生徒会の中心   作:赤羽 黒兎

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 長らくお待たせしました!
 久しぶり更新します!
 遅れてすいませんでした!!


2.怪談する生徒会②

 その後も俺たちは怪談を桜野(さくらの)に聞かせ続けた。もちろん、話の主人公は全て『くりむちゃん』として。

 (まふゆ)は人の体内に入り自殺を誘発する悪霊、通称『中に居る』とやらの脅威を語り、知弦(ちづる)は数年前の連続殺人事件『顔剥ぎ事件』の真相を、霊的なものと解釈するとスッキリするというファンタジーかつ理論的で説得力のあるタチの悪い話を展開。

 で、残すは俺と杉崎(すぎさき)なのだが──。

「杉崎、俺からでいいか?」

「お願いします」

「んじゃ、始めるか。

 これは、とあるテレビ番組の話。

 ある家庭に一人の女の子がいた。……その子を仮にK子としよう」

「くりむちゃんじゃないのね。。すこし安心したわ」

『ちっ』

 ……やはりくりむちゃんとするべきだったか?

「続けるぞ。

 ある日K子はお母さんと買い物に出ていた。『すぐ終わるからここで待ってて』そう言われたK子はおとなしくその場で待っていた。……数分後お母さんが戻ると、そこにK子はいなかった」

「誘拐だな!? 女の子を攫うなんて……そのロリコンは許さない!」

「杉崎、うるさい」

「すいません」

「まぁ杉崎の言うとおり、K子は誘拐されていた。警察が捜索したものの、見つかることはなかった」

「な、なによ。テレビ番組関係ないじゃない」

 ビビりつつも不満そうに桜野がつぶやく。

「最後まで聞けって」

 せっかちだと苦笑いする。

「視聴者の依頼を解決するテレビ番組、知ってるか?」

「私は知らないわね」

「あたしも知らねぇなぁ。真冬(まふゆ)は?」

「真冬も知らないです」

「私は聞いたことはあるわ」

 女性陣は知弦が聞いたことあるくらいか。

「杉崎、お前は?」

「知ってますよ。アレですよね、『探偵ナイ……』」

「それ以上はやめろ!」

 杉崎、番組名はアウトだぞ。

「知らないなら知らなくてもいいや。まあその番組にお母さんは依頼を出したんだ。

 ……後半へ続く」

『……え?』

 少し休憩だ。話し続けるのは疲れるからな。そう思い、お茶を飲んでいると杉崎から質問が。

「えっと、クロさん。後半って……」

「後半は後半だろ。疲れたから休憩だ」

 みんなは呆けている。

「ほら、茶でも飲めよ」

 それぞれお茶を飲み始める。

「さて、休憩終わりっと。後半スタートだ。

 その依頼に対し、番組は世界的に有名な能力者を呼んだ。その能力者をK子が連れ去られた場所に呼び、K子の情報となるものを渡した。すると能力者は瞬時に口を開いた……。『この子、世界のあちこちにいるわ』と」

「え、それってどうゆう……」

 桜野が涙目になりながら聞いてくる。

「臓器売買、かしら」

「正解だ、知弦。そう。K子は臓器を世界にばらまかれていた。つまり、誘拐され、殺され、売られた、という訳だ」

 桜野と妹が涙目で震えている。

「これが、お蔵入りとなったテレビ番組の話だ。

 ……次同じ目に会うのは、あなたかもしれません……ってな」

 生徒会メンバー全員が体を震わせている。

「クーちゃんの話、予想以上に恐かったわね。アカちゃんなんて、ほら」

 そう言って知弦は腕にしがみついたまま気絶している桜野を引きはがす。

「そうか、そんなに怖かったのか。身近な話題からの派生だった分、余計に怖かったのかもな。そうだ、今日は家まで送ってこうか? ……桜野も一緒に」

「そうね、アカちゃんともどもお願いするわ。ところでこの状況どうするの?」

 そう言われて周りを見る。どうやら生徒会メンバーは震えていたのではなく、気絶し痙攣していたようだ。あの深夏までもだ。そんなに怖かったか? 

