青い人魚と軍艦娘   作:下坂登

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作者「仮面ライダーアギトの無料配信を毎週楽しみにしています。ちなみに今のところG3が好みです」
百々「変身より装着型のパワードスーツが好きなんスね」
作者「一度着てみたいな〜」
媛萌「こんなこともあろうかと!既にここに用意してあるよ!」
作者「おお〜!カッコいい〜」(早速着た)
百々「ついでに敵も用意してあるっスよ!」
作者「え?」
媛萌「さあやっちゃって!」
作者「えっ!?ちょっ、待って心の準備が、(ズドーン!!)ギャーーー!!」
百々「……跡形も無く吹き飛んだっス……」

追記:2021/3/31、誤字訂正を行いました。アドミラル1907様、誤字報告ありがとうございました。

それでは本編へどうぞ。


34話 知らなきゃいけない

「__と言う訳で、横須賀に帰るまでお世話になります……」

 

 内火艇で武蔵にやってきた晴風クラス、それを出迎えたもえか達に対して、ましろが大まかではあるが武蔵に移ることになった理由を伝えて頭を下げた。

 

「了解しました、横須賀に帰港するまで晴風クラスの乗艦を許可します」

 

 もえかは淡々と仕事口調で答え、更に続けた。

 

「疲れているのに申し訳無いけど、私達も手一杯だから晴風の皆にも武蔵の艦内業務を手伝って欲しいの」

「わかりました。割り振りはお互いの各委員同士で決めさせましょうか?」

「そうだね」

 

 それからもえかは矢継ぎ早に指示を出す。

 

「主計長、晴風の皆に艦内図を配って、空き部屋を案内してあげて」

「はい」

「そのあと各委員は晴風の同じ委員の子と、業務の割り振りについて相談して」

『了解』

 

 指示が終わり主計長が晴風の皆を連れて空き部屋へと向かう、ましろもそれについていこうとして、もえかに呼び止められた。

 

「宗谷さん、ちょっといい?」

 

 

 

 

 

     ◇

 

 

 

 

 

 武蔵艦橋最上部に位置する防空指揮所にましろは連れてこられた。屋根が無く空が360°見渡せるここは実に開放的で、見晴らしがよかった。残念ながらここが本来の目的である防空指揮のために、まともに使われたことはほとんど無いらしいが。

 縁に寄れば再集結した艦隊が全て見下ろせた、普段いる晴風の艦橋は他の艦に比べて低い位置にあるため、とても新鮮だった。

 

「宗谷さんはここに上ったの初めて?」

「ええ、そもそも武蔵に乗るのも初めてですので」

「えっ、そうなんだ」

「ほかのクラスの艦に乗る機会がありませんから」

「それもそうだね」

 

 当たり障りのない会話、だがましろは妙に落ち着かず、早く本題に入ることにした。

 

「岬艦長のことですか?」

「……うん」

 

 2人揃って晴風に目をやる。後部甲板に突っ込んだ飛行船の残骸を力づくで引き剥がそうと、摩耶がワイヤーを飛行船に繋いで後ろについていた。そのまま引きずって海の底に捨てるつもりなのだろうか。

 

「ミケちゃんは何で倒れたの?」

「陽炎さんが不知火さんから聞いた話によると、血まみれで倒れていた古庄教官の姿を見て倒れたそうです」

「嘘ね」

「私もそう思います。……ちなみに知名艦長の根拠は?」

「ミケちゃんなら、どんなに酷い状態でも、その人が生きているなら助けようとすると思うから」

「……そうですね」

 

 容易に想像がつく、あの艦長ならどんなに危険でも、どんなに酷い現場でも生きている人がいるなら突っ込んで行きそうだと思った。

 

「宗谷さんの根拠は?」

「陽炎さんが嘘つくの下手だったんです」

 

 だが、だとしたら明乃は何故倒れたのか。要救助者を前に意識を放棄してしまうほどのショックとは、一体なんなのか。

 

 __もしかして__。

 

「……誰か、死んでいた?」

 

 その場所で、誰かが既に亡くなっていたのなら、明乃がショックのあまり倒れてもおかしくは無い。

 しかし、もえかは首を横に振る。

 

「死者0って説明があったから違うと思う」

「それも嘘では?」

「前回は死者について一切触れなかったの、でも今回は0って言い切った」

「……なるほど」

 

 わざわざ「言ってないだけ」から「嘘」に変えた理由がわからない。勿論気まぐれと言われてしまえば崩れる根拠ではあるが。

 

 

 

 

 

「__なかなか鋭いじゃん?」

 

 

 

 

 

