気まぐれに書いていたとはいえここまで時間がかかるとは。
待っていた皆様には本当に申し訳ない。
こんにちは、みんな大好き(?)
まあそれはさておき、
『今日は遮音、遮光結界がかかっています。範囲自体は窓のみですので、今回は窓近くののぞき穴を使う事をお勧めします』
『ありがとうございますケイお姉様!』
『私も気になりますからね〜』
『『うふふふふふふふふふふふふふ』』
今はノゾキですよノゾキ。南雲とユエの痴態を一から十まで見てやろうと言うわけです。
身体能力に長けるソーナちゃんが実行部隊、インドアな私が作戦立案など後方支援です。
だって彼私が頭下げても金払っても隠れても見せてくれないんですもの。ユエもハジメが言うなら......と断ってしまうし。
私の将来のためにも見せてもらえなければいけないのです! 主に濡場を書くときとか。
めでたく私18歳でして、大手を振ってエロ小説も買える年になりました、つまり書くことも同義。
しかーし、私はもちろん経験なんぞない。
想像で書くのは私のプライドが許さない。
結論、見れば全て解決するのだ。
『ソーナちゃん、行けそうかい?』
『はい大丈夫です! クリスタベルさんに教わったクライミング技術その他諸々があれば......!』
念話だとハジメにハッキングされかねないので、私の派生技能”言語念話“の出番と言うわけだ。離れたところで会話ができる点は変わりないが、チャットよろしく文字でイメージが伝わる。
まだこれはハジメにも言っていないスキル、バレる可能性は限りなく低い。
(直接見れないのは残念だけど、一つでも経験が詰めれば......)
『このまま、このまま。よし、もう少し......あ”っ!』
「......ん?」
ブツリと念話が切れる。
「にぎゃああああああああああああああ!!!」
「......バレた?!」
どんだけ感覚お化けなんだ南雲、ソーナちゃんには気配遮断を三重にかけたのにバレるなんておかしいでしょうて!?
ぐぬぬぬ、今日はダメか。てっしゅ
「ダメに決まってるだろ、本バカ」
「ななな、にゃぐも!?」
「深夜まで起きて、どうしたんだ?」
「いやー今日は寝付けなくて」
「......だそうだが?」
「イッショニノゾキシテマシタ」
「ぐっ......」
lワキワキと義手を動かし、右手にはソーナちゃんの首根っこをひっつかんで、一歩づつこちらへ歩み寄ってくる南雲。
「わ、悪気はなかったんだ!」
「知るか」
「ぎにゃあああああああああああああああ!!!!!!」
そっからさき暫くの記憶がない。
「ふへへへ、もう食べられないよう......」
「のんびりうさぎ」
「どっちかといえばうm」
「それ以上はいけない」
◇◇◇
「全く酷い目にあった」
「自業自得だ」
あれから時は過ぎ私たちの姿は馬車の上にあった。というのも、南雲が隊商護衛任務を引き受けてきたからである。
【中立商業都市フューレン】、そこが目的地の名前だ。地中海貿易最盛期のヴェネツィアよろしく中間貿易地点として栄える都市で、王都までとはいかないが多数の人々が、それも多くの国から集まるという。
南雲はそこを足がかりにして次の大迷宮である【グリューエン大火山】、さらにその先の【メルジーネ海底遺跡】を目指そうという考えているようだ。ま、本音といえばユエちゃんに買い物させろと押し倒......押し切られたんだろう。
「しかし、こんな荒野を見てるとアメリカの開拓時代を創造するね。バッファローとかいないかな?」
「いるとすれば魔物だな」
「それはそれで夢があるけどなんか殺伐とし過ぎて......どうせミンチにするんでしょ?」
「殺していいのは殺される覚悟のある奴だけだ」
そろそろ交代だ、と馬車から飛び出して同業者に声をかける南雲。私は非戦闘職として警戒免除されたので馬車でのんびりと迷宮の記録を振り返っていた。
1000年前の神への叛逆。
万物を作ったとされる神に刃向かうなんてどのように考えていたんだか。
「ま、私が推し量れる事でもないかぁ」
考えすぎるのもよくないと硬い木の床に横になり、マントを巻いて枕がわりにして頭の下に押し込める。
それからすぐ後に魔物襲撃なんかがあったんだが、ユエちゃんがことごとくを消し炭にしていた。その様子はまさに圧巻、いや蹂躙と言ったほうが合うだろう。奈落育ちのチート達にとって地上ではイージーモードなんだろうか。
「その後、なんやかんやあって冒険者ギルドから依頼を受けた南雲一行は一路北へ、その先にある湖畔の街ウルを目指すことになりました」
「......誰に向けて話してるんだそれ」
「未来の私の読者」
南雲特製の魔導四輪駆動車に揺られながら、私は万年筆をくるくると回す。
なんやかんやと纏めてしまったが、南雲が股間をスマッシュしたり支部長を強請ったり脅したりなだめすかしたりしたりとまあゲスさを遺憾なく発揮していた訳だ。本人的にはうまくいったのだが、支部長さんの依頼を引き受けることにはなっているので痛み分けと言うべきだろうか?
