遊戯王ARC-V -Alternative-   作:ダーク・キメラ

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半年振りですね……

とりあえず無理やりストーリーを進めるように書いた

見直しはしてない


ARC4 遊矢の弟子!?融合使い紫雲院素良

「――俺のターン、ドロー!」

 

 デッキからカードを引く遊矢。彼は今、舞網スタジアムという最高の舞台の中にいる。

 ストロング石島を打ち負かした彼はあの日から凄まじい勢いで実力を上げていき、若きながらプロの道へと進み、急成長したのである。

 そして彼は遂に舞網チャンピオンシップ決勝戦まで辿り着いた。その先にはチャンピオンの座が待っている!

 

「「「「………」」」」

「遊矢……」

「――来た!」

 

 遊矢の引きを目に観客達も気を引き締まり、柚子もその中で心配そうに見つめている。

 そして遊矢はドローしたカードを確認すると微笑みだした、どうやら彼は最高の引いたカードを引くことができた様だ。

 

「Ladies & Gentlemen!これからお見せします、決着をつけるのに相応しいモンスターを!俺はスケール1の《星読みの魔術師》とスケール8の《時読みの魔術師》をペンデュラムゾーンにセッティング!ペンデュラム召喚!現れよ、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

『ガアアアアァ!!』

 

《時読みの魔術師》と《星読みの魔術師》が光の柱として現れ、遊矢の真上から光が降り注ぎ、そこからチャンピオンを倒して名を挙げた遊矢のエースモンスター、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が現れた!

 

 

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》

 ☆7

 ATK/2500

 

 

「これで決まりだ!螺旋のストライクバースト!!」

『ガアアアアアアァ!!!』

「うわあああぁ!!」

 

 

 相手 LP0

 

 

 遊矢 WINNER

 

 

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は遊矢に応えるかの様に渾身の一撃を放ち、相手モンスターを吹き飛ばし、勝利を収めた。そう、遊矢は勝ったのである。

 つまり……彼は遂にチャンピオンになったのである。

 

『つ、遂に決まったー!勝者、榊遊矢!なんと、あの榊遊勝の息子にてペンデュラムの創始者、エンタメデュエリスト榊遊矢が勝利を収めたー!この舞網チャンピオンの座を手に入れたのは……榊遊矢だー!』

 

 遂に勝利し優勝した遊矢。彼はもう、ただのデュエリストではない、舞網市最高のチャンピオンなのである。

 

 

「おめでとう、遊矢」

「うう、けしからんぞ、遊矢~!!」

「おめでとう!遊矢」

「「「おめでとう、遊矢兄ちゃん!」」」

 

 柚子や権現坂、塾長に母にフトシとアユとタツヤも遊矢を祝福しに集まってくる。

 そして遊矢の父親、榊遊勝も遠くから彼を見守っていた。

 

「皆……(父さん……俺、やったよ。俺のデュエルが、こんなに沢山のみんなを笑顔に……)」

 

 しかし世界は広い。まだ知らない強者が沢山いるのだ。

 君もまだ世界を知らない、そして世界も君を知らない。

 君のエンタメデュエルはまだ始まったばかりだ!

 榊遊矢の冒険はまだまだ続く。

 皆もこれから遊矢を応援してくれ!

 

 

 

 

 お楽しみはこれからだ!

 

 

 

―遊戯王ARC-V  『完』―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっすが師匠~!」

「……え?うわっ!なんだ、お前いきなり!」

 

 そう思っていた瞬間、突然遊矢の前に水色の髪をした少年が飛びついてきた。

 彼の名は紫雲院(しうんいん)素良(そら)。以前、LDSでデュエルで負けた沢渡が腹いせに力づくでカードを奪おうと取り巻きと一緒にに襲われかけた所を助けてくれたのである。

 そんな彼はいきなり遊矢に弟子入りを申し込んできたのだ。

 

「君って凄いよね!僕の師匠になってよ!ね、いいでしょ?いいよね?ねっ!ねっ!」

「あっ、ちょっ、やめ……うわあぁ〜〜」

 

 それにしてもこの少年、遊矢と顔が近いほどを抱きついており、放れる様子がない。

 これが俗に言う「だいしゅきホールド」という物なのか、流石の密着に退いたのか遊矢は素良から離れたいが、全く放してくれない。

 そして遊矢はそのまま底知れぬ闇と沈んでいった。

 

 

「う~ん……はっ!」

 

 

 ――気がつくと遊矢はベッドから起き上がっていた。

 外は日が差しており、起きるには丁度いい時間であった。

 先ほどの終わる終わる詐欺はただの遊矢の夢であったのだ。

 

「な、なんだ、夢か〜〜」

 

 夢から覚めた遊矢はチャンピオンになったというのが夢だったのでがっかりしてしまったが、直ぐ笑顔に戻った。

 確かに遊矢がチャンピオンになったのは夢であったが、ペンデュラム召喚をしてストロング石島に勝った事は夢ではない。

 遊矢のデッキが進化したように彼自身も一皮向けた表情をしていた。

 

