モンハン世界に生まれて、理想のキリン娘に会う為にハンターになった男   作:GT(EW版)

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モンハンワールドでキリン装備を完成させてから、何故かキリン娘のことしか考えられなくなったので初投稿です。


えっちなのはいけないとおもいます

 

 

 かつて、黒龍ミラボレアスというモンスターが居た。

 

 古の昔から伝承に語り継がれる、この世に災厄と滅亡をもたらすとされる伝説の黒龍だ。

 伝説や逸話によりその呼び名は異なり、「邪龍」や「古代龍」などと称される場合もある。一説によれば現代にて「古龍」と呼ばれるモンスター中でも最も古い種族ではないかとも推測されているが、詳細は不明である。

 伝承においてかの黒龍はこの世の全ての生命を脅かし、山の如き巨龍さえも怯えて逃げ出す程の存在とされ、自分以外全ての存在を滅ぼし、この世の全土をわずか数日で焦土へ変える程の強大な力を持つとされていた。

 人類との共存は不可能であり、かつて世界に君臨し栄華を誇った大国「シュレイド」を滅ぼしたのもこのミラボレアスだと推測されている。

 最強にして最凶。その脅威を断つべく多くのハンターが挑んでは、黒龍の前に散っていった。

 

 しかしそのミラボレアスを、たった一人で討伐したハンターが居た。

 

 とある村のハンターズギルドに所属していた彼は、その天才的な戦闘センスを持って入門からたった一年の実働期間で上位、G級へと駆けあがり、数多の脅威的なモンスターを破っては村の窮地を救っていた。

 その両手から繰り出される華麗な大剣捌きによってミラボレアスさえも討ち果たしたその男は、世界最高のハンターの称号を手にし……程なくして表舞台から姿を消した。

 

 その理由はミラボレアスとの死闘で片腕を失ったことによって愛用の大剣を振り回すことが出来なくなったからと言われているが、突如としてギルドを脱退し、ハンター稼業さえ引退して行方を眩ませた彼には多くの民の心に動揺が走ったものだ。

 人々の間では黒龍を倒した勇者として絶大な影響力を手にした彼の力を国の上層部が恐れ、国家権力によって抹殺されたのだという確証も無い陰謀説さえまかり通っていたほどだが、年月が経つに連れて彼の存在は功績だけが言い伝えられ、やがて彼の存在は真偽が織り交ざった伝説上の存在として語り継がれるものとなった。

 

 幻獣キリンの素材からなる装備を身に纏った彼、「キリン公爵」と呼ばれた男の存在はそうして人々から遠い存在となり、彼は伝説のモンスターハンターとなったのだ。

 

 そしていつの時代、どの世界でもそういった「謎めいた英雄」というのは人々の間である種のカリスマを得るものだ。現役時代の優雅な戦いぶりからキリン公爵と呼ばれたキリン装備の男もまた、現代まで多くのハンターから神聖視されており、伝説と化した彼の高みを目指してハンターズドリームを狙う若者達は後を絶たなかった。

 

 

 

 しかし、黒龍を討った英雄である彼が何故行方を眩ませたのか、その真実を知る者は居ない。何故ならば人々は、そも彼が何故ハンターになったのか……その理由を知らないからだ。

 知ればある者は愕然とし、ある者は共感し、ある者は失望するだろう。そんな彼、キリン公爵の行動目的は昔も今もたった一つだった。

 

 

 

 ――ああ……可愛いキリン娘に会いたい――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キリン、というモンスターが居る。

 

 古龍種に分類される、頭に一本の角を持つ幻想的なモンスターだ。

 白銀色に輝く体毛に覆われており、その姿はモンスターとは思えないほど神々しい。

 体躯は中型程度の大きさであり、古龍の中では異質なほどに小柄である。しかし小柄ながらもその危険性は並み居る大型モンスターを容易く凌駕し、雷を自在に操る能力は非常に強力だ。

 神出鬼没な「幻獣」と呼ばれるだけにその目撃例は少なく、個体数も少ない為に生態に関しても殆どが未だ不明である。

 それ故に一時期は分類不明のモンスターとして扱われていたが、討伐された個体の解剖により体内に古龍特有の血が流れていることがわかり、龍とは似つかぬ容貌ながら「古龍」として分類されることとなった。