「あ、うん。みんなが起きるまでしゃべりながら待ってようか」

「……そうね」

「じゃあまずは『今時のヒーロー像について』とかどうだ?」

「いいけど、珍しいわね」

「そうか? まあこの空気が破壊できればお題なんてなんでもいいのさ」

「確かに、そうね」

 知弦が珍しく肯定的だ。いくら知弦といえど、この空気には耐えられないみたいだ。

「では、まずは俺からだ。俺が思うヒーロー像はな──」

 

 

 

「……んで、そうすれば見つからないってわけだ」

「なるほどね」

 知弦は熱心に俺の話を聞いている。熱心に聞くほどのものではないのだが……性格的に仕方ない、のか?

 さて、あれから一時間経って杉崎達が起きてきたし、ここまでだな。

「知弦。杉崎達が目を覚ましたぞ。だからここまでだぜ」

「ええ、仕方ないわね」

 心なしか知弦が悲しそうな顔をしているように見える。仕方ない。

「話なら帰りに桜野がいなくなってからでもしてやるから」

「! ええ、わかったわ」

 知弦は嬉しそうに笑顔を浮かべた。同じタイミングで杉崎達が起きだした。

「ええっと、俺たち気絶してたみたいですね。すいません」

黒兎(こくと)が悪いわ! 別に怖かったわけではないんだけども、私たちが気絶するような話をすることないじゃない!」

「桜野、怖かったんなら素直に言おうぜ。知弦は気絶してなかったんだしよ」

「ええ!? 知弦さん気絶してないんですか!? あ、確かにクロさんと笑顔で話してましたね」

 気絶してない知弦に全員が驚いていた。特に(みなつ)の驚きようはすごい。

「なに!? あたしでも気絶したっていうのに……。さすが知弦さんだな。って、話?」

「ああ。俺が起きた時、二人は楽しく談笑してたんだ。気にならないか、深夏(みなつ)