「……(俺はもっともっと沢山の人をデュエルで笑顔にできる!きっと……きっと父さんみたいに!)」

 

 そんな遊矢の気持ちを現す様に、今日も快晴である。

 

 

 ☆

 

 

「それにしても何だったんだ、あいつ……沢渡をやっつけたと思ったら突然俺の弟子にしてくれとか……」

「あん!あん!」

「ニ゛ャ~」

 

 LDSで出会った素良という少年、彼は遊矢に弟子入りしたがっていたが当時の遊矢は弟子を取る気がなかったので、彼の志願を断っていた。

 しかし夢に出てきたのは想定外であり、流石に少し気になってしまった。

 そんな思いをしていた遊矢の下に太ったオッドアイな猫と子犬が現れた。

 

「おはよう、アン、コール!」

「アン!」

「ニ゛ャ~」

「アン、お前はまた重くなったな〜!」

 

遊矢は飼い犬のアンと飼い猫のコルに挨拶して、階段を使わずに設置されている何故かあるポールに沿って下へ降りた。

 

「やっぱりお腹空いてたのね。ほら、沢山食べていいわよ」

「母さん、また何か拾って……」

「あ、師匠!」

「師匠? っええぇ!?」

 

遊矢が食卓に入るとそこには金髪の女性が朝食を作っていた。

彼女の名は榊洋子(さかきようこ)、遊矢の母親である。父である遊勝が消失してからは母手一つで遊矢を育ててきた優しくも厳しい母親である。

彼女は可愛もの好きでよく犬や猫を拾ってくる癖があり、アンとコールも元は彼女が拾ってきた動物である。

実はアンとコール以外にも何匹か拾っており、今回もまた動物を拾ってきたようだ。

但し今回の動物は何時もと違い……

 

「そ、素良ぁ!?」

「やあ、師匠!」

 

 今回彼女が拾ったのは一人の少年、それも夢に出てきたあの紫雲院素良である。

 妙な夢から目が覚めた遊矢にとっては正夢である。

 

「何でお前が!?」

「いやあ、なんかうちの前をうろうろしてたからさあ……あたしってば、お腹すいてそうな子をつい拾っちゃうのね」

「だからって子供を拾う事はないでしょ!」

「だって、この子あんたの弟子でしょ?」

「だから師匠じゃないって!」

「え~?」

「『え~?』じゃない! 全く、適当なことを行って上がりこんだ上にちゃっかり朝食まで漁って!(これが正夢ってやつかよ!)」

 

 いくら可愛い物好きでも子供を簡単に入れちゃうのはどうかだが、遊矢もよくこんな偶然が起こったものだと心の中でツッコミをかました。

 

「いいじゃん!だって師匠のお姉ちゃんの御飯美味しいし!」

「え? お姉さん?」

「あ、違ったんですか?ごめんなさい、若くて美人だから僕てっきり師匠のお姉さんだと」

「やだ~! 若くて美人なんて正直な子ね。気に入ったならパンケーキもっと食べていいのよ!」

「母さん! それ俺のパンケーキ!」

「メープルシロップありますか~?」

 

 子供に煽てられたのが嬉しかったのか、彼女は遊矢の分の朝食まであげた。

 

 

 ☆

 

 

 朝食の後、遊矢と柚子は学校へと歩きながら話していた。

 

「え? あの子遊矢の家に来たの?」

「そうだよ。どうやって調べたのかは知らないけど、朝起きたら家で飯食ってて……」

「師匠!」

「――て言ってきて……ってうわ、いつの間に!?」

「師匠の行くところならどこでもついていくよ♪」

 

 遊矢が今朝の事を話している間に、声が聞こえたので振り向いた。すると後ろには素良がいたのだ。

 

「だから俺はお前を弟子にした覚えはないって!」

「僕、師匠のデュエルを見てビビっと来ちゃったんだ!」

 

 遊矢の意志に反して素良はそのまま話を進めていく。

 

「ペンデュラム召喚、あれ凄いよね?あんなの初めてだよ!あれ僕もやってみたいんだよね」

「いや、ペンデュラム召喚はペンデュラムカードないとできないし……」

「じゃあもう1度見せてよ~!ほら、お姉ちゃんも師匠に頼んでよ」

「え、なんで私が?」

「だって師匠も彼女(・・)の言うことなら聞くかもしれないでしょ?」

「ち、違うわよ!」

「違うっての!」

 

 遊矢に頼んでもダメと思った素良は隣にいる柚子に頼んだ。そして素良の「彼女」というワードに柚子は少し顔を赤らめ、遊矢も焦りだした。二人は必至で否定した。

 

「なんで俺がこんなガサツなストロング女と……」

「むっ……」

 

 必死に否定しようと遊矢が発言した「ガサツ」と「ストロング」、その2つのNGワードに柚子が反応し、大きな「バチン」とビンタの音が響いた。いつも遊矢が柚子にハリセンで叩かれる時の音である。

 

「いててて……」

「いったいなんだっていうのよ!私を何だと思っているのよ!」

 

 柚子は頭を押さえた遊矢を置いて先に学校へ向かっていった。

 

