色々おかしな点があると思いますが、ご了承ください。
「世の中がつまらないんじゃない。貴方がつまらない人間になったのよ!」
そう、無い胸を張りながら言う少女。彼女は
「じゃ、童貞も悪くないってことですか?」
彼は生徒会副会長、
「ぶっ!」
桜野がお茶を吐き出してむせている。
「おい、杉崎。桜野をいじるのはいいが、お茶を飲んでないときにしろ」
「なんでですか? クロさん」
「座っている位置を考えろ。桜野が吐き出したお茶が俺にかかってるんだよ」
「まじすか!? すいません、クロさん」
そして俺、生徒会庶務、
「まあいいけどよ」
そう言い、机と自分を拭いている中、杉崎と桜野が言い争っていた。
「クロさんには悪いと思っているが、役得だよなぁ……。しかし、美少女が吐き出したお茶を(見た目)美少女がかぶる。うん、サイコー!」
「ちょっと杉崎! 今考えてることもだけど、貴方はどうしてそんな事しか考えないの?」
「甘いですね会長。俺の思考回路は基本、まずはそっち方面に直結します!」
「なにを誇らしげに!」
「そうだぞ杉崎。俺は美少女じゃなくて男だぞ」
俺も参戦してみるか。
「黒兎も間違ってないけど間違ってる指摘だよ! 杉崎はもうちょっと副会長としての自覚を……」
「持ってないから杉崎はこうなんだろ? 桜野」
「ごめん。杉崎」
「なんか悲しい理由で謝られた! くぅ……」
大号泣しているが、まあ大丈夫だろ。
「会長。好きです。付き合ってください」
「にゃわ!」
ほらな。でも告白ってのは……。
「杉崎、どうしてそう軽薄に告白ができるんだ?」
「そ、そうよ!」
桜野が便乗する。
「本気だからです」
「嘘だ!」
「『ひ○らし』ネタは古いぞ、桜野」
涙目で震えながら言われても、惨劇の予感はないな。
「杉崎、この生徒会に初めて顔出した時の、第一声を忘れたとは言わせないわよ!」
「なんでしたっけ? ええと……『俺に構わず先に行け!』でしたっけ」
「何と戦ってんだよ」
「あれ? それじゃあ……『ただの人間には興味ありません。宇宙人、未来人――――』」
「それは色んな意味で危険よ!」
「えーと『俺たちの
「私たちは世界に災厄を招かないわよ!」
「皆好きです。超好きです。皆付き合って。絶対幸せにしてやるから」
「そうよ! あの時点で、この生徒会に貴方のいいかげんさは知れ渡ってるのよ! 誰でもいいから付き合えって堂々と言う人間に、誰がなびくっていうの!」
「杉崎の場合、誰でもというより美少女限定だよな」
「そうです。さすがクロさん、わかってるぅ!」
「可愛いなら誰でもいいってこと!?」
「一途なんです! 美少女に!」
「括りが大きいわ!」
「希少種ですよ、美少女」
「美少女よりも美人な人の方が希少だろ」
「そういう問題じゃない! 複数の人に告白している時点で、誠実じゃないのよ!」
「ええー。ふらふらしているより、最初からこう、バンッと、『俺はハーレムルートを狙う!』と宣言している方が潔いでしょう?」
「残念ながら杉崎はギャルゲの主人公より、その友人ポジションだろ」
「そうよ! それに杉崎より黒兎の方が主人公でしょ、完全に」
「じゃあ、俺とクロさん、どっちが好きですか?」
「絶対に黒兎ね!」
言ったことに気付き、顔を赤くしている桜野の隣で、杉崎が血の涙を流している。桜野の言い訳と杉崎の文句を聞き流していると、生徒会室の扉が開かれた。
「キー君、クーちゃん。あまりアカちゃんをイジめちゃだめよ」
そう言いながら入ってくる女性。桜野と俺と同じ三年の生徒会書記、
ちなみにキー君とは杉崎、クーちゃんは俺の事である。杉崎の名前の「けん」は「鍵」と書くためキー君。俺は見た目が女っぽいのと、名前の「黒」からクーちゃん。
アカちゃんとは桜野の事で、名前が「くりむ」だから、クリムゾン=真紅でアカちゃんらしい。
杉崎の対面に座った頃、杉崎と俺が反論する。
「いじめてなんかいませんよぉ。ただ、辱しめていただけです」
「杉崎に乗ってやっただけだ」
「余計に悪質じゃない」
「同意の上ですから大丈夫です」
杉崎の言葉に桜野が「嘘だ!」と言うが、全員でスルー。
知弦を加えて新ためて話し出す。
「しかし、今日はどうも集まり悪いですね、俺のハーレム」
「杉崎のハーレムじゃなくて生徒会な」
「いいんじゃないかしら? 集まっても結局、お菓子食べて喋るだけじゃない、最近」
そう言いながら俺はノートパソコンを、知弦は勉強道具を鞄から取り出した。
「知弦さんとクロさんは分かってませんねぇ。ギャルゲのように直接会わないと、好感度は上昇しないでしょう?」
「当然のように言われても困るけど」
