青い人魚と軍艦娘   作:下坂登

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▽しらぬいは、28わのサブタイトルをみつけた!
 ……ぬりつぶされていてよめない……。
 ……いやなよかんがする……。

作者「お待たせしました第28話!戦艦レ級flagshipとの戦いも佳境に差し掛かります。晴風に乗り込んだレ級flagshipに対して、皆はどう立ち向かうのか」

※後半グロ注意です。

それでは本編へどうぞ。


28話 晴 は   ま 

 レ級が雄叫びを上げるのを、古庄は右ウイングから見た。

 レ級の雄叫びで艦そのものが大きく震えて、ビリビリと艦橋の窓が音を立てた。

 

「なんてしぶとい奴なの……」

 

 古庄はレ級の力に恐怖を抱くと同時に、絶望感に襲われた。

 乗り込まれた今、もうレ級を倒す手段は無く、内火艇が切り離されてしまい、生徒の避難手段も失われてしまった。

 

「古庄教官……」

 

 明乃が震える掠れた声で古庄を呼ぶ。

 そこへ芽依と志摩が、射撃指揮所から飛んで帰ってきた。

 

「ヤバイよ艦長!乗り込まれたんだけど、どうする!?」

「芽依ちゃん……」

 

 明乃は立て続けに起きた悪夢のような状況によって、半ばパニック状態で頭が回らず、何も答えられなかった。

 

 その時、古庄に桜井から連絡が入った。

 

『古庄教官、戦艦レ級は!?』

「まだ健在です!」

 

 桜井がマイクを口から離して、「なんでよ!」と吐いたのが残念ながら聞こえた。

 しかし、桜井はそれからすぐに思考を切り替えて、レ級を倒す方法を模索した。そして、

 

『古庄教官、戦艦レ級を__』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『晴風ごと撃沈します』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 予想はしていたが、それでも古庄は動揺を隠せなかった。声が漏れていたのか、明乃達が硬直している。

 桜井は冷え冷えとした声で続ける。

 

『戦艦レ級を艦内に引き込んで、隔壁を閉じて動きを封じます、そこを比叡の35.6cm砲8門全てで射撃するんです。それならレ級は迎撃も回避もできませんし、戦艦主砲を耐えられる筈もありません』

「……わかりました。しかし、艦にはまだ生徒達が」

『離艦するまで待ちます。ですが、もし無理なら…………私の責任で生徒諸共沈めます』

「……了解しました」

 

 古庄が重く頷いた。

 それとほぼ同時に、マチコの報告が響いた。

 

『レ級が不知火さんを追って艦首方向に移動中!』

「っ!わかったわ!」

 

 古庄は艦内へと向かうために、万が一のため用意していた武器の入ったケースを手に取った。

 レ級が艦首へ向かい、残りの生徒達は艦の後方にいる。ならば手動で隔壁を閉じてレ級を艦首に閉じ込めてしまえば、避難経路は確保できるはず。そう判断したのもあるが、何より古庄は、()()()()()()見捨てられなかった。

 

「教官どうすんの!?」

 

 芽依が尋ねる。

 古庄はケースから取り出したショットガンを担いで答えた。

 

「レ級を艦首に封じ込めてくるわ、貴女達はスキッパーで逃げる準備をして。岬さん、皆の避難指示をお願い。それと__」

「それと?」

 

 芽依が聞き返すと、古庄はハッキリとこう言った。

 

 

 

 

 

「__最悪、貴女達だけでも逃げて」

 

 

 

 

 

 それを聞いた途端、身体が凍りつくのを感じた。

 

 今、古庄は告げた、仲間を見捨ててでも逃げろと。

 

 もう、そんな状況なんだ。

 晴風も、仲間も失うかもしれないんだ。

 

 

 

 

 

「皆、わかった?」

「…………了解」

「うぃ…………」

 

 芽依と志摩の返事を聞き、古庄は艦橋を飛び出した。

 芽依はそれを見送ると、明乃に声をかける。

 

「さあ艦長、指示……」

 

 だが、明乃の姿が無い。視線を下げると、床に小さくうずくまっているのを発見した。

 

「艦長?大丈夫!?」

「わ……わた…………わたし…………私が…………皆を……」

 

 芽依が肩を揺するも、パニックに陥っているようで、手を震わせて焦点の合わない目で、壊れたラジカセのように声を漏らしている。

 自分の指示が仲間の命すら絶望的な状況に陥れたという罪悪感に、明乃の心は押しつぶされていた。

 

「艦長!?しっかりして!」

「艦長!」

 

 グイッと志摩が明乃の腕を掴んで引っ張り無理矢理立ち上がらせ、正面から向き合い瞳を合わせる。

 普段の志摩ではやらない強引な行動に、芽依もびっくりした。

 

「終わってない」

「え…………」

 

 突然投げられた言葉で、明乃のパニック状態が止まり、戸惑いの表情に変わった。

 

「まだ、終わってない」

「タマちゃん……?」

「まだ誰かが死んだわけじゃ無い、だからまだ終わった訳じゃないって」

 

 相変わらず言葉足らずな志摩の伝えたいことを、芽依が代弁する。

 

