生徒会の中心   作:赤羽 黒兎

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前回の続きです。


⒈駄弁る生徒会②

「散々言ってきたけど、やっぱりこの学校の生徒会役員選抜基準はおかしいわよっ! 人気投票からおかしいけど、〈優良枠〉にしても、杉崎(すぎさき)みたいな人が入るから、成績だけじゃなくてメンタル面まで評価に加えるべきだわっ!」

 桜野(さくらの)の何度目かの文句に杉崎がお決まりの反論を言う。

「俺はこのシステム、最高だと思いますけど」

 この学校の生徒会役員選抜はとても変わっている。

 まず、〈人気投票〉で生徒会メンバーを決める。ただしこれは、容姿が可愛い女子に決まる。つまり、ミスコンだ。

 美少女は男女共通の憧れのようなところがあるが、美男子は男子からの反感を買う。

 しかしこのシステム、結構理にかなっている。いくら容姿で選ばれたとはいえ、生徒達の「憧れの生徒会」。案外生徒会の言うことをちゃんと聞く。仕事なぞ誰にでもできる。カリスマ性さえあれば、結局のところ誰でもいいのだ。

 結果、今の生徒会は美少女の集まる場となる。

 その妥協点として〈優良枠〉。各学年成績優秀者であり、本人が希望すれば生徒会に入れる。普通はいないのだが、杉崎と俺は年度末にトップをとり、生徒会に入った。

「俺は〈自分以外全員美少女のコミュニティ〉に入るためなら、なんでもしますよ。たとえ入学当初最下位近くの成績でも、一年でトップに上り詰めるぐらい、楽勝です」

「な、なんか真冬(まふゆ)、たまに杉崎先輩が凄く大きく見えます」

「真冬っ! それは錯覚だ! (けん)なんかに憧れるなよ!」

「頭いいのは事実だぞ、深夏(みなつ)

「動機が不純なんだよ!」

「深夏、キー君。イチャつかないの」

「イチャついてない!」

知弦(ちづる)さんには俺と深夏がイチャついているよう見えましたか。しかし、安心してください。俺はハーレムをつくろうとしている男です。全員平等に愛すので、そんなに嫉妬しないください」

「してないわ」

「なん……だと……!?」

「ところでクーちゃんはなんで生徒会に入ったの?」

 知弦の言葉に驚愕し、流れるように倒れた杉崎を放置し、俺の話に移る。

「ん? 俺が生徒会に入った理由か。杉崎が入ったからだな。不安だろ、コイツ入れるの。入るって言ったとき、担任の小山から泣いて喜ばれたな。『入ってくれてありがとう! 会長はお子様だし、書記は精神的に恐いし、副会長は物理的に怖いし、会計は心配だし、もう一人の優良枠は風紀的に危険だしね。君だけが頼りだよ!』ってな」

