生徒会の中心   作:赤羽 黒兎

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 はい、昨日出せませんでした!
 すいません!!


4.更生する生徒会②

杉崎(すぎさき)! まずは、その記事の内容が事実かどうなのか、ハッキリして貰いましょうかぁ!」

「あ、会長。もしかして嫉妬ですか? 俺の過去の女が気になって──」

「そうやって逃げようとしても駄目よ!」

 逃げようとした杉崎は、「会長モード」の時の桜野(さくらの)に手を焼いている。

 更に知弦(ちづる)が追い打ちをかける。

「キー君。アカちゃん、こうなったら事実確認とれるまでずっと騒ぎ続けるわよ? わかるでしょ? 諦めなさい」

「分かってますけど……」

 杉崎はどうしたもんかと悩んでる。仕方ない……後押しするか。

「杉崎」

「なんですか、クロさん」

「大丈夫だ、なにがあってもここにいる連中は、お前を否定しない。それに、俺は何があっても杉崎の味方だ」

「クロさん……!」

 杉崎が真剣な目で桜野に向き合う。

 

「結論から言って、事実です。俺は、昔、二股かけてました」

 

 杉崎が真剣だからか、桜野は杉崎につっかかるようなことしなかった。

 それは、知弦や椎名(しいな)姉妹、俺も同じだ。

 桜野は「そう」と息を吐いて着席すると、「で?」と促してくる。

「杉崎は、詳しい経緯を話す気はないのね? 黒兎(こくと)の言葉で話し始めたくらいだしね」

「はい。今は、勘弁して下さい」

 杉崎の言葉に、桜野は嘆息した。そうして、続ける。

「でも事実なのね」

「はい。クロさんが証人として存在します」

「確かに知ってはいるが、証人って言い方やめろよ」

「黒兎がね……。まあ、いいわ。弁解する気は?」

「ありません」

「そう」

「はい」

「ん、わかった。じゃ、この件はこれでおしまいっ!」

 桜野はそういうと、んっと背伸びして、スッキリした顔をする。

 そうして、いつものように杉崎につっかかる。

「さて、杉崎! 早速更生するために色々するわよ! そんな記事が何度も書かれちゃ困るんだからねっ!」

「……そうですね。まあ、更生というより、表面を取り繕うぐらいはしましょうかね」

 そう言って、杉崎は微笑む。

 ……やっぱり、桜野は人間として素晴らしい。過去を責めず、今と未来のために動こうとする。

 能力で生徒会長になったわけではなく、人間性でなったとでも言うかのような。

 そんな魅力は、ほかのメンバーも同様に持っている。気付くと、皆、いつもの皆に、いつもの笑顔に戻っていた。……俺は、いつものように笑えてるだろうか。

「ま、真冬(まふゆ)も、杉崎先輩はもうちょっと気をつけた方がいいと思いますっ!」

「そうだぜー、(けん)。お前、ここだけじゃなくて、日常生活からして美少女追い掛け回しているんだろ? そりゃゴシップ記事が出ないことの方がおかしいぜ」

「こんなことでケチつけられちゃ、それこそつまらないわよ、キー君。ハーレムを保ちたいなら、ちょっとガードを固めるぐらいはしないと」

「こんなことでめげる奴は俺の知ってる杉崎じゃあないな。いつもの自分を思い出せ」

 皆、もう二股のことについては触れようともしなかった。皆、杉崎の想いを尊重している。

 この生徒会の暗黙の了解。本人が拒絶したら、深く入りすぎない。居心地のいい、ぬるま湯のような空間。この空間に、俺たちは救われている。世界が厳しいんだ、この生徒会ぐらい、ぬるま湯で丁度いい。

