「人生やり直すのに、遅すぎることなんてないのよ!」
何気聞き飽きた名言ではあるためか、
しかし。
「貴方に言ってるのよっ、杉崎!」
桜野はビシッと杉崎に人差し指を突きつける。またなにかやらかしたのか、杉崎は。
杉崎が目をぱちくりさせていると、隣の
「確かにこいつ、早急に人生をやり直す必要があるよなー」
姉が桜野にそう返しながら、腕に込める力を上げる。
「いいわね。今のキー君もいいけど、更生したキー君というものにも興味があるわ」
「ちょ、更生って! 俺は元から超真面目人間――」
杉崎の言葉が止まる。首を絞める姉の力が強まったのだろう。見ていて楽しい。杉崎は姉に「ギブ」の意を伝えるも、完全に無視されている。
「更生された杉崎……。いいかもな、それ」
「
俺と
「なにげに……今の俺を全否定された気がするよ。それに、俺の唯一の良心であるクロさんまで……」
杉崎は姉の腕をはずそうともがきながら、俺たち二人に視線を送る。
妹は目を逸らし、「お、お姉ちゃん、そろそろ放してあげてよぅ」と姉に頼む。
そうして、可愛いであろう妹からの要請を受けた姉はというと……。
「ごめん、真冬。お姉ちゃん、生まれて初めて真冬のお願いを……却下する!」
「なぜこんなところで!?」
激しいツッコミと同時に、杉崎の首が更に絞まる。
ガクッ。
急に意識を失った杉崎を、姉は突っ伏すような形で机に置く。
「……おーい?
「『やっちゃった』ってなに!? お姉ちゃん!?」
「ちょ、
意外そうな顔をする姉に詰め寄る、焦った様子の妹と桜野。
「おお勇者杉崎! 死んでしまうとは何事だ! 仕方のないやつだ。お前にもう一度機会を与えよう! 戦いでキズついたときは碧陽学園に戻り、生徒会室に泊まってキズを回復させるのだ。再びこのようなことが起こらぬことをワシは祈っている!」
「
「『もう一度機会を与えよう』って、何様よ! それに、機会って一体何の機会よ!」
俺のドラ〇エネタに妹がツッコミを入れたことに少しビックリしたが、多分と言うあたり妹も杉崎が死んだと思ってるみたいだ。……桜野の疑問には、残念ながら答えることはできない。
「生徒会室で初の死人ね……。まさかこういう展開になるとは想定していなかったわ……。仕方ない。隠しましょう。五人で。ここからは桐〇夏生の『OU〇』的展開で読者を獲得していきましょう。前にクーちゃんから聞いたことも試せるしね。……ふふふ。腕が鳴るわ」
「試す、か。……ははは。じゃあ、俺も頑張って手本でも見せてやりますか」
知弦は棚からのこぎりを出し、俺はカバンから二本のククリナイフを出す。
「ちょ、知弦?
「おい、桜野。抑えててくれ」
「その間に四肢を切断──」
「されてたまりますかぁああああああああああああああああああ!」
杉崎が慌てて起きた。全員がボーっと杉崎を見る。
姉がぽつりと呟く。
「あ、生き返った。……つまんねーの」
「軽くね!? 俺の生死の扱い、軽くね!?」
「隠し通す自信あったのに……」
「だな……。空気読もうぜ、杉崎……」
知弦が残念そうにのこぎりを棚にしまっていた。俺もしぶしぶククリナイフをしまう。
「なんで生徒会室にのこぎりが常備されてるのよぅ。知弦はなんでか当然のように場所を知ってるし。黒兎はナイフなんかなんで持ってるのよぅ」
桜野、それは機密事項だ。
「よ、良かったですぅ」
唯一。妹だけが目尻に涙を浮かべて、安堵の溜め息を漏らしていた。
「お姉ちゃんが人殺しにならなくて、本当によかったですぅ」
「そっち!?」
……相変わらず無邪気に酷い子だこと。
ふと桜野に視線を向けると、桜野は杉崎を真剣に見つめている。
杉崎も桜野を見つめ返す。
「会長……」
「杉崎……」
「……ボクは、死にません。貴女が、好きだから」
「……杉崎……」
杉崎が桜野に向かって、唇を突き出している。
「……はあ」
「?」
桜野は大きく溜め息をつく。そうして、深く着席して、再び嘆息。杉崎は意味がよく理解できていないようで、首を傾げている。
「あ、やっぱりファーストキスは、二人きりが良かったですか?」
「……はあ。ちょっとは期待したんだけどなぁ」
「? キスですか? いえ、俺の方は準備万端ですけど……」
「……ちょっと、期待したのよ。『馬鹿は死ななきゃ治らない』って言うでしょ?」
「はい?」
桜野は再び杉崎にビシっとひ人差し指を突き付ける。
「一回臨死体験したら、マトモな人間になるんじゃないかって、期待したのっ!」
「……ああ、なんだ、そんなことでしたか。大丈夫ですよ、会長!」
「なにが?」
「俺はとてもマトモです!」
「それがマトモな人間の発言じゃないわよ!」
杉崎は俺らに同意を求める。
「皆、俺、マトモだよな!」
『…………』
俺を含む全員が気まずそうに顔を背ける。
杉崎は凹んでしまい、どんよりとした気分で着席した。桜野が「こほん」と、ロリな容姿に似合わない、仕切り直しの咳払い。
「とにかく、杉崎は更生すべきだと思うのよ。うん。仮にも生徒会副会長なんだから、それなりの威厳はないといけないと思うの」
「……威厳、ねぇ」
「杉崎に威厳?」
杉崎が桜野を嘗め回すように見てから、嘆息する。俺は威厳を持った杉崎を想像して違和感を抱いた。他の生徒会メンバーは全員苦笑している。
視線に気付いた桜野、もう一度咳払いす。
「と、に、か、く! 今日は杉崎の性格を改善しましょう! それがいいわ!」
「またえらく急だな、桜野」
「クロさんの言う通りですよ。どうしたんですか、会長」
桜野は鞄をごそごそとあさり、「これよ!」と何かを突き出す。
どうやらそれは新聞部が不定期で掲示板に張り出す、壁新聞のようだった。ゴシップ好きの新聞部部長、
姉がわざわざ声に出して読み上げる。
「なになに? 『速報! 生徒会副会長・杉崎鍵は、昔二股をかけていた!』だぁ?」
「あらあら、大変ねぇ、キー君」
「酷い記事です! 抗議しないとっ! す、杉崎先輩はそんなことする人じゃあ……。…………。……ごめんなさい」
「ちっ」
知弦は大変と言いつつ、楽しそうにしている。フォローをしていた妹は、普段の杉崎を思い出したのか、急に杉崎に謝った。杉崎の過去を知っている俺はただただ機嫌が悪くなっていく。
全員の反応を見た後、桜野は新聞を机の上に置いて、また杉崎を指差す。
「生徒会役員ともあろう者が、こんな記事を書かれて!」
「……あの新聞部は好きですからねぇ、こういうの」
杉崎が新聞を手に取り、内容を読み始める。
怒りをため込んでいた桜野が杉崎に問い詰める。
「杉崎! まずは、その記事の内容が事実かどうなのか、ハッキリして貰いましょうかぁ!」
昨日から夏休みに入りました。友人との約束で、夏休み期間は毎日投稿することに……。昨日の分は……今日二つ投稿するから!
私、一応受験生なのですが……。はぁ……。