青い人魚と軍艦娘   作:下坂登

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また忙しくなりそうです。
頑張って書いていきます。




3話 悪雲立ち込める中

天神の毎分220発を誇る76mm速射砲が、次々と水柱を立てる。しかし、化物の群れにはほとんど当たっていない。

 

「目標速力変わらず、接近してきます!」

「短魚雷用意!撃て!」

 

魚雷を発射するが接触信管も磁気信管も作動せず、群れの下を素通りしてしまった。

 

「魚雷、目標を素通りしていきます!」

「時限信管をセット!目標直下で起爆させなさい!」

「了解!」

 

その時、化物の群れが砲撃を始めた。

 

「目標が発砲した模様!」

「回避行動!」

 

天神は素早く右に転舵、砲弾を回避しようとするが、完全には避けきれなかった。

左舷にいくつか被弾、装甲が抜かれ炎が噴き出した。

 

「被害報告!」

「左舷に被弾4!火災が発生しました!スプリンクラー作動!航行に支障なし!」

「よし、魚雷発射!」

 

再び魚雷を発射、今度は時限信管が起動し群れの真下で爆発、群れの一部を宙へ吹き飛ばした。

 

「目標の一部を撃破!」

「よし!このまま攻撃を続けろ!」

 

天神は持ち前の機動力を活かし、うまく立ち回っていた。

勝つことは難しいが、化物の足を止めることはできていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、化物の方が一枚上手だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、艦隊の左舷に化物の大群が出現。隊列の中央に楔を打ち込んだ。

 

雨あられと砲弾が降り注いだ。

射線上にいた比叡、五十鈴、鳥海、涼月が猛攻を受け損傷した。

 

《こちら比叡!怪物体の砲撃を受けています!》

《こちら五十鈴!魚雷発射管、機銃損傷!使用不能!!》

《鳥海第二主砲大破炎上!被害拡大中!》

《こちら涼月!左舷浸水!速力低下!助けて!》

 

悲鳴混じりの報告が飛び交った。

 

 

 

 

 

これには古庄も動揺を隠せなかった。

 

「なんですって!?まだそんな数がいたの!?」

「どうします!?」

「救援に向かいたいけど……!天神も、もう……!」

 

天神は化物からの攻撃を受け続け、浸水と機関出力低下を引き起こしていた。

その結果回避能力も低下し、さらに被弾率が大きくなっていく。飛行甲板は穴だらけになり、レーダー、VLSも使用不能、魚雷も撃ち尽くした。

 

このまま持ち堪えられるかすら危ぶまれる。

 

「……全速で離脱するように伝えて」

「……了解……」

 

 

 

 

 

こちら天神、我救援不能。全力で離脱せよ。

 

 

 

 

 

「天神が!?」

「やっぱり、私達も戦うしかない……」

 

明乃は悪い予感が当たったと唇を噛んだ。

マチコから報告が入った。

 

『艦長!隊列が乱れてます!』

 

隊列が分断された影響で、艦隊後部の隊列はぐちゃぐちゃになり、大混乱に陥った。

各自で勝手に回避行動を取ったために、衝突しかける艦が続出。そこを滅多撃ちにされ被害があっという間に拡大していた。

 

「砲撃用意!目標怪物体群!」

「うぃ!全門方位270の0!」

『了解、270の0に合わせ!』

 

晴風が主砲を化物に指向する。

その時、摩耶が砲雷撃を受け急旋回、晴風の進路上に侵入してきた。

 

『摩耶と接触します!』

「鈴ちゃん取舵一杯!回避して!」

「はいぃ!」

 

鈴が必死に舵輪を左に回す。

 

「曲がれ曲がれ……!」

 

皆ぶつからないように祈った。

しかし、目前に摩耶の艦首が迫る。

ましろが叫んだ。

 

「ぶつかるぞ!全員衝撃に備えろ!」

 

グッと体に力をいれて、衝撃に備える。

 

