青い人魚と軍艦娘   作:下坂登

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やっと書けました……。構想はできてたのに文にするのが大変でした。
小説書きの皆様は凄いと身を持って知りました。




2話 回避不可能

UT01部隊、晴風と化物の戦いはすぐに、横須賀女子海洋学校校長 宗谷真雪へと報告が上げられた。

 

 

 

 

「砲を持ったモンスターですって!?」

 

古庄からの報告を聞き、真雪は耳を疑った。戦闘に巻き込まれて晴風が損傷したとは聞いていたが、まさかその相手がモンスターだとは考えられなかった。

 

《はい、今詳細なデータを送ります》

 

パソコンにファイルが送られてきた、その中に化物の写真が入っている。

 

No1〜4と割り振られた個体は鯨のような形状をしていた。しかし、その禍々しい見た目は生き物というより、悪霊という印象だ。

口の中や体の上に砲を備えている。

 

No5は人型だが顔は巨大な顎になっていて、肩や腕に大型の連装砲が載っている。

 

No6は人に見えなくもない。ショートカットの女性の両手に、No1〜4を小さくしてくっつけてみればそっくりだ。

 

そしてラスト、No7__ましろ達を襲った個体。

 

確認されたのはこの7体のみらしい。

 

大きさはNo1〜4が小柄な鯨ほど、5〜7が人サイズ。

 

「これが改インディペンデンス級4隻を襲い、壊滅させたって言うの……?」

 

言っては悪いが信じられない。

いくら未知の生物でも改インディペンデンス級を沈められる筈がない、あの主砲の速射性能と正確さならどんな相手でもあっという間に蜂の巣にできる。さらに機動力は世界最強、戦艦の砲撃を容易に回避し、どんな船でも追いかけ回せる。

 

海を護る任務に最適な艦。

 

だから全世界に導入が進められているのだ。

 

 

疑問を解決するため、ファイルをスクロールし情報を読み取っていく。

 

「…………あ、これかしら……『目標はレーダーやソナー等では感知できなかったため、目視によって発見するまで接近を許してしまった』…………『個体差はあれど、移動速度は最高35ノットほど』…………なんてこと……!」

 

センサー類に全くかからないのであれば、近代艦の射撃システムは役に立たず、命中率が大幅に下がる。加えて移動速度が旧型航洋艦並に速い。

 

これでは砲弾を当てることすら難しい。

 

「攻撃もかなりの威力ね……このサイズの銃の何倍……いえ何十倍もあるかもしれないわ、恐ろしい敵ね……このサイズで航洋艦と同じ速度で泳ぎ、戦闘艦を打ちのめす攻撃能力を持つなんて…………。

一体何なのかしら……?誰がこれを生み出したの……?何の為に……?」

 

思考は着信音によって中断させられ

た。

相手は宗谷真霜、海上安全監督室室長であり、真雪の長女だ。

 

「はい」

《宗谷校長、例の怪物の件でご相談が》

「丁度その怪物のデータを見ていたところよ。学生艦隊には海洋実習を中断させて帰港させようと思うのだけれど」

《わかりました。こちらから調査と護衛を兼ねて弁天を向かわせます》

「一隻だけ?」

《周囲には民間船も多数航行しています、対応できる他の艦はそちらに回しました》

「正しい判断ね。もし怪物がまだ残っていたら他の船を襲う可能性がある、周囲の民間船の護衛を優先するのは当然だわ」

 

だが、不安は拭えない。

もし怪物の数が予想を遥かにこえていたら、もしもっと強い個体がいたら__。

 

「……特殊部隊を出せないかしら」

《特殊部隊を!?》

 

真霜もさすがに驚いた。

 

《まさか、そんな事態に発展すると思っているんですか!?》

「まだ可能性の段階だけど、これだけでは収まらない気がするの。更に被害は拡大するかもしれない……早めに手を打つべきだとは思わない?」

《……同感です、早速手配します》

「今近くに北風(きたかぜ)がいるわよね?」

《……第4特殊部隊ですね、確かに位置は弁天の次に近いですが……》

 

真霜が言いよどむ。

あの部隊を使いたくないと思うのはわかるが、この状況に最適な部隊なのだ、ここは押し切らせてもらうしかない。

 

「すぐに向かわせて頂戴」

《……はい》

 

通話を切り、ふぅと息をつく。

 

 

 

 

 

4月に起きたRatによる艦艇暴走事件の後、表面上ようやく落ち着きを取り戻したところでまたも怪事件発生だ。

Rat事件もまだ黒幕は捕らえられていない、海上安全整備局の上層部がもみ消しに走ったせいで決定的な証拠がないのだ。

 

