青い人魚と軍艦娘   作:下坂登

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作者「気がついたら免許取ってから1年、1回しか車に乗ってない。このままじゃペーパードライバーまっしぐらだ……」
不知火「そんなことどうでもいいです。今回は早く書き上がりましたね」
作者「短い話だからね」
不知火「サブタイトルから察するに、陽炎と岬艦長の絡みのようです」
作者「戦闘回前に主人公同士が話すシーンを書きたかったんだ」
不知火「不知火がいない時に何を話しているのか、気になりますね」

それでは本編へどうぞ


11話 ミケかげ

 

 

0100

 

月の光も無く真っ暗闇の中、航海灯と応急修理の照明や火花だけが辺りを照らす。

 

損傷の大きな艦は既にこの場を離れており、教官艦天神も撤退した為に古庄教官は武蔵に乗り移り監督に当たることになっている。

 

そして、晴風の甲板では倒壊した機銃座の仮復旧作業と多機能カメラの取り付け、及び各武装の総点検が進められていた。

 

非常灯の薄暗い光だけが照らす艦橋で、明乃と幸子が当直に当たっていた。

 

「機銃は後1時間程で使えるそうです。カメラの取り付けも予定通り進んでいます。機関はもうしばらくかかるそうです」

「ありがとう」

 

晴風では乗員の大半を動員し、急ピッチで修理が行われていた。神谷から修理を急がせるようにと指示が来たからだ。だが、それで誰か倒れたりでもしたら修理の意味がない、明乃はとにかく交代制で睡眠を取ることを条件付けたが、それでも皆クタクタのようだった。

先程ましろと交代したが、既に限界でうとうとしていて半分眠った状態だった。そのせいで、艦橋を出ていこうとして壁に額をぶつけた時は思わず笑ってしまった。

 

「みんな疲れてるみたいだね」

「艦長は大丈夫ですか?」

「さっき仮眠を取ったばかりだから大丈夫だよ。ココちゃんこそ大丈夫なの?」

「大丈夫です。まあ、ちょっと寝不足かなって感じはありますけど」

「……やっぱり、眠れないよね」

 

疲労の原因は言わずとも解る。

 

御蔵での戦い、昨日の怪物の群れとの戦い、それに加え今度の作戦への参加決定、それらのストレスが一気に現れたのだ。

 

Rat事件の反乱容疑の時も連戦して逃げ回っていたが、その時の比ではない。

あの時相手は単艦であり、一撃当てて逃げればなんとかなった。だが今回の敵は無数の怪物であり、確実に殺すまで攻撃してくる。例えるなら、まるでゾンビの大群のようだと言うべきか。人を喰らうことだけが動く理由であり、中々死なない、殺せない。そう考えると幸子が言っていた『マッドサイエンティストが作った人工生命体』というのも、あながち間違いではないのかもしれない。

 

そんな怪物とまた戦わなければならない。

 

 

 

__誰かが明乃の中でささやく。

 

また、皆を危険に晒すのか。

また、怪我人を出すのか。

また、艦を沈ませるのか。

 

明乃の心にプレッシャーがのしかかった。

 

 

 

 

 

プニッ

 

 

 

 

 

突然、右頬を誰かに突っつかれた。

 

「ふえ?」

「可愛くないぞ岬艦長、ほらリラックスリラックス」

 

茶化すような声を聞いて右に振り向くと、陽炎がにこやかな顔を向けていた。

 

「陽炎ちゃん!?どうしてここに!?」

「暇だから来たの」

「眠く無いの?もう1時だよ?」

「スキッパー酔いしたあと医務室で爆睡してたから、全然眠く無いわ」

 

陽炎は壁に寄りかかった。

 

「それより、なんてシリアスっぽい顔してんのよ、せっかくの可愛い顔が台無しでしょ」

「シリアスっぽい顔?」

「そう、これから死にに行くような顔!そんな顔してたら勝てる戦いも勝てないからっ!こういう時は嫌でも笑いなさい!」

 

そして明乃の頬に右手を当てて、ムニムニと弄り始めた。

 

「ほらっ笑え!笑いなさい!」

「ちょっと、ふあ、むにゅぅ……ふふ、くすぐったいよもう……ふふふふふ……」

 

始めはぎこちなかったが、そのうち明乃の顔から自然と笑みが溢れ始めた。

 

「これでいいわ、暗い顔なんて似合わないもの」

「ありがとう」

「お礼なんていいわよ」

 

明乃はふと艦橋内を見回す。さっきまで幸子が居たはずだが、いつの間にか居なくなっていた。

 

「あれ?ココちゃんは?」

「納沙さんなら私と入れ違いにでていったわよ。えっと……売店の等松さん?に呼ばれて。貴女にも声かけて行ったけど?」

「え!?」

「そしたら『うん、わかった』って返事してたわよ」

「……全然記憶無い」

「もー、ちゃんとしてよ艦長。ボーっとしてると酷い目に遭うわよ」

 

陽炎はからかう口調で注意した。

 

「気になってたんだけど、ココちゃんとかマッチとかって、あだ名なの?」

「うん、納沙幸子さんだからココちゃん、野間マチコさんだからマッチ」

「なるほど〜。あ、じゃあ艦長のあだ名は何?」

「ミケだよ」

「ミケ?あれ、確か名前は岬明乃だったわよね?みさきあけの、みさきあけ、みさ……、あ!そうか、岬の『み』と明乃の『け』を取ったんだ!」

「正解!このあだ名はもかちゃんに付けて貰ったんだよ」

「武蔵の知名もえか艦長だっけ?いいセンスしてるわね、愛くるしい感じがピッタリハマってる」

「えへへ」

 

