カカシの憂鬱   作:睡眠不足です

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サバイバル演習その後

in火影

 

「では、失礼します」

 

ぱたんと静かに音を立てながら扉が閉まる音を聞いて、視線を手元の煙管(キセル)から立ち昇る煙を見やる。

頭の中で、数分前の出来事を思い返しながら

深く紫煙を燻(くゆ)らせた。

 

 

 

「どうしたカカシ」

 

突然の訪問者に内心首を傾げながら入室を言い渡すと、カカシは真剣な面持ちで火影室の中央にて跪き、言葉を発した。

 

「火影様。今回私の班はサバイバル演習を行ないましたが、成功したものは誰一人おりませんでした。私は力持たざる忍びを受け持つことはできません。命を預かる上忍として、指導者の責務を変えていただきたい。」

 

「...それはならぬ」

 

「どうしてですか。お言葉ですが、火影様。私は演習に失敗した忍びを認めることはできない。これは正当な理由です。他の班も本日は受け持つ下忍の力量を図るため、上忍に一任していると承っております。何も班を解散し、アカデミーからやり直しをと言ってるわけではありません。私が認める事ができないだけです。他に適任者がいるはずです。火影様今一度考え直していただきたい」

 

そう反論の意を唱えるカカシは一息に言い切ると火影様と目を合わせた。

火影は、しばし黙り込むとそれで何が言いたいと続きを促すかのような表情でカカシの鋭い眼光を見返した。

 

「...私を元の暗部の任に戻していただきたい」

 

それがカカシの真意であろう言葉が飛び出した。暗部として危険を省みず任務を遂行する様はいつからだっただろうか。白い牙として他里に名を馳せブラックリストに載るほどの力量。それは一介の上忍では、とても果たせない責務であった。それゆえ、カカシを暗部の任に戻せという上層部の声があるのも確かであった。

 

しかし、火影はどうしてもミナトとクシナの忘れ形見であるナルト、うちはの生き残りであるサスケをカカシに預けたかった。

 

火影は里の長であり、ナルトやサスケだけを特別扱いすることができない。そのため、何かあった時に迅速に行動できる人物であらねばならない。そこに白羽の矢が立ったのがカカシであった。忍びとして力量に申し分ないが、人と関わることを避けている態度が気にかかっていた。この機会に、庇護すべき存在を与えカカシに対してもプラスになるであろう班の存在であった。

 

ミナトの教え子であるカカシならば大丈夫だと火影は上層部の反対の意を言い包めたのだ。

なにがあろうとも、今更カカシを班から外す事はならぬ。

 

これはカカシのためにも良いことなのだ。

 

「では、失礼します」

 

カカシは返答のない火影を一瞥し、踵を返した。

 

さて、どうやってカカシを説得するかと考えながらナルト達の様子を伺うため水晶玉に手をかざした。

水晶に、それぞれ倒れこむナルト達が映し出された。

 

溜め息を吐く火影の前に潜んでいた暗部が片膝をついて頭を下げると、火影は回収の令を出し、その瞬時暗部は姿を消した。

 

ナルト達がここに連れて来られるまでの間、

どうやってこの状況を回避すべきか火影は手元の煙管を軽く吹かしたのだった。

 

 




参考までに。
紫煙を燻らす...肺まで煙を吸い込み吐く
吹かす...軽く口で煙を吐く様

火影様、自分本位すぎて吐き気がしますねぇ←

今回はちょっと忙しく執筆が大変でした。

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