青い人魚と軍艦娘   作:下坂登

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作者「いつの間にか原作カテゴリに『ハイスクール・フリート』が追加されていました。ついにここに入ったか!と凄く嬉しかったです」
明乃「それなりに有名な作品じゃないと表示されなかったから、そこに加わったのは嬉しいよね」
作者「それからもう1つ、劇場版の4DXを体感してきました!ボートレースや戦闘シーンで揺れるし水飛沫がかかるし、凄い臨場感があって、また違った形で楽しめました!」
明乃「おお〜!」
作者「はいふりと4DXの相性良すぎだろ!って思いました!……家でもできたらなぁ……」
明乃「家が浸水しちゃうと思うけど、やってみたいよね」

それでは本編へどうぞ。


26話 最狂の怪物

 晴風から放たれた砲弾は3発とも、群れのド真ん中に着弾、水柱を上げた。個体には直撃せず撃破には至らなかったが、注意を引くには十分過ぎた。

 

『群れが転進、こちらに向かってきます!』

 

 マチコの報告に、ひとまず上手く行ったか。と明乃は少しだけ安堵した。これで比叡がこれ以上の猛攻に曝されることは回避できた。

 

 ここからは晴風の番だ。

 

「取舵90度!怪物を引き離すよ!」

「ヨーソロー!」

 

 晴風はさらに左へと舵を切り、群れを比叡から引き離しにかかるが、奴等は最大戦速で晴風を追尾してきた。

 

「深海棲艦が足並みを揃えてるとしたら35ノットくらいね、このまま飛ばせば振り切れるけど」

 

 陽炎がそこまで言った説明を、ましろが継ぐ。

 

「晴風の機関が不調をきたした瞬間に詰む。それまでに数を減らしておかないと、武装スキッパーや噴進弾の援護が通らないかもしれない」

「わかった」

 

 明乃は機関室へと言葉をかける。

 

「マロンちゃん。負担をかけるけど、お願いね」

『任せろ!けど、なるべく早くしてくれよ!』

「うん!」

 

 次いで、志摩へと向き直る。

 

「タマちゃん、先頭の奴から1体1体確実に仕留めて!」

「うい!」

 

 志摩は頷き、手元にあるタブレット端末に写された、飛行船からの位置情報を元に射角を算出する。

 

「2番まま(そのまま)()っ!」

 

 2番主砲から発射された砲弾は先頭を航るハ級からは大きく外れて、後続の軽巡ツ級に直撃、木っ端微塵にした。

 

「……今ツ級狙ったの?」

 

 芽衣が何かおかしいと思い尋ねると、志摩はプルプルと首を横に振った。

 

「ううん」

「おかしーな、位置情報ズレてるのかな」

「……かも」

 

 気を取り直し次を狙う。

 

「3番1の30、7」

『3番主砲1°の、高角30°、7秒後に合わせ!』

『1°の高角30°、回した!』

『3、2、1、発射!』

 

 3番主砲がハ級に向けて発砲、だが、再び大きく外れて着弾した。

 

 

 

「うい……?」

 

 志摩は砲弾の弾道を見て、何か引っかかったようだが……。

 

 芽衣が幸子に吠える。

 

「ねえ、やっぱ位置情報おかしいよ!確認取って!」

「はっ、はい!」

 

 幸子がタブレットを叩いて、位置情報の修正を試みる。

 

 

 

 

 

 だが、それを遮るようにオペレーターの叫びが響いた。

 

 

 

 

 

『緊急!!戦艦レ級flagshipが晴風に向かった!!警戒されたし!!』

 

 

 

 

 

 バンッ!と雷の落ちたような衝撃が走った。

 

 最凶の敵、レ級が目標を比叡から晴風に切り替え、追いかけてきたのだ。

 

「あー……余計な物まで釣っちゃったわね……」

 

 陽炎の額を冷や汗が伝う。

 軽口を叩いてはいるが、実は心臓バックバク、本能が警戒信号を連発しまくっている、普段なら間違い無く逃げ出しているレベルで。

 

 その一方で、明乃は的確に素早く指示を出していた。

 

「ココちゃん!敵の位置と速度は!?」

「5時の方向、主砲有効射程圏内……よっ!?44ノットです!!」

「攻撃目標変更!目標レ級!攻撃始め!」

「うい!」

 