「(ペンデュラムカードがあれば誰でもできる……)」

 

 遊矢は頭を押さえながら先ほど自分が言った言葉を気にしていた。

 ペンデュラムカードは遊矢の元に突然現れた不思議なカードであり、初めてのペンデュラム召喚を行ったのも遊矢である。

 しかし、奪われたとはいえペンデュラムカードを使用した沢渡もペンデュラム召喚をすることが出来たのであった。つまりペンデュラムカードさえあれば誰でもできる、ペンデュラム召喚は遊矢だけの特権ではないのだ。

 

 

 ☆

 

 

「師匠~!」

「師匠~♪」

「師匠~~♡♡♡」

 

「ああもう!」

 

 あれから遊矢は学校で素良に付き纏われていた。授業中、食事中、そして用を足している間にまで素良が「師匠」と声をかけてきたのだ。最早ファンを通り越してストーカーである。素良の鬱陶しさに遊矢もイライラしてきた頃だ。

 

「はあ……」

 

 素良に付き纏われ過ぎて心身共に疲れた遊矢は柚子とともに遊勝塾へ向かい始めた。

 

「塾でその顔はやめてよ? うちの塾、ただでさえ不景気なんだから。明るく楽しくエンタメるのがあなたのモットーでしょ?」

「そうだな……」

 

 柚子に諭された遊矢は気を取り直して遊勝塾で明るく出る事にした。

 

「レディース・アンド・ジェントルマーン! 明るく楽しいエンタメの使者、榊遊矢ただいま参」

「あ、師匠!」

 

 この声が聞こえた瞬間、遊矢のストレスが少し増えた。そう、素良が遊勝塾で待っていたのである。

 

「なんでお前が……」

「遊矢、お前に弟子ができるなんて凄いじゃないか!」

「いや、だから弟子じゃないって……」

「お前の弟子なら当然、この塾に入ってくれるんだろうな?」

「ああ、そういうことですね」

 

 塾長であり柚子の父が弟子が入った事に感心したと思えば、塾生が増える事に期待してた事に察して遊矢は白けた。

 

「ねえ、師匠!デュエルしようよ~!」

「だから師匠じゃないって……やらないよ」

「え~デュエルしてくれないの~? 僕と……デュエルしてくれないの……?」

「可愛そうだよ。遊矢兄ちゃん……」

「デュエルしてあげようよ……」

 

 遊矢は弟子と名乗るストーカーの様な少年を相手にする事に乗り気ではなかったが、そんな遊矢に対して素良は上目遣いでお願いしてくる。そしてその素良からの雰囲気に3人組の子供も乗せられてしまった。

 

「別に1回ぐらいいいじゃない。」

「遊矢!俺はお前を挑まれたデュエルから逃げるようなデュエリストに指導した覚えはないぞ!」

「ねえデュエル~!」

「はあ……わかったよ」

 

 柚子も塾長も「デュエルしよう」という空気に入っており、遊矢以外誰も反対する者はおらず、やむを得ず受け入れた。しかしこれは条件をつける好機だと思った。

 

「ただし………これで俺が勝ったらこれ以上俺の周りをうろちょろするなよ。師匠って呼ぶのもなし!弟子入りもなしだからな!」

 

 

 

 

「それじゃあ始めるぞ~!」

「うわあ、楽しみ~!」

 

 遊勝塾のデュエルフィールド、そこには遊矢と素良が待機しており、塾長と残りの生徒は観客席で見物していた。

 

「それじゃあいくぞ!最後に立っているのは貴様か? 俺か? アクションフィールド……『荒野の決闘場』!!」

 

 塾長がアクションフィールドを展開すると、何もない平面のデュエルフィールドが、西部劇に出るような舞台と変化した!

 

 

アクションフィールド:荒野の決闘場

 

 

「それじゃあ、始め……」

「ええ、つまんない~僕、こんなの嫌い~ もっと楽しそうなのないの~?」

 

 塾長が気合を入れて展開した西部劇の舞台だが、どうやら素良にとってはつまらないようであった。

 素良がデュエルしてくれなければ意味がないので、塾長は仕方なく別のアクションフィールドに変更することにした。

 

「それじゃあこれでどうだ!アクションフィールド、スウィーツ・アイランド!」

 

 

アクションフィールド:荒野の決闘場→スウィーツ・アイランド

 

 

 塾長が入力を変えると、西部劇の舞台が消えていき、お菓子の世界へと変わっていった!

