夫」
「分かった。映司を信じる」
「さ、行こうフェイト」
フェイトちゃんは全てを納得してくれたわけではないだろうけどそう言ってくれた。アルフに目線を送ると静かに頷いてフェイトちゃんを部屋から連れ出してくれた。アルフにだって言いたいことは山ほどあるはずなのに、そうやって俺の意思を汲んでくれたアルフの優しさに涙が出そうになったが、今は泣いてる暇はない。プレシアさんの後を追って奥の部屋へと向かった
部屋の中は折れた柱が無造作に立ち並ぶ遺跡のような作りをしていた。床も丸い柱を切って作ったようなもので、下を覗いても底は見えない
「それで?何故あなたがプロジェクト『F.A.T.E』を知っているの?」
「知り合いから教えてもらいました。……あなたがそれを知っているってことは、フェイトちゃんは」
「ええ、その通り。フェイトは、私の娘アリシア・テスタロッサを元に造ったクローンよ」
……やっぱり、そうだったのか。
プロジェクト『F.A.T.E』。フィリップさんに教えられたその内容は簡単に言えば人造生命の創造。クローニングした素体に記憶を定着させることにより、従来の技術では考えられない程の知識や行動力を最初から与える事が出来る。その最大の目的は、元となった人物の肉体と記憶の複製。けれど……
「アリシアは数年前、事故で死んでしまった。だからフェイトを造ったの。けれど、あれは失敗作だったわ。外見はアリシアに似ているのに中身は全く別。私は酷く絶望したわ」
そう、元となった人物の完全再現だけは叶わず、極限まで似てはいても「新たな人格と資質を備えた別人」として目覚めるらしい
「じゃあ、ジュエルシードを集めていたのはアリシアちゃんを目覚めさせるために?」
「少し違うわ。……そうね、ちゃんとジュエルシードを半分持ってきてくれたことだし、特別に教えてあげるわ。忘れられし都・アルハザードと呼ばれる古代ベルカよりさらに昔に存在したといわれている世界。そこには時を操り、死者さえも蘇らせる秘術があると言われているわ。そこに至るためにジュエルシードを暴走させ次元断層を引き起こす。それがジュエルシードを集めている理由よ」
死者を蘇らせる。そんなことが出来る場所が本当に存在するのか?……いや、例え存在したとしても、そんなことしていいはずがない
「やめましょう、プレシアさん。そんなことをして生き返ったってアリシアちゃんは喜びませんよ。死んだ人間は生き返っちゃいけないんです!」
「黙りなさい!あなたに、娘を失った私の何がわかるというの!」
プレシアさんが声を荒らげて叫ぶと同時に彼女の足下に魔法陣が現れ頭上から雷が落ちてきた。それを何とか避けオーズに変身しようとしたが、間髪入れず連続して雷が降ってくるせいでドライバーを出す事が出来ない。次第に避けきれなくなってきて、ついに直撃してしまった。
「ガハッ」
生身で雷を受けた衝撃は凄まじく膝から崩れ落ちる。混濁する意識の中なんとか立とうとするが体が痺れて言うことを聞かない。カツカツと足音がゆっくり近づいてくる
「あなたはよく働いてくれたわ。けれど、私の邪魔をすると言うのなら、死んでもらうわ」
なんとか頭だけを動かして上を見ると黒い雲に紫の雷が光っており、どんどん雲が大きさを増していく。そして、プレシアさんの握る杖が俺に向かって振り下ろされた。その瞬間、部屋のドアが吹き飛ばされアルフが俺の前へと立ち塞がってシールドを張った。だが、それもすぐに壊されその体が俺の横に倒れた
「……アル…フ」
「…………逃げる……よ…映司」
「フェイト…ちゃん……は?」
「心配………いらないよ。先に……帰らせた」
「邪魔が入ったけれど、意味がなかったわね。今度こそ!」
プレシアさんが再び杖を振り上げたと同時に俺とアルフの体はオレンジの光りに包まれて、転移魔法に飛ばされた
※アリサ視点
最近翔太郎達となにかコソコソやってるなのはが久々に学校に来た。何をしてるのかを聞きたいけど、翔太郎が関わっているなら十中八九、ざい……奴らが絡んでる。私はまだあいつらの名前を聞くだけで体が震える。はぁ、情けないわね
「っ!鮫島、車停めて!」
車から外を眺めていると赤い大きな犬のようなものと人が倒れているのが見えた。私は鮫島に叫んで車を止めさせると駆け出す。そこに倒れていたのは額に菱型の宝石がついた犬……狼?と服が所々黒く焼け焦げた映司さんだった
「え、映司さん!?だ、大丈夫ですか!?」
「……っ、アリサ、ちゃん?」
「待っててください。今救急車を」
「いや……救急車は…いらない。それ…よりも、翔太郎さん……に」
映司さんはそこまで言うと力尽きたようにまた気絶した。私は急いで携帯を取り出すと翔太郎に電話する
『もしもし、どうし「しょ、翔太郎!え、えい、映司さんが!」……おちつけ、アリサ。映司がどうしたんだ』
「アリサお嬢様、失礼します」
何が何だか分からなくて、しどろもどろになる私を見かねたのか鮫島が携帯を私から取り上げて翔太郎と話しだす。それも短く1,2分で終わり
「左さんはすぐにこちらに来るそうです。ここで待っていましょう」
そう言って携帯を私に返した
それから、本当にすぐ翔太郎がやってきた。その頃には意識を取り戻していた映司さんと短く何かを話すと
「悪い、アリサ。映司とアルフを俺の事務所に送ってくれないか?」
そう聞いてきた。私は断れるはずもなく即座に頷くと、映司さんとアルフと呼ばれた狼を乗せて翔太郎の事務所へと向かった