 

 しかし、この物語においてそれらの情報はあまり重要ではない。

 

 ここで何より重要なのは――そのキリンを素材にして作り出されるハンター装備のことだ。

 

 このキリン装備――若い男女の間では非常に人気があった。性的な意味で。

 

 防御力の高い頑強な防具でありながら、上下共に布面積が少なく、露出度が高い。特に装備者の太ももが露わになっている女性用キリン装備の前側は白い褌が一本垂れているだけであり、その向こう側にある秘密の花園を隠すには少々心許ない造りになっていた。

 しかしその装備を纏った者が痴女扱いされるような下品な装備というわけではなく、寧ろ健全的な高貴ささえ垣間見える整った外観であった。そんなキリン装備の存在は、鍛え上げられたハンターの肉体を美しく着飾る可愛らしい装備として人々から絶大な人気を博していた。

 

 

 ……そう。多くを語らずとも、ゲーム「モンスターハンター」をプレイした者ならばわかるだろう。キリン装備の魅力が。

 

 

 私は転生者である。名前は一応あるが、現役のハンター時代は専ら「キリン公爵」などという呼び名で呼ばれていた。前世でお世話になった気がする薄い本の登場人物には非常に、申し訳ない思いだ。

 前世の記憶はほとんど覚えていない。精々覚えているのは、かつての私が「モンスターハンター」シリーズをそこそこプレイしていた記憶と、キリン装備がとても可愛いかったことぐらいなものだ。

 しかしそれだけでも覚えていたからか私は、物心ついた後でこの世界が「モンスターハンター」の世界であることに気づくには多くの時間は掛からなかった。

 

 そんな前世の記憶と数多のモンスター達が闊歩する目の前の現実を重ね合わせた時、当然ながら私は大いに狼狽えた。

 第二の人生となったこれから先の、自分の人生への不安と期待――かつてゲームとして遊んでいた世界に自分が居るのだと知った時、強烈な頭痛と共に私の頭に走った思いは、私自身の人生を突き動かす今世での行動原理の礎を築き上げたのだ。

 

 

 ――そうだ。キリン娘を探しに行こう。

 

 

 若かりし頃の私の心には、リオレウス、ディアブロス、ジンオウガ、ティガレックス……現実として生まれたこの世界で、ゲームの中で憧れた数々のモンスターと会ってみたいという気持ちはもちろんあった。

 自分自身もまた、そんなモンスター達を華麗に討伐するモンスターハンターになってみたいという気持ちも。

 

 しかしそれ以上に思ったのは、うろ覚えだらけな記憶の中で唯一鮮明且つ強烈に焼き付いている――キリン装備の女の子への渇望であった。

 

 そこに、破廉恥な思いはなかった。

 ただ私は純粋に、キリン装備の似合う美少女に会いたかったのだ。

 

 青いツノの生えた白いウィッグ。ほどよく膨らんだ胸部装甲。まぶしい太もも。純白の聖域――その全てが私にとって愛おしく、この目で見てみたい衝動に駆られ続けていた。

 

 その子と実際に会って何をしたいわけでもない。あわよくばお尻やお胸に触れてみたいなぁだとかは、ほんの少しぐらいしか思っていなかった。

 私にとってキリン娘に対する感情はエッチな欲望とかそういうのではなく、ただひたすらに愛でたかったのだ。

 そしてその思いは、後に「キリン公爵」と呼ばれることになる私がハンターとして生きるようになる唯一にして最大の切っ掛けとなった。

 

 幸いなことに、私は人よりもハンターとしての才能に恵まれていたらしい。

 

 初めて握った筈の大剣がどこかこの手にしっくりと馴染んで、現実として初めて相対した筈のモンスターを前にも臆さず挑み、的確に弱点を突く戦いをすることが出来た。

 リオレウスのように自分よりも圧倒的に巨大な存在を前にしても、怯えることなく果敢に挑み、討伐することが出来たのだ。

 もちろん、時には敗北し命からがら逃げだすこともあった。リオ夫妻に焼かれかけたことも、ティガレックスに食い殺されかけたことも、古龍に踏み潰されかけたことも何度もある。

