カカシの憂鬱 作:睡眠不足です
カカシは一つ一つと集落に忍び込み、残骸を目にしていた。ほぼ全滅状態と言っていいだろう。そこにあるのは死体しかない。
もう一人派遣された暗部の死体を発見したが、争った形跡はなく後ろから首を一突きされているようだった。油断でもしていたのか。まぁ最初から何も期待はしていない。ただ無様なその有り様を一瞥し、今後暗部にマシな人材を増やせと意見を述べてやろうと決めた。
その死体を足蹴にしながら、また一つ隣の敷地に入り込み獲物がいないか物色する。
せっかく暗部の任に復帰したのに、これでは拍子抜けである。血に染まっていない自身の暗部服を見下ろし仮面の下、カカシは落胆の色を隠せない。
これでは何の為に暗部服に袖を通したのか。ここまで来た時間が無駄に過ぎなかった。
結局、道中襲いかかって来た忍びの操り主もわからず。集落も残滅している有様。
苛立ちはするが、獲物がない以上カカシはこの場を去るしか選択はなかった。
深追いする程、何か思い入れがあるわけでもない。
ダンゾウ様には不審な忍がいた旨を報告し、任務は既に終結していた事をお伝えするのみ。
この現状を創り出した奴の見逃しがないか確認はしてみたが、特に取りこぼしもないようだ。
仕方がない帰還しよう。
次の任務でこの鬱憤を晴らせばいい。
そうと決心がつけばカカシの切替は早かった。
元来た道を戻り木の葉の里へ。
謎の襲撃、それを操る者、残滅した集落、死体となった暗部二名の亡骸
どれもがカカシにとって、どうでもいい事であった。
この事は記憶の片隅にも残らない。
いつもの 取るに足らない 任務なのだから。
木々に囲まれている集落。
その役目は集落を隠す為の目くらましである。その本来の役目を果たすべく、カカシの手によって無数の木々は集落へと倒れこむ。
本来であれば火をつけ跡形もなく消し去るのがベストであるが、木々で囲われてる故、どこかで範囲を見定め消化しなければいけないのも事実。
ならば埋めてしまえばいい。
この日とある一つの集落が潰えたことなど誰も知る由のないことなのだ。
そうして今日という一日は終わる。
「次の任務で殺す」
誰に言うでもなくカカシはぽつりと呟き、その場から立ち去った。
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木々で積み重なった残骸の成れの果て。
青年は紅い雲模様の黒いマントを靡かせて、その上に鎮座する。
「...あの眼もいいけど、殺意に染まった表情も見てみたいなぁ」
「....次の任務に付いて行こうかなぁ」
「ふふふ...楽しみだなぁ....ねぇ?そう思わない?ボク」
問いかけに応えるものはいない。
ただ夜が明けても青年の独り言が止むことはなかった。