「確かに、それは気になる。あの二人だしな」

「ということで、なに話してたんですか?」

 ひとしきり驚いたあとに杉崎と姉が小声でなにかを話している。結果、杉崎が俺に質問を投げかけた。

「何の話、か……。まず初めに『今時のヒーロー像』について話して、そのあとに『バレない死体の処理方法』だったかな」

「ええ、そうね。特に『井の〇公〇殺人事件』の処理方法は聞けてよかったと思えたわね。まだ話の途中だけれど」

「後半の話ぃぃいい!! 何物騒なこと話してるんですか! 知弦さんもなんか嬉しそうだし!」

 杉崎、うるさいぞ。「うるさいって、ちょっとクロさん!?」うるさいって。

「前半の話だけならあたしも加わりたかったな……」

 姉が落ち込んでるな。そんなに話したかったのか、今時のヒーロー像。今度一緒に話そうな。

「真冬はあの二人が怖いです」

「その気持ちわかるわ、真冬ちゃん」

 そしてそこの二人よ、その反応は傷つくぜ……。桜野はあとでお仕置きな。「なんで!?」同級生だから? 「理不尽!」

 さて、杉崎の話が残っているのだが……この状況だと無理だな。面倒だと思いつつも手をたたき、注意を集める。

「さて、杉崎の話が残っているわけだが、時間も迫ってる。どうする?」

「今聞くに決まってるじゃない!」

 怖いのに今日中に終わらせたいからって無理してるな。いや、怖いからこそ、か。

「そうかそうか。じゃあ杉崎、よろしく」

「わかりました、クロさん! では始めます。

 くりむちゃんという少女がいました。彼女は……杉崎(けん)という少年にメイドとして雇われてしまいました。終わり」

「ひぃぃぃぃぃぃっ!」

 一文で桜野を怯えさせ、俺たち生徒会メンバーを呆れさせた。

「くりむちゃんは、必修科目をおとしました」

「ひぃ!」

「くりむちゃんは、失言問題で生徒会長を辞任に追い込まれました」

「ひゃあ!」

「くりむちゃんは、杉崎鍵にメイドとして身も心も捧げました」

「いやあああ!」

「くりむちゃんは、祈り虚しく、その後背が伸びませんでした」

「いやああああ!」

「くりむちゃんの歯ブラシを、杉崎鍵がべろべろ舐めて、そっと戻しました」

「きゃあああああああ!」

「くりむちゃんの最後の言葉は、『ふぅ、危なかったぁ』でした」

「油断した!」

「くりむちゃんの人生は。夢オチでした」

「誰の!」

「くりむちゃんは陰で『頭がアレな子』と言われているのに、(つい)ぞ気付きませんでした」

「酷いっ!」

「くりむちゃんは、実はくりむちゃんじゃありませんでした」

「なんか一番怖いわそれ!」

 杉崎の口から繰り出される「怖い話」にくりむちゃん……もとい桜野は完全にノックダウン。平静を保ててないな。

 杉崎と桜野以外の生徒会メンバー、つまり俺たちまで怯えている。それぞれが杉崎に対しての恐怖を呟いてる。かくいう俺も「恐い……鍵怖い……。殺っ! ダメだ……恐い」と杉崎に手を出しそうになったりした。俺も大分危ないな……。

「クーちゃん大丈夫?」

 知弦が心配そうに聞いてくる。俺よりは平気みたいだが、知弦も若干震えている。

「大丈夫に見えるか? もう鍵が怖すぎる……」

「確かにそうね」

「クロさんも知弦さんも酷くないっすか!?」

 杉崎なんてこんな扱いで十分だろ。

 杉崎は罵倒に屈せずに知弦に話しかける。

「でも、皆好きですよね、怖い話。なんなんでしょうね。『怖い』って、どちらかというとマイナスの感情でしょうに」

 知弦は髪をかきあげて微笑む。

「スリルって言葉あるでしょ。安全が保障された危険を楽しむ、とでもいうのかしら。ジェットコースターもそうでしょ?」

「でもその『スリル』からして中々不思議な感覚ですよね。いくら安全が保障されていても怖いことが楽しくなるって、なんか倒錯してますよ。みんなが当然のように楽しんでいるから誰も言いませんけど、ある種凄く歪じゃありません?世が世なら異常と言われても仕方ない気がしますよ」

 妹が「確かにそうかもしれませんね」と頷く。知弦は考え込み、姉が「考えてみるとそうだなー」と腕を組む。

「桜野の反応が普通、だな」

 俺の言葉に桜野以外が頷く。

「そういう意味じゃ……今の学校の状況自体が、なんだかとても怖いことのような気がしてきました」

「そうね……そうかもしれない。怖い話を楽しむ精神が異常なことだとしたら……。この学校は……いえ、この地球は、異常な人間がわらわらいるコミュニティってことよね」

「確かに。怖いことを言うね、知弦」

「そ、そんな考え方やめろよー、三人とも」

 姉が少し怯えている。しかし、妹も「そうですね……」と呟く。

「真冬は怖い話大好きですけど……どうして大好きなのかは、あんまり説明つかないです。それこそが、理解不能の怖いこと、かもしれませんね」

 俺たちは沈黙する。……理解不能の楽しさを抑えこもうなど土台無理な話だ。この学校の現状を変えるのは難しい。

「ほら、だからいったでしょう! 一番怖いのは人間だって!」

 なぜか偉そうに胸を張る桜野。俺たちは苦笑するが、心のどこかで、その通りだと感じていた。特に人の裏に関わる、俺は特に。

(こえ)ぇな、あぁ……ホントに(こえ)ぇ」

「人間って、意味わかんねぇ」

 俺と姉の呟きが妙に大きく響く。

 今日の議題の結論。

 

