無貌の王 作:朝が来ませんように
次の日、学校に行くと昨日よりもさらに死んだ顔をしたキンジがいた。
「おう、どうしたんだ?キンジ死にそうな顔してるぜ」
「ああ、ルークス・・・死にそうなんだよ・・・昨日、理不尽の権化にあったものでな・・・」
「・・・それは、ご愁傷様・・・話ぐらい聞いてやるけど」
「・・・ああ実は・・・」
「・・・なるほどな、それで一度だけ事件に付き合うことにしたわけだ」
「ああ・・・・・・俺もひどいだろうが、お前もひどい顔してるぜ・・・」
「まあ、何とも言えないが、詳しくは飯の時間にしてやるよ」
「・・・そうだな」
屋上・・・
「それで、朝も、夜も、ブロッコリーだけなんだな」
「ああ、ほんとに購買のパンが救いとは泣けるぜ」
「お互い、苦労が絶えないな・・・」
「まったくだ」
そう言いながら
昼食を終えると、キンジは立ち上がり、「強襲科に行ってくる」
そう言って席を立つ。だが、その顔は、曇っていた。
「俺も暇何でついて行ってもいいか?」
「・・・ああ、だけど、あまりいい場所じゃないぞ」
「まあ、諜報科以外に縁がないんでね」
「分かった」
「はあ・・・戻ってきてしまった」
「キンジ・・・もう諦めろ」
出入り口となる大扉の前、キンジは後悔を抱えながら立ち尽くしていた。
「ほれ行くぞ、キンジ。覚悟して入るぞ」
「そもそも、覚悟して入るような学科があるほうがおかしいんだがな」
「それは、同感ですけどねー」
ルークスは適当に答え、2人で扉の取っ手に手をかける。
両開きのそれは、左右にゆっくりとスライドしていく。そして、完全に開ききるより前にあふれ出てくるのは、聞き慣れた金属音や発砲音、鈍い格闘訓練の音だった。
「相変わらずだな、ここは・・・」
「おお・・・」
ルークスは、感嘆していた。
彼らの声は互いに戦闘音にかき消されそうになる。つまりはそれほどの人数が今ここで戦っている最中だということであり、それがまさに強襲科がどんな場所であるかを如実に語っていた。
「・・・キンジ?」
と、強襲科生の1人が、キンジに気づいた。
途端・・・・・・館内が静まり返った。まさにピタッといわんばかりに、戦闘音の一切が消えうせる。かと思いきや、代わりにキンジの名がささやかれ始めた。
「キンジぃー! やっと帰ってきたかこの野郎!」
ワッ! と、ルークスたち目掛けて一挙に人波が押し寄せてきた。迫る肉壁。圧倒的質量差がルークスとキンジを攻め立てる。
「お前は絶対帰ってくると信じてたぞキンジィ! さあここで1秒でも早く死んでくれ!」
「まだ死んでなかったかお前・・・お前こそ俺よりコンマ1秒でも早く死ね」
ルークスは、そんな会話をBGMにしながら、気配を消して抜ける。
「・・・へー面白い会話をしてるやつがいるな」
「おい、聞いたか、遠山キンジが帰ってきたらしいぞ」
「マジか、あの遠山キンジか?」
先輩たちの会話を耳にしたライカは顔をこわばらせた・・・
「ライカ?」
「そうか、遠山キンジ・・・あの人帰ってきたのか」
「キンジ?って誰?なの」
「1年前にSランクだった先輩さ。入試で、教官を倒したらしい」
「教官を?それってすごすぎない」
「ああ、そいつは凄いな~」
「ああ、化け物だよ」
「「・・・・・・・・」」
「「ッッッッッッッ」」
驚いて、後ろを振り返ると、そこにはオレンジ色の髪の少年が立っていた。
何時から立っていたのだろう・・・ライカとあかりは戦慄した。
「やあ、お嬢さん方今の話詳しく聞かせてくれない?」
ルークスは、飄々と話しだした。
「よう、キンジ。書類の提出は終わったみたいだな」
「まあな」
「そっか。・・・んじゃ、そろそろ帰ろうぜ」
「ああ・・・そう、だな」
プルプルプルプルプルプルプル・・・
ルークスの電話が鳴る・・・携帯を開くと、相手は夾竹桃だった。
「・・・悪いキンジ野暮用ができた、先に帰ってくれ」
「おう、分かった」
そう言って、ルークスは、キンジと別れた。
「何だよ夾竹桃。俺は、監視対象の情報収集にいそしんでるんですがね」
「この前に言った仕事の手伝いをしてほしいのよ」
「・・・へー。何の仕事ですかい?」
「簡単な仕事よ・・・花を摘むだけの簡単なお仕事」
「へー。それで、オタクに狙われる可哀そうな標的の名前は?」
「標的の名前は、間宮 あかり」
「・・・」
ルークスは、少しだけ驚いた。奇しくもそれは、さっき話した後輩の名前だったからだ。