しかし、奴らはまたろくでもないことを画策していると真雪は察知している。そいつらは今回のことも利用しようとするだろう。

 

 

__また大波乱になるわね__

 

 

真雪はこれから起きるであろう大事件をどう乗り越えるか、思考を巡らせるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学生艦隊は校長からの命令により、帰港するため横須賀へと向かっていた。

八丈と神津はそれぞれ天津風と時津風、浜風と磯風が曳航している。

天神はいつでも化物に対応できるよう定期的に位置を変え、学生艦を守っていた。

晴風は艦隊の後方に付き、殿を務めていた。

 

 

 

 

 

「あーあ、実習中断か。つまんないなー」

 

芽衣が頬を膨らませて愚痴る。明乃が尋ねた。

 

「そんなに不満なの?」

「不満だよ!だってこの後艦隊演習の予定だったんだよ!せっかくの撃ちまくる機会だったのに!」

「うぃうぃ」

 

志摩も同意し頷く。

砲雷コンビは艦隊演習を心から待ち望んでいたという。

戦艦どもを叩き潰そうと意気込んでいた。しかし、あの化物のせいで実習は中断されてしまった。

悔しい、この無念絶対に晴らしてやる。

 

「化物相手に撃ちまくったくせに、それでも飽き足らないのか」

 

ましろが苦言をぶつけるが、芽衣と志摩は全く気にしない。

ましろはあんな目に会うのはもう懲り懲りだから、帰港できるのは嬉しかったし、鈴もましろに賛成だった。

 

「もう、あんなモンスターとは戦いたくないよ〜」

「まったくだ。……だが、あれは何だったんだろう……?」

 

その疑問に人間劇場幸子が挙手。

 

「きっとあれは艦の亡霊ですよ!戦いで沈んだ艦の怨念があんな姿になって現れたんです!『我々を沈めた奴らに復讐してやるぅ~、まずはブルーマーメイドを叩き潰すのだぁ~』」

 

幽霊そっくりの仕草に、鈴が怯えてカタカタと震えた。後でお祓いしておかねば。呪われるなんて真っ平ごめんだ。

すると、明乃が幸子の意見を優しく否定した。

 

「いやいや、戦争で沈んだ艦なんてほとんどないよ?それにブルーマーメイドは戦争はしないから、絶対怨まれるようなことはないよ」

 

この世界では、日露戦争の後は大きな戦争は起きていない。当然各地での争いはあったが、軍艦が沈むようなことはなかった。戦争のために造られた艦のほとんどは平和に退役し解体されるか、ブルーマーメイドの艦として残されている。亡霊になる原因がないのだ。

もし仮に、亡霊になった艦がいたとしてもブルーマーメイドは発足以来どの国とも戦闘していない。つまり、ブルーマーメイドが怨まれる筋合いなどない。

 

幸子は考えを否定され、しばらくう~んと唸っていたが、突然ハッと思いついて発表した。

 

「じゃあどこかのマッドサイエンティストが作った人工生命体です!」

 

『ないでしょ』

 

飽きてきた全員が息を合わせ切り捨てる。だが、幸子はめげない。

 

「そんなことありません!世界征服を企む悪の組織が無敵の軍隊として作り上げたんですよ!」

 

「そんな技術力どこが持ってんのよ?」

 

芽依が呆れたように言った。

 

 

 

 

ゴロゴロ……

 

 

 

 

 

「ん?」

「雷か?」

 

窓の外を見ると、いつの間にか空が黒い雲に覆われていた。抜錨時に雲行きを確認したが、航路上に雨雲は1つもなかったはずだ。

 

「ココちゃん、天気図見せて」

「どうぞ」

 

明乃は幸子からタブレットを受け取り、天気図を確認する。そして目を丸くした。

 

「ええっ!?」

 

艦隊は、嵐のド真ん中に突入していたのだ。

何かの間違いかと思い、ここ数時間の雨雲の動きを見ると、雲1つなかった場所に突然巨大な低気圧が発生していた。すぐに大粒の雨が激しく打ち付けてきた。

やがて海は荒れ始め、艦は大きな波によって右へ左へ大きく

 

ガラガラ……ドォォォン!!