幸いにも晴風は摩耶の艦首を掠め、ギリギリ接触せずにすれ違った。

 

「あ、危なかった……」

 

衝突を回避し一安心。とは行かなかった。

化物の砲弾が至近距離に着水、艦が大きく揺れた。

 

「きゃあ!」

「タマちゃん!攻撃始め!」

「撃ぇ!」

 

3つの主砲が咆哮、砲弾は寸分違わずそれぞれ化物に直撃、跡形も無く粉砕した。

 

だが、たかが3体倒したところで焼け石に水。寄せ付けまいと連射するが、化物の大群を止めることはできず、距離がみるみるうちに詰まっていく。

 

 

 

ついに、涼月と舞風が集中砲火を浴び大破、火災が発生した。

 

 

 

『涼月、舞風より救援要請です!』

 

鶫が報告する。しかし、

 

「無理だ!この状況では救援なんかできないぞ!」

 

ましろの言う通り、多数の砲弾の飛び交う中で救援を行うなど、自殺行為に等しい。ミイラ取りがミイラになるだけだ。

 

 

助けるにはまず敵を排除しなければならないが、化物へ砲撃が中々当たらない。

志摩率いる砲術班の射撃精度はイージス艦に優るとも劣らないが、高速で海上を移動する化物を相手にするのは初めてだった。

 

大きな艦や真っ直ぐにしか動かない砲弾や魚雷とは難しさが全く違う。

 

いくら正確に狙っても、相手に回避されてしまえば無駄だ。

 

鯨のような個体はサイズが大きく、行動が単調なため撃破するのが簡単だったが、人型の個体は小さく、しかも回避行動が上手なため命中率は5%にも満たなかった。

 

他の艦も主砲を撃ちまくるがほとんど命中せず、敵の接近を許していた。

 

「艦長どうすんの!?魚雷撃つ!?」

「魚雷を撃っても意味ないよ!なんとか救援の時間を稼がないと!」

 

全員に焦りが見えた。

到底救援に行ける状況ではない。だが、涼月も舞風も長くは持たない。

 

どうする____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、化物と艦隊の間に巨艦が割り込んだ。

 

 

 

《こちら武蔵!本艦が盾になります、その間に涼月と舞風の救援を!》

 

 

 

武蔵が射線上に割り込み砲撃を受ける、何十発という砲弾が武蔵の装甲を叩いた。

 

「もかちゃん!」

 

明乃が無線機を取り、もえかに呼びかけた。

 

《ミケちゃん、ここは武蔵が囮になるから、晴風は救援に向かって》

「もかちゃんは!?武蔵は大丈夫なの!?」

《大丈夫だよ。なんてったって武蔵は不沈戦艦だから。さあ早く!》

 

もえかは早く救援に当たるよう急かした。

 

「わ、わかったよ、もかちゃん」

 

明乃は無線を切り、救援に向かうように指示した。

 

「これより涼月及び舞風の救援に当たります!」

 

先に救援に当たっている摩耶から通信が入った。

 

《こちら摩耶、涼月は本艦と照月が救助する。他の艦は舞風を救助願う》

《五十鈴了解。舞風救助に向かう》

「こちら晴風、了解しました」

 

晴風は舞風の元へと急行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとカッコつけ過ぎちゃったかな」

 

もえかは制帽を直し、改めて化物の群れと向き合った。

 

禍々しい暗黒の群体が、海を覆い尽くすように迫ってくる。この武蔵に乗っていても、もの凄いプレッシャーを感じる。

 

お前らを、絶対に生きて返さない。

 

そうおぞましい殺気を向けてきている。

 

「ああ言った以上、絶対に生きて帰らないとね」

「そうですね」

 

副長が頷き、砲術長を呼ぶ。

 

「砲術長!用意できた!?」

「全門装填完了!すぐ撃てます!」

 

もえかが叫ぶ。

 

「全門撃ち方始め!」

「全門斉射!」

 

 

 

 