 キャンディの柱やクッキーでできた家、綿飴の草原にチョコレートの湖、まさに絵本に出るようなお菓子の世界である。

 

「うわぁ、お菓子の国だ! 美味しそう!」

 

 どうやらお菓子の世界は素良も気に入ったようだ。

 

「それじゃあ始めるぜ!」

「うん!」

「「アクションカード、セット!」」

 

 

 ようやく乗り気になった素良と遊矢はお互いアクションカードをセットし始めた。

 

 

選ばれたカード

遊矢

・《回避》

・《キャンディパラソル》

 

 

選ばれたカード

素良

・《ワンダーチャンス》

・《ハイジャンプ》

 

 

キャンディパラソル アクション魔法

①自分フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはこのターンの終わりまで攻撃力・守備力が200ポイントアップし、相手の守備表示モンスターを攻撃したときその守備力を攻撃力が超えた分だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

ワンダーチャンス アクション魔法

①自分フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。このターンの終わりまでそのモンスターが相手モンスターを戦闘によって破壊した場合、そのモンスターは続けて相手にもう1度攻撃することができる。

 

ハイジャンプ アクション魔法

①フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力を、ターンの終わりまで1000ポイントアップさせる。

 

 

フィールドのアクションカード

・《回避》 2/2

・《キャンディパラソル》 2/2

・《ワンダーチャンス》 2/2

・《ハイジャンプ》 2/2

・《???》 2/2

・《???》 2/2

・《???》 2/2

・《???》 2/2

 

「それじゃあ始めるぞ……」

 

 アクションデュエルが開始されると共に、外野が開始宣言をし始めた!

 

「戦いの殿堂入りに集いしデュエリスト達が!」

「モンスターと共に地を蹴り!宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「これぞデュエルの最終進化系!」

「アクション……」

 

「「デュエル!」」

 

素良 手札5 LP 4000

 

遊矢 手札5 LP 4000

 

 

恒例の口上と共に、お菓子ででき、お菓子で溢れ、お菓子に満ちたこのフィールドに、お菓子以外のものであるアクションカードが飛び散る。今回、先攻は遊矢となる。

 

「絶対に弟子にしてもらうからね!」

「絶対に嫌だ!オレのターン!手札から、《EM(エンタメイト)ウィップ・バイパー》を召喚!カードを1枚セットして、ターンエンド!」

『シャー!』

 

《EMウィップ・バイパー》 ☆4 ATK 1700

 

遊矢 手札3 LP 4000

【モンスター】

《EMウィップ・バイパー》ATK 1700

【魔法・罠】

リバースカード×1

 

ムチのように撓り、さらにはある程度伸び縮みもできる《EMウィップ・バイパー》が現れ、エンド宣言と共に遊矢はアクションカードを捜しにウィップ・バイパーと共にフィールドを走る。通常のフィールドならここで《ウィップ・バイパー》の協力の元、《ウィップ・バイパー》をムチのように使い移動するのだが、ここは《スウィーツ・アイランド》、お菓子ででき、お菓子で満ち溢れるフィールド。リアルソリッドヴィジョンではお菓子の質感なども再現しているため脆いところがあり、割と動きづらい足場も多い。ウィップ・バイパーをムチのように扱う以上は巻きつける必要があるため、お菓子に巻きつけると一歩間違えば巻き付けた部分から崩れる。さらにここは厄介な要素が他にもあるがそれはまた後。

 

「よーし、それじゃあボクのターン、ドロー!ボクは手札から、《ファーニマル・ペンギン》を召喚!」

『くぇ~!』

 

《ファーニマル・ペンギン》 ☆4 ATK 1700

 

 

「「きゃー!かわいいー!!」」

「おお、ペンギン!ペンギンだぜ!かわいすぎて、しびれる~!」

「わぁ~!かわいい~!」

 

 

素良が手札から呼び出したのは…かわいい耳宛に天使の羽のような胸飾りをした、とてもかわいらしいペンギン。それが可愛らしい鳴き声をしながら登場するものだから柚子はもちろんフトシ、アユ、タツヤの3人も思わずかわいいと言ってしまう、愛らしい姿。それがペンギン。

 

「おお、かわいい…でも、かわいいだけじゃデュエルは勝てないからな」

「もちろん、この《ファーニマル・ペンギン》はかわいいだけじゃないよ。《ファーニマル・ペンギン》が表側でいるときに1度だけ、手札の《ファーニマル・ペンギン》以外の《ファーニマル》モンスター1体を特殊召喚できるんだ!ボクは手札から、《ファーニマル・ライオ》を特殊召喚!」

『ぎゃおー!』

 

《ファーニマル・ライオ》 ☆4 ATK 1600

 

 

「今度はライオン!ライオンだ!」

「あのライオンかわいいね!」

「もしかしてファーニマルって、動物園デッキ?」

「うーん…なんだかぬいぐるみに見えるけど…」

 

 

「なんだか本当に動物園デッキみたいだな…ペンギンといい、ライオンといい」

「まあボクの《ファーニマル》はただかわいいだけじゃないけど、それは後で。バトル!《ファーニマル・ライオ》で、《ウィップ・バイパー》を攻撃!そして《ファーニマル・ライオ》の効果!《ファーニマル・ライオ》は攻撃宣言時に、バトルフェイズ終了まで攻撃力を500ポイントアップさせる!」

 

《ファーニマル・ライオ》 ATK 1600→2100

 

ペンギンといい、ライオンといい、動物園によくいるような2体を繰り出した素良。と言っても、その2体はどちらもぬいぐるみのように見える。まずはライオで《ウィップ・バイパー》を攻撃する素良。だが《ウィップ・バイパー》がいる以上、それを許す遊矢ではない。