 

天を震わすほど巨大な雷が落ちた。

激しいフラッシュで目が眩む。

 

「キャアアア!!」

 

思わず悲鳴を上げ、その場にうずくまってしまった。

明乃は未だにあのトラウマから完全に脱却出来てはいなかった。

その震える背中に、ましろが優しく声をかけた。

 

「艦長、大丈夫ですか?私達に任せてしばらく休んでください」

 

「えっ……でも」

 

「無理する必要はありませんから……これより、私が指揮を引き継ぎます、艦長は休憩なさってください」

 

照れ隠しな業務口調で告げられた。明乃はましろの心遣いに感謝した。

 

「あ……ありがとう」

 

ましろに礼を言い、艦橋から降りた。

 

 

 

 

 

自室に戻った明乃は布団を頭からかぶり、ぎゅっと目を瞑った。嵐の音も、光景も遮断したかった。でも、明乃は嵐から逃れることなんて出来ない。ブルーマーメイドは嵐の中にでも、救助に向かわなければならないのだ。分かっているのに、心が拒絶する。

 

「嵐なんて、無くなればいいのに……」

 

そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

「まだ嵐から出られないのか?」

 

ましろはイライラし始めていた。いつになったら穏やかな海に出るのか。

 

「暴風域さらに拡大中、あと2時間は出られません」

「嘘だろ……はぁ…ついてない……」

「しろちゃんの不幸体質のせいなんでしょうかねー」

「ない!……とも言い切れないな」

「せめてこのまま出られればいいですけど……」

「フラグにしか聞こえないんだが……いかんいかん」

 

嫌な考えを落とすように頭を軽く叩いた。ネガティブ思考はさらに事態を悪化させるだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、やっぱりついていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《武蔵より全艦へ!!3時の方向に怪物体多数を確認!!繰り返します! 3時の方向に怪物体多数を確認!!数およそ30!!》

 

武蔵通信士の声がスピーカーから響いた。それに応じ古庄が矢継ぎ早に命令を出す。

 

《全艦9時方向に回頭!全速離脱急げ!天神は最後尾に回り怪物に対処する!》

 

艦隊が右へと曲がり化物に背を向け逃げ出し、天神は反転し化物の群れに向かって前進していく

 

 

 

 

 

 

「総員配置急げ!」

 

ましろは自分の不運を呪いながらも、マニュアルどうり戦闘準備を進めていく。彼女は明乃と比べ、突発的なことへの判断力は劣るが、基本を守るところは優っていた。

 

「機関室!いつでも全開にできるよう準備してくれ!!」

『またかよ!なんでこういつも』

『わかったわ宗谷さん!』

『クロちゃん!勝手に答えんな!!』

「よろしく頼む」

『はぁ……へいへい、わかったよ』

ましろが指揮している場合、洋美が言うことを聞いてくれるのでとても楽だ。

 

『射撃用意よし!!』

『魚雷発射管準備完了!!』

 

戦闘用意が出来たのと同時に、明乃が駆け込んできた。

 

「遅れてごめん!状況は!?」

 

幸子が報告する。

 

「目標は後方距離70、30ノットで追いかけてきます。既に総員配置完了しています」

 

「わかった。しろちゃん、これから私が指揮を執ります」

 

緊急時はトラウマすら忘れて動けるのかと、ましろは思った。それだけ厳格に仕事に対するON.OFFが勝手に切り替えられるのだろうか。

 

「了解しました。指揮を返します」

 

ましろの言葉と同時に、明乃がフル活動し始めた。

 

「タマちゃん主砲榴弾装填」

「うぃ」

「野間さん!後方監視を徹底して!」

『了解!』

「みんな聞いて!今天神が迎撃に向かってるけど……」

 

明乃は覚悟を決めて、全員に伝えた。

 

 

 

 

 

「たぶん、天神だけじゃ抑えきれない。私達も戦うしかない」

 

 

 

 

 

その言葉の直後天神が砲撃を開始、戦いの火蓋が切られた。




幸子「もう2話目なのに艦娘が出てきません!どうなってるんですか!」
作者「そう言われても……たぶん次回出てくるかも」
ましろ「たぶんって……」
幸子「しょうがないですね。誰が出るんですか?」
作者「それは言えないよ。当ててみたら?」
幸子「う〜ん……そうですねぇ。皆さんは誰だと思いますか?」
明乃「晴風!」
ミーナ「アドミラルシュぺー!」
もえか「武蔵!」
作者「……晴風とシュペーは艦娘にいないし、武蔵もちょっとなあ……」
明乃·もえか「えー」
ミーナ「戦艦少女にはシュペーがいるぞ?」
作者「あ、これ基本艦これからしか出さないよ」
ミーナ「なんじゃと!?」

次回もお楽しみに。


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