「恋、だけじゃ駄目なのよ! 愛に昇華してこそ、ホンモノの《恋愛》なの!」
微妙に
「そ、そうですね。ええ、愛は、ないといけませんよ」
「そうよね!」
「え、ええ」
「ねー」
「……ええ」
杉崎が桜野に言い負かされる。憐れ杉崎。
そんな杉崎は隣にいる
「あのお子様会長は、ホント正論ばかりだから、時折反論の余地あねぇんだよ……」
「あー、それは分かる。いやだよなー、正論って」
「『悪いのは分かっているけど、そういう問題じゃないんだよー』っていう感じのこと、多いだろ、世の中。でも、正論を振りかざすヤツっているわけよ。そうやってふんぞり返るヤツっているわけよ。……アレみたいに」
二人は、とても偉そうに胸を張る桜野を見る。
「そう言ってやるな、二人とも。今回の相手は桜野だ。多少は心を広く、な」
「そうは言っても、クロさん」
「今回はちょっと、な」
二人に諭していると、斜め前にいる
「
「あー、分かる。人に迷惑かけてない限り、あんまりそういうことに口出しされてくないよな。それが正論であることなんて、こっちも分かっているんだからさ」
「ゲームは自己満とは言えるけどね」
「そ、そうですそうです!」
「あー、あたしもあるなー、それ。あたしは……信号つき横断歩道でも、どう見ても車が来てなかったら渡っちゃうんだけど……」
「確かに、ルール的に見たら違反だよな、それ。でも……なんかアホらしいよね。特に俺の地元なんて田舎だから、視力1・5の俺が左右見ても、地平線まで車がない時あるわけよ。それなのに、信号待ってるのって……なんか、酷く虚しいっていうか」
「急いでるときは特にそうだな」
「注意されたら、そっちが正しいから、甘んじて受けるしかねーけどな。ううん、まー、悪いのはこっちなんだけど。こっちなんだけどだー。ってなるよな」
俺と杉崎、
「でも駄目よね、ルール違反」
『うっ……』
「テレビゲームは目に悪いから、ほどほどに」
「あぅ」
「横断歩道は、ちゃんと信号確認して渡りましょう」
「うぅ」
「クーちゃんは常に私といること」
「なぜだ!?」
「まぁ、私は暗い中クーちゃんとゲームもするし、信号やクーちゃんより自分の視力を信じるけど。ゲームでダメダメになったこの視力をねっ!」
『一番駄目じゃん(ですよ)!』
「っていうか、なんで毎回俺が出てくるの!?」
正論を振りかざすくせに自分には特例を認める、一番イヤなタイプこと知弦。……ホントになんで毎回俺と一緒なんだ?
そうこうしていると、ようやく桜野が自己陶酔の世界から帰ってきた。「よっこらせ」と席から立ち上がる。
そうして、ホワイトボードに書き出される今日のテーマ。
「『校内の風紀の乱れについて』……ですか。なんか、すげぇ定番ですね」
杉崎の呟きに、桜野はくるりと、笑顔で振り返る。
「定番だからこそ、常に生徒会が真摯に取り組むべきテーマでもあるのよ」
「それに、今一度話し合う必要があるってことは、そういうことなんだろ」
「う……」
桜野と俺の二人からの正論にショックを受ける杉崎。確か今日の星座占い最下位が、杉崎の天秤座だったはず。こんなところに影響が。憐れ杉崎(二回目)。
ボードのテーマを見て、知弦が首を傾げる。
「でも、こういうもは風紀委員に任せるべきじゃないかしら。それに、この学校、割と皆いい子でしょう? 少なくとも、他校に比べたらかなりの優良校だと思うけど」
確かに、知弦の言う通りだ。近隣高校の「音吹高校」は荒れている。他の学校も、あまりいい噂は聞かない。
そんな中、生徒会システムが功を奏しているのか、モラルをもって行動してくれている。「皆で学校を作っている」という意識が高いのだろう。