 担任言われた時を思いだし、声を真似て言ってみる。周りをみると役員の皆は扉を凝視しながら固まっている。

「おい、固まってどうした?」

「いや。クロさんの声真似が上手すぎて……」

「小山先生が来て喋ってるかと思ったよ」

「真冬、ビックリして扉の方見ちゃいました」

「こんな声真似が上手い人がいるのか……」

 倒れていた杉崎まで驚いている。

「小山先生、そんなこと言ってたのね。潰そうかしら」

 知弦はやめなさい。

「そんなことより、やっぱり成績いいってだけで入れちゃうの、やっぱり変だよ! 黒兎(こくと)はまだしも、杉崎みたいな問題児が入ってきて……」

「生徒会の全員をメロメロにしちゃったのは悪いと思っていますが……」

「誰一人なってないわよ!」

「えぇっ!」

「なにその新鮮な驚き! 自信過剰も甚だしいわね!」

「そんな……。まだ会長とクロさんしかオチてないなんて」

「私もオチてないわよ!」

「ええぇっ!」

「今の杉崎は苦手だわ」

「マスオさん的な驚き方、やめてくれる?」

「オチてるのはクロさんだけか……。会長。あの夜のことはなかったことにするというんですか……」

 あの夜? 多分杉崎の妄想か何かだろ。

「夢の中で何度も俺を求めて来たじゃないですか」

「知るわけないでしょ!」

 やはりな。その後、しばらく口論が続き、桜野が疲れたことで終わる。その様子を見かねたのか、知弦が杉崎に話しかける。

「キー君。私は別に貴方のこと嫌いじゃないわ。でも、ハーレムを作るって宣言しちゃうんじゃなくて、誠実さで落とす王道の方が利口だと思うわよ?」

「う、ううむ……。知弦さんの意見も一理あると思いますけど……。しかし、どう取り繕っても、これが、俺ですから! 不器用で性欲に忠実ッスから!」

「芯からこってり腐りきってるなお前」

 (みなつ)が冷たい目で杉崎を見ていた。

 その後、杉崎が自分の事を魔の手と言ったり、学園ドラマをえらく汚したり、桜野の嫉妬深さ? を見たり。

 杉崎の味方がいなくなったし、話題を変えてやる。全員が共感しやすいように。

「まあ、桜野が最初に言ってたことって、意外と恐怖になりうるんだよな」

「? なに? どういうこと?」

「つまらない人間になる……つまり、恵まれていてもそれを感じないこと。……杉崎は今、この生徒会って楽しいか?」

「え、はい、楽しいですよ。ハーレムみたいですし」

「こんな杉崎が『この生徒会にも飽きたな』とか言ってたら、ある意味恐怖だろ」

「あー。まあ、分からなくないわね、それは」

 珍しく杉崎を用いた例に桜野は同意し、嘆息する。

「生活ランクと同じよ。一度裕福になったら収入が落ちても生活基準を下げられないのと一緒で」

「また、えらく学生らしくない例出だな」

「うちがそうだったのよ。お父さん、経営者だから浮き沈み激しくて」

「なるほど。それで会長美少年を金ではべらかす趣味が未だにやめられないと……」

「あの休日のはそういう……」

「なにその趣味! 私悪女じゃない! それに黒兎は何を見たの!?」

「それに男の頬を札束でペシペシ叩く性癖も、変えられないと……」

「あいつの頬が赤かったのにはそんなことが……」

「私どんだけ貴族なのよ! そんなことしてないわよ!」

「貧乏な今は、家に侵入するアリの手足をもぐことが生き甲斐……と」

「この前、鞄から出てきた黒いのは……」

「ただの根暗女じゃない私! お金とかの問題じゃない! あと、黒兎のは本当にいつの話!? 一番怖いのよ!」

 桜野がまた全力で叫んで疲れている。

 しかし、桜野が言ったことも合っている。上に行くにも限界があり、停滞したとき「つまらない人間」になる。

「ま、真冬はそうなりたくないですけど……でも、どうやったら、そうならずにいられるのかよく分かりませんね」

 妹が落胆する。その通りだ。その後に知弦が言った、「悟り」に至ればつまらない人間にはならないだろう。

「えー、つまんねーな、なんかそれ」

 姉がむくれる。……確かにつまらない

「ま、勝ち組と呼ばれる人は、どんどん上に行き続けるけどね。大概の人間はどこかで妥協して、そこそこ幸せになるのよ」

「そこそこ幸せに……ねぇ」

 知弦の言葉の最後を復唱して考える杉崎。

 そこそこの幸せ。自分の代理がたくさんいる環境から抜け出す勇気や気力ないまま日々を過ごす、か……。

「駄目だな」

「え?」

 杉崎の呟きに全員が杉崎を見る。その視線を一身に受け、そして、思い切り立ち上がった。

 

「俺は美少女ハーレムを作る!」

 