「なのに、艦長が仕事ほっぽりだしてどうすんの!どうやって皆を逃がすか考えないと!」

 

 その言葉で、明乃はハッと我に返った。

 

 __そうだ、私は艦長なんだから、投げ出すわけには行かない。

 

 壊れかけた心を、艦長としての責任で塗り固めて崩壊を押し止める。

 

 

 

 

 

 そこへ、神谷から通信が入った。

 

『晴風、聞こえるか?』

「神谷司令!?」

 

 明乃が無線機を取り応答する。

 

「こちら晴風、艦長の岬です」

『そちらの状況は把握している。今スキッパー6隻で急行しているところだ、あと2分程で着く。こちらが到着するまで奴との接触を避けて安全を確保しろ』

 

 神谷の到着まで2分、それまでレ級に見つからないように身を隠してさえいれば、皆が助かる可能性は高い。

 希望が見えたことで、明乃の心はだいぶ楽になった。

 

「はい!了解しました!」

 

 無線機を置いて、伝声管で艦内の全員に伝える。

 

「皆!あと2分で救援が来るよ!それまでレ級に見つからないように隠れていて!あと、皆が何処にいるか教えて!」

 

 美海が答えた。

 

『私と機関長、黒木さん、美波さんは教室にいます!』

「わかった!」

 

 そう頷いてすぐ、名前が足りないことに気づく。

 

「…………野間さんと万里小路さんは?」

『見張り台と水測室じゃないの?』

「野間さん!万里小路さん!何処にいるの!?」

 

 だが、2人からの返事は無く、明乃は不安にかられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちょうどその頃、2人がレ級と相対しているなどとは、知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、晴風から切り離された内火艇は、無動力のまま波に流されていた。

 飛んできた飛行船の破片が直撃したためか、エンジンが故障して始動せず、留奈がエンジンフードを開けて色々といじってはいるものの、うんともすんとも言わない。

 その場にいる全員が、留奈の手元をハラハラしながら覗いていた。

 

 ましろが心配そうに尋ねた。

 

「駿河さん、どうだ?動きそう?」

「う〜ん、エンジンそのものは問題無さそうなんだよね。たぶん電装系じゃないかと思うんだけど」

「直るのか?」

「やってみるけどわかんない」

「嘘だろ……」

 

 ましろは、いつ怪物が来るかも知れない焦りからイラついていた。

 

「あ、副長ちょっとエンジンかけてみて」

「ああ、わかった」

 

 留奈に頼まれてイグニッションキーを回す。

 普段ならセルモーターの回るキュキュキュっという音がするのだが、それすら聞こえず、完全に沈黙してしまっていた。

 

「駄目か……、ついてない……」

 

 ましろはがっくりと落胆して、縁に腰をおろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その直後、ホラー映画よろしく突然海面から伸びてきた手が、ましろのスカートの裾をガシッと掴んだ。

 

「わあああっ!?」

 

 ましろは何が起きているのかわからないまま、そのまま内火艇から海へと引きずり込まれて、青い海の中へと姿を消した。

 

「しろちゃん!?」

「副長ーっ!?」

 

 ましろが姿を消して、残された幸子達は、まさか怪物に水底へと引きずり込まれたのかと、驚きと恐怖のあまり腰を抜かしてへたり込んだ。

 

「あわわわわ………」

「ど、どうしましょう!?」

 

 全員が腰を抜かしてガクガクと震えることしかできない中、ガシッ!と内火艇の縁を、海中から伸びた右手が掴んだ。

 

「「「ひっ!!」」」

 

 少しでも離れようと船首へ逃げようとした鈴が足を滑らせて豪快に転び、幸子は一縷の望みにかけてタブレットを投げつけて、美甘は備え付けてあった長い棒で叩いて、撃退しようと構えた。慧はリアリストなのに神頼みしている。

 皆が今までに例を見ない程、周章狼狽しているかがわかるだろう。

 

 ちなみに留奈は死んだふりで乗り切ろうとしていた。

 

 バン!と左手も縁にかけられ、全員がビクリと後ずさる。その指から垂れた水滴が船底を暗い色に濡らした。

 

 そして、海中から怪物が姿を現して__。

 

 

 

 

 

「あークソ、轢かれても死なねーとかありえねーだろ」

 

 __では無く、内火艇に上がってきたのは赤羽だった。

 

「「「「「赤羽さん!?」」」」」

「よっ、邪魔するよ」

 

 軽い断りを入れて内火艇へ転がり込んだ彼女は、ぐっしょりと濡れた作業着の上にハーネスを付け、特殊警棒やらアサルトライフルやら手榴弾やらを背負ったままだった。

 そんな重たい装備を付けたまま、墜落地点からここまで泳いで来たようだ。

 

「あーホント重てー、溺れるかと思ったよ」

「そう思うのなら、武器を捨てるべきでは……」

 

 幸子が指摘するも、「馬鹿言うな」と一蹴された。

 

「武器捨てたらドンパチできねーっしょ。おーいましろ、手ぇ伸ばせ」

 