 

 たった一年のハンター生活の中でも、私が死の淵を彷徨った回数は数えきれないほどだ。

 

 ただその度に、私は自分がハンターとなった意味を思い出した。キリン装備の似合う理想の美少女と会うまで、私は死ねないと――そんな思いが脳裏を掠める度に、私の中で得体の知れない力が沸き出てくるように幾度となく危機を乗り越えていったのだ。

 

 誰かが言っていた――この世界で一番のモンスターは、飛竜でも古龍でもなく「人間の欲望」なのだと。

 

 キリン娘に会いたいと願う私の心もまた、欲望と言う名の最強のモンスターを表しているのかもしれない。

 

 

 

 さて、ここで質問だが、「キリン娘ってそんなに会えないものなの?」と思う者はいるだろうか。

 

 

 かく言う私も、ハンターとして活動を行っていれば、そう執念を燃やさずとも自然と会えるものだと最初は思っていた。

 だがここはモンスターとハンターが闊歩する世界であっても、ゲームの「モンスターハンター」そのものではないのだ。そもそも幻獣と呼ばれている希少モンスターであるキリンを見掛けることすら滅多にあるものではなく、そのうえ古龍として凄まじい力を誇るかのモンスターを討伐出来るハンターなど早々居るものではない。

 装備を身に着けるということは、ハンターにとってその者が由来のモンスターを倒したという強者の証なのだ。キリンほど強力なモンスターを倒し、自身の装備にしてみせたハンター――それも美少女となれば、その希少性は一層跳ね上がるだろう。

 

 非常に可愛らしく、美しいキリン装備は現実となったこのモンハンワールドでも変わらず人気がある。

 

 村の集会所にキリン装備を身に着けた女性ハンターが入って来た時などは一部の野郎共が鼻の下を伸ばし、女性ハンター達は羨望の眼差しを送っていたものだ。

 しかし、そういったキリン装備の女性ハンターは、私の目から見ると「違う」のだ。

 キリン装備の女性ハンターは居ても、その者達は私が追い求めていた「キリン装備の美少女ハンター」ではなかった。

 

 かの幻獣を討伐したキリン装備の女性ハンターは、その全員が勇ましい女傑であった。

 

 装備から露出された剥き出しの腹筋は男ハンター並にバキバキに割れており、彼女らのご尊顔には誰もが戦士の勲章とも言うべき生傷が刻み込まれている。アマゾネスとでも言うべきか、まさに「カッコいい」と言える素晴らしい女性達である。

 彼女らはこのハンター業界においてどこまでも尊ぶべき存在であり、狩人の鑑とも言える漢女であった。しかしキリン装備の女傑はいても、私の追い求める「キリン装備の美少女ハンター」はそこにいなかった。

 

 ――そう。私の望むキリン娘とは、幻獣由来の装備とマッチした幻想的な雰囲気を身に纏う、可憐で儚い理想の美少女だったのだ。

 

 キリン装備を纏った女性というだけでは、私の心は満たされなかった。

 ハンターとして背中合わせに戦う中で、彼女らの強さと人格の素晴らしさを理解していながらも、私は何一つとして納得することが出来なかったのだ。

 

 存外、私の心に住まう欲望と言う名のモンスターは、どこまでも強欲で身勝手な存在だった。

 

 妥協は許さない――まるでもう一人の自分がそう語りかけてくるように、私のキリン娘への情熱は彼女らの存在を拒絶していた。

 

 

 ――私自身が美少女にTS転生すれば、何の苦労もなかったものを……っ!――

 

 

 いつしか私は、出撃の度に心の中でそう嘆き、一人血の涙を流すようになっていた。

 

 ハンター稼業を始めて一年、私は自分でも驚くほどのスピード出世でG級ハンターへと昇りつめ、傍目からは順風満帆に見えるであろう恵まれた狩猟生活を送っていた。

 数多のモンスターを狩り続け、その中には稲妻を纏うかの幻獣、キリンの姿もあった。初めて幻獣を狩ったあの日から、私は一向に望みを叶えられない己の心を慰めるように男性版キリン装備を纏い続けてきた。