 杉崎は高らかに宣言する。俺以外のメンバーは「またか」といった様子で杉崎を見ていた。俺はニヤリと笑う。

「いいじゃん、そういうの。気に入った」

 全員が俺を見る。

「妥協は高い所からするってことだろ。今に満足してないってことだしな」

「……なるほどね。とりあえず行くとこまで行ってみようってことね。いいんじゃないかしら。好きよ、そういうの」

 知弦が微笑む。椎名(しいな)姉妹も笑っている。狙わないところで評価を受けるな、杉崎は。

 で、桜野はというと……。

「えー、あんまり頑張るのは疲れるよぅ」

 既に妥協していた。スナック菓子を頬張りつつ、幸せそうな顔をしている。

 桜野は知弦のスナック菓子を食べ終わると、満足そうに宣言した。

「というわけで、今日は解散しますかぁ」

『…………』

 全員が彼女を駄目人間と思うが、結局解散する。

 ……さて、俺たちは仕事(ゲーム)を始めるか。

 

 

 

「で、杉崎と黒兎はまた生徒会室に残ってるんだ」

 くりむは校門前で再び出会った生徒会メンバー(女性陣)に苦笑した。彼女達も、どこか優しげな顔をしながら微笑んでいる。

「キー君は……私達の大黒柱なのかもね」

「大黒柱?」

「そう。私達全員、どこかちょっとフクザツな過去があるみたいでしょう」

 その言葉に全員の顔が曇る。

「でも、あの空間は、とても救われる、それを作っているのは、間違いなく、キー君なのよ。だから……大黒柱。生徒会、ひいてはこの学校のね」

 その言葉にくりむ達も生徒会室に視線を向ける。

「あれじゃあまるで学園ドラマものの先生役よね」

「ま、真冬はでも凄く感謝しています」

 真冬の言葉に全員で苦笑する。しかし、その後に深夏が疑問を投げ掛ける。

「鍵のことは分かったが、神月(こうづき)先輩やあたし達は、どうなんだ?」

 その疑問に全員が固まるその様子に深夏は焦るが、知弦がなだめる。

「大丈夫よ深夏。今はキー君与えてくれるモノに甘えましょう、私達は。でも彼は、クーちゃんは、私たちに何も話してくれないものね。キー君はなにか知ってるみたいだけれど、私たちには未だに何も分からないのよね。私たちをどう思ってるかも……ね」

 その言葉に全員生徒会室を不安気に見る。

 彼女達は、彼の事を、何も知らない……。

 

 

 

「クロさんもやらなくていいんですよ。俺一人でも出来ますから」

 静かになった学校の生徒会室にいる二人の内の一人、杉崎がもう一人、黒兎に話しかける。

「お前一人にやらせるか。俺は男だし、一応先輩だぜ」

「しかし、見た目美少女ですから。あまり疲れている姿を見たくないんですよ」

「まあ体力少ないしな。でもそこは、技術で補うし」

「それでも心配ですよ。クロさん、いえ黒兎さんは──」

「それ以上は言うな」

 杉崎の台詞を遮るように威圧をかける。

「お前しか知らなくて、ここに俺とお前しかいないとしても、俺のことは口に出すな」

「す、すいません」

 生徒会室に静寂が訪れる。……しばらくして、その空気を破ったのは黒兎だった。

「さて、辛気臭い話はやめて帰ろうぜ。杉崎のやってる仕事で終わりだしな」

「そ、そうですね。(かぎ)は俺が返しときます」

「よろしく~」

 生徒会は、今日も無事終了した。

 

 

 

 十二時を回った頃、とある家の二階から電話の音が鳴り響く。

「もしもし」

 電話に出たのは黒兎。スマホの向こうからは女性の声が聞こえる。

「二年間、その学校で過ごしてどうだった?」

「面倒な集団がいると感じた。この一年で動くだろう」

「そう。では、よろしく頼むよ《ラビット》」

「任せろ、《キャット》」

 通話が終わった後には、目を薄め微笑む男がいた……。




第一話終わりました。
ストックが無いこと、リアルで色々あるため、投稿し忘れていた「存在しないプロローグ」を投稿した次の投稿は、3月後半から4月になると思います。
誤字脱字報告、評価や感想、よろしければお願いします。
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