感想を一言でいうなら最高です!見たいものが全て詰め込まれてて、とても満足でした!前半は皆かわいいし、後半の戦闘シーンはメッチャかっこよかったです!」
明乃「あのー、興奮してるところ悪いけど……」
作者「ん?」
明乃「劇場版とこれの時系列とか、設定のズレとか大丈夫なの?」
作者「……」(考えてなかった……!)
明乃「あはは……」
物語が一段落ついたら、それも含めた設定集みたいなものを上げようと思います。
それでは本編へどうぞ。
時間は僅か数分前に遡る。
『こちら比叡!左舷副砲群壊滅!至急救援を!』
『乗員はできるだけ重装甲区画へ避難しろ!』
助けを求める比叡乗員の声と、それに対する絶望的な状況を示す神谷の命令。
誰一人言葉を発しない、重苦しく静まり返った晴風の艦橋に、それだけが響いた。
「……比叡が……」
やがて、ポツリ、と明乃が思い詰めた声を漏らす。
「比叡がやられちゃう……」
生徒達は皆俯き、古庄ですら黙り込んだまま、何も答えない。
全員、この絶望的な状況を打破する希望なんて持ってないからだ。
唯一、陽炎だけが希望的観測を述べる。
「い……いくらレ級が強くても、比叡の装甲を撃ち抜くだけの火力は無いわ、本物に比べたら豆鉄砲だもの。だから、沈んだりすることは無いと思う。
それに、もう少ししたら弁天も追いつくから、なんとかなるわよ」
「……本当に、そう思ってる?」
その質問に、陽炎は黙り込んだ。
いくら戦艦だからって、乗員が無事でいられる確証なんて無い。
アメリカの巨大原子力空母も、浮沈戦艦とすら称された10万トン超えのタンカーも、深海棲艦の餌食になってきたのだ。
どんなに沈みにくい艦でも、いつかは深海棲艦に沈められてしまう。
明乃はそんな陽炎の様子を一瞥し、古庄へ提言する。
「古庄教官、晴風を接近させてレ級の気を引きましょう」
「何を言ってるの!?」
古庄は思わぬ意見に目を丸くするが、明乃はお構い無しに続ける。
「このままでは比叡が危険です。射程ギリギリまで接近し砲撃して、気を引いて比叡から引き離しましょう」
「無茶です!」
ましろが割り込んだ。
「相手は最凶とすら言われる敵です!迂闊に接近すれば、今度は晴風がやられるかも知れませんよ!」
「大丈夫、レ級の速力は40ノット、射程5km。対してこっちは37ノットしか出ないけど、射程は最大23km、有効射程を考えても10km程はアドバンテージがある。砲撃して回避行動を強いれば、やすやすとは追いつかれない」
明乃の考えは一理ある。
相手より長大な攻撃範囲を持てば、相手に攻撃を加え続け接近を阻止できる。が、
「却下」
陽炎がズバッと切り捨てた。
「そのスペックはノーマルのやつでしょ?flagshipのスペックはたぶんそれ以上よ、ミケ艦長が考えているより余裕は無いのよ。それに追いつかれて一発喰らったら、こんな紙っペラ艦、いとも簡単に沈められるわよ。……ミイラ取りがミイラになるだけよ」
「でも、このままじゃ比叡がやられちゃうんだよ!陽炎ちゃんはそれでもいいの!?」
「そんなわけないわよ!私だって今すぐに出撃して、この手で沈めてやりたいわよ!でもね、私が出てったところでこのまま食われるか、挽肉になってから食われるか、ステーキになってから食われるかの3択しかないんだから仕方が無いじゃない!」
「2人とも落ち着け」
知らない内に熱くなっていた2人を、ましろが間に入って制止する。
と、その時。思いもしない悪い知らせが飛び込んできた。
『こちら比叡!雷撃を受け左舷に浸水!速力低下!』
比叡の装甲が抜かれた。
そのたった1つの出来事が、激震を走らせた。
「まさか……!」
「戦艦の装甲を破ったの!?」
たった1体の怪物に、戦艦が沈められようとしているのだ。
無論、戦艦が簡単に沈むわけは無く、比叡の一区画を浸水させただけだろう。だが、今ここで撃沈される可能性が十分にある。
その事実が、選択を迫る。
「古庄教官!」
明乃が古庄に詰め寄る。
古庄は比叡の危機と、晴風のリスクの2つを天秤に
だが、天秤は揺れ動くものの、どちらにも傾かない。古庄には比叡の生徒も晴風の生徒も、どちらも切り捨てられないのだ。