 怖い話の流布を止めるのは、不可能。

 

 ……結論がでても浮かない顔の桜野が杉崎は気になるみたいだ。……桜野にゃ、悪いことしたな。

 それに桜野のようなタイプからしたら、周囲が楽しそうに語ること自体が怖いのかもな。

 …………。

 怖い話の止め方、か。ま、杉崎あたりがなんとかするだろ。

 

 

 

「なんか急にクラスで怪談聞かなくなったわっ。これも生徒会長の人望の賜物ね!」

 例の会議から二日、桜野は嬉しそうに杉崎に語る。久々に三人での生徒会室で、杉崎は桜野の言葉を聞き流す。怖い話を聞かなくなったことが相当嬉しいみたいだ。

「でも……なんでこんな急に沈静化したんだろ。不思議よね、やっぱり」

「沈静化……ね」

「?」

「いえ、なんでも」

 俺は密かに笑う。

 怖い話は止めようとしても止められないもの。止めるためには……怖い話しかない。

「やー、本当に良かったー。風紀の乱れが治まって」

「そうですねー。良かった良かった」

 桜野の無邪気な笑顔に、杉崎は罪悪感でも感じているのか。

 ……だって。

 

 杉崎は、新しい七不思議を作ってしまったのだから。

 

 要約すると、「七不思議を全て知ったら降りかかる呪いは確かに存在し、そして、ほかの怪談と同じく進化している」という桜野に都合がいい七不思議を作ったわけだ。

 この怪談の終わりの台詞(セリフ)が、これ。

 

()()()()()()()()()なんて、誰が言った?』 

 

 多分大元はここらへんだろう。今はもうめぐりめぐって()()()()()()()()()()()()からな。これも俺の予想だな。こういう変化では大元はそうそう変わらない。だから大元の予想はしやすい。しかも桜野のための噂だから余計にな。

 結果。この話で軽くでも怖くなった人が多いのか、怪談ブームはなりを潜めた。

「やっぱり楽しい話題が一番だよねっ。でも不思議だなぁ。怪談、昨日まで皆あんなに話してたのになぁ」

 怪談を聞きたがる人。

 怪談を話したがる人。

 怪談を怖がる人。

 怪談を憎む人。

 そして。

 

 怪談を作り利益を得る、杉崎のような、人。

 

「会長ぉ」

「うん。なぁに、杉崎」

「やっぱり会長の言う通り、一番怖いのは人間っすね。いや、勉強になりました」

「? え、えへん! そうでしょう! ようやく分かってきたじゃない、杉崎!」

 胸を張る桜野。

 桜野が嫌いな恐ろしい怪談を流して。

 桜野は杉崎に、杉崎は桜野に笑顔を向けている。

「杉崎、罪悪感が凄そうだな」

「罪悪感? どういうこと、黒兎」

「やめてくださいよ、クロさん。俺はなんもしてないんですから」

「そういうことにしといてやるよ、杉崎」

「ありがとうございます」

「むー。なんか私だけ知らないって……もー」

 そういえば、もう一つ新しい怪談もあったな。これは……多分姉が作ったやつか? 悪を退治してまわる女生徒、か。杉崎のとは真逆だし、姉の好きそうな展開になるしな。でもなんでパーカーで顔隠してるんだか。かっこいいからか?

 ふと、明日の時間割が目に移る。

「お、桜野。明日家庭科あるぞ」

「家庭科? それがどうかした?」

 杉崎は意図が分かったようだ。

「いや、家庭科といえば家庭科室、家庭科室といえば、姉の怪談だろ」

「んにゃー! せっかく忘れてたのにー!」




 高校に入学し、時が経つのは速いもので。
 パソコンを友人から貰ったので久しぶりに書こう、と。
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