 

「《ウィップ・バイパー》の効果!《ファーニマル・ライオ》の攻撃力と守備力を入れ替える!混乱する毒(コンフュージョン・ベノム)!」

「速攻魔法、収縮をウィップ・バイパーに対して発動!攻撃力を半分に!」

「え?!しまった、ウィップ・バイパー!!」

 

《ファーニマル・ライオ》 ATK 2100→1200

 

《EMウィップ・バイパー》 ATK 1700→850

 

遊矢 LP 4000→3650

 

《ウィップ・バイパー》が毒を吐き、飛びかかっていた《ファーニマル・ライオ》にかかると《ファーニマル・ライオ》の動きが乱れ、地面にそのまま落ち…る前にウィップ・バイパーが光線を当てられサイズが半分になり、さらに混乱状態のせいかファーニマル・ライオはゴロゴロ転がり、ウィップ・バイパーを押しつぶしてしまった。

 

「ファーニマル・ペンギンでダイレクトアタック!」

「く…永続トラップ、《EMピンチヘルパー》を発動!相手のダイレクトアタックを無効にし、デッキから《EM》1体を特殊召喚する!ただしこの効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効になる!こい、《EMジンライノ》!」

『ブルル!』

 

《EMジンライノ》 ☆3 DEF 1800

 

《ファーニマル・ペンギン》が腹滑りで勢いよく遊矢目掛け突撃してきたが、遊矢の前にシルクハットに蝶ネクタイをつけたサイが現れ、それに驚いたファーニマル・ペンギンは思わず軌道を変え、攻撃は通らない。

 

「それじゃあカードを1枚伏せて、ターンエンド!それとエンドフェイズだから、《ウィップ・バイパー》の効果が終わって、ファーニマル・ライオの攻撃力は元に戻るよ」

 

ファーニマル・ライオ ATK 1200→1600

 

素良 手札2 LP 4000

【モンスター】

《ファーニマル・ペンギン》(攻)、《ファーニマル・ライオ》(攻)

【魔法・罠】

リバースカード×1

 

「く…まだまだ!オレのターン、ドロー!」

 

 

素良は遊矢の後を追いつつ、アクションカードを捜す…が、観覧スペースにいる小学生3人は、妙だと感じていた。…遊矢や素良はなぜか、アクションカードをスルーしている。観覧スペースから見える範囲とはいえ、1度や2度はともかく目につくアクションカード全てをスルーだ。

 

「ねえ、なんで遊矢お兄ちゃんも素良くんもアクションカードを取らないのかな?」

「もしかして、アクショントラップを警戒して?厄介なアクショントラップでもあるのかな…」

「それよりもなんだか腹減ってくるぜ…」

「遊矢がアクションカードを取らないのは、この《スウィーツ・アイランド》の特徴があるからよ」

「「「特徴?」」」

「アクションフィールドにもテキストがあるけど、それにはアクションカードを使えること、1ターンに1枚しか手札に加えられない、1ターンに1度しか発動できないとしか書いてないけど、それ以外にもフィールドによっていろんな特徴があるの」

「へ~」

「全然気にしてなかった…」

「それってつまり、地形以外にも?」

「もちろんよ」

 

柚子の言葉に耳を傾ける3人。アクションフィールドは地形によって様々な効果をもたらす。今回の《スウィーツ・アイランド》は…。

 

「まあ、うちじゃあまだ教えてなかったけどね。この《スウィーツ・アイランド》、別名アクションデュエル殺しのアクションフィールドって呼ばれているの」

「あ、アクションデュエル殺しの」

「アクションフィールド…」

「このフィールド、お菓子でできているから、キャンディの部分を除けば崩れることもあるし、結構脆いところもある。だから下手に力を加えると足場が崩れることがあるの。デュエル進行には影響はないけど、アクションカードを捜すのには影響は出る。そして…そのアクションカードなんだけど、偽物のアクションカードもあるの」

「偽物?」

「もしかして、お菓子でできた?」

「ええ。遠くから見たら普通、近くで見たらお菓子って分かるものから、近くで見ても見分けがつかないものがある。それがいくつもあるから、アクションデュエル殺しのアクションフィールド、って呼ばれているの」

 

そう、この《スウィーツ・アイランド》は、アクションカードを捜すにも足元や移動先を気にしなければならず、モンスターのこともある程度気にしなくてはならず、どれが本物のアクションカードかを見抜く必要がある。アクションデュエルをするには不利な要素が多いフィールドだ。

 

「一応、プレーンプレーンみたいに特に何もないアクションフィールドもあるけど、やっぱり癖のあるフィールドのほうが多いから要注意よ」

「はーい!」

「アクションデュエル…やっぱり奥が深い」

「それにしても…このアクションフィールドオレの天敵だ…見てるだけで腹減ってくる…」

 

 

ではデュエルに戻って…遊矢のメインフェイズ。ドローフェイズもスタンバイフェイズも特に何もなく、アクションカードもどれが本物か今一分からない。手札は…。

 