 

史上最強の戦艦が怪物に向けて咆哮する。

 

海面が抉り取られ、46cm砲弾が炸裂、一群を跡形も無く消し去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武蔵の砲撃音が断続的に響く中、晴風は舞風の救援に当たっていた。と言っても、実は五十鈴1隻で手が足りてしまったため、晴風は周囲の警戒をしていた。

 

芽衣と志摩を機銃に移し、万が一に備える。

 

五十鈴が曳航するためワイヤーを舞風に投げ渡す。

舞風の乗員がワイヤーを結びつけるのを、明乃はまだかまだかと待っていた。

 

「早く終わらないかな……」

 

化物が武蔵をすり抜けてやって来るかもしれない、あり得ないとは思うが、武蔵が沈められるかもしれない。

 

気持ちが焦る一方だった。

 

 

鈴がつぶやく。

 

「武蔵、大丈夫かな……?」

「大丈夫だよ、絶対」

 

明乃は不安を誤魔化すように断言した。

武蔵なら大丈夫だと、自分に言い聞かせるように。

 

 

 

 

 

丁度ワイヤーが結びつけられ、五十鈴が舞風を曳航し始めた時だった。

もえかから緊急電が入った。

 

《ごめんなさい!怪物に抜けられた!そっちに向かってる!》

 

武蔵をすり抜けた化物がこちらへ向かってくる。

 

「攻撃用意!とーりかーじ!」

「よーそろー!」

 

晴風は化物に対し横っ腹を見せ、全ての砲門を向ける。

 

「メイちゃんタマちゃん!主砲が撃ち漏らした目標を狙って!」

『了解!』

『うぃ!』

「しろちゃんは主砲への指示をお願い!」

「はい!」

 

志摩が機銃に移ったため、ましろが砲術長代理を務める。

 

マチコが目視で確認した。

 

『目標視認!数19!9時の方向、距離40!35ノットで接近中!』

「主砲撃ち方始め!」

「撃ぇ!」

 

主砲が斉射され、群れの一部を吹き飛ばした。だが、ほんの一部だ。残りの奴らは無傷でこちらへ向かってくる。

「次弾発射急げ!」

『わかってる!』

 

第二斉射、しかし焦って撃ったため掠りもしなかった。

 

『数11、接近中!!』

『任せて!』

 

 

芽依と志摩が機銃を構え、ニィと恐怖の感情を隠すための無理矢理な笑みを浮かべる。

 

アンタ等全員撃て撃て魂でぶっ潰したげる。こっちはもう1匹殺してるんだ、何匹だって殺ってやる。やられたりするもんか。

 

「行くよっ!ファイアァァァァ!!」

 

ガガガガガガガと機銃が大量の弾を吐き出す。撃ち抜かれた化物は青い血をぶちまけながら水底へと沈んでいく

 

「沈め沈め沈め沈め!!」

 

2人はただただ引き金を引き続けた。

 

 

それでも化物達は犠牲を厭わず迫ってくる。

 

「距離を取るよ!前進一杯!」

『合点承知!』

 

態勢を整え直すために、再び距離を取ろうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、機関が悲鳴を上げた。

 

 

 

 

 

 

ガガガと嫌な音を立て停止、警報が鳴り響いた。

 

「どうしたの!?」

 

麻侖が切羽詰まった声で叫ぶ。

 

『てーへんだ!!エンジンが止まっちまったんでい!!』

「ええっ!?」

『ボイラーもタービンも壊れた様子はねえけど、スクリューが動かねえんだ!何かがスクリューに絡んだみてえでい!』

 

ましろが指示を飛ばす。

 

「機関長後進だ!機関を逆回転させろ!」

『わかった!!後進一杯回せ!!』

 

洋美と桜良がレバーを操作し、後進に入れる。たが、スクリューは動かない。

 

『駄目だ、固く絡んじまって外れねえ!!』

「……最悪だ…ついてない……」

 