「そーいや南雲よ、クラスメイトのみんなは元気してるのかねぇ」
「知るか」
「......辛辣だね、心配にならないの?」
「あんなのただ同じ空間にいた他人だ。お前はただの他人を心配するのか?」
そう言ってそれっきり黙り込んでしまった。
悲しいとまとめてしまえばそれまでだが、それをせざるを得ない何かをわたしには推し量ることは不可能だ。そのうち南雲の記憶をこっそり引っこ抜いて閲覧しよ「やったらぶっ殺すからな、お前でも」あら怖い。
窓を開けて、地球と変わらない空を見上げる。瞬く星は違っても、空の青さだけは向こうと同じだった。
南雲はああは言うけれど、わたしは少しばかりクラスメイトが心配なのだ。
「清水、元気にしてっかな......」
あの隠れファンタジー大好きオタ絵師が暴走してないか、とか。
◇◇◇
「清水君、元気にしているでしょうか......」
担任として生徒をしっかりと見てあげられなかった結果なのでしょうか。
デビットさんや園部さんをはじめ周りの人はしょうがない、きっと元気だと励ましてくれますが、問題はそこでは無いのです。
物静かで自発的とは言い難かった清水君が置き手紙を残して失踪して2週間と少し。
「愛子、あまり気を落とすな。まだ、何も分かっていないんだ。無事という可能性は十分にある。お前が信じなくてどうするんだ」
「そうですよ、愛ちゃん先生。清水君の部屋だって荒らされた様子はなかったんです。自分で何処かに行った可能性だって高いんですよ? 悪い方にばかり考えないでください」
そうじゃないんです、と思わず叫びそうになるのをギリギリで押しとどめました。
事件に巻き込まれたとか、自発的な失踪とかが心配であることに変わりはないんです。しかしそれを表に出して、今、傍にいる生徒達を不安にさせるどころか、気遣わせてどうするんですか私は! それでも、自分はこの子達の教師なんですか!
気合いが足りないんですと私は一度深呼吸して頰をバシンと叩き、作ったものでもいいからと笑顔を見せる。
「皆さん、心配かけてごめんなさい。そうですよね。悩んでばかりいても解決しません。清水君は優秀な魔法使いです。きっと大丈夫。今は、無事を信じて出来ることをしましょう。取り敢えずは、本日の晩御飯です! お腹いっぱい食べて、明日に備えましょう!」
このお宿の米料理は絶品ですし、と無理やり元気を出す。
私たちが拠点にしているここ“水妖精の宿”は内装も綺麗で、あまり主張はしないけれども高級な家具が並び、それでいて落ち着きすら感じられる素晴らしい場所です。最初は高級なところなんて恐れ多いですと辞退したのですけど、デビットさん達があまりにも力説したので。
でも、宿を変えていたら皆さんの笑顔が見られなかったもしれないですね、彼らには感謝です。
「ああ、相変わらず美味しいぃ~異世界に来てカレーが食べれるとは思わなかったよ」
「まぁ、見た目はシチューなんだけどな……いや、ホワイトカレーってあったけ?」
「いや、それよりも天丼だろ? このタレとか絶品だぞ? 日本負けてんじゃない?」
「それは、玉井君がちゃんとした天丼食べたことなかいらでしょ? ホカ弁の天丼と比べちゃだめだよ」
「いや、チャーハンモドキ一択で。これやめられないよ」
「ふふ、皆さん元気ですね」
(衣食足りて......この後はなんでしたっけ?)