古庄は、苦しみ悩んだ。ほんの数秒が、とてつもなく長く感じた。
「助けに行きましょう」
その力強い声にハッと振り返る。
声の主は鈴だった。
それを皮切りに、他の生徒達も声を上げる。
最初に芽衣が意気込んで、
「やろうよ艦長、あの怪物をぶっ潰そうよ」
幸子がドスの効いた声で、
「ワシ等がやらずに、誰がやるんじゃい」
それに続いて、皆の声が聞こえた。
『機関は問題ねえ!やってやろうってんでい!』
『お姫様に散々翻弄されたからね、今度こそバーンと1発で仕留めるよ!』
『見張りは任せてください』
『ちょっとくらい傷ついても、私達がなんとかするよ!』
『ご飯作っておくね!』
『ま、なんとかなるぞな!』
皆、肯定的なようだ。
クラスの皆からの支持を受け、明乃は再び古庄に迫る。
「古庄教官!やらせてください!」
だが、古庄は首を縦に振らない。
レ級を引きつけるのはいい。だが、その後の鬼ごっこに終わりが見えないのが、恐れていることであった。
レ級から逃げ切れるほどの速力は無く、かと言って撃沈できる保証もない。
なんとか沈めようと、逃げようと足掻いた挙げ句に、武装や機関も不調をきたして詰みの状態なんて、駆逐棲姫との戦いの再現になりかねない。
あの時は敵が駆逐級であり、大した火力は持っておらず、また、陽炎が終始囮になっていたため、晴風の被害はなかった。
しかし、今回は火力トップクラスの戦艦、晴風に被害が及ぶのは目に見えているし、陽炎の囮も恐らく無駄だろう。
向こうの持久力が未知数である以上、安易には同意できなかった。
「……陽炎さんはどう思う?」
古庄が陽炎に意見を求めると、陽炎はキッパリと反対した。
「反対よ。時間稼ぎにはなるかもしれないけど、決め手が無い以上こっちが負けるわ」
「陽炎さんの魚雷で撃沈するのは?」
陽炎の雷撃なら戦艦級を沈められるのでは?と考えたのだが、
「全弾ぶち込めば、ワンチャンできるかも」
「実際にできるの?」
「私1人じゃ無理ね。有効射程に入る前に砲撃喰らってドボンするし。もし近づけても、一斉射じゃ足りないから再装填するしかないけど、その間に殺されるわ」
陽炎が首を横に振る。
もとより期待はしていなかったが、少し残念だった。
あれこれと苦悩しているうちに、更なる悪い知らせがマチコから飛んできた。
「教官!比叡が群れに追いつかれます!」
レ級に置いてきぼりにされた怪物の群れが、北風やスキッパーからの攻撃を受けながらも、比叡に襲いかかろうと追いついてきたのだ。
「……もし、あの数から雷撃を受けたら、もう保たないわね……」
古庄が悔しそうに唇を噛む。
レ級1隻の火力で既に満身創痍なところへ、群れによる攻撃を受けたら__。どうなるかは想像に難くない。
「だったら!せめて群れだけでも晴風に引き寄せましょう!」
明乃が強行に訴える。
レ級よりも遥かに速力や火力の劣る群れが相手ならば、晴風は自慢の足と砲力を使って逃げ切れる。
__だが、……本当に大丈夫なのだろうか。
古庄は嫌な予感に襲われた。しかし、もう戸惑っている暇は無いことも事実だった。
「……岬艦長、作戦実行を許可します。但し、一撃加えたら直ちに反転し離脱しなさい」
「了解、比叡の援護に向かいます。一撃加え直ちに反転、離脱します」
明乃は復唱した後、振り返り皆と向かい合う。
「鈴ちゃん取り舵反転!前進一杯!」
「はい!取り舵反転!前進一杯ヨーソロー!」
『前進一杯でい!』
晴風はUターンして、比叡の元へと全速力で向かう。
「……教官、よかったの?」
陽炎が古庄へ、生徒達には聞こえないように問いかける。
その声は酷く冷えていた。
「十中八九、誰か死ぬわよ」
研ぎ澄まされた矢のような視線が、古庄に突き刺さる。
古庄はそれに耐えられず、すっと目を逸した。
「……どのみちこのままだと、比叡に死者が出るわ。だから、少しでも希望のある方を選択したのよ」
「比叡は戦艦だから装甲も厚いし、注水区画も桁違いに多いから、中々沈まない、弁天が合流するまでは持ちこたえられる筈よ。それに比べて晴風は紙っぺら装甲だし、バルジもロクに無い、下手すれば一発喰らっただけで誰か死ぬわよ。
それも考えての判断?