 不意に背後からかけられた声、2人がビクッ!と振り返ると、すぐ後ろに赤羽が立っていた。気配もなくいつの間にか、とても心臓に悪かった。

 

「赤羽さん!?」

「どうしてここに!?」

 

 ましろが声を上げ、もえかがそう尋ねると、赤羽はましろの隣で壁にもたれかかって答えた。

 

「武蔵の物資が足りねーかもって言うから晴風から持ってきたのと。それから、あたしがしばらく晴風に常駐することになったから伝えに来た」

「そうですか……」

「__って言うのはついで?いや建前だっけ。本当はさっきの話、晴風で何があったのかバラしに来た」

 

 そう言ってニヤリと笑う赤羽は、お世辞にも善い人には見えなかった。

 ましろはそれにゾクッとした嫌な予感を感じて、尋ねずにはいられなかった。

 

「……どうして教えてもらえるんですか?箝口令とか出てるんじゃ……?」

「まあ、司令からは言うなって言われてるけどさ。教える理由は"お詫び"だよ」

「お詫び?」

 

 赤羽は珍しく申し訳無さそうに声のトーンを落として答える。

 

「あたしがヘマやってレ級を晴風に送り届けちまったからさ、そのお詫び」

 

 戦艦レ級flagshipに赤羽がスキッパーによる捨て身の激突を敢行したものの、レ級を殺せずフロントノーズに乗せたまま晴風へと接近し、生徒達の離艦が終わらないうちに乗り込ませる原因となったのだ。

 それに負い目を感じて、何があったのか教えてくれるらしい。

 

 赤羽はポケットからmicroSDを取り出すと、ましろへ放り投げた。

 

「現場写真いくつか撮ってきた、よかったら皆で見なよ。あ、勿論司令達には内緒でね」

 

 そう言い残して防空指揮所から降りていく。その後ろ姿が2人には何故か楽しそうに見えて、やっぱり信用できない人だと思った。

 

「……なんだか怪しい人だね」

「同感です」

 

 2人で頷き合い、そしてましろの掌に乗ったmicroSDに視線を移す。

 

「現場写真……何が映ってるのかな?」

「……嫌な予感がしますね……」

「じゃあ止める?」

「まさか。……私は晴風の副長として、見なきゃいけないと思うんです」

 

 もえかがタブレット端末を差し出す、ましろはそれのスロットにmicroSDを押し込んだ。

 

 もえかのIDでログイン、エクスプローラーを開きSDへアクセスすると、

「現場写真 晴風 20XX/XX/XX(日付)」

 というフォルダだけが出てきた。

 

 ごくり、と唾を飲み込む。

 

 一体、どんな写真が入っているのだろう。

 一体、何があったのだろう。

 

「……開けます」

 

 意を決してフォルダをタップした。Cの字がクルクル回る短いロード時間を挟み、画像一覧が表示され__。

 

 

 

 __床と、肌色と、赤黒い__。

 

 

 

 

 

「「ひっ!?」」

 

 

 

 

 

 2人は短く、そして大きな悲鳴を上げた。

 ましろはそれを視界から外そうと、反射的にタブレットを放ってしまい、もえかがカバーに入り何度かお手玉しつつも、床に落ちる寸前でなんとか止めた。

 

 たかが写真を見ただけなのに息が跳ね上がり、心臓がバクバクと激しい動悸を起こす。

 

「はぁ……はぁ……、今のって……」

「……う…………うん……」

 

 もえかはタブレットの画面が見えないよう、裏にしたまま持ち直す。そしてましろに尋ねた。

 

「……ちゃんと、見る……?」

「……ええ」

 

 もう見なかったことになんかできない。

 ましろもタブレットを掴み、2人でゆっくり、恐る恐るタブレットを裏返した。

 

 

 

 そこに映っていたのは、惨劇の跡。

 

 晴風の通路にぶちまけられた血と、食い千切られた四肢と内臓。

 

 

 

「うえっ……」

 

 残酷な光景に慣れていない2人には直視なんかできず、顔を背けて横目でチラリと見ては顔を青ざめさせて、こみ上げる気持ち悪さと吐き気を必死に飲み込んで抑えた。

 

 少しばかり慣れてきたところで、横目ではなく正面から写真と相対する。だが、ましろの気分は余計に悪くなった。

 

 自分達の家である晴風で、間違いなく惨殺が行われた。何度見ても変わらないその事実が、ましろの精神にズシリとのしかかった。

 

 __自分のせいで、誰かが死んだ。

 

「そんな……、そんなことって……」

「宗谷さん!」

 

