生徒会の中心   作:赤羽 黒兎

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 処女作です。
 色々おかしな点があると思いますが、ご了承ください。


⒈駄弁る生徒会①

「世の中がつまらないんじゃない。貴方がつまらない人間になったのよ!」

 そう、無い胸を張りながら言う少女。彼女は碧陽学園(へきようがくえん)生徒会会長、桜野(さくらの)くりむ。外見は小学生に間違われる程に小さく、知能も同じく幼い。そんな桜野に向かって、こう言う青年がいる。

「じゃ、童貞も悪くないってことですか?」

 彼は生徒会副会長、杉崎鍵(すぎさきけん)。顔はイケメンに入るだろうが毎日ハーレムハーレム叫んでる変態である。

「ぶっ!」

 桜野がお茶を吐き出してむせている。

「おい、杉崎。桜野をいじるのはいいが、お茶を飲んでないときにしろ」

「なんでですか? クロさん」

「座っている位置を考えろ。桜野が吐き出したお茶が俺にかかってるんだよ」

「まじすか!? すいません、クロさん」

 そして俺、生徒会庶務、神月黒兎(こうづきこくと)。腰まである長い灰色の髪、吊り目がちの翠玉(エメラルド)とも見まごう双眸、色白の肌の女性のような男である。俗に言う男の娘である。

「まあいいけどよ」

 そう言い、机と自分を拭いている中、杉崎と桜野が言い争っていた。

「クロさんには悪いと思っているが、役得だよなぁ……。しかし、美少女が吐き出したお茶を(見た目)美少女がかぶる。うん、サイコー!」

「ちょっと杉崎! 今考えてることもだけど、貴方はどうしてそんな事しか考えないの?」

「甘いですね会長。俺の思考回路は基本、まずはそっち方面に直結します!」

「なにを誇らしげに!」

「そうだぞ杉崎。俺は美少女じゃなくて男だぞ」

 俺も参戦してみるか。

「黒兎も間違ってないけど間違ってる指摘だよ! 杉崎はもうちょっと副会長としての自覚を……」

「持ってないから杉崎はこうなんだろ? 桜野」

「ごめん。杉崎」

「なんか悲しい理由で謝られた! くぅ……」

 大号泣しているが、まあ大丈夫だろ。

「会長。好きです。付き合ってください」

「にゃわ!」

 ほらな。でも告白ってのは……。

「杉崎、どうしてそう軽薄に告白ができるんだ?」

「そ、そうよ!」

 桜野が便乗する。

「本気だからです」

「嘘だ!」

「『ひ○らし』ネタは古いぞ、桜野」

 涙目で震えながら言われても、惨劇の予感はないな。

「杉崎、この生徒会に初めて顔出した時の、第一声を忘れたとは言わせないわよ!」

「なんでしたっけ? ええと……『俺に構わず先に行け!』でしたっけ」

「何と戦ってんだよ」

「あれ? それじゃあ……『ただの人間には興味ありません。宇宙人、未来人――――』」

「それは色んな意味で危険よ!」

「えーと『俺たちの戦争(デート)を始めよう』だったような」

「私たちは世界に災厄を招かないわよ!」

 

「皆好きです。超好きです。皆付き合って。絶対幸せにしてやるから」

 