 赤羽は海へと手を伸ばし、自分が引きずり落としたましろの手を掴んだ。

 

「まったく……、なんで私ばっかり海に落ちるんだ……」

「ぶつくさ言ってんじゃねー、命落とすよりはマシでしょ、っと!」

「わっ!」

 

 ましろは釣り上げられた魚の如く、内火艇の船底に放られて転がった。

 赤羽はましろを放った後、自分の身体を見てぼやく。

 

「あーあー、びしょびしょで風邪ひきそう」

 

 そして武器の付いたハーネスを外し、躊躇なく作業着の上を脱ぎ捨てて、上半身は色気なんて考えて無いグレーのスポブラだけになった。

 しかし、多少筋肉質ではあるが程よく肉が付いて出るとこの出た、まるでモデルのようなボディラインが露わになる。

 

「わっ」

 

 誰かが見惚れたのか思わず声を上げたが、赤羽は全く意に介さない。

 ハーネスをその上につけ直し、アサルトライフルを手に取り点検を始めた。

 その姿を見て、美甘がぼそっと呟く。

 

「なんか、アクション映画の戦うヒロインみたい」

「わかる」

 

 鈴が頷いた。ゾンビとかに向けて銃をぶっ放すヒロインが、こんな感じだったと思う。

 

「なー、怪物はこっちに来ねーの?」

 

 赤羽がアサルトライフルから目を離さずに、誰でもいいので尋ねると、幸子がタブレットを見て答えた。

 

「全部晴風の方に向かったみたいです」

「晴風に?」

「はい」

「……怪物ホイホイでも積んでんの?つーか、晴風が怪物を呼び寄せてんの?」

 

 赤羽はジョークのつもりだったが、幸子がそれを聞いてインスピレーションを得て、スイッチが入った。

 

「闇に落ちた晴風、世界を滅ぼすため海に彷徨う亡霊共をその身に集め、悪の旗艦となってブルーマーメイドに反旗を翻す!」

「やめろ!」

 

 ましろの本気の喝に、幸子はビクッと怯えた。普段なら呆れた様子で流すかツッコミだけなのだが、度重なるストレスと、晴風に残された明乃達が心配で気が気じゃなく心が苛立っていたのか、本気で怒鳴っていた。

 ビクビク怯える幸子を見て、ましろは「やってしまった」と後悔した。

 

「あ……、すまない……」

「い……いえ……。私の方こそ、不謹慎でした……」

 

 気不味い空気が流れ、誰も口を開けない。だが、赤羽にはそんな空気を読む気はさらさらなかった。

 

「お通夜みたいな空気出すなよ、葬式の予行演習か?」

「……空気読もうとか考えないんですか」

 

 ましろが嫌味たっぷりに言うと、赤羽はフンと鼻を鳴らした。

 

「無いね。葬式の練習より神頼みでもしときなよ、あんた等のクラスメイトが生き残れますようにって」

「……艦長達、大丈夫ですかね……」

「さあ?それこそ神…………いや、司令頼みだなー」

 

 その時、ブルーマーメイドお馴染みの中型スキッパーが、こちらに近づいてきた。運転手が弁天の乗員ということは、あれは弁天所属の内の1機だろう。

 

「非武装……。あーあ、ここでリタイアっぽいな、武装スキッパー(うちの)なら奪って行こうと思ったのに」

 

 赤羽はガッカリした様子で脱力する。

 その横で、ましろは藁にも縋る思いで、がらにも無く祈っていた。

 

 

 

 

 

 __艦長、皆、どうか無事でいて__。

 

 

 

 

 

 その後、ましろ達の乗った内火艇はスキッパーに牽引されて、戦場から離れて弁天へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遠い、工作室までのほんの数十mの距離が、今の不知火には水平線よりも遠く感じる。

 いつもなら10秒とかからず走れるのに、右足が折れているせいで気持ちばかり焦って、ちっとも進んでいない。

 

 振り返れば、戦艦レ級flagshipが猛烈なスピードで、扉を蹴破って追ってきている。このままではすぐに追いつかれてしまう。

 恐怖心と焦燥が、不知火を追い立てる。

 

 急げ、急げ、急げ!

 

 がむしゃらに身体を動かしとにかく逃げる。__が、

 

「__あっ__」

 

 松葉杖の先端が床を滑り、支えを失った不知火は顔面から床に激突した。

 

「いっつ……」

 

 ジンジンとした額の痛みをこらえて、すぐさま手をつき起き上がる。

 だが、その時には既に、レ級はすぐ後ろまで迫っていた。

 

 気づいてバッと振り返ると、巨大な顎が今まさに不知火を噛み砕かんと、大口を開けて飛びかかってきていた。

 

 __ダメかっ!

 

 不知火は無駄だな足掻きだとわかっているが、反射的に顔を手でガードするしかできなかった。

 

 死を覚悟した瞬間、そこにショットガンの銃声が響いた。銃弾はレ級の顔面に当たり、防護膜に阻まれてダメージを与えられなかったものの、衝撃と閃光により僅かに怯ませることに成功した。

 

「不知火さん!」

 