明乃は照れ笑いをした。もえかのセンスが認められて嬉しかったのと、愛くるしいと言われて照れた感情が混ざって出た。

 

「陽炎ちゃんにはあだ名無いの?」

「うん、私達あだ名付けないのよね。不知火には『ぬいぬい』ってあだ名をつけたけど、結局普通がいいってことで使わなくなっちゃったし」

「ぬいぬい……ぬいぐるみみたいで可愛いね」

 

艦娘は基本あだ名で呼び合うことはない、そもそもあだ名をつけようと考えることが少ないのだ。

みんながあだ名で呼ぶのは、名前が数字な為呼びづらい潜水艦達位だろう。

 

「じゃあミケ艦長、私のあだ名考えてよ」

「え?えっとぉ……」

 

突然の申し出に明乃は頭を悩ませた。

 

「陽炎ちゃんだから……かげろう……かげちゃん?ろうちゃん?」

「なんかいまいちパッとしないわね」

「かげろちゃん……陽炎って『陽』と『炎』だから、ようちゃん?ほのおちゃん?ようえんちゃん?」

「凄い迷走ね」

「ほのお、かげろう、ほのお、かげ……はっ!ヒトカゲ……!」

「待てい、誰がポケ○ンよ」

「う〜ん。ごめん、いいの思いつかないや」

「こっちこそ、無理言ってごめんね。今まで通り陽炎って呼んで」

「うん……」

「…………プッ」

 

ほんの少しの沈黙の後、2人同時に笑いだした。

 

「ふふ……あははははは!」

「ヒトカゲ……っ!ヒトカゲって……!」

 

まさかポケ○ンがあだ名の候補に出てくるなんて思ってなかった。あんなふうに火を吹いて戦うのか、傑作だ。

 

しばらく笑い転げてようやく落ち着いた頃、陽炎が尋ねた。

 

「ねえ、聞いてもいいかしら?」

「何?」

「ミケ艦長ってどうしてブルーマーメイドになろうと思ったの?」

 

明乃は真っ暗な海原に目をやって、当時に思いを馳せる。

 

「まだ私が幼い頃海難事故に遭ってね、その時ブルーマーメイドに助けてもらったの」

「へえ、そうだったの」

「でも、お父さんとお母さんは助からなかった」

「え……」

 

その言葉に陽炎は凍りつく。明乃の瞳に影が落ちた。だが、明乃は語り続ける。

 

「それで養護施設に入って、そこでもかちゃんと出会ったんだ」

「……武蔵の知名艦長?」

「うん、そしてもかちゃんに教えてもらったの、『海の仲間は家族』なんだって」

「『海の仲間は家族』……か……」

 

陽炎はポツリと呟く。自分にとって仲間達は『仲間』でなければ何なのだろうか、『家族』で括れるのだろうかと。

 

「だからね、2人で約束したんだ。海の家族を守る存在(ブルーマーメイド)になろうって」

 

語り終わると、明乃の瞳が元に戻っていた。

 

「あ……ごめんね、なんだかつい話しちゃったけど、あまりいい話じゃ無かったでしょ」

「……ううん、聞かせてくれてありがとう」

「ねえ、私も聞いていい?」

「ん?」

「陽炎ちゃんはどうして深海棲艦(あれ)と戦う道を選んだの?」

 

こちらが聞いた以上、こちらも答えなきゃいけない。

 

「どうしてって……。悪いけど、最初のことは言えないわ」

「そう……」

「ただ、今でも戦ってるのは……仲間を守るためかしら」

「仲間を守るため……?」

「死にそうになったのも一度や二度じゃないけど、仲間と一緒に過ごせるのがとっても楽しくて、代えられないものなの。だから、誰も失いたくない。だから、私は仲間を死なせないために戦う……満足した?」

「うん」

 

陽炎の言葉は明乃の信念とも重なるものだった。

 

「私の理想の艦長は、『船の中のお父さんみたいな』人なの。晴風の皆を引っ張って、晴風を、晴風の皆を守る。そんな艦長になりたいんだ」

「立派じゃない。ミケ艦長ならきっと成れるわよ」

「そうかな」

「貴女は私と不知火を助けてくれたじゃない」

 

陽炎は改めて明乃と正面から向き合う。そして胸に手を当てニコッと笑った。

 

「守ってもらった私が断言する、ミケ艦長は晴風に相応しい艦長になるわ」

 

明乃は嬉しそうに微笑み返した。

 

「ありがとう、陽炎ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直後、遠くで大きな火柱が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『緊急!こちら北風スキッパー偵察隊Θ(シータ)2!Θ1Θ3が撃沈された!敵が仕掛けてきた!急速接近している!現在地は艦隊より南方35km!約30ノットで接近中!

繰り返す!こちら偵察隊Θ2!__』

 

「全艦戦闘配置!敵が仕掛けてくるぞ!迎撃準備にかかれ!!」

 

神谷が無線で全艦に怒鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明乃がすぐに指示を飛ばす。

 

「総員配置!敵が接近中!」

「ミケ艦長!私行ってくるわね!」

「気をつけてね!」

「ええ!」

 

陽炎は艦橋を飛び出し、艤装を取りに工作室へと走り出した。

 

 

 

 

 

深海棲艦との第三ラウンドの幕が上がった。

 

 

 

 

 

 




作者「いかがでしたでしょうか。私の偏見かもしれませんがミケちゃんと陽炎って似てると思うんですよね、明るくてリーダーシップがあって」
明乃「そうかな?」
陽炎「まあ、こういうのは人それぞれじゃない?」
作者「次回、ついに戦闘に突入します。晴風、陽炎、北風がどんな戦いをするのか」

次回もお楽しみに
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