「…(とりあえず、ペンデュラム召喚はできる、とはいえ…スケールが、かなり狭い…仕方ない)オレはとスケール8の《EMカード・ガードナー》とスケール6の《EMギタートル》で、ペンデュラムスケールをセッティング!」

 

光の柱が現れ、体がまるでギターのようになっている亀と、巨大なカードに手足が生え、目ができ、額とも言える場所に所謂星マークのついたモンスターが昇ってくる。

 

「これでレベル7のモンスターが召喚可能!そして《ギタートル》の効果!もう片方のペンデュラムゾーンに《EM》カードが発動したとき、デッキからカードを1枚ドローできる!」

「おっ、いよいよペンデュラム召喚だね!」

「それじゃあ…Ladies and Gentlemen!これよりペンデュラム召喚…の前に、私のデッキの、とってもキュートなヒロインの1人をお呼びしましょう!私は手札から、《EMコン》を召喚!」

『キャハ☆!』

 

《EMコン》 ☆3 ATK 600

 

遊矢が呼び出したのは、青い髪をツインテールにした、頭から角の生えた少女。服は紺色を基調としており…胸を強調している。なお、青い尻尾らしきものが生えている。

 

「そして《EMジンライノ》を攻撃表示に変更し、《EMコン》の効果発動!自分フィールドの攻撃力1000以下の《EM》1体を《EMコン》と共に守備表示に変更することで、デッキから《オッドアイズ》を1体手札に加える!デッキから、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を手札に加えます!」

「へー…あ!アクションカードみーっけ!…よし、本物だ」

 

《EMジンライノ》 DEF 1800→ ATK 200→ DEF 1800

 

《EMコン》 ATK 600→DEF 1000

 

《EMコン》の効果が発動し、デッキから遊矢のエース《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が手札に加わる。そんな最中、素良はアクションカードを1枚手にする。

 

「う…(警戒し過ぎて先に取られた…)それでは行きましょう!ただいまのペンデュラムスケールは、《EMギタートル》の6と《EMカードガードナー》の8、よってペンデュラム召喚できるのは、7!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!現れよ、私のモンスター達!手札からレベル7!雄々しくも美しき二色の眼、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

『キュアアアアアア!!』

 

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》 ☆7 ATK 2500

 

描かれたアークから放たれ降り立った光から現れるのは、遊矢のエース《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》。現れるとすぐ咆哮を上げる。

 

「それが師匠のエースモンスターか…」

「師匠じゃないし師匠にならないからな!バトル!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で、《ファーニマル・ライオ》を攻撃!その二色の眼で、捉えた全てを焼き尽くせ!螺旋のストライク・バースト!!」

『キュアアアアア!!』

 

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が《ファーニマル・ライオ》目掛け走り、飛びあがる。そして口から黒い炎が赤い光線を中心に渦を巻くように放たれ、《ファーニマル・ライオ》に直撃する。

 

「そして《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が相手に与える戦闘ダメージは、2倍となります!リアクション・フォース!」

「うんうん、それじゃあトラップ発動!《ファーニマル・クレーン》!ボクのファーニマルが相手との戦闘、もしくは相手のカード効果で破壊されたら、そのモンスターを手札に戻し、デッキからカードを1枚ドローする!うわ!」

 

素良 LP 4000→2400

 

「それではメインフェイズ2に、ペンデュラムゾーンの《EMカード・ガードナー》のペンデュラム効果発動!自分フィールドの表側守備表示のモンスター1体の守備力は、自分フィールドの表側守備表示のモンスターの元々の守備力の合計となります!私は《EMコン》を選択!私のフィールドにいる表側守備表示のモンスターは、《EMジンライノ》と《EMコン》の2体!《ジンライノ》の守備力は1800、《コン》は1000、よって《コン》の守備力は2800となります!」

 

《EMコン》 DEF 1000→2800

 

「これでターンエンド!」

 

遊矢 手札2 LP 3650

《EMギタートル》(6)=《EMカード・ガードナー》(8)

【モンスター】

《EMジンライノ》DEF 1800、《EMコン》DEF 2800、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》ATK 2500

【魔法・罠】

《EMピンチヘルパー》×1

 

「よーし、ボクのターン、ドロー!…いいカード引いちゃった」

「いいカード?」

「行くよ!手札の《ファーニマル・ベア》の効果発動!このカードを墓地へ送って、デッキから《トイポット》をセットする!そしてさっそく、永続魔法《トイポット》を発動!」

 

素良がデッキからセットし、発動したカード《トイポット》。所謂、ガチャガチャ、ガチャポン…正式名称、カプセルトイだ。大きな球体状のものに滑り台染みたパーツが排出口の先についた上部と繋がる四角い下部、それを支える4つの足と機械染みた腕と手にはめた手袋があり、手には杖を持っている。中にあるカプセルも《トイポット》の大きさに合わせかなり大きそうだ。

 