 呼び声に手を伸ばすと、古庄がその手を掴み力一杯引っ張り不知火を引きずる。

 その直後、不知火が元いた場所にレ級の顎が突っ込み空振りして、ガヂン!と歯を鳴らした。

 

「古庄教官!どうしてここに!?」

「ブルマーの仕事だからよ!」

 

 古庄は不知火を引きずったまま走る、艤装の重量もあってかなり重たい筈だが、火事場の馬鹿力でそれを超える牽引力を発揮する。

 

 顎が再び不知火を古庄ごと噛み砕かんと、狙いをつけて突進してきた。

 しかし、

 

 

 

 

 

「お待ちなさい」

 

 

 

 

 

 レ級の背後から空気を切り裂きながら振り下ろされた薙刀が、レ級の頭頂部に直撃しバカン!と鈍い音を立てた。

 人間ならスイカ割りの如く赤い身を飛び散らせていたのだろうが、レ級の石頭の前にただ衝撃を与えて、一瞬動きを止めるに留まった。

 

「やはり人ならざる物、一筋縄ではいかないようですね」

 

 楓が険しい顔で薙刀を構え直す、今の一撃は手加減無しの殺る気だったのに、まるで鉄塊を叩いた時のように衝撃が跳ね返り、手がビリビリする。

 

「加勢します」

 

 楓の後を追ってきたマチコも、二刀流の警棒を構えて戦列に加わった。

 

「万里小路さん!野間さんも!?」

 

 晴風白兵戦最強の2人が来た、それは()()()()大変喜ばしいことだ。相手がシュペーの学生だろうと、銃を持ったテロリストだろうと、この2人なら瞬殺できると思われる。

 

 だが古庄と不知火にとっては、2人の登場は予想外の悪手(ネガティブ)であった。

 

 古庄は、晴風はレ級ごと比叡の主砲で撃沈されるので、生徒達は避難を優先してここに来ることは間違っても無いと思っていたし、守るべきはずの生徒がいたら、レ級の封じ込めに支障が出かねない。

 不知火は、刺し違えてもレ級を倒すつもりだったが、楓とマチコがいたら巻き込む恐れがあり、却って邪魔で実行できないのだ。

 

「2人とも避難しなさい!」

「お断りします!」

 

 古庄の命令を蹴って、楓が目にも止まらぬ速さで踏み込み、左下から右上へと斬りつける。刃の無い木製の薙刀は脇腹にドスンとぶつかったが、頭を殴った時と同じように衝撃がそのまま跳ね返ってきて弾かれた。

 レ級が楓を捕まえようと腕を伸ばす、それをマチコが迎え撃った。レ級が伸ばした腕を、叩き落とすように警棒で殴りつけた。しかし、これも大したダメージは入らず、動きを止めるだけに留まった。

 2人は後ろに跳んで、一旦距離を取った。

 

「くっ……、まるで効いてない……!」

 

 マチコが痺れる腕を擦る。肉体を殴っている筈なのに、金庫でも叩いているかのような手応えだ。

 その理由を不知火が叫んで教える。

 

「そんな攻撃では防護膜に弾かれて効きません!」

 

 砲弾すら防ぐことのできる戦艦の防護膜にとって、2人の攻撃はほぼ無意味だった。

 

 レ級が動く、今まで不知火に向けていた尾を楓達の方へと回し、食い殺そうとするようだ。

 

「まずい!」

 

 あの鮫のような尾に狙われたら2人の命は無い、こちらに気を引かなければ。そう思った不知火は古庄の手を振り払い立ち上がり、主砲を尾へと向けて連射。

 古庄もそれを察し、ショットガンをレ級に向けて撃ちまくった。

 2種類の弾が、既にボロボロだったレ級の武装や表面装甲を削り取っていくが、決定的なダメージを与えることは無理だった。

 しかし、狙い通りレ級の気をこちらに引くことは成功した、尾が再び不知火に目標を変更したのだ。

 

 不知火と古庄が尾を、楓とマチコが本体を相手取り挟撃する。レ級が楓達に近づけばより多くの弾を撃ち込み不知火達に引き寄せ、不知火達に近づけば楓達が本体に攻撃し行かせない。

 しかし、こちらは弾も体力もどんどん減っていくのに対して、レ級の体力も防御力も底知らずだ、すぐに破綻してしまう。

 

 古庄がショットガンに弾をリロードしながら、不知火に声をかける。

 

「不知火さん、貴女は先に逃げて!」

「しかし……」

「生徒達が離艦したら、晴風は比叡の砲撃でレ級諸共撃沈されるわ」

「え!?」

「まず足の遅い貴女が逃げた後、万里小路さんと野間さんを逃して、最後に私が隔壁を閉めてレ級を閉じ込めてから逃げるわ」

「……了解しました」

 

 不知火はレ級が楓達の方へ意識を多く割いた時を見計らい、射撃を止めて背を向けた。

 

「後を頼みます」

 

 頷く古庄、それを確認した不知火は階段へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのすぐ後だった。

 

 グサリ、と何かが肉に突き刺さる音が聞こえたのは。

 