 主砲がレ級へと狙いを定め、近づけてなるものかと何発も連射する。

 

「44ノットって……、改インディペンデンス級と同じじゃないか!?」

 

 レ級flagshipの速力を聞いて、ましろは開いた口が塞がらないようだ。

 そりゃそうだ、最新鋭の超高速艦と同じ速力を出せるなんて、陽炎もおかしいし酷いと思い身体が震えた。

 

「予想よりも早く追いつかれるぞ!」

「わかってる!」

 

 

 

 

 

 ドンドンドンドン!と絶え間なく主砲が砲弾を吐き出し続け、次々たレ級の周囲に水柱を乱立させる。だが、

 

「……なんか、おかしくない?」

「なんかって何?」

 

 双眼鏡を覗いて首を傾げる光に、引き金を引き続ける順子が尋ねた。

 

「弾が散らばり過ぎてるような……」

 

 いくら距離があると言っても、いつもでは考えられない程に着弾位置がバラついていた。

 何か嫌な予感を感じる光だが、美千留に急かされた。

 

「まだ結構離れてるからだよ、それより早く照準修正お願い!」

「う……うん!次仰角2度落として!」

「OK!」

「バキュン!」

 

 照準を修正して再度砲撃開始、しかし、連射された砲弾はこれまでと同じように、バラバラに着弾した。

 

「……もしかして……、これって……」

 

 美千留と順子も異変に気がついた。

 

「弾道そのものがブレてきてる……?」

「ってことはつまり……」

 

 

 

 

 

「「「砲身が駄目になってる!?」」」

 

 

 

 

 

 戦艦レ級、戦艦棲姫、駆逐棲姫と、3回もの熾烈な戦闘を経て、発射回数は1門あたり100は超えただろうか。あまりの高負荷に一度焼けてしまったこともある砲身は、とっくのとうに寿命を迎えていたのだ。

 砲身が駄目になってしまえば、砲弾が真っ直ぐ目標に向かって飛ぶ筈が無い。

 つまりは、人間CIWSと呼ばれる志摩の射撃能力も、それを実行できる砲術員達の能力も、全くの無駄になったということだ。

 

 

 

 

 

 そして、それによって晴風は攻撃力のほとんどを喪失した。

 

 

 

 

 

『タマちゃん!砲身が死んだっぽい!』

「うい……」

 

 志摩も薄々気づいていたようだ。

 それを聞いた艦橋のクルー達が、一斉に騒がしくなる。

 明乃に至っては、顔が真っ青になって固まっていた。

 

「主砲が使えなくなったの……!?」

 

 芽衣が慌てて陽炎に聞く。

 

「主砲が使えないってことはさ……、あれ(戦艦レ級)を倒す方法ってある!?」

「無いわね」

「え……」

 

 陽炎は即答し、さらに告げた。

 

「機銃も効かないし、実質丸腰よ。とにかくデタラメでいいから撃ちまくって、運に任せるか、少しでも時間を稼ぐしかないわ」

「そんなっ!」

「あとは司令がどうするかだけど……」

『こちら神谷、晴風応答せよ』

「すっごいタイミングで来たー!?」

 

 名前を出した途端に本人からの連絡、ベストタイミングにも程がある。

 

 古庄が答えた。

 

「はい」

『これより総攻撃を行う。戦艦レ級が群れに追いつき纏まったタイミングで、残りの()()()を投入する。噴進弾、武装スキッパー、加えて比叡の主砲火力で群れを丸ごと殲滅する。晴風も砲撃で加われ』

 

 それは文字通り、最後の力を振り絞った戦い。使えるカードを全て切り、もう後には何も残らない。

 

「……もしそれでも逃したら?」

『…………』

 

 最悪の想定を口にすると、神谷は何も答えず黙り込んでしまった。

 生徒達にも緊張が走る。

 

 わかっている。これで逃したらもう打つ手は無い、すぐに晴風が、生徒達が喰われてしまう。

 

「……司令、今のうちに晴風から皆を降ろしたら?」

 

 陽炎が思いがけないことを口にして、その場がどよめいた。

 

「陽炎ちゃん!?」

「どういうこと!?」

 

 陽炎は手で生徒達を制し、考えを述べる。

 