「《トイポット》の効果!手札1枚をコストに、デッキから1枚ドローする!そしてそれが《ファーニマル》なら、手札からモンスターを特殊召喚できる!違ったら墓地へ送られるけどね。それじゃあいくよ!ボクは手札の《融合死円舞曲(フュージョン・デス・ワルツ)》をコストに、ドロー!」

「うーん…(ファーニマルって特殊召喚を駆使するテーマなのか?…でも、なんか妙なカードを墓地へ送ったような…)」

 

素良が手札を墓地へ送ると、《トイポット》にある硬貨投入口に金貨が現れそのまま投入される。腕が回り、カプセルの排出口からカプセルが1つ転がり出てくる。

 

「ドローしたのは…最高!《ファーニマル・ドッグ》だ!そして《ファーニマル》だから、手札からモンスターを特殊召喚できる!ということで、ドローした《ファーニマル・ドッグ》を特殊召喚!そして《ファーニマル・ドッグ》には、手札から召喚、特殊召喚されたら、《ファーニマル・ドッグ》以外の《ファーニマル》か《エッジインプ・シザー》をデッキから手札に加えられる!」

『ワンワン!』

 

《ファーニマル・ドッグ》 ☆4 ATK 1700

 

 

「きゃー!かわいいー!!」

「すっごくかわいいー!!」

「おお、犬だ!」

「かわい~!」

 

女子2名はかわいらしい茶色と白の犬《ファーニマル・ドッグ》の登場で大盛り上がり、男子2人も盛り上がっている。素良のデッキはどうしてこうも可愛らしいモンスターが多いのだろう。

 

 

「ボクはデッキから《エッジインプ・シザー》を手札に加える!そして手札から魔法カード、《縫合蘇生》を発動!このカードは、墓地の《ファーニマル》か《デストーイ》1体を、効果を無効にして特殊召喚する!ボクは《ファーニマル・ベア》を特殊召喚!」

『クマー!』

「声それでいいのか?!」

 

《ファーニマル・ベア》 ☆3 DEF 800

 

ピンク色の羽のついたかわいらしい熊が、クマーと鳴き声を出しながら現れる。もちろん、観覧スペースは大盛り上がりだ。…もっともこの後、別の盛り上がりを見せるのだが。

 

「そしてボクは手札から魔法カード、《融合》を発動!」

「え、ゆ、《融合》?!」

「このカードは、融合モンスターカードに記されたモンスターを手札かフィールドから墓地へ送って、融合モンスターを融合召喚する!ボクは手札の《エッジインプ・シザー》と、フィールドの《ファーニマル・ベア》を融合!」

 

素良の後ろに光りを放つ渦が現れる。その渦は融合のカードに描かれているような渦に加え、中央部分は青とピンクの2色の渦になっている。

 

「ゆ、《融合》?!」

「え、《融合》?《融合》って確か、LDSで教えているっていう…」

「ねえ柚子お姉さん、《融合》って何?」

「そういやなんだっけ?なんか聞いたような…」

「…私も詳しくは知らないけど…LDSが教えている、特殊な召喚方法の1つのはず…確か、魔法カードを使うとか」

「確かに使っている…」

 

 

「ゆ、融合だって?!」

「うん、これがボクの戦い方さ!野獣の牙に宿りし悪魔の爪よ、雄叫びを上げ切り裂いちゃえ!融合召喚!現れ出ちゃえ!全てを切り裂く戦慄のケダモノ!《デストーイ・シザー・ベアー》!」

『グオオオオ!!』

 

《デストーイ・シザー・ベアー》 ☆6 ATK 2200

 

…《ファーニマル・ベア》といくつもハサミを重ね、不気味な目が見える《エッジインプ・シザー》が渦の中に入り……そこから現れたのは、熊のぬいぐるみ…を、1回四肢と腹と頭を切断して鋏で繋げたような、不気味なモンスター《デストーイ・シザー・ベアー》であった。もちろん、可愛らしいモンスターばかり出していたと思ったら不気味なモンスターをいきなり呼び出し、観覧スペースは先ほどの黄色い声援から一転、驚きと恐怖混じりの悲鳴へと変わる。

 

「きゃあああああ!!」

「く、くまが、くまが~!!」

「な、なんだあれ!」

「あんなモンスターがいるなんて!」

 

 

「な、なんだこのモンスター…」

「ボクのお気に入りだよ。バトル!《デストーイ・シザー・ベアー》で、《EMジンライノ》を攻撃!そしてアクションマジック《ワンダーチャンス》を発動!これで《デストーイ・シザーベアー》を選択し、このターン《デストーイ・シザー・ベアー》が相手モンスターを戦闘で破壊したら、続けてもう1度攻撃できる!」

「なっ…く、何か…!アクションカード…うわあ!」

 

いくら守備表示とはいえ、モンスターを破壊されれば衝撃は起こる。《デストーイ・シザー・ベアー》のパンチにより《EMジンライノ》を攻撃されたことでアクションカードを見つけたもののすぐ吹き飛ばされてしまう。

 

「く…!さっきのアクションカード…」

「それじゃあ《デストーイ・シザー・ベアー》の効果!このカードが相手モンスターを戦闘で破壊し墓地へ送ったら、そのモンスターを攻撃力が1000ポイントアップする装備カードとして装備する!この効果で《EMジンライノ》を装備!」