 何だ?と振り返る。

 レ級に向けてショットガンを構える古庄の後ろ姿が、ゆっくりと横に傾いていく。

 

「……え……?」

 

 衝撃の光景に、不知火は目を見開いた。

 

 古庄はそのまま力無く倒れ、ショットガンが手から離れて床に転がった。

 

「古庄教官!!」

 

 不知火は叫んで飛んで引き返し、古庄に駆け寄り状態を診る。

 古庄の腹部に、長さ30cm程のレ級の装甲の破片が深々と突き刺さり、教官服を血で赤く濡らしていた。

 

「しら……ぬいさ…………ゴホッ……ゲホッ……」

 

 かろうじて意識はあるが、口から血を吐き出している、破片が内臓まで達している危険な状態だった。

 

 __しかし、どうしてこんなことに。

 

 人の血を目の当たりにして冷静さを欠いた不知火だが、その答えにはすぐたどり着いた。

 レ級が自身の装甲を剥ぎ取り、投げナイフのように投げたのだ。古庄もまさか飛び道具を使ってくるとは予想だにしておらず、防ぐことができなかった。

 レ級は、やっと獲物1匹を仕留めたのが満足なのか、ニタニタと笑っていた。

 

 

 

 

 

「……この……」

 

 

 

 

 

 不知火はもちろん、晴風の誰も聞きたことの無い、怒気を孕んだマチコの声が聞こえた。

 

「よくも教官をォ!!」

 

 マチコは怒りに任せて突撃した。

 

「野間さん駄目です!」

 

 不知火が呼び止めるが、もう遅かった。

 平常心を失ったマチコの動きは、非常に単調かつ直線的で、レ級に見切られていた。振るった警棒を僅かな動きで躱され、カウンターをもろに喰らって弾き飛ばされた。

 

「ガハッ……!」

 

 受け身もままならず床に叩きつけられ、激痛が背中に走り動けない。

 

「はああぁぁ!!」

 

 次いで楓が気合の覇気とともに薙刀を振り下ろす。あまりの速度に、不知火も薙刀を残像でしか見ることができなかった。それは間違いなく、今までで最高の速さと威力を兼ね揃えた一太刀であった。

 

 

 

 バシィィィン!!と激突のエネルギーが、衝撃波となって空気を震わせた。

 

 

 

「なっ……!?」

 

 決まった。手応えからそう思った楓だが、見えたありえない光景に、目を見開く。

 

 なんと、レ級は右腕一本で薙刀を掴んで受け止めていたのだ。普通なら、腕の骨が砕けているのに。

 

 グン、と薙刀が馬鹿力で引っ張られ、レ級へと引き寄せられる。楓は咄嗟に薙刀を離したが少し遅く、前に倒れ込んだ。軽くなった薙刀は、勢い余って遥か後方へと放り投げられた。

 

「万里小路さん逃げて!」

 

 不知火が叫ぶ、それを聞いた楓が立ち上がろうとした時には既に、レ級の尾が間近に迫っていた。

 

「あっ……」

 

 楓を一口で飲み込まんと、顎を最大まで開けて上から迫ってくる。そのため、顔を上げた楓には、ブラックホールのような喉の奥までくっきりと見えた。

 楓は何もできずに喰われそうになる。だが、その寸前で割り込む影が。

 

 

 

「どいて!!」

 

 

 

 不知火がスライディングで楓を蹴り飛ばし、間一髪でその場所にすり替わった。そして、

 

「これでも噛んでろ!」

 

 手にしていた松葉杖を、レ級の口につっかえ棒代わりに捩じ込み、顎を閉じられなくした。

 だが、顎は構わずそのまま床へと激突し、その結果不知火は松葉杖と床の間に腰を挟まれて、身動きが取れなくなった。

 

「ガハッ……!」

 

 顎に手をかけて思いっきり身体を引き抜こうとするが、腰骨が引っかかって抜けない。レ級が顎を持ち上げれば抜けるのだがその様子は無く、おまけに松葉杖が両端から押し潰されて、メキメキと悲鳴を上げている。どうやら、このまま松葉杖ごと不知火を噛み砕くつもりのようだ。

 

「不知火さん!」

 

 吹き飛ばされたダメージから回復した楓が助けようと駆け寄るが、不知火が怒鳴った。

 

「不知火なら大丈夫ですから!貴女達は逃げてください!」

「ですが!」

「いいから早く!」

 

 楓が躊躇っている間にも、不知火は主砲を取り出し、レ級の口の中に突っ込んだ。

 

「万里小路さん!行こう!」

 

 マチコが楓の手を引き、その場から離れていく。

 

「不知火さんを置いていくのですか!?」

 

 抗議の声を上げる楓を無視して、マチコは彼女を引きずって走り出した。

 不知火はそれをちらっと確認した後、顎を睨みつけて引金を引いた。

 

「弾でも喰ってろ!」

 

 砲弾がレ級の顎の中で弾ける。漫画やアニメのお約束なら、口の中は装甲0で攻撃のバンバン通る弱点なのだが、レ級は艦すらも喰らうためか口内まで防御されているらしく、弾の破片はあちこちに跳ね返り、ほぼ全てが不知火の身体に降り掛かった。