 杉崎はニヤリと笑い、いつものように告げる。

「しょうがないなぁ。皆がそんなに俺を求めているなら、俺も、つまらないことで足元掬われないように気をつけてみますかぁ」

「いや、別に杉崎がいなくなるのは構わないけどね。生徒会のイメージがね」

「ふふふ、分かってますって、会長。会長がツンなのは、充分に理解──」

「いや、本気で」

「…………」

 気のせいか、皆の眼が暗く輝いているように見える。……憐れ、杉崎。

「で、更生って、具体的に何をするんです?」

 空気に耐え切れなくなった杉崎の質問に、「ふむ」と桜野が腕を組む。

 杉崎がだらしない表情を浮かべる。杉崎ぇ……。

「杉崎。まずはその、変態的なこと考察している時のアホ面を改善しようか」

 桜野はジト目で杉崎を見る。

「む。俺は、いつだって真面目に思考してますよ!」

「真面目に思考するテーマがいつも変態的なのよ!」

「ど、どうして俺の思考テーマが分かるんですかっ!」

「いや、分かるだろ。顔に出すぎだ、バカ」

「ホントですか、クロさん!? この俺のカッコいい顔が崩れている……だと!?」

「その自意識過剰なリアクションも駄目!」

「ええぇ!」

「いい加減マスオさんも封印しなさい!」

「シット!」

「意味もなく外人かぶれしない!」

「無念!」

「必要以上にキャラ作らない!」

「……でも、一応主人公だし……」

「なんの!?」

「このエロゲ……『ハーレム生徒会、大征服♪~副会長、私を食・べ・て♪~』の」

「この世界はそんなタイトルの世界だったの!?」

「ええ、今は会長ルートで攻略中です。まずはメインヒロインっぽい人からでしょう」

「だったら桜野以外の好感度上げようとするなよ」

「……って、そういう頭おかしい発言も禁止!? 黒兎もツッコミがずれてる!」

「そんな! そんなことしたら、この物語、かなりオーソドックスですよ!」

「貴方はなんの心配をしているのよ!」

 桜野の体力が尽きた。

 しかし、桜野を倒した杉崎の前には好戦的な目で杉崎を眺める知弦が。

「キー君の更生は、生易しいものじゃ駄目よ」

「知弦、なにかいい案でもあるのか?」

「ええ。クーちゃんが納得するような生易しさゼロの案が」

「すでに生命の危機が……」

「まずは……そうね。この科学部に作らせた『視線感知眼鏡』をちょっと改造して装着させて、キー君が女性の胸等を見たら即座に電流が流れるように……」

「いつの時代の荒療治ですかっ!」

「古代ギリシアの、とある……」

「スパルタでしょう! それ、スパルタっていうでしょう!」

「あら心外ね。愛の鞭と言ってほしいものだわ。鞭よ、鞭。美少女の鞭よ」

「いくら俺でも、こんな状況じゃ興奮しませんよ!」

「杉崎が興奮しない……だと……?」

「しませんよ! クロさんは俺をなんだと思ってるんですか!」

「変態?」

「否定できない!」

「仕方ないわね。……じゃ、二つ目の案聞く?」

「あるんですか?」

「ええ。まずは、女性を見ると言い知れぬ恐怖心が沸き上がるという催眠術で──」

「三つ目に言って下さい!」

「じゃあ、とりあえず去勢手術を──」

「わぁん! どんどん非人道的になってくー!」

「甘いな、知弦。そこは一夫多妻去勢拳(うわきぼくめつらいだーきっく)に──」

「クロさん、それはマジでやめてください!!」

 杉崎はがっくりと崩れ落ちた。

 知弦は杉崎をいじめて満足したのか、「はふぅ」と恍惚の溜め息を漏らした後、教科書を取り出して俺の元まできて勉強を始めた。

 知弦の次は、待ってましたと言わんばかりの椎名姉妹。

「ま、真冬も、色々案、あります!」

「あたしもあるぜー、杉崎鍵改造計画!」

 ……あの二人も、大分やばめの案を持ってそうだ。まあ、俺も疲れた。俺は鞄から書き途中の原稿を出して、書き始める。時折、分からない問題を質問してくる知弦に答えながら。今日は聞いてくることが多いな、知弦。

 …………。……気が付いたら椎名姉妹によって体力を削られ、机に倒れ伏す杉崎の姿が。しかも、(みなつ)は、倒れ伏す杉崎の胸囲などを測っている。(まふゆ)は、ノートパソコンで杉崎が主人公のBL小説を執筆していた。恐るべし椎名姉妹。

 その光景をボーっと眺めていると、杉崎がボソッと呟く。

 

「更生させるも何も、他の生徒会メンバーも全員変人なんじゃんか……」

 

 杉崎のその言葉に、桜野が反応する。体力が回復したのか、机からがばっと起き上がる。

「ジョーダンじゃないわよ! 私ははマトモよ!」

「会長。自己申告制は駄目ですよ」

「それに桜野は、さっきそう言った杉崎を『マトモな人間の発言じゃない』って切り捨てたよな」

「う……。み、皆! 私は、マトモよね!?」

 前回の杉崎に続き、桜野が生徒会に問いかける。

 結果はもちろん。

「…………」

 ずーんと沈み込む桜野が出来上がった。世の中そんなもんだ。

 ……更生、か。

 俺が思考を始めるのと同じタイミングで、杉崎がぽつりと呟く。

「個性をなくすのが更生だって言うんなら……なんか俺、ずっとこのままでいいって気もしてきました」

「…………」

 桜野が死んだ目で杉崎を見る。知弦も教科書から視線を上げ、椎名姉妹も暴走をやめて杉崎を見る。俺も思考の海から意識を戻し、杉崎を見る。

「俺だけじゃなくて、ここに居る生徒会メンバー、全員、ちょっと頭おかしいでしょう?」

「ちょ、だから、私は──」

「はい、黙ってようねー」

 桜野が立ち上がり、反論しようとするのを、口を塞いで止める。そして、俺から逃れるために抵抗を始める。杉崎は満面の笑みを浮かべて、全員を見回す。

 

「でも俺、ここにいる頭のおかしいメンバー、大好きだよ」

 

「…………」

 桜野の抵抗が収まる。桜野を開放すると、赤面しながら咳払いし、着席した。

 知弦と椎名姉妹も、温かい視線を杉崎に向ける。

「俺の、ハーレムは、多少性格に難があっても、容姿さえよければモーマンタイなのさ! ああ、なんて心の広い俺! さあ皆! 遠慮しないで俺の胸に飛び込んでおいで!」

『…………』

 ……杉崎、調子乗りすぎだ。全員がそれぞれの作業に戻っていった。

 杉崎が嘆息していると、小さい声で、ぽつりと、桜野が呟いた。

「……いいわよ、杉崎は、そのままで」

「? なんですって?」

「……なんでもない」

 桜野は嘆息し、「あーあ、私、変だと思われてるのかぁ」と、また机にくたーっとしていた。

「ええと、それで俺、明日からどうします?」

 その杉崎の質問に、全員がちらりと杉崎を見る。

 そうして、全員が一瞬微笑し、また自分の世界に入っていった。

 ……生徒会は今日も平和なり、っと。




 ギリギリ間に合いませんでした……。
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