「レ級を無傷で逃したら、間違いなく晴風は殺られるわよ。だから、今のうちに避難するべきじゃないかしら」

『だが、スキッパー以外のボートはレ級を振り切るだけの速力がない、すぐに追いつかれるぞ』

「晴風を囮にする。スキッパーに乗れる人数だけ残して攻撃し続けて、レ級の射程圏内に入ったところで逃げる。先に離艦した皆は大きく迂回して群れを避けて、弁天に拾って貰うの」

『弁天ならレ級から逃げられるか?』

「速力は同じだけど、レ級でも航続距離は船に比べれば短いわ、全速力で逃げ続ければ、いずれ諦めるわよ。皆の安全を考えるなら、これが一番だと思うわ」

 

 陽炎が言い終わると神谷が、

 

『1つ聞いておきたい』

 

と前置きしてから、根本を揺るがす問題を指摘した。

 

『奴が離艦する乗員を無視して、晴風に食い付くという保証は?』

「ある!……と言いたいトコだけど、無いわよ」

 

 そんなのわからない、と言い放つ陽炎。

 

「何を食べたいかの気分次第なんじゃないかしら」

『……わかった。その案には同意するが、ボートでは逃げ切れない恐れがある。だから、こちらから非武装だがスキッパーを出すぞ、それで牽引すればボートでも逃げ切れるだろう。それと、離艦するのは攻撃が失敗に終わった時だ。攻撃前に離艦して、奴が行動を変えたら面倒だ』

「わかった」

「了解しました」

 

 話がまとまり、通信が切られた。

 

 陽炎の提案は多少変われど承認された。これなら生徒達が殺される可能性は回避できるだろう。

 だが、まだ嫌な予感がして仕方が無かった。

 

 

 

 

 

     ◇

 

 

 

 

 

「宗谷艦長、自分はこれから晴風の援護に回る。弁天もスキッパーを出せ」

『了解』

「桜井、後は任せる」

「待って」

 

 神谷が艦橋から出て行こうとするのを、桜井が呼び止めた。

 

()()、持って行ったら?」

 

 そう言って右手で銃の形を作り、神谷へと向けて「ばーん」と撃つ真似をした。よく見ると、人差し指と中指を揃えた二連装タイプだ。

 何を示唆しているのか、神谷はすぐにピンときた。

 

「あれなら普通の銃より効くんじゃない?」

「ああ、借りてくぞ」

 

 艦橋を後にする神谷を、桜井は心配そうに見送り席に直る。

 

「副司令の桜井です、これより神谷司令に変わり私が指揮を取ります。武装スキッパー隊は待機、弁天斉射用意、比叡主砲射撃用意のまま、攻撃合図を待て」

 

 

 

 

 

     ◇

 

 

 

 

 

『攻撃開始まで、60秒』

 

 オペレーターが時間を読み上げる声がすると同時、緊張の糸がまた一段と張り詰めた。

 

「……これで止めないと……」

 

 明乃は思い詰めた様子で呟いた。

 

 

 

 これで止められなかったら、私はまた艦を沈めることになる。そんなの…………絶対に嫌だ。

 私は晴風を、皆の家を守り抜かなくちゃいけないんだ。

 

 

 

 その時、ゴン ゴン と聞いたことのある、金属の靴が床を叩く音が近づいてきた。

 その方向に振り向くと、艤装を装着し完全武装した陽炎が、階段を上がって来るところだった。

 

「陽炎ちゃん!?なんで武装してるの!?」

「なんでって、戦うために決まってるでしょ」

 

 陽炎は当たり前のように言って、拳を突き出す。

 

「もしレ級が攻撃を切り抜けてきたら、私が意地でも貴女達を守るわ。……なーんて」

 

 真剣な顔から一転、腕を降ろして表情を崩した。

 

「レ級が来たらすぐ逃げるから、殺り合うつもりなんて無いわよ。艤装もスキッパーの後ろにくっついて、引っ張ってもらうためだから」

 

 どうやら、水上スキーのように引っ張ってもらうつもりのようだ。

 それを知ってホッとした。また命を投げ出すんじゃないかと、気が気じゃなかったのだ。

 

「よかった」

「ホントは晴風を囮になんかしたく無いんだけどね」

 

 その悪気は無い一言に、明乃は何も言えなかった。

 

 自分が招いたのだ。

 比叡を助けるためだったが、代わりに晴風を危険に曝してしまった。

 