「直接会わなくてもいいモノもありそうだけどな。まあ、それが本当だったら、好感度上げたくないから二人は来ないんだろ」
「ぐはっ! で、でも、知弦さんは俺との愛を育みに来てくれたわけですね!」
「…………。……あ、うん、そうね」
否定よりも大きいダメージで杉崎が倒れた。スナック菓子をつまみながら勉強する人のテキトーな言葉って口撃力高いな。
「し、しかしこういうクールキャラこそ、惚れたら激しい違いない!」
「あ、それは正解。私、小学校で、初恋の子に一日三百通『好きです』だけを羅列した手紙渡して、精神崩壊まで追い込んだから。意外と脆かったから冷めちゃったけどね。······貴方達はどうかしら」
そう細目で口元に薄ら笑いを浮かべる知弦に杉崎は震え、俺は笑顔を返した。てか、貴方「達」って俺も入るのね、そう考えてたら、杉崎がなにかを決意した顔で言う。
「分かりました」
「え、この話の後で覚悟できたの? 私の中でキー君フラグが若干──」
「知弦さんとは、体だけの関係を目指すことにします!」
「…………。……クーちゃんはどう? さっきからずっと考え込んでたようだけど」
今の杉崎の発言は、正直言って無いと思った人しかいないと思う。それほどのクズ発言のためか、知弦はすぐに俺に話を振ったな。杉崎はなんか自分の世界に入ってるけども。
まあ、俺は俺らしく答えるか。
「そうだな。俺は知弦みたいなの、好きだぜ。だって、それほどまでに好きになってくれるんだろ? そこら辺の恋を追ってばかりの奴より、自分のことを見てくれそうじゃん。だから俺は好きだぜ」
その言葉に知弦は顔を赤く染め、杉崎は俺に嫌悪と尊敬の目を同時に向けている。何気器用だな。
「クロさん。知弦さんをデレさせたのは許さんが、その女の子をデレさせる方法、俺に教えてくださいっ!」
「なんの事を言ってるんだ、杉崎は。俺から教えられることは何もないぞ。それと知弦、どうした? 顔赤いぞ」
自覚したのか、知弦の顔は更に赤くなり、俺の言葉で落胆していた杉崎は知弦の顔を見て、血の涙を流し、吐血した。知弦は完全に乙女の顔になっていた。その光景を見ていると、知弦のスナック菓子に手を伸ばす桜野に気付き、声を掛ける。二人は放置しても問題ないだろう。
「桜野」
「なに?」
「太るぞ」
「うぐっ。……大丈夫。栄養を、背と胸に回すんだもん!」
「別にいいが、腹に回ったときは、一大事だな」
「ええい! はむ!」
さて、いつの間にか復活していた杉崎と桜野いじりを交代して、俺は執筆でもするか。
俺は作家としても活動しているため、生徒会の暇な時間に書いていたりする。たまにな。
そんな感じで各々が集中しだしたとき、また生徒会室の扉が開かれた。
「おっくれましたぁー」
「す、すいません」
対象的な態度で入ってくる二人。
前の少女は生徒会副会長、
後から入った少女は生徒会会計、
椎名姉妹が定位置につくと、杉崎が二人に話しかける。
「そうそう。深夏と真冬ちゃんは、『初めての時はあんなに面白かったのに』みたいなことって、なんかあるか?」
最初の桜野の名言に話が戻る。
「なんだよ、やぶからぼうに」
「いやさ、会長が世間がつまらなくなったんじゃなくて、自分がつまらなくなったんだ、なんて久々にいいこと言うものだからさ」
「久々とは失礼な!」
桜野が騒ぐが、無視。椎名姉妹は二人して考え込んでいたが、
「真冬はお化粧……コスメですかね」
「化粧?」
「はい。子供の頃、母親がしているのを見て、すごくしたかったんです。それで初めて買ったときは嬉しくて──」
と、こんな風に桜野の名言について、椎名姉妹と杉崎の三人で話していた。BGM代わりにしていたから話はあんまり聞いてなかったがな。
パソコンの画面に集中していたが、ふと顔を上げると杉崎が立っていた。
「ううん、ハーレム万歳。いつ見てもいいねぇ、この光景。クロさんは男の娘だけど、それもいい味だしてるし。ああ、頑張って入って、本当に良かったなぁ」
……唐突に変なことを言い出したな。つか冒頭で自分で言ったは言ったが、男の娘って酷くね? そう思っていると、知弦が「そういえば」と返す。
「キー君とクーちゃんは〈優良枠〉で入って来たんだっけ。クーちゃんはともかく、キー君じゃそうは見えないのに」
「そうだよなー。鍵はどう見ても色ボケ男だしなー。神月先輩はあたしから見たら、勉強出来ても生徒会入る人には見えないしなー」
杉崎と反論しようとすると、桜野がバンッと机に手を置いた。
読んでいただき、ありがとうございました。
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