 この目を隠すキリンのマスクは、キリン娘に会えない涙を隠す為のものだ。

 

 ……ああ、そうだ。それから程なくして、狩り友のソードマスターが私のことを「キリン公爵」などと呼び始めたのだったな。妙なあだ名が広まったのは、その時だったか。

 

 キリン娘に会えない鬱憤をモンスターにぶつけて晴らしていく私の姿は、同僚のハンター達の目にはどう映っていたのだろうか。今にして思えば、我ながら痛々しく滑稽なものである。

 まるで暗黒面に染まったように荒々しい戦い方を続けていく中で、私はG級クエストを時に瀕死になりながら来る日も来る日も血塗れの身体で解決していった。

 

 しかし、移り変わっていく季節の中に理想のキリン娘の姿は影も形もなかった。

 

 私自身がキリン装備を纏っていることもあってか、集会所内でキリン装備の女性ハンターが話しかけてくる機会は以前よりも多くなったが、そこに美少女はいない。彼女らは皆母親のように優しく尊い存在であったが、私の追い求めていた存在ではなかったのだ。

 

 思えば一年の最後に決死の覚悟を決めて黒龍ミラボレアスに挑んだのも、かの黒龍を倒し世界の英雄となることで、この広い世界のどこかに居る理想のキリン娘に私の存在を知らしめたかったからであったな。

 

 ――しかし、現実は無情であった。黒龍を討ち果たし、救国の英雄となった私の前にとうとう理想のキリン娘は現れなかったのだ。

 

 英雄となったことで、国王や見目麗しい王女との目通りを許されたこともあった。

 黒龍との戦いで左腕を失い、全盛期のように大剣を振り回すことの出来なくなった私に、王女様から「わらわの騎士にならぬか」とお話を持ち掛けられたこともあった。

 分不相応にも仲間から「キリン公爵」などというあだ名で呼ばれていた私は、本当に爵位を得る機会を賜ったのだ。

 

 しかしそんな身に余る光栄を袖にして、結果的に私は今世で生まれた村を――国を去ることになった。

 

 王女様の申し出に対して私は「私の矮小な人生を捧げるべき相手は、既に決まっているのです」と――何とも無礼な言葉で断ったものだ。

 

 

 それは語るまでも無く、この世界のどこかに居るであろう理想のキリン娘に会う為だ。

 王宮仕えの騎士ハンターになれば生涯安泰に暮らせるだろう。富も名声も全て手に入れられる。そんな一生に一度ある者さえ稀という機会を、私は自分から手放したのだ。我ながら、碌な死に方をしないだろうなとは思う。

 

 しかし私は、富や名声を手に入れるよりも、何よりも理想のキリン娘に会いたかったのだ。

 

 黒龍を討ち、世界に名を轟かす英雄になりさえすれば向こうからこの情熱に気づいてくれるのではないかと考えていた私だが、それは浅はかな自惚れだったのだと思い知る。

 

 ハンターとは、腰を据えながらその機会を待つ者ではない。

 欲しいものは自分の足と技、力と理念を持って手に入れる存在なのだ。

 

 盟友ソードマスターの叱咤激励により初心に帰り、迷いを振り払った私はハンターズギルドを抜けて旅に出ることにした。

 

 ハンターとして有名になりすぎてしまった私が各地に赴くには、どうにも英雄としての名声が足かせになったのだ。

 家族のみんなにはすまないことをしたと思っているが、私がキリン公爵として稼いだ一年間の財産は彼らがこれから先の人生で仲良く幸福に暮らしていくには十分であろう。貧乏一家として苦しんでいた過去は、もうない。

 散々親不孝を重ねてきた私のせめてもの償いとして、大半の財産を置き土産に彼らへと渡しておいた。彼らの今後に青い星の導きがあらんことを――そう祈った私は、名残惜しみながら手を振り返す家族と別れた。

 

 

 

 