「……晴風を、沈めさせない方法ってないかな……」

「う〜ん……、方法っていうか、可能性になるけど。

 1つ目は、一斉攻撃でレ級が沈むか損傷してくれればそこで終了。これが最高ね。

 2つ目は、レ級が晴風じゃなくて逃げる人を狙う場合。それなら弁天に拾ってもらえば、そのうち燃料切れで帰ってく。

 最後、3つ目は……」

 

 そこまで言って、陽炎は口ごもった。

 

「陽炎ちゃん?」

 

 明乃が顔を覗き込んだその時、

 

 

 

 

 

『攻撃開始まで10秒!攻撃用意!』

 

 

 

 

 

 桜井の号令が掛かり、明乃は慌てて後ろを振り返る。すっかり考え事で指揮がなおざりになっていた。

 マズイ……!と思った。が、

 

「砲術長、2番3番主砲撃ち方よーい!群れの前に落とせ!」

「うい!」

 

 ましろが代わりに指示を出した。そして、明乃に声をかける。

 

「艦長、今は目の前のことに集中してください」

「う……うん!」

 

 明乃が頷いた直後、

 

 

 

 

 

 バァン!と破裂音が響き、晴風が大きく揺れた。

 

 

 

 

 

     ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「__3、2、1、攻撃始め!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カウントダウンが終わると同時に、北風と弁天のVLSが一斉に開き、残りの噴進弾と噴進魚雷を上空へと撃ち出した。

 比叡は35.6cm連装砲4基全てを群れへと向けて、交互撃ち方のためまずは左砲のみをぶっ放した。

 

『よっしゃ!武装スキッパー隊突撃する!』

 

 群れの近くで待機していた武装スキッパー隊も、赤羽を先頭に群れへと突っ込んで行く。

 

「スキッパー隊突入!着弾まで30秒!」

 

 桜井はモニターに映る飛行船からの監視映像に目をやった。

 

 群れのど真ん中を、他の奴など意に介さず我が物顔で突っ切るレ級、噴火進弾や砲弾はそいつに向かって一直線に飛んでいく。

 しかし、回避する素振りが無い、まだ距離があるから気づいていないのだろうか。いくらレ級でも対艦噴進弾や35.6cm砲、武装スキッパーの体当たりを受けたらひとたまりもないと思うのだが……。

 

 その時、レ級の巨大な尾に異変が起こったのを、桜井は見逃さなかった。

 

「……飛行長!レ級をズームアップ!」

「はい!」

 

 カメラがレ級へズームアップし、異変の正体を知った桜井は、思わずポカンとしてしまった。

 

「……何あれ」

 

 

 

 

 

 ガシャンガシャンと音を立て、レ級の艤装が変形して、巨大な鮫の顎のような尾から次々と武装が展開される。

 

 三連装主砲6基、連装副砲20基以上、無数の機銃、魚雷発射管40門以上。そんなにどうやって格納していたのか、あの尾は四次元ポケットかと疑いたくなる程、例を見ない大量(トップヘビー)の武装が展開された。

 

 そして、大きく顎を開き咆哮しながら上を向いた。まるで怪獣が光線のためのエネルギーをチャージするかのように。

 

 

 

「回避!!」

 

 

 

 桜井は咄嗟にそれだけ叫んだ。宛名も無かったが、赤羽はすぐ理解した。

 

「回避行動!」

 

 赤羽が怒鳴り、武装スキッパー隊はバラバラに舵を切った。

 

 

 

 

 

 直後、武装スキッパー隊を狙い、レ級の尾から巨大なビームが発射された。

 否、それはレ級の発射した砲弾の密度があまりに高く、無数の砲弾の光跡が1つに纏まって、ビームのように見えているのだ。

 

「マジかよぉっ!!」

 

 絶叫する赤羽のすぐ左側を、全てを蜂の巣と化す光線が掠めた。

 ビームの通った後を無数の水柱が埋め尽くし、まるでカーテンのように海を隔てた。

 

「なんだよあれ!!ビームとかざけんじゃねー!!って、うおっ!?」

 

 ビームのような一点集中砲火から一転、無数の砲台が四方八方へバラバラに向いて、バカスカ乱射し始めた。赤羽の側にも何発もの主砲弾が着弾し、水柱と爆炎を吹き上げる。

 赤羽は少しでも回避率を上げるため、そして誘爆を防ぐために搭載されていた短魚雷を全て放棄(パージ)