晴風は敵のすぐ近くで立ち往生してしまった。

 

 

 

 

 

絶体絶命。

 

 

 

 

 

「艦橋!ちょっとどうしたの!?」

 

芽衣が無線向かって怒鳴る。

 

『機関が止まった!なんとか対処して!』

「はあ!?何とかって、どうすればいいんだよっ!」

 

いくら沈めても、次から次へと化物が湧いて出てくる。

芽依と志摩が必死に銃撃していると、撃ち続けたせいで弾切れを起こした。

 

「ヤバい!弾切れだ!!」

「マガジン外して!」

 

芽依が空になったマガジンを外し、志摩が新しいマガジンを入れた。

 

 

 

 

 

その時、ドパァン!と大きな音が聞こえた。

 

 

 

 

 

「「は?」」

 

 

 

 

 

思わず自分の目を疑った。

三つ顎の化物が跳躍して、こちらへ向かってきたのだ。

 

「メイ!!」

 

咄嗟に志摩が芽依を引っ張り、機銃座から飛び降りる。

 

「ちょっ!うわああああ!!」

 

2人が離れた直後に化物が着地、手すりを吹き飛ばし派手なスライディングをかましてきた。

 

 

 

 

 

『艦長!!目標が乗り込んで来ました!!』

 

マチコの悲鳴とほぼ同時に屋根の上からズシン、ズシンと足音が響いた。艦橋クルー達は恐怖にかられ、なにもできない。

 

足音が止まった。そして、天窓が上から強引にひっぺがされた。直後に晴風に落ちた雷が、化物の姿をくっきりとより生々しく映し出した。

 

「ひっ、ひゃぁぁ……」

「ああ…………あ………」

 

鈴が腰を抜かしてその場に崩れた。

幸子も口をパクパクと動かすだけしかできない。

ましろも脚がガクガク震えっぱなしだ。

 

その中で、明乃はただ化物と向き合っていた。

 

「あなたは……何者なの……?」

 

天窓から覗く恐ろしい三つ顎の化物はこちらを睨み付けていた。

 

 

 

 

 

 

 

        ◇

 

 

 

 

 

 

 

おかしい。

 

さっきまで海の上で深海棲艦相手に、不知火と一緒に戦ってたはずだ。

あと一押しと言うところで荒波に呑まれて水中に沈んだとこまでは、覚えている。

 

なのに、気がついたらこんなところにいた。

 

「これって陽炎型……?」

 

陽炎型と思われる、駆逐艦の見張り台の上に何故か立っていた。

 

「主砲が単装砲になってるし、なんかよくわかんないもの積んでるけど、陽炎型よね……」

 

どこかの鎮守府が陽炎型母艦でも造ったのかと思ったが、辺りを見回しそれが間違いだと気づいた。

 

「あれって大和!?」

 

深海棲艦と必死に戦う大和型戦艦が目に入った。あんなもの造ったら軍の中で大ニュースになっている筈だ。それに、あんなストライプなんか入れる奴はいない。

 

「はあ~、私一体どうしちゃったのかしら。夢でも見てるのかな」

 

もうわけがわからない。

 

だが、1つだけわかっていることがある。

 

周りを取り囲む深海棲艦を駆逐しなければならない。

 

 

 

 

 

__それが、彼女の使命なのだから。__

 

 

 

 

 

彼女は武装の安全装置を外し、第一目標を探した。

 

「一番排除しなきゃいけないのは……艦橋の上にいるト級!それじゃあ……」

 

彼女は勢いよく見張り台の上から飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

「陽炎、出撃します!!」

 

 

 

 

 




陽炎「やっと会えた!陽炎よ、よろしくねっ!」
作者「いや〜、やっと艦娘を書けたよ」
陽炎「ほんと、すっごく待ったのよ。私もはいふりのみんなも」
作者「すんません」
陽炎「次回、私の活躍期待してね!」
作者「……次は何時になるかな……」
陽炎「さっさと書いて」
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