生徒会の中心   作:赤羽 黒兎

6 / 12
 コロナだなんだと騒ぎ、学校は休校。春休みも今、過ぎようとしています。課題が一つも終わってません。こんなの書いてる暇ないのに、なぜか書いちゃう。病気かな?


3.放送する生徒会①

「他人との触れ合いやぶつかり合いがあってこそ、人は成長していくのよ!」

 桜野(さくらの)がいつものように本の受け売りを偉そうに語る。

「なんですか? それ」

 杉崎(すぎさき)が聞き返す。すると桜野はホワイトボードに議題を記し、「これよ!」と、バンッとボードをたたいた。

「なに? ……ラジオ放送?」

 ホワイトボードにはくっきりとそう記されているが、やはり意味が分からない。桜野以外の生徒会メンバーは全員首を傾げている。

「そう! これから生徒会で、ラジオをやろうと思うの!」

「ら、ラジオって……」

 (まふゆ)が何か嫌な予感でもしたのか、少し怯えながら訪ねる。

「あの……ラジオですか? 音楽かけたり、喋ったりする……」

「そうよ。その、ラジオ」

「……えと。それって……あの、なんで生徒会がするんですか? そういうのは放送部とかの仕事だと、真冬(まふゆ)は思っていたのですが……」

 全くだ。誰もがそう思ってる。だが、相手は桜野だ。

「何言ってるのよ! 生徒会って、生徒をまとめる立場にある組織よ! 政見放送みたいなものもたまにはしないといけないわ!」

「政見放送なんて言葉、よく知ってたわね、アカちゃん。よしよし、いい子いい子」

 知弦(ちづる)が子をあやすように桜野の頭を撫でる。気持ちよさそうに目を細めるも、「うがー!」と知弦の手を払いのける。

「政見放送ぐらい、知ってるよ! 子ども扱いしないで!」

「そうね、アカちゃん。ごめんなさいね」

「わ、分かればいいのよ」

「ええ。……そういえば昨日、高視聴率クイズ番組で『政見放送』をテーマに問題が出てたりしたけど……。いえ、なんでもないわ」

「桜野……ぷっ」

黒兎(こくと)! なに笑ってるのよ!」

「いや、なんでも。さ、わかったから進めてくれ。……ぷっ」

「黒兎ぉ! ……と、とにかく! 政見放送よ!」

 やはり思いつきか。いやー、笑った笑った。

 しかし、桜野は言い出したら聞かない。(みなつ)が嘆息混じりに発言する。

「まあ、文句言ってもどうせやるんだろうけどよ……。でも、なんでラジオなんだ? 映像の方がいいんじゃねーの?」

「それも考えたけど……放送部に押しかけたら、『今渡せる機材はこれしか……』と泣かれたから、ラジオなの」

 桜野はてきぱきと準備を開始する。放送部にやらせたのか、配線関係は水面下で終わっていた。桜野は俺たちの前にそれぞれマイクスタンドを設置した。俺の前にのみ、パソコンが置かれた。……なんで?