 力が入らず自分の脚で身体を支えられなくなる、それに気づいたもえかがすぐにましろを支えてくれた。そのまま支えられながら、よろよろと縁へ辿り着き、背を壁に預けて床にへたり込んだ。

 

「大丈夫!?」

「すいません…………ちょっと気分が……」

「……しばらく休んでよっか」

 

 もえかは膝を抱えてうずくまるましろを気づかって、自分も隣に腰を下ろした。

 

 しばらく会話も無い沈黙が続いた。

 やがて、晴風の方からバキバキと破壊音が聞こえてきた。摩耶の牽引により、飛行船を引き剥がし始めたのだ。

 

「……飛行船を引き剥がしてるみたいだね」

「そうですね……」

「……」

 

 会話が続かない、ましろから話しかけないでという心の声が痛い程に伝わってくる。

 無理もない、ともえかはましろが落ち着くまでそっとしておくことにした。

 

 自分達の過ちで人を死なせてしまった、その後悔はそう簡単には折り合えない、なのに今無理に踏み込めば、心をさらに閉じさせてしまうかもしれないから。

 

 もえかは手元のタブレットに目を落として、先程の写真を改めて見る。

 

「酷い……」

 

 何度見ても心が痛む、自分と変わらない子供なのに__。

 

「……あれ……?」

 

 __どうして今、死体が子供だと思った?

 自分の思考に疑問を覚え、写真を凝視する。そう思った理由はすぐにわかった、まずは手や足が小さいこと、見る限り男のような大きな手では無い、それから死体が着ている服、血で真っ赤に染まっているが間違いなく学校指定のジャージだ。

 

「……どういうこと……?」

 

 ジャージを着た女性、それが当てはまるのは元々晴風に乗っていた生徒と陽炎達しかいない。だが、晴風に乗っていた全員の無事が確認されている。

 

 明らかな矛盾。

 

 それに気付いた時、先程の赤羽の言葉を思い出した。

 

(なかなか鋭いじゃん?)

 

 あれは両方に向けられた言葉だ、ましろの誰かが死んだという考えと、それを否定したもえかの考えの両方に。

 どう表せばばいいのかわからないが、とにかく誰か死んだのに死んでいない。そんな状況なのだ。

 

 その原因を見つけようと写真を何枚も何枚も見ていくうちに、決定的なものを見つけた。

 

 

 

 右脚につけられたギプスの残骸。

 

 

 

 晴風で脚を固定していたのは、1人しかいない。

 

「宗谷さん、宗谷さん!」

 

 もえかがましろの肩を強く揺すると、ましろは俯いたままボソッと応えた。

 

「……なんですか……?」

「不知火さんはどんな様子だった!?」

「無事でしたよ……?」

「そうじゃなくて、脚を怪我してたでしょ!?」

「脚……?そうだ……脚を骨折してて……っ!?」

 

 そこでましろもハッと気づいて、顔を上げて目を見開いた。

 

 ましろが晴風を離れる前、不知火は骨折した右脚をギプスで固定し、松葉杖をついてジャージを着ていた。

 

 だが戦いの後、芽依と志摩を晴風から追い出した時の不知火はジャージを着ておらず、ところどころに血のついたスポブラにスパッツ姿で、ギプスを外し松葉杖を捨てて脚部艤装を履いていた。

 

 __いつ、脚が治ったんだ?なんでジャージを脱いだんだ?

 

「これを見て」

 

 差し出されたタブレットの写真、そこにはギプスの残骸と脱ぎ捨てられたボロボロのジャージが血まみれで映っていた。

 

「これって……!?」

 

 あまりにも衝撃的で信じられず、もえかと顔を向き合わせる。それを受けたもえかは、真相を一言一言はっきりと伝えた。

 

 

 

「死体はあるのに、誰も死んでない。……その死体は、不知火さんの……古い身体だから」

 

 

 

 摩耶に引きずられていた飛行船が、晴風から海面に落ちてドバァァァン!と着弾音に見劣りしない轟音を立てた。だが、ましろにはその衝撃すらわからなかった。

 

 

 

 

 

     ◇

 

 

 

 

 

 宇宙戦艦が艦首のロマン砲を発射し、目が眩む閃光によって宙に浮く大陸が跡形もなく消し飛ぶ。月すら飲み込めそうな巨大クレーターだけが、そこに残った。

 

 内容を覚える程見た有名アニメのリメイクをぼーっと見ながら、幸子はぼそっと言った。

 

「……しろちゃん、遅いですね……」

「遅いね……」

「うぃ……」

 