 

「ガハッ……!」

 

 防護膜のおかげで肉体に外傷こそ負わないが、散弾を喰らったような衝撃が襲い艤装が損傷した。

 だが、不知火は構わず撃ち続けた。砲声と炸裂音が通路に鳴り続ける。砲弾の破片が降りかかり、ダメージが蓄積されていく。

 しかし、楓とマチコの逃げる時間を稼げれば、それでいい。

 

 楓を引きずるマチコが、突き当りで曲がるのを確認する。その時、マチコが一瞬振り返って、こう言った。否、声は砲声でかき消されていたので、こう言っているように見えた。

 

 __ごめんなさい__。

 

 それに続いて、楓も言い残した。

 

 __どうか無事で__。

 

 

 

 不知火は一瞬だけ、親指を立てて応えた。

 

 それが肯定なのかどうかは、2人には知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人の姿が見えなくなった直後、ミシリ、という音と同時に、腰の圧迫感が減少した。

 

 今なら抜ける!と不知火は顎に手をかけて、思いっきり身体を引き抜く。

 

「ぬああああ!!」

 

 松葉杖と腰骨の引っかかりが外れ、不知火の身体が顎の中から飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グシャリ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 肉や骨の潰れる音。

 

「……え……?」

 

 恐る恐る目を下にやる。

 胸や腰は無事だった。だが、脚が見えない。

 本来脚のあるべき場所には、閉じたレ級の顎が鎮座していた。

 

 ゆっくりとレ級の顎が開く、牙の隠れて見えなかったところは赤く汚れていた。

 ベチャベチャと音を立てて、顎の中にへばりついていた物体が床に零れていく。

 

「あ……」

 

 不知火の顔が恐怖で歪む。

 

「ああああ……!」

 

 零れてきたのは、くの字に折れ曲がった松葉杖、大量の血液、そして、

 

 

 

 

 

 グチャグチャに噛み砕かれて千切られた、不知火の両足。

 

 

 

 

 

「あああああああ!!」

 

 それを視認した途端、想像を絶する痛みが不知火を襲った。

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い__!

 

 神経がパンクしそうな程激痛が走り、頭の中が痛みに埋め尽くされる。

 

「ああああああ!!痛い!!いだぁぁぁあああ!!」

 

 痛みに苦しみ絶叫する不知火に、レ級が近づいていく。

 

「やめろ!!来るな、来るなああああ!!」

 

 手で床を掴み血の跡を残しながら、小さくなった身体を後ろへと動かし逃げるが、そんなのは無駄だった。

 

 レ級は顎を伸ばし、不知火の右腕をいとも簡単に噛み砕いた。

 もう言葉にもならない獣のような悲鳴が不知火から上がる。

 

 まだかろうじて繋がっていた血管や神経を引きちぎり、グチャグチャと咀嚼する。だが、尾の顎は飲み込めないのか、ぺしゃんこになった右腕をペッと吐き出し捨てた。血が辺り一面に飛び散り赤く染まる。

 そして、血の滴る顎でまた不知火にかぶりついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 __それからどれだけ経っただろうか。

 

 レ級は玩具に飽きた子供のように、不知火への興味を無くしてその場から立ち去った。

 

 残された不知火は、見るも無惨な姿だった。

 四肢を失い、腹も食い破られ、流れ出た血が辺りを赤い海に変えていた。

 

 不知火は激痛によってパンクした神経と失血で朦朧とする意識の中、虚ろな瞳で天井を眺めていた。

 

 ……ああ、ここで死ぬんですね……。

 

 こんな有様では、死ぬまでの僅かな時間を待つばかりだ。ここが鎮守府や母艦なら、入渠すれば治ったかもしれないが、晴風にも他の艦にも治療設備は無い。万が一にも、治ることは無い。

 陽炎に遺言の1つでも遺したかったが、文字は書けないし、艤装のレコーダーに声を残そうと思ったが、声を出す気力もなくて断念した。

 

 

 

 だんだんと意識が薄れていく中、過去の思い出が脳裏に浮かぶ。

 

《不知火です。ご指導ご鞭撻、よろしくです》

《陽炎よ!よろしくねっ、不知火!》

 

 ……これは建造された直後の記憶だろうか。建造ドックから出て、初めて会ったのが陽炎だった。そう言えば、あの時から陽炎とずっと一緒だった気がする。

 

 場面は切り替わり、提督の前で陽炎と共に正座させられていた時へ。確か些細なことで姉妹喧嘩を起こして、殴り合いに発展した時だったか。

 

《……で、どっちが悪いんだ?》

《陽炎が悪いんです》

《不知火が悪いのよ》

《よーし、わかった。2人とも懲罰房行きな》

《ちょっ、待っ……!なんでよー!》

《不知火に落ち度でも!?》

 

 あの後、どうやって仲直りしたのか。そもそもなんで喧嘩したのか、それは思い出せないけど、次の日にはすっかり仲直りしていた。

 

 それから、場面は次々に変わっていく。

 