「そうよ! あの時点で、この生徒会に貴方のいいかげんさは知れ渡ってるのよ! 誰でもいいから付き合えって堂々と言う人間に、誰がなびくっていうの!」

「杉崎の場合、誰でもというより美少女限定だよな」

「そうです。さすがクロさん、わかってるぅ!」

「可愛いなら誰でもいいってこと!?」

「一途なんです! 美少女に!」

「括りが大きいわ!」

「希少種ですよ、美少女」

「美少女よりも美人な人の方が希少だろ」

「そういう問題じゃない! 複数の人に告白している時点で、誠実じゃないのよ!」

「ええー。ふらふらしているより、最初からこう、バンッと、『俺はハーレムルートを狙う!』と宣言している方が潔いでしょう?」

「残念ながら杉崎はギャルゲの主人公より、その友人ポジションだろ」

「そうよ! それに杉崎より黒兎の方が主人公でしょ、完全に」

「じゃあ、俺とクロさん、どっちが好きですか?」

「絶対に黒兎ね!」

 言ったことに気付き、顔を赤くしている桜野の隣で、杉崎が血の涙を流している。桜野の言い訳と杉崎の文句を聞き流していると、生徒会室の扉が開かれた。

「キー君、クーちゃん。あまりアカちゃんをイジめちゃだめよ」

 そう言いながら入ってくる女性。桜野と俺と同じ三年の生徒会書記、紅葉知弦(あかばちづる)。容姿、性格共に大人のようなクールで美人な人だ。

 ちなみにキー君とは杉崎、クーちゃんは俺の事である。杉崎の名前の「けん」は「鍵」と書くためキー君。俺は見た目が女っぽいのと、名前の「黒」からクーちゃん。

 アカちゃんとは桜野の事で、名前が「くりむ」だから、クリムゾン=真紅でアカちゃんらしい。

 杉崎の対面に座った頃、杉崎と俺が反論する。

「いじめてなんかいませんよぉ。ただ、辱しめていただけです」

「杉崎に乗ってやっただけだ」

「余計に悪質じゃない」

「同意の上ですから大丈夫です」

 杉崎の言葉に桜野が「嘘だ!」と言うが、全員でスルー。

 知弦を加えて新ためて話し出す。

「しかし、今日はどうも集まり悪いですね、俺のハーレム」

「杉崎のハーレムじゃなくて生徒会な」

「いいんじゃないかしら? 集まっても結局、お菓子食べて喋るだけじゃない、最近」

 そう言いながら俺はノートパソコンを、知弦は勉強道具を鞄から取り出した。

「知弦さんとクロさんは分かってませんねぇ。ギャルゲのように直接会わないと、好感度は上昇しないでしょう?」

「当然のように言われても困るけど」

「直接会わなくてもいいモノもありそうだけどな。まあ、それが本当だったら、好感度上げたくないから二人は来ないんだろ」

「ぐはっ! で、でも、知弦さんは俺との愛を育みに来てくれたわけですね!」

「…………。……あ、うん、そうね」

 否定よりも大きいダメージで杉崎が倒れた。スナック菓子をつまみながら勉強する人のテキトーな言葉って口撃力高いな。

「し、しかしこういうクールキャラこそ、惚れたら激しい違いない!」

「あ、それは正解。私、小学校で、初恋の子に一日三百通『好きです』だけを羅列した手紙渡して、精神崩壊まで追い込んだから。意外と脆かったから冷めちゃったけどね。······貴方達はどうかしら」

そう細目で口元に薄ら笑いを浮かべる知弦に杉崎は震え、俺は笑顔を返した。てか、貴方「達」って俺も入るのね、そう考えてたら、杉崎がなにかを決意した顔で言う。

「分かりました」

「え、この話の後で覚悟できたの? 私の中でキー君フラグが若干──」

「知弦さんとは、体だけの関係を目指すことにします!」

「…………。……クーちゃんはどう? さっきからずっと考え込んでたようだけど」

 今の杉崎の発言は、正直言って無いと思った人しかいないと思う。それほどのクズ発言のためか、知弦はすぐに俺に話を振ったな。杉崎はなんか自分の世界に入ってるけども。

 まあ、俺は俺らしく答えるか。

「そうだな。俺は知弦みたいなの、好きだぜ。だって、それほどまでに好きになってくれるんだろ? そこら辺の恋を追ってばかりの奴より、自分のことを見てくれそうじゃん。だから俺は好きだぜ」

 その言葉に知弦は顔を赤く染め、杉崎は俺に嫌悪と尊敬の目を同時に向けている。何気器用だな。

「クロさん。知弦さんをデレさせたのは許さんが、その女の子をデレさせる方法、俺に教えてくださいっ!」

「なんの事を言ってるんだ、杉崎は。俺から教えられることは何もないぞ。それと知弦、どうした? 顔赤いぞ」

 自覚したのか、知弦の顔は更に赤くなり、俺の言葉で落胆していた杉崎は知弦の顔を見て、血の涙を流し、吐血した。知弦は完全に乙女の顔になっていた。その光景を見ていると、知弦のスナック菓子に手を伸ばす桜野に気付き、声を掛ける。二人は放置しても問題ないだろう。

「桜野」

「なに?」

「太るぞ」

「うぐっ。……大丈夫。栄養を、背と胸に回すんだもん!」

「別にいいが、腹に回ったときは、一大事だな」

「ええい! はむ!」

 さて、いつの間にか復活していた杉崎と桜野いじりを交代して、俺は執筆でもするか。

 俺は作家としても活動しているため、生徒会の暇な時間に書いていたりする。たまにな。

 そんな感じで各々が集中しだしたとき、また生徒会室の扉が開かれた。

「おっくれましたぁー」

「す、すいません」

 対象的な態度で入ってくる二人。

 前の少女は生徒会副会長、椎名深夏(しいなみなつ)。髪を二つに分け、ツインテールにしているボーイッシュな少女。男よりも男らしい。百合気味なためか、男子人気より女子人気が高い。

 後から入った少女は生徒会会計、椎名真冬(しいなまふゆ)。深夏の妹で、生徒会唯一の一年生。姉とは真逆で、とても儚いイメージがある。白い肌や色素の薄い髪が更にそのイメージを加速させる。

 椎名姉妹が定位置につくと、杉崎が二人に話しかける。

「そうそう。深夏と真冬ちゃんは、『初めての時はあんなに面白かったのに』みたいなことって、なんかあるか?」

 最初の桜野の名言に話が戻る。

「なんだよ、やぶからぼうに」

「いやさ、会長が世間がつまらなくなったんじゃなくて、自分がつまらなくなったんだ、なんて久々にいいこと言うものだからさ」

「久々とは失礼な!」

 桜野が騒ぐが、無視。椎名姉妹は二人して考え込んでいたが、(まふゆ)が最初に答えを返す。

「真冬はお化粧……コスメですかね」

「化粧?」

「はい。子供の頃、母親がしているのを見て、すごくしたかったんです。それで初めて買ったときは嬉しくて──」

 と、こんな風に桜野の名言について、椎名姉妹と杉崎の三人で話していた。BGM代わりにしていたから話はあんまり聞いてなかったがな。

 パソコンの画面に集中していたが、ふと顔を上げると杉崎が立っていた。

「ううん、ハーレム万歳。いつ見てもいいねぇ、この光景。クロさんは男の娘だけど、それもいい味だしてるし。ああ、頑張って入って、本当に良かったなぁ」

 ……唐突に変なことを言い出したな。つか冒頭で自分で言ったは言ったが、男の娘って酷くね? そう思っていると、知弦が「そういえば」と返す。

「キー君とクーちゃんは〈優良枠〉で入って来たんだっけ。クーちゃんはともかく、キー君じゃそうは見えないのに」

「そうだよなー。鍵はどう見ても色ボケ男だしなー。神月先輩はあたしから見たら、勉強出来ても生徒会入る人には見えないしなー」

 (みなつ)は知弦に同意し、妹は苦笑していた。というか、俺も?

 杉崎と反論しようとすると、桜野がバンッと机に手を置いた。




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