 芽依と志摩もぼーっとテレビを見ながら、どこか重苦しい空気の中頷く。

 此処はましろに割り当てられた部屋なのだが、明乃とましろを除く艦橋メンバーが集まっていた。

 いつもなら幸子の仁義のない映画でも流すのだが、BDは晴風に置いてきてしまったので、武蔵に置いてあったアニメを適当に流している。

 このアニメは海上安全整備局が協力しているからか、だいたいどの艦にも置いてあるらしい。皆もう見ているものの、暇潰しには十分なので選んだ。

 

 アニメがEDに入ったのとほぼ同時に、ようやくましろが部屋にやってきた。……のだが、

 

「うわっ、……なんで私の部屋に集まってるんだ?」

 

 そう身体をのけ反らせて、嫌そうに一歩下がられた。

 

「酷いですよー、しろちゃんに皆で聞きたいことがあって待ってたんです」

「……聞きたいこと?」

 

 幸子はましろの手を引っ張り、既に座っていた芽依と志摩を脇にずらして、ちょっと強引にベッドへと腰掛けさせる。

 

「あの……なんなんだ一体?」

 

 戸惑うましろに正面からぐいっと詰め寄る。

 

「現場写真、貰ったんですよね?」

「え……」

 

 目を見開いたましろが、なんでそれを、と言う前に一気にまくし立てる。

 

「赤羽さんから聞きました。『ましろに預けてあるから見れば?司令達がガキには見られたくない隠し事が写ってる』って」

 

 あんの自由人が……っ!とましろは悪い笑顔をする赤羽を思い浮かべて、ギリッと歯ぎしりをした。

 幸子が肩をガシッと掴んで更に迫る。

 

「しろちゃん見せてくださいよ、私達も晴風で何があったか知りたいんです。なんで艦長が倒れたのか、司令達が何を隠したいのか」

 

 幸子の強い意志を乗せた視線が、真正面からましろを射抜く。気を抜けばそのままベッドに押し倒されてしまいそうな気迫だ。汗がダラダラと背中を流れていく。

 

 その圧を少しでも逸らそうと目を右へ向けるが、それは無意味だった。向けた先には芽依と志摩が幸子と同じ目をして待ち構えていたのだ。

 ならばと左へ向けば、そちらには鈴が3人と比べればおどおどしていて弱そうなものの、絶対に逃さないという覚悟で待ち受けていた。

 

「ねえ副長?見せてくれるよね?」

「隠し事……ダメ」

「見せてくれるまで、下がりませんから……!」

 

 まさに四面楚歌、逃げられない。

 

 ましろはゴクリ、と唾を飲み込んだ。

 

 

 

 __私も司令達と同じだ。見せたくない、あんな残酷な事実。見たら間違いなく皆の心が傷ついてしまう。

 ……だけど、それでいいのか?皆だって知りたいんだ、晴風の皆は見る権利があるだろうし、モヤモヤしたままでいいはずが無い。

 

 ……どうすれば………………。

 

 

 

 その時、完全に忘れていた最も重要なことに、ようやく気がついた。

 

 

 

「写真……見せてもいい……」

「ホントですか!じゃあ早速……!」

「だけど!……ちょっと待ってて欲しいんだ」

「なんで?」

 

 芽依が責めるように理由を尋ねた。

 ましろは幸子を押しのけて、掴まれて皺になったジャージを整えてから答えた。

 

「写真はあるけど、当事者から話を聞けてないから、まだ真実がわかってないんだ。……私が本人に直接何が起きたのか尋ねてくるから、それまで待って欲しい」

「先延ばしにしたいだけじゃないの?」

「……今夜中には会って聞いてくる。もし何も答えてくれなくても、明日の朝には写真を見せる」

「……絶対?」

「ああ、絶対だ」

 

 ましろは強く頷いた。

 

 その後。

「やっぱりすぐ見せてください、今すぐ」

「いや譲らん」

「見ーせーろ、見ーせーろー!」

「だから待てっての!」

 と押し問答がしばらく続いたが、ましろは1ミリも折れず、4人に音を上げさせることに成功した。

 

 守りきった、でも凄く疲れた。二度としたくない。

 

 4人は何度も「絶対ですよ!」「破ったら射撃訓練の的にするから!」と念を押しながら部屋を出ていった。

 

 パタン、と扉がしまってすぐ、ましろは大きくため息をついて、ベッドに倒れ込んだ。

 

 

 

 先程気づいたこととは、陽炎が事実を隠した理由だ。

 勿論司令達からの依頼もあったのだろうが、残された死体の理由を語れば自分達が普通の人間ではない、と明かすことになる、きっと生徒に知られれば拒絶されると思って嘘をついたのだろう。

 