 陽炎型の皆で夏祭りに出かけて、はぐれたり食べ過ぎたり、訓練では神通にしごかれて死体のように浮かんでいたり、演習で空母の皆さんにボコボコにされたり、陽炎とショッピングに行ったり、ムカついた演習相手をフルボッコにしたこともあった。

 最初の頃の出撃で砲撃を喰らって一撃大破して、皆で必死に逃げ回ったり、そのリベンジで敵の旗艦に全員で魚雷をブチ込みまくったり、陽炎がブチ切れて突撃するのについていったり、逆に自分が暴走したり。

 陽炎のギンバイの手伝いを黒潮とともにした時は、川内に見つかって朝まで夜戦に付き合わされた。節分で鬼怒が見つからず早霜に豆をぶつけたり、陽炎にドッキリを仕掛けようとしたら逆ドッキリだったり。

 

 キリが無いので全部は上げないが、建造されてから今までの思い出が、目まぐるしく流れていく。

 これが走馬灯、という物か。

 

 

 

 ……なんで、……なんで、……なんでこんなの見せるんですか……!もうすぐ死ぬのに、辛くなるじゃないですか!

 

 

 

 馬鹿馬鹿しいと思っていたのに、いざ自分が体験すると、涙が溢れて視界が滲む。

 

 艦娘はいつ死んでもおかしくないから、いざ死ぬ事になっても後悔しない。

 そんなことを考えていた昔の自分をぶん殴りたい。

 

 

 

 ……もっと、皆と一緒にいたかった。

 ……もっと、皆と笑い合いたかった。

 ……いつか、平和な海を見ながら過ごしたかった。

 

 

 

 まだ……死にたくなかった……。

 

 

 

 

 

 視界の端に、誰かが映る。視界がぼやけてはっきりとは見えないが、古庄だということはわかる。不知火の血を浴びたのか、制服だけで無く顔も所々赤く染まっていた。

 不知火に呼びかけているようだが、聴覚が麻痺しているのか何も聞こえない。

 

 

 

 古庄教官…………、……短い間ですがお世話になりました……。

 

 

 

 心の中で礼を言った直後、身体がフワリと浮くような不思議な感覚と同時に、目の前が真っ白になった。

 

 

 

 

 

 ……ああ……ついに迎えが来ましたか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 陽炎……、先にあの世に行って…………待ってます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

28話 「晴血に染

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 __真っ白だった視界が、色を取り戻す。

 

 

 

 ……あれ……?さっき……死んだんじゃ……?

 

 

 

 先程と変わらぬ天井と古庄の姿が映った。だが、古庄は誰かと話しているようだった。

 唇の動きを読むと、「貴方は誰なの?」だろう。

 

 

 

 ……誰……?……生徒でも……隊員でも無い……?

 ……まさか、天使か死神……?

 

 

 

 そして、その誰かさんが上から不知火を覗き込んだ。

 

 それは、天使のようにとても可愛らしく、不知火にとって見覚えのあるような__。

 

 

 

 

 

 突然、視界が緑色に染まった。

 顔に液体をかけられたのだ。それは目や鼻、気管にの中にまで入るが、痛みや苦しさはまるでなく、スッと身体に馴染むように浸透していく。

 

 やがて、失った筈の四肢の重みが、裂かれたはずの皮膚の張りが蘇る。

 

 

 

 

 

 そして、失われていた感覚が再生され、意識が完全に覚醒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか?所属、言えますか?」

 

 呼びかけに応えるのを後回しにして、不知火は身体を起こし自分の様子を確認する。

 

 千切れた四肢はそのまま床に転がっているが、新たな四肢が元の場所に生えていた。裂かれた腹もすっかり跡も無く塞がり、元通りの姿になっていた。

 着ていたジャージには血と先程の緑色の液体が染み込みグチャグチャになっていた。この緑色の液体は、艦娘にはお馴染みの物だった。

 

 

 

 __高速修復材__

 

 

 

 艦娘の身体を、瞬く間に治してしまう、魔法のような液体。

 

 自分の身に何が起きたかを理解して、後回しにしていた質問へ答えた。

 

「……横須賀鎮守府所属、陽炎型駆逐艦娘2番艦、不知火です。助けに来てくれたんですね、()()

 

 その相手__雪風は安心してほっと息を吐いた後、とびきりの笑顔を見せた。

 

「はいっ!間に合ってよかったです、不知火お姉ちゃん。身体は大丈夫ですか?」

「ええ、高速修復材(バケツ)のおかげで、すっかりよくなりましたよ」

 

 グチャグチャになったジャージを脱ぎ捨て、傷1つ無くなった肌を見せる。

 

「よかったです」

 

 雪風は嬉しそうに頷くと、容器(バケツ)を捨ててしゃがみ、古庄と目線を合わせ声をかけた。

 

「すぐお医者さんを呼びますね、傷を診てもいいですか?」

「え……ええ……」

「不知火お姉ちゃん、手伝ってください」

「はい」

 

 雪風は不知火と一緒に、突き刺さった破片が動かないよう慎重にゆっくりと、古庄を仰向けに寝かせた。そして制服を引裂き、患部を確認する。

 

