無貌の王 作:朝が来ませんように
今回は、あんまりルークスでできません。
4月・・・早速監視対象を確認してみれば、何故か朝っぱらから九mm機関銃――通称UZIを取り付けられたセグウェイに追いかけられていた。
「遠山キンジは、なかなかの不幸体質と見た。こりゃあ、面倒なことになりそうなもんだ」
そう言いながら、監視していると、神崎・H・アリアが助けて倉庫に突っ込んでい居たのだ。
「・・・もう少し近くに行くか」
キンジと少女は防弾跳び箱の中にいた。先に目を覚ましたのはキンジだった。
思わず顔を起こそうとした――しかしそれが間違いだったとすぐに知ることとなる。
「ッッッッ 胸!? いやいや平静になれ遠山キンジ。大丈夫、大丈夫・・・まだセーフだ!」
せめて服だけでも直そうとしたキンジだが運悪くアリアも目を覚ます。
ぱちくりと愛らしいまぶたを数回動かし、状況を把握するとギャーギャーと騒ぎ出した。
「ちょっとアンタ、何、服を脱がそうとしているのよ! 犯罪者! 強猥! 痴漢!」
「待てって、俺はなにもしていない!」
「人でなし! 恩知らず!」
ポカポカとキンジを叩き始めるアリアだが長くは続かなかった。
バララララララララ!
鉛弾の嵐がキンジたちを襲う。
間一髪で跳び箱内部にひそんだアリアが舌打ちをする。
「まだいたのね『武偵殺し』のオモチャが!」
「『武偵殺し』!? 捕まったはずじゃあ」
「あれは、模倣犯よ」
キンジが、どういうことか聞こうとする前に、セグウェイが二人の命を奪おうと弾丸を撃ち続ける。アリアは跳び箱の隙間から撃ち返そうと更に身をかがめた。
ぷにゅん
ドクンッ!
(あ・・・やばい)
小さくとも存在感を放つ二つのマシュマロ。
胸を顔面に押し付けられたキンジ。
どんなに外見が幼い少女でも女らしさを集約させた一部分にキンジの胸は際限を知らずに高鳴っていく。
ドクンドクン――ドクンッ!!
(なって、しまった! ヒステリアモードに!)
UZIの銃弾が一時的に止む。キンジはおもむろにアリアをお姫様だっこした。
突然の奇行に顔をリンゴのように真っ赤に染めたアリア。
じたばたと手足を振りまわしながら暴れる。
「にゃ!? こ、こここんなときににゃにすんのよ!」
「少しの間だけお姫様にしてあげよう」
「あああ、アンタ、頭でも狂ったの!!!」
二台のセグウェイに付けられたUZIが弾丸を吐き出してキンジに迫る。だが当たらない。
キンジの眼は敵の弾道を完全に予測出来ていた。眼前に迫りくる弾丸の雨。
頭を狙った弾丸をを紙一重に回避、そして・・・
バンバンバンバババンッ!
違法改造のベレッタF92――三点バーストもフルオート射撃も可能な通称キンジモデルが火を噴いた。
銃弾は銃口を向けていたUZIの銃身を一撃で貫き、UZIを破壊した。そして、避けた壁に着いた傷をみてつぶやいた。
「良い狙いだ」
敵の銃弾を避け、撃破する・・・一秒にも満たない神技を見せたキンジの姿をアリアは生涯忘れることはなかった。
「ヒュー。やるー。中々に、手ごわそうなやつだな。でも、助かったな・・・女に対するあの態度を見るにもしもの時に潰すのは簡単そうだ」
森の狩人は笑う。
「さてさて、俺も学校に行きますかね」
「えー、今日は皆さんにお知らせがあります。なんと、この教室に2人転校生が来ますよ」
担任の高天原 ゆとりがそういうと、教室が、ざわつく。
「まずは最初に、去年の3学期に転入してきた神崎・H・アリアちゃんでーす♪」
「遠山君、どうしたんですか?」
「いや・・・何でもないです」
「先生、もう1人はどうしたんですか?」
男子生徒の1人が、そう質問する。
「ここにいますよっと」
後ろから声がして、振り向くとそこには、緑の衣装に身を包んだオレンジ色の髪の少年が立っていたのだ。ほとんどの人間は、そこに何時からいたのかすらわからない・・・。
「なッッッッ・・・」
多くのものが絶句する中、少年は飄々と自己紹介を始める。
「俺の名前は、ルークス・・・ルークス・フッドだ。よろしく頼みますよっと」
「・・・」
沈黙が支配する。みんな、驚きすぎてうまく反応できていなかった。それは、アリアも同じことだったのだ。
アリアが一番早く起動する。
「ちょっと、何で私を無視して先に話しているわけ?レディーファーストって知らないのかしら」
「おー怖い怖い。そんなに朝から怒るもんじゃないぜお嬢さん」
「・・・まあ、許してあげるわ」
アリアは、ガバメントに伸ばした手を引っ込めながら、そう話す。
「ねえ先生」
「はい、なんですか? 神崎さん」
「あたし、アイツの隣に座りたい」
そう言って指差してるのはキンジ。アリアの発言に、教室がざわめく。
もう、意味が分からなさ過ぎてキンジは絶句だ。
「何だか知らんがキンジ。早速、あんなカワイイ子から指名があるなんてついてるじゃねえか! いや、よかったな! 先生!! 俺が席を空けますよ!」
「あらあら……青春ねえ。やっぱり、最近の子は進んでるのかしら。神崎さん、武藤君が席を空けてくれるそうよ」
おい、武藤。何だそのいい仕事をしましたみたいな親指と笑顔はなんだ?
「ん・・・キンジこれ、あんたのベルト」
「分かった! 理子、分かっちゃった! これ、フラグバッキバキに立ってるよ!」
「キーくんベルトしてない! そしてそのベルトをツインテールさんが持ってた! 謎だよねー・・・でも理子には推理できちゃった!」
「キーくんは彼女の前で、ベルトを取るような、なんらかの行為をした! そして彼女の部屋にベルトを忘れていった! つまり2人は――熱い熱い恋の真っ最中なんだよー!」
「キ、キンジがこんなカワイイ子といつのまに」
「影の薄い奴だと思ってたのにッ」
「お前は仲間だと思ってたのに・・・」
教室が一気にざわついた。
バキュン――――バキュン―――――
「れ・・・恋愛だなんてくっだらない! 全員覚えておきなさい! そういうバカなことを言うやつには――風穴あけるわよ!」
「シャーロックの奴とは似ても似つかないな」