「そりゃ教室出た時に放送部の子に心配そうな目で見られるわ。……可哀想だな、放送部も」

「か、完全に準備されちゃってます……」

 妹が元気をなくしている。目立つことが苦手なタイプだしな。ご愁傷様。

 全員が諦めて状況を受け入れる中、桜野はただ一人テンションが高い。

「ほら、最近は声優さんのラジオも増えたじゃない。美少女がたくさん集まって喋っていれば、皆、大満足のはずよ」

「声優、ねぇ」

「会長、声優やパーソナリティ、そしてリスナーを舐めてるでしょう」

 桜野は意地でもこの企画を押し通す気のようだ。

「可愛い声でキャピキャピ喋りあっていれば、男性リスナーなんてコロリと騙されるはずよ」

「謝れ! 俺とクロさん以外の男性に謝れ!」

「おい、俺を巻き込むなよ」

「杉崎と黒兎は騙されるんだ……」

「だから、俺を巻き込むなよ……」

「ま、まあ、それに、五人……六人もいれば会話が尽きることもないでしょう。大丈夫大丈夫。いつも通りに喋ればいいんだから」

「今誰のこと抜かしました、会長!?」

「もちろん杉崎よ。杉崎は存在自体が放送コードにひっかかってるから」

「ひでぇ!」

 まあ杉崎だしな、仕方ない。自制する気はなさそうだが。

 いつのまにかセッティングは全て完了している。俺はパソコンで録音状況を確認してなきゃいけないらしい。ああ、大変だ。録音放送であったのが唯一の救いか。

 妹も諦めているのか、マイクをツンツン突いていた。

 知弦はのどの調子を確かめている。やるなら手を抜かない構えのようだ。

 姉は落ち着き払い、腕を組んで、椅子にふんぞり返っている。

 杉崎も覚悟を決めたようだ。

「さあ、始めるわよ!」

 桜野は手元の大量のスイッチの一つを押す。

 さ、やるか。

 

 

 

 ON AIR

 

桜野「桜野くりむの! オールナイト全時空!」

杉崎「放送範囲でけぇ!」

 

 ♪ オープニングBGM ♪

 