 その直後、放り出された短魚雷に砲撃が命中し起爆、爆風がスキッパーを押し飛ばした。スキッパーは一度は宙に浮いたものの、何度か海面をバウンドしてかろうじて立て直した。

 

「無茶苦茶過ぎるだろっ!!」

『やられた離脱する!』

『ヤバイヤバイ!誰かー!ヘルプミー!!』

 

 スキッパー4機の内一機が副砲弾により損傷し離脱、もう一機はまともに集中砲火を浴びて爆発炎上、乗ってた奴はすんでのところで脱出したようだが、パラシュートで漂っているのを対空射撃の的にされて情けない悲鳴を上げていた。

 

「及川!拾いに行け!」

『はい!』

 

 まだ無傷だったS6の及川をパラシュートの落下地点に向かわせる。

 と、頭上を噴進弾の群れがレ級へと白い煙の尾を引いて向かっていくのが見えた。

 

「ぶっ潰せ!」

 

 大量の対艦噴進弾で木っ端微塵にされちまえ!とそれを見送る。

 しかし、その期待はあっさりと裏切られた。

 

 大量の噴進弾に対抗するかのように、レ級の尾にまた新たな武装が展開されていく。

 上部に出てきたのは、無数の穴が開いた4つのミサイルポッド。

 

 12cm30連装噴進砲。

 

 計120発の噴進弾が空に白線を引き飛び出した。

 

「はあ!?なんで噴進弾もってんだよ!?」

 

 ブルーマーメイドの噴進弾と、レ級の噴進弾が真っ向から衝突。何十個もの爆炎の花火を残し、ほとんどが撃ち落とされた。生き残った噴進弾がレ級へと突入するものの、埋め尽くすような対空砲火の前に全て届かないうちに爆発してしまった。

 

 続いて噴進魚雷がレ級へと迫るが、何十発もの魚雷によって迎撃され、傷1つつけることができなかった。

 

 戦艦2隻分の火力にイージス艦のような射撃、対空性能、重雷装巡洋艦と同等の雷撃能力、今までの敵の中で一番最高に狂っている。

 

「……これ無理ゲーじゃね……?」

 

 赤羽は降り注ぐ砲弾を必死に躱しながら、そう呟いた。

 

 

 

 

 

     ◇

 

 

 

 

 

「噴進弾、残弾0!」

「比叡の砲撃も命中せず!」

 

 報告を聞いた桜井は、珍しく苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 

「……レ級flagshipを倒す方法はもう無いかなぁ……」

 

 噴進弾を撃ち尽くした北風には、もうレ級を捉えて撃破できる武器は残されていなかった。さらに、武装スキッパー隊も壊滅状態。

 

 もう打つ手は残されていない。

 

 陽炎の提案通り、晴風を囮にして生徒を逃がすしか無いだろう。

 

「晴風に連絡、『陽炎さんの進言を実行、乗員離艦__』」

 

 

 

 

 

「あっ、晴風速力低下してます!現在11ノット!」

 

 

 

 

 

 オペレーターの予想もしない報告を聞いて、思わず声を荒げてしまう。

 

「はあっ!?何してんの!?」

 

 

 

 

 

 

 戦艦レ級flagshipとの戦闘は誰にも想像できない方向へと舵を切り、ますます混迷を極めていく。




不知火「戦艦レ級flagshipのスペック(適当に作った)はこちら」

主武装:20インチ3連装砲6基 計18門
副武装:5インチ連装両用砲20基 計40門
 魚雷:61cm5連装魚雷発射管8基 計40門
その他:40mm、20mm機銃 数えられない程
    12cm30連装噴進砲4基 計120門
 速力:44ノット
 装甲:大和型を超える

陽炎「……これ勝つの無理じゃない?ていうか何処にこんなのしまってるのよ?」
不知火「純粋に戦艦2隻分の火力とか、頭おかしいですよね。作者は『レ級flagshipだったら、こんぐらい積んでもおかしくないっしょ』と供述してました」
陽炎「えええ……」(ドン引き)
不知火「波動砲や超重力砲が出ないだけマシですが……」
陽炎「そんなの出たら世界が滅ぶわ!」
不知火「というか本当にどうやって倒すんですか?」
陽炎「私が聞きたいわよ」

次回もお楽しみに。

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