「……破片を抜いたら一気に出血しますね、下手に動かすのも危ないですし……、このまま救助を待ちましょう」

「そうですね」

 

 雪風はインカムで連絡を入れる。しかし、

 

「こちら雪風、負傷者を発見しました。…………?こちら雪風、応答してください…………聞こえますか?………………不知火お姉ちゃん、母艦と連絡できないです」

「あー……」

 

 雪風はまだ、艦隊と隔絶された事を知らなかった。

 不知火は自分の無線機で連絡を取ろうとしたが、レ級に襲われた時に壊されて使えなかった。

 

「仕方ありません。古庄教官、無線機お借りします」

 

 不知火が古庄の無線機へと手を伸ばす。が、届く直前で古庄がその腕を掴んで止めた。

 

「古庄教官!?」

「……私のことは後回しでいいわ、……私より、生徒達を………お願い……」

 

 血の混じった声だったが力強く、瞳は光を失わず真っ直ぐに不知火を見つめていた。

 不知火は古庄の手を握り頷く。

 

「わかりました。皆のことは任せてください」

 

 そして、雪風と向き合う。戦いに向けて情報共有をしなくては。

 

「雪風、ここが何処だかわかりますか?」

「いいえ、わかりません。気がついたらここにいたので」

「では簡単に状況説明します。ここは陽炎型駆逐艦『晴風』艦首。此方の戦力は中破状態の陽炎と先程まで死にかけてた不知火、そして雪風。敵旗艦は戦艦レ級flagship、後は艦の外に雑魚が何体か。

 また陽炎が外で雑魚と交戦中、味方として特殊部隊が別の艦からこちらに急行中と思われます。

 不知火達の任務は晴風に残る乗員を無事脱出させるか、レ級を撃破し安全を確保することです。

 残っている乗員は女子高校生9名と教官の計10名、生徒達は艦橋と後方の教室に集まっていると思われます。レ級の現在地は不明です。

 何か質問は?」

 

 雪風はバッと手を挙げた。

 

「はい!晴風ってなんですか?」

「後で!他!」

「レ級flagshipはどれくらい強いんですか?」

「現在中破状態ですが、装甲も体力もまだまだ大和型以上だと思います。武装は戦艦2隻分ですが、ほとんど死んでいるでしょう」

 

 そこまで答えた時、アサルトライフルの銃声が艦内に響き渡った。

 

「銃声!?」

「特殊部隊が到着したようです!」

 

 救援の到着。だが、銃声がするということは、レ級と遭遇し交戦中なのだろう。

 

「その特殊部隊の人は強いんですか!?」

「人の中では強いでしょうが、レ級の相手にはなりません。雪風はすぐに彼等と合流して時間を稼いでください」

「了解しました!」

 

 雪風は銃声のする方へと駆け出した。が、キイッ!とブレーキをかけて止まった。

 

「あ!そうでした!」

「どうしましたか?」

 

 雪風は振り返り、こう尋ねた。

 

 

 

「逃がすんですか?それとも倒すんですか?」

 

 

 

 生徒の脱出か、レ級の撃破、どちらを優先するのか。

 

「決まってるじゃないですか」

 

 不知火はメラメラと燃える怒りのオーラを纏い不敵に笑い、右手を突き出し親指を下に向けた。

 

「ぶっ殺します」

「どうやってですか?」

「1つ思いついたんです、装甲が厚い敵でも関係なく灰にできる方法を。確証はありませんが、こっちには幸運の女神(雪風)が来ましたから、ほぼ間違い無く倒せるでしょう」

 

 雪風は意味がよく解らなかったようで首を傾げたが、

 

「よくわかんないですけど、わかりました!」

 

 と答えた。

 不知火は落ちていた楓の薙刀を拾い上げ、雪風に持たせる。

 

「これ、持っていってください」

「薙刀……木製ですか、真剣じゃ無いんですね」

 

 雪風は不満そうに眉を曲げた。

 近接武器として真剣を持つ艦娘は少なくない、だが木製の打撃武器は明らかに脆くて威力不足であり、実戦ではただのゴミであった。

 

「学生の私物ですから、でも強度は凄いですよ。レ級を殴っても折れませんでしたから」

「ホントですか!ビックリです!じゃあ、行ってきます!」

 

 雪風は改めて駆け出していった。

 不知火はもう一度、古庄の側にしゃがみ声をかけた。

 

「古庄教官、すぐにレ級をぶっ殺して戻って来ますから、ほんの少しだけ耐えていてください」

「お願……いね……」

「はい」

 

 そして、その場に古庄を残し走り出す。雪風とは別の方向に、レ級を倒す武器を求めて。

 

 

 

 

 

 __戦艦レ級flagship、お前は不知火が殺してやる。




雪風「雪風です!どうぞ宜しくお願い致しますっ!」

☆メモ
 陽炎や不知火を「お姉ちゃん」と呼んで慕う。
 飛び切りの幸運と第六感の持ち主。
 建造時よりちょっと大人びた。
 それで恥ずかしくなったのか、姉を真似てなのかスパッツを着用するようになった。

次回、戦艦レ級flagship戦、決着(予定)
   お楽しみに
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