無貌の王 作:朝が来ませんように
「おい、待ってよ・・・今なんて言った?セーラ」
「だから、あかりに協力することになったから、
今一番聞きたくない言葉がセーラの口から聞こえた気がした・・・敵になるだと・・・確かに今までも仕事の都合上そういうことは多々あった。だがしかし、今回のクライアントは夾竹桃だ。このことを知ったら・・・怖いのでソフトに表現するが、・・・殺される。
「・・・理由は?」
「何というか・・・流れ?」
何ということだろう。俺は、そんな適当な理由で夾竹桃の洗礼を受けるのだろうか・・・。
「・・・ハァ~。分かった。今回の仕事は敵同士。手加減はしないからな」
「望むところ」
「っというわけでセーラが敵に回りましたー」
ゴンッ・・・・
夾竹桃に思いっきり殴られる。
「痛ぇ~何すんだよ。オタクの気持ちは分かる。簡単そうな任務だったのに難易度が跳ね上がりやがってだろ」
「いいえ、違う。私が起こっているのはあなたが何となくムカついてしまったから」
「予想をはるかに上回る毒に旋律を隠せないわけなんですが」
余りの理不尽に呆れて声が出そうにない・・・それに慣れかけている自分に危機感を覚える。
「あら、気に入らないのなら文字通り毒してあげましょうか?」
「そいつは勘弁。それで?セーラは俺が相手をするとしてオタクの援護は出来ないわけなんだが」
「必要ないわ。元から援護の必要なんてなかったもの」
「へぇ。なら俺がセーラさえ押さえておけば勝てるってわけだ」
「ええ」
夾竹桃は、自分の敗北など考えていない・・・だが、・・・
「なあ、賭けをしないか?」
「賭け・・・」
「俺が勝ったら、そうだな何でも言うことを聞いてもらおうか」
夾竹桃は目を細める・・・警戒しているのだろうか。まあ、普段の俺ならこんなことは言い出さない。警戒するのは当たり前か。
「随分自信満々ね。内容は何かしら」
「あんたが勝つか負けるか」
「私が負けると?」
「ああ」
「いいわ、その賭けに乗ってあげる。あなたは何を掛けるのかしら?」
「俺も同じだ。何でも言うことを聞いてやってもいいぜ」
「いやー、それにしてもついてないねー・・・俺も」
夜遅くまで、夾竹桃と話し込んだが故に寝坊して、急いで乗ったバスに爆弾が仕掛けられるなんてどんな状況だよ・・・。しかも、ちゃっかりセーラは学校に行っているという・・・しかし、これ理子の仕業だよな・・・邪魔したら怒られる奴だな・・・仕方ない大人しくしてるかね。
「――みんな、伏せろッ!」
「――ッッッッ」
不知火の叫び声に続いて、バスの窓ガラスが一斉に砕け散った。連続する発砲音がガラスの破砕音をかき消していく。
おお、銃撃か・・・派手だねー
俺は急いで横壁に身を隠す。ガラスはともかく、この車は防弾性だ。こうしていれば、追撃があっても防げる。このまま、適当に過ごして・・・
「おい、ルークス運転手が打たれて重傷なんだよ。運転は俺がやる代わりに、介抱してくれ」
最近知り合った、武藤が怒鳴りながら運転席に着く。
「俺は、諜報科であって、救護科じゃないんですけどねー」
そう言いながら、運転手の傷口に布を当て、止血に取り掛かる。しかしこの運転手打たれても意識あるのか・・・根性あるな。
「しかし、オタクもついてないね」
「みんな、無事か!」
そんなこう着状態を動かすように、窓から一人の男が入ってきた・・・キンジだ。
キンジは、周囲を見回した。
「重症のものは、何人いる?」
「運転手以外は無事だ」
「そうか、分かった。・・・運転手以外は無事みたいだ」
俺がそう答えると、俺ではなく、インカムを通して恐らくだがアリアに語り始める。
そして、それが数十秒続いて、キンジが顔を青くした。
「どうしたんだよ、キンジ?」
「・・・・・・・アリアが、車体の下に爆弾を見つけたらしい。種類(タイプ)はC4。炸薬は、3500立方センチはあるそうだ」
「そいつは、いかれてることで・・・理子の奴後で覚えとけよ」
「武藤、このヘルメット被ってろ!」
「わ、わかった!」
と、キンジが立ち上がり剛気に自分のヘルメットを投げ渡したかと思うと、また窓から身を乗り出し始めた。
予想外の行動に声を掛けてしまった。
「おい、どこ行く気だキンジ!」
「屋根に上ってアリアの様子を見てくる! 」
「まて」
引き止めるも、キンジは聞かずにホントに屋根まで登りに行く。
バカかあいつ!? さっきの見てなかったのか。屋根になんか登ったら、格好の的じゃねぇか!理子の喜ぶ顔が見えるぞ・・・。
「アリア! お前、ヘルメットはどうした!」
「あんたこそ、してないじゃない! 危険だわ! なんで無防備に出てきたのよ?!」
窓の外から、屋根の上で合流したのだろう、アリアとキンジのケンカが聞こえてくる。
「仕方ねえな」
俺は、あいつらのケンカを仲裁するために、屋根に上る。
豪雨で煙る視界の中、視線を巡らせると――いた。アリアとキンジが丁度運転席の真上あたりで、言い合っている。
俺は、屋根の上に立ち上がり、2人に向かって歩きながら、
「おい、オタクら何時までけんかしてんだ。」
「ルークス・・・」
キンジが、落ち着いたところで・・・俺に銃弾が、迫ってきていた。ぎりぎりのところで躱す。しかし、セグウェイの標準がすべてこちらに向いていた。
「マジか・・・」
反射的に、弾丸が飛んでくるであろうコースに矢を放つ。普通なら、矢と銃弾など比べるまでもない威力だが、俺の矢は、超能力で強化されているだから・・・銃弾はすべて叩き落された。
「ッ・・・・」
キンジたちは、余りのことに言葉を失っている。
「キンジ、ぼーっとしてんねえで前見ろ」
アリアよりも再起動が遅れたキンジは、標準が変わっていることに反応しきれていなかった。
だから、それが起こるのは必然だっただろう・・・キンジをかばいアリアは打たれた。