桜野「さあ、始まりました。桜野くりむのオールナイト全時空」

知弦「夜じゃないけどね」

黒兎「全時空って……」

桜野「この番組は、富士〇書房とWEB小説投稿サイト ハー〇ルンの提供で送りします」

深夏(みなつ)「どうしたんだよ……。無駄な投資も甚だしいな、おい……」

桜野「まあ、ギャラもゼロ円だし、機材も放送枠にもお金かかってないから、スポンサーにしてもらうことは何もないんだけどね」

真冬「じゃあなんで提供を読んだんですか……」

桜野「それっぽいじゃない。うん、今のところ、とてもラジオっぽいわ」

真冬「……はぁ。いいですけど」

桜野「こら、真冬ちゃん! そんなテンションじゃ駄目よ! リスナーは、もっと、こう、女の子の元気な会話を望んでいるんだから!」

真冬「そうでしょうか……」

桜野「うん。男性リスナーなんて、そんなものだよ」

杉崎「こらこらこらこら! なんでリスナーを見下げた発言すんの!? 生徒に喧嘩売ってんの!?」

桜野「パーソナリティあっての、リスナーじゃない」

杉崎「リスナーあっての、パーソナリティだ!」

深夏「おお、鍵が物凄く真っ当な発言してる! すげぇ! ラジオ効果、すげぇ!」

桜野「……そうね。私が間違ってたわ、杉崎」

杉崎「分かればいいんですよ、分かれば……」

桜野「そうよね。やっぱり、ある程度媚びておいた方が得よね。うん、私、大人」

杉崎「だから、そういう発言を堂々としちゃ駄目だって──」

桜野「お便りのコーナー!」

杉崎「無視!? ラジオなのに、言葉のキャッチボール拒否!?」

知弦「それがアカちゃんクオリティ」

黒兎「桜野だから諦めろ」

杉崎「なんで貴方たちは要所要所でしか喋らないんですか! もっと舵取りして下さいよ!」

知&黒『…………』

杉崎「ラジオで無言はやめましょうよ!」

知&黒『……パンッ!』

杉崎「無言でハイタッチもやめましょうよ!」

桜野「さて、一通目のお便り」

杉崎「進行重視かっ! 会話の流れ無視ですかっ!」

桜野「『生徒会の皆さん、こんばっぱー!』はい、こんばっぱー!」

杉崎「え、なにその恥ずかしい挨拶! 恒例なの!?」

杉崎以外「こんばっぱー!」

杉崎「俺以外の共通認識!? クロさんまで!」

桜野「『オールナイト全時空、いつも、楽しく聴いております』ありがとー」

杉崎「嘘だ! 第一回放送のはずだ、これは!」

桜野「時系列なんて些末な問題よ、杉崎。このラジオにおいてはね」

杉崎「さすが『全時空』!」

桜野「あと、言い忘れてたけど、一応、生でも放送されているわよ、これ。聴いてる人は少ないだろうから、また明日昼休みに校内で流すけど」

杉崎「どうりでメールが来るはずだ! っていうか、じゃあもっと発言に気を付けて下さい!」

黒兎「杉崎、桜野だぞ?」

杉崎「そうでしたね!」

桜野「はいはい。じゃ、メールの続きね。『ところで、皆さんに質問なのですが、皆さんは、どんな告白をされたらうれしいでしょう? 僕は今、恋をしているのですが、どう告白しようか迷ってます。くりねぇ、是非アドバイスお願いします』」

杉崎「『くりねぇ』って呼ばれてんだ! こんなロリのくせに!」

桜野「そうねぇ……。これは難しい問題ね。でも、恋愛経験豊富な私に言わせれば──」

杉崎「男と手繋いだことさえないくせに……」

桜野「普通に告白すればいいと思う」

杉崎「なんかテキトーなアドバイスした──────!」

桜野「知弦はどう思う?」

知弦「そうね……好きにすればいいんじゃないかしら。私には関係ないし」

杉崎「パーソナリティがリスナーに冷てぇ──────!」

桜野「真冬ちゃんはどう?」

真冬「え? そ、そうですね……。えと……真冬は……。……わかりません」

杉崎「まさかの『わかりません』発言キタ──────!」

桜野「深夏は?」

深夏「当たって砕けろ! 以上!」

杉崎「もっとリスナーのハートを丁重に扱おうよ!」

桜野「黒兎は?」

黒兎「え? そうだな……相手と会話をすることで仲を深め、自分を知ってもらう。その中で自分に好意を寄せてもらえるように努力するか、告白を断れない状況を作り出すか、だな。

 仮に振られても、相手の意思を尊重することが大切だ」

杉崎「一人真面目だ──────!」

桜野「次のお便り。『妹は預かった。返してほしくば、指定口座に──』……ん? あれ? これ、間違いメールね。ちょっとスタッフ―、しっかりしてよぉー。まったく。……じゃ、次」

杉崎「スルーしていいの!? 今の内容、そんな簡単にスルーしていいの!?」

黒兎「安心しろ、杉崎。どこからお便りがきたか、ちゃんと記録とってあるから」

杉崎「なら急いで警察に……」

桜野「『生徒会の皆さん、こんばっぱー』こんばっぱー!」

杉崎以外『こんばっぱー!』

杉崎「だから、なんでこれだけ皆ノるの!? いつ打ち合わせしたの!? さっきの誘拐犯もどきも気になるし」

桜野「『くりねえ。どうしよう。私、お金が早急に必要で……。というのも、うちの妹が誘拐されちゃって、両親が金策に走り回っているんだけど、集まらなくて……どうしたらいいかなぁ』」

杉崎「ディープなお悩みキタ──────! っていうか、ここにメールする以前に、警察に連絡しろよ! それに、間違いなくさっきのメールに関連してるな、これ!」

桜野「黒兎。どう?」

黒兎「ん。問題ない」

桜野「では、ラジオネーム《被害者の家族》さんには、黒兎から、《まとまったお金》をプレゼント! 待っててね!」

杉崎「ええええええええ!? 用意すんだ! しかもクロさんから!」

黒兎「大丈夫だ、俺の口座には使われないお金がいっぱいあるからな」

桜野「よし、じゃあ、ここで一曲。先日私が出したニューシングル。《妹はもう帰ってこない》を聴いていただきましょう」

杉崎「空気読め───────────────────!」

桜野「どうぞー」

 

 ♪ 《妹はもう帰ってこない》フル再生 ♪

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。