 でも、ましろはその願いを無下にしようとしている。

 

 レ級との戦闘の詳細から、陽炎達の正体まで、真実を洗いざらい聞いてクラスメート達に伝えるつもりだ。

 そうでなければ、皆も自分モヤっとした気持ちを引きずったまま、前に進めない気がする。本当のことを知ってから、ようやく踏み出せるのだと。

 

 だがそれは、陽炎達を傷つけてしまうだろう。

 

 それでも、ましろは生徒達に話すことを選んだ。

 

 ……いや、違う。

 

 

 

「…………ああ、クソ……」

 

 目元を手で覆い隠す。

 自分が嫌になる。

 真実を伝えても、晴風の皆が全員前向きになれるとは思えない、ショックを受けて立ち直れなくなってしまうかもしれない。陽炎達も不幸にして、クラスメートも不幸にしてしまう最悪のルートに入る可能性もある。

 そんなことも考慮せず、ただ幸子達に追い詰められて頷いてしまったに過ぎない。

 

「艦長ならどうしたんだろう……」

 

 瞼の裏に、笑顔で振り返る明乃の姿が浮かぶ。

 彼女ならどうしたのだろうか、誰も傷つけないように立ち回れたのだろうか。

 

「……私はどうすればよかったんだ……」

 

 その問に答える声はなかった。

 

 

 

 

 

     ◇

 

 

 

 

 

「__私はどうすればよかったのかしら……」

 

 副長室のベッドの下段で、ましろとそっくりに仰向けになり目元を覆い隠す陽炎、そのぼやきを情報処理端末を手に机に向かう不知火がバッサリと暴論で一刀両断した。

 

「何を選んでもそう言ってますから、無駄な悩みです」

「……あんた辛辣過ぎよ……」

「だってそうでしょう?本当のことを話しても皆を傷つけたって後悔するんですから」

 

 暴論ではあるが正しい意見に、陽炎は疲れ果てた様子でボソボソと答えた。

 

「……そうかもしれないけどね。こういう時は『貴女は間違ってません、正しい選択をしました』って慰めるものよ」

 

 慰める、その言葉で不知火のあるスイッチが入った。

 

「そうですか、慰めて欲しいなら最初から言ってくれればいいのに」

「それとなく察しろ忖度しろ甘やかせってことよ」

「……わかりました。慰めてあげます」

 

 不知火はスッと立ち上がり、ベッドへ近づいてきた。

 あれ?何をする気なの?と陽炎は怪訝に思い、首を動かし不知火を見る。

 

「陽炎が晴風を離れる時、不知火がなんて言ったか覚えてますか?」

「え?えーと……」

 

 陽炎は疲れや負の感情で一杯になった頭をなんとか回した。

 

「ア・イ・シ・テ・ルじゃなくて、サヨナラじゃなくて……」

「なにおかしなこと言ってるんですか、不知火はこう言ったんですよ」

 

 

 

(わかりました。では後で"すっごいこと"をするので楽しみにしていてください)

 

 

 

「あー、そうだったわね……」

「というわけで……」

 

 不知火はジャージを脱ぎ適当に放り捨てた、高速修復材によって傷1つ無くなった素肌がブラとスパッツの下以外露わになる。そしてベッドの上へ、陽炎の上に馬乗りになり、妖艶な笑みを見せた。

 

「不知火がたっぷり激しく慰めてあげます」

 

 だが、陽炎は乗り気になれず小さくため息をついた。

 

「……はあ……」

「なんですかそのため息は」

「……そういう気分じゃないの」

「ヤッてるうちにノリノリになりますよ、晴風のことも学生のことも忘れて、スッキリしましょう?」

 

 不知火は陽炎の耳元で甘く囁やき、陽炎のジャージのファスナーに手をかけた。

 

「……あんたがヤリたいだけでしょ?」

「はい」

 

 即答、欲望に忠実過ぎる。

 

「死にかけたせいか、性欲が昂ぶってしまいまして」

「……ま、いいわ。私まだ手が治ってないし、不知火の好きにして」

 

 __不知火の言う通り、少しは気が紛れるかもしれないし__。

 

 陽炎からのお許しを得て、不知火はファスナーを一気に下ろしジャージを脱がせ、舌なめずりをした。




陽炎「あの後滅茶苦茶慰められた」
不知火「あの後滅茶苦茶慰めた」

ちなみにR18を書く予定はありません。

不知火「なんでですか?」
作者「え?」
不知火「なんでかげぬいイチャラブエッチを書かないんですか!書いてください!書け!!」
作者「勘弁してくれ〜!!」

次回もお楽しみに。
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