だからか、風紀委員も生徒会も、そんなに仕事は忙しくない。そんな学園において、わざわざ生徒会で議題に取り上げてまでただすような風紀の乱れなんて……。
しかし、そんな考えに喝を入れるように桜野が大声を上げる。
「なに言ってるの! 乱れているわ! 主に……その……せ、性がっ」
「性?」
真っ赤な顔でそんなことを言うロリ会長に杉崎が尋ねなおす。桜野は「そ、そうよっ」と自分を取り繕いながら話を続けた。
「副会長のせいかもしれないけど。最近、どうも、その、校内でナンパな光景を見ることが多くなった気がするのよっ! その……男女が手を繋いでいたりとか……」
「どこがナンパな光景だよ」
「クロさんの言う通りですよ。手繋ぐぐらい、そんなに問題にするようなことですかね?」
「も。問題よ! 二人っきりでっていうならまだしもその、生徒がたくさんいる前で手を繋いで歩くなんて……不謹慎よ! 学びや舎たる校舎でなんということを……」
「はぁ」
普段からエロゲをやっている杉崎はもちろんのこと、俺や知弦、椎名姉妹もやはり、ぴんと来てないようだった。桜野が少し過敏すぎるような気がする。
姉が、「はーい」と手を挙げる。桜野は「はい、
「会長さんは知らないかもしれないけど、そんなのより大変なことしているのなんて、いくらでもいるぜ? 放課後の校舎内を見てみなよ。ちょっと人気の無いところにいけば、キスは勿論、セッ〇スしている光景なんて、結構な確率で目撃──」
「な──」
桜野が絶句する。しかし、姉はそのまま続けた。
「まー、確かに乱れている言っちゃ乱れてるけどさ。別にいいんじゃねーの? それで誰かに迷惑かけてるわけでもねーんだし。ま、そういう場所通りかかるとすげぇ気まずいけどさ。それこそ愛し合っているってことだろ」
「そうだな。少しは加減してほし気もあるがな。俺は昨日今日と、二日連続で生徒会室に来る前に──」
「退学よ────────────────────!」
言葉の途中で絶叫された。最後まで言わせろよ……。桜野は顔を真っ赤にしながら続ける。
「そ、そ、そんなことしている人を見かけたら、今後は、全部退学! 問答無用で退学! お、おかしいわよ! ここをなんだと思っているの!」
「フラグを立てるための場──」
「杉崎は黙ってて! プレイステショーン5が出るまで!」
「期間なげぇ!」
杉崎の発言権が無くなった中、知弦があくまでマイペースで、クールに告げる。
「でもそれは仕方ないわよ、アカちゃん。性の乱れなんここだけの話じゃないし、生徒会が動いて止められるものでもないわ」
「止めるんじゃないの! 排除するのよ!」
「そんなことしたら、キー君じゃないけど、かなりの生徒が消えちゃうわよ、この学校」
「仕方ないわよ!」
「……アカちゃん。生徒会長は、風紀の乱れを正すのも大事だけど、まず最初に生徒のことを考えるべきなんじゃないかしら。『生徒』の『会』の『長』なのよ」
「う……」
知弦は非常に大人だった。桜野もたじろいでいる。
しかし、桜野は、知弦の説得にも、やはり応じなかった。「やっぱり駄目!」と再度叫ぶ。知弦は諦めたように両手を上げて、俺たちに首を振る。
そんな中、これまで場を静観していた妹が、おずおずと手を挙げた。「はい、真冬さん」と桜野に当てられ、小さく口を開く。
「ま、真冬も、そういうのはあまり得意じゃないですけど……その……したい人には、させてあげればいいかと……」
「したい人?」
「い、いえ、そういう意味じゃなくてっ!」
杉崎の質問に、妹は桜野以上に真っ赤になる。そんな妹の意見に、桜野が「駄目よ!」と、珍しく妹にまで大声をあげる。妹は「ひぅ」と涙目になってしまった。
毎日投稿とか、私には無理ですわ……。してる皆様を尊敬しておりますわ。