「衣食足りて礼節を知るですっ!」
「どうしたんですかケイさん?」
「いや、どこからか電波が......」
「変なの」
「美味いかユエ」
「うん、美味しい!」
「そりゃ良かった」
はい、また別の場所です。今度は北の山脈近くにあり、海と勘違いしそうな広さを誇る湖に面したウルの町にいます。今さっき宿に到着したところなのですが、米(?)料理があると聞いていたのでまずごはんですよごはん。
支部長の話が届いていたのか、金枠冒険者(とてもすごい)なのかVIP待遇という......なんか元庶民の身からすると身に余る待遇と言いますがなんといいますか。
ガッチガチでせっかくの料理の味もわからない私に対してそんな時も堂々とユエちゃんといちゃついている南雲が憎たらしい。
「ハジメがあーんしてくれるともっと美味しい」
「しょうがねえなぁ......」
「......やめて、ほしい」
「もうっ、何度言えばわかるんですか。私を放置してユエさんと二人の世界を作るのは止めて下さいよぉ。ホント凄く虚しいんですよ、あれ。聞いてます? ハジメさん」
「聞いてる、聞いてる。見るのが嫌なら別室にしたらいいじゃねぇか」
「んまっ! 聞きました? ユエさん。ハジメさんが冷たいこと言いますぅ」
「……ハジメ……メッ!」
「へいへい」
まったくコイツらは。
何か一つ言ってやろうと口を開きかけたところで、今まで部屋を覆っていたカーテンが勢いよく開け放たれる。
「南雲君!」
「............先生っ!?」
「....................................先生?」
南雲、そして私の存在を認めた瞬間、畑山先生のくりくりとした瞳に大粒の涙が浮かぶ。
「南雲君......やっぱり南雲君なんですね! それに綴織さんも」
「いえ、人違いです」
「合ってます」
「......」
南雲的には面倒でもこっちは用があるんで、引き止めさせてもらう。感動的な再会を邪魔するほど人間やめてるわけでもないんですよ......恨みがましそうな目でこっちみんな、お前が蒔いた種だろうに。
「ところで、そちらの女性は......」
「ユエ」
「シアです」
「そしてハジメの女「ですぅ!」
そこから先一悶着あったのは言うまでもないだろう、だって不純異性交友だし先生的にはアウトなんだろうしね。それはもうギャースカと騒いでいましたとも。それをわかっていてイチャついてるユエちゃんは仲の良さを見せつけたいのかねぇ、性悪め。
◇◇◇
次の日。
南雲をはじめとした私たち、そして無理を言ってついて来た畑山先生ら一行、みんなを乗せて異世界には場違いな四輪駆動車が荒野を駆けていた。
その経緯はというと、聞けば清水が行方不明になったらしく目撃情報のあった場所がここ北の山脈近く、そして支部長から頼まれた人探しも同じ場所。
心底嫌そうな顔をしていた南雲だけど、畑山先生の必死の説得もあり折れた。そして現状に至るというわけだ。
「なあ、俺らと同じで荷台でいいのか? 女子だろ、中の方が」
「狭い」
「本当に女なのか......?」
「煩いぞ男子ども、それに......」
荷台の窓から、ギリギリと歯ぎしりをするスレンダーな体型の宮崎さんを一瞥して一言。
「私はああなりたくない」
「「ああ......なるほど」」
言いたい事は伝わったらしいが、私の胸を残念そうな目で見ないで欲しいものだ。
肩こりとか面倒なんだから、特に文筆業にとっちゃ永遠につきまとう問題なんだし、無駄に背負い込みたくないの。
そんなこんなで山麓に到着、南雲が無人偵察機で辺りをざっと見回し安全を確保してから、徒歩で現場に向かった。
......のだが、
「おーいそこの男子、インドア派に負けるとはどういう事かー」
目の前に広がる死屍累々。
予想外に畑山先生withクラスメイト‘sの体力がなかったせいで足止めを強いられていた。
南雲はユエと連れ立って森の奥に行ってしまったのだが、まさか白昼堂々青空の下でするつもりでもあるんだろうか。
......是非見た「見るなよ」。
「ファッキン!」