「教官」では無く「先生」と、陽炎は呼んだ。
教え子を守る者、としての覚悟はあるか?という意味なのだろうか。
「……ええ」
「……なら、もう何も言わないけど」
陽炎は追及を止めて前を向いた。
これから、晴風に何が起こるかわからない。
最悪、
◇
「なんで晴風が接近してる!?」
「『我、比叡の援護に向かう』とのことです!」
「引き返させろ!今すぐだ!」
神谷が怒鳴るようにオペレーターに命令する。
オペレーターはすぐに通信を繋ぎ呼びかけた。
「こちら北風、晴風は退避せよ。繰り返す、晴風は退避せよ」
しかし、帰ってきたのは、明乃の拒否だった。
『こちら晴風、その指示には従えません』
「これは命令です、退避せよ」
『お断りします』
「代われ!」
神谷がしびれを切らし、オペレーターと代わった。
「岬艦長命令だ、下がれ」
『お断りします』
「いいから早く下がれ!晴風まで巻き込まれるぞ!」
『比叡を見殺しにするつもりですか?』
「そんなつもりは無い!今残っていた武装スキッパーを向かわせた、弁天もじきに追いつく」
『たった1機のスキッパーで太刀打ちできるんですか?』
明乃は的確に穴を突いてきた。
既に7 台のスキッパーが破壊されているのに、重装甲とは言えたった1機のスキッパーが、レ級を撃破できるとは保証できない。
神谷自身も、
『もうすぐ、群れも比叡に追いつきます。その前に晴風に食いつかせて比叡から引き離せば、比叡の損害は大幅に減るはずです』
「だが、狙われるのが晴風になるだけだぞ。わかっているのか!」
『わかってます。でも__』
『もう、誰かが死ぬのを、指を咥えて見てはいられないんです』
その心から溢れた涙の言葉を最後に、通信が切られた。
北風の艦橋は、重い空気の中に静まり返った。
「…………クソッ!!」
神谷がコンソールをドン!と殴りつけた。
それを咎める者は、誰もいなかった。
◇
晴風は最大戦速で、比叡の左から直角に接近していた。
もうすぐ群れも比叡を捕捉するかというギリギリのタイミングで、有効射程まで近づいた。
「速度そのまま!取舵一杯!群れと同航に!」
「はい!」
「主砲撃ち方よーい!」
「うい!」
左へと舵を切り、比叡を追いかける群れとピタリと並走し、全ての主砲を向ける。
『射撃用意よし!』
光の報告を受けた志摩は頷き、明乃に向けて指で丸を作った。
「マル」
戦闘準備は整った。
明乃は自分を落ち着けるため、一度大きく深呼吸した。
__大丈夫、誰も、傷つけさせない__。
そう自分に言い聞かせ、叫ぶ。
「始めるよ!主砲撃ち方始め!」
「
晴風が群れに向けて一斉射、群れと晴風の戦いが始まった。
作者「……前書きで凄い興奮してたけど、実は1つショッキングなことがあったんだ……」
陽炎「何!?」
幸子「まさかこれ凍結とか!?」
作者「『蒼青のミラージュ』※のサービス終了が決まったんだ……」
※艦船擬人化ゲームで、『戦艦少女R』のスピンオフ。
陽炎「なーんだ、そんなこと?」
幸子「まあ、仕方ないですよ。サービス開始から1日と欠かさずプレイしてたんですから」
作者「もうすぐできなくなると思うと、すげえ辛い……。あの戦闘システムとか、キャラのLive2Dとか、ボイスとか、お気に入りだったのに……」
あかね「ソシャゲは終わっちゃうと、何も残らないんだよね」
幸子「虚しいですねー」
次回もお楽しみに。