 そうして立場を捨てることによって自由になった私は、新天地を目指して放浪し続けた。

 

 何年も。十年も。二十年も。

 

 ここまでやって会えないのなら、この世界に理想のキリン娘など居ないのではないかと……そのような不安に押し潰されそうになったこともあった。

 

 この夢が叶わぬものだと諦めかけ、旅先で討伐したジエン・モーランの骸の上で悲嘆に暮れたこともある。

 

 世界最強のハンターが何だ!? こんな力が何になる!? 理想のキリン娘一人見つけられない私に……一体何が出来ると言うのだ……!――と、絶望の果てにこの心が闇に落ちかけたこともあった。

 

 

 どんなモンスターも華麗に討伐するともてはやされた私だが、実際のところはこんなちっぽけな望みさえ叶えられない、弱くて情けない男だったのだ。

 

 

 

 

 しかし――それから来る日も延々と旅を続けた果てに……私は出会った。

 

 

 

 

 

『キリン……?』

 

 神出鬼没な古龍、幻獣キリン。

 稲妻に打たれ、完全に崩壊しているどこかもわからない小さな村の跡地にて、かの幻獣が私の前に姿を現したのだ。

 全身が美しい白い体毛に覆われた馬のようなモンスターは、帯電もせずに無警戒にも私の前へと近づいてきた。

 本来備わっている筈の凶暴性を一切見せずに私の前に立ったキリンであったが、その時対峙した個体はそれまで私が狩ったことのあるどのキリンよりも圧倒的な「歴戦の強者」の気配が漂っていたものだ。

 

 このキリンは、あの黒龍に勝るとも劣らない戦闘力を秘めている――と、僅かな実働時間ながら私に備わっていたハンターとしての直感が、そのキリンと相対することに対して激しい警戒を訴えていた。

 

 しかしそんな私の前でキリンが取った行動は、自らの身を屈めながら自身の背中に乗っている「小さな物体」を差し出すという考え難いものだった。

 

 そしてその「小さな物体」の姿をはっきりと確認した時、私は数年ぶりに、思わず目を見開いた。

 

 

『おぎゃあっ……おぎゃあ!!』

 

 

 キリンの背中には、人間の赤ん坊が乗っていたのだ。

 

 

 何故モンスターであるキリンが、人間の赤ん坊を背中に乗せていたのかは今でもわからない。

 

 しかしそのキリンは私に対して最後まで敵意を見せることがないまま、まるで「この子を頼む」とでも言うように静かにその赤ん坊を差し出してきたのだ。

 半ば放心状態で私が赤ん坊を抱え上げると、キリンは目的を果たしたとばかりに立ち上がり、何事もなかったかのようにその場を跳び去っていった。

 

 

 ――崩壊した村の跡地に現れたキリンに、そのキリンから託された人間の赤ん坊。

 

 

 仮にも伝説のハンターと呼ばれた私だ。黒龍との戦いを経て、どんな不可思議な現象も受け入れられると思っていたが……その時ばかりはどうすれば良いのかわからず、途方に暮れてしまった。

 

 

 ――ただ私は、そんな成り行きで一人の赤ん坊を育てることになった。

 

 

 その時は当然ながら、闇雲にキリン娘を求め続け、碌に世間を知ろうともしなかった私が子育てなど……父親の真似事が出来るものなのかと不安に思った。

 

 そしてその不安は、その子が立派な少女に成長した今も尚、残り続けている。

 

 ……ただ私は、その時の出会いが初めて私の中で私を確立した瞬間だったのだと思う。

 五十歳を過ぎて思い知るとは、我ながら何とも間抜けな青年、壮年時代を過ごしてしまったものだ。

 

 しかし私はその赤ん坊を育てる中で初めて理想のキリン娘に会うことよりも大切な――本当の意味で、守りたいモノを得たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 後一話か二話ぐらい続くかもしれません。
 それはそれとしてキリン装備かわいい。私のハンターさんにとって呪いの装備になってしまいました。
 久しぶりにモンハンをやったのでワールドのキリン装備を見て「こんなにかわいかったっけ?」と感じながら何かに目覚めかけている私が居ます。

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