「な、何?!」

 

《デストーイ・シザー・ベアー》 ATK 2200→3200

 

《EMジンライノ》が、攻撃されて破壊されたにも関わらず、リアル・ソリッド・ヴィジョンではそのままになっていたがその理由は…装備するため。《デストーイ・シザー・ベア》が《EMジンライノ》を丸のみにし、咀嚼するよな動きを見せ、ゲップをする。それに思わずうげー、とでも言いそうな顔をする遊矢。

 

「そして!《ワンダー・チャンス》の効果で、《デストーイ・シザー・ベアー》は、もう1度攻撃できる!さあ、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を攻撃!」

「まずい、アクションカードを……っ!しまった…アクショントラップ、ライフキャンディー200。相手のライフを、200ポイント回復させる」

「お、ボクのライフを回復させてくれるの?でも少ないな…それに、そのカードじゃあ止められないね」

「ぐ…うわ!」

 

《ライフキャンディー200》 アクション罠

①相手ライフを200ポイント回復させる。

 

 

素良 LP 2400→2600

 

遊矢 LP 3650→2850

 

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が《デストーイ・シザー・ベアー》に殴られ、破壊される。…これにより、《デストーイ・シザー・ベアー》の効果が発動される…ように、見えたが。

 

「…あれ?……まあいいか。《デストーイ・シザー・ベアー》の効果!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を装備!………あれ?……あれ、何も起こらない…?」

 

ペンデュラムモンスターの特性を知らないからか、《デストーイ・シザー・ベアー》の効果を発動させた素良。だが一向に何も起こる気配がない。

 

「…残念だけど、ペンデュラムモンスターは破壊されても墓地へは送られず、エクストラデッキに表側で送られる性質がある!」

「な、なんだって?!」

「1度墓地へ送られないと《デストーイ・シザー・ベアー》の効果は使えない、直接エクストラデッキに送られた《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を装備はできない!」

 

遊矢がこの特性を知ったのはこの前やったペンデュラム召喚実演デュエル前の、権現坂との短い特訓だ。最初は普通に墓地へ送ろうとしたところエラーとなり試行錯誤の結果、エクストラデッキに表側で置くという性質を知った。ちなみに分かるまで割と時間がかかっている。

 

「くっそー…ターンエンド」

 

素良 手札2(ファーニマル・ライオ) LP 2600

【モンスター】

《ファーニマル・ペンギン》×1、《ファーニマル・ドッグ》×1、《デストーイ・シザー・ベアー》×1(攻)

【魔法・罠】

永続魔法《トイポット》×1

 

「オレのターン、ドロー!…Ladies and Gentlemen!これよりデュエルはクライマックスへと突入!これより本日のエンタメデュエルの最終幕となります!まずは手札から速攻魔法、《ペンデュラム・ターン》を発動!ペンデュラムモンスターのペンデュラムスケールを、1から10まで好きな数字に変更できます!その効果により私は、《EMギタートル》のスケールを6から1に変更!これにより、レベル2から7のモンスターが同時に召喚可能となります!」

 

《EMギタートル》 Pスケール 6→1

 

《EMギタートル》の下に浮かぶ数字が6から5、4と下がっていき、1で止まる。これで狭かったスケール幅が、一気に広がる。1ターンのみだが。

 

「レベル2から7か~…どんなモンスターを出してくるの?」

「いえいえ、ペンデュラム召喚の前に、最後の下準備をしたいと思います!私は手札から、《EMソード・フィッシュ》を通常召喚!《EMソード・フィッシュ》は自身の召喚、特殊召喚に成功したら、相手フィールドのモンスターの攻撃力、守備力を600ポイントダウンさせます!」

『シャッシャッシャー!』

「うんうん、それから?」

 

《EMソード・フィッシュ》 ☆2 ATK 600

 

《ファーニマル・ペンギン》 ATK 1700 →1100

 

《ファーニマル・ドッグ》 ATK 1700→1100

 

《デストーイ・シザー・ベアー》 ATK 3200→2600

 

《EMソード・フィッシュ》が無数に分身し、相手フィールドに突撃して破壊しない程度に相手のモンスターにダメージを与える。その影響かは定かではないが、3体とも少しボロくなったように見える。

 

「これで準備は整いました!ただいまのペンデュラムスケールは、《EMカード・ガードナー》の8と、《EMギタートル》の6から変わった1!レベル2から7のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!現れよ、私のモンスター達!まずは手札からレベル2、《EMチアモール》!そしてエクストラデッキから甦れ!レベル7、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

『モール、モール!』

『キュアアアアア!!』

 

《EMチアモール》 ☆2 DEF 1000

 

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》 ☆7 ATK 2500

 

光と共に降り立ったのはチアガールの恰好をしたモグラの《EMチアモール》と、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン。それと…また無数に分身している《EMソード・フィッシュ》。

 

「《EMソード・フィッシュ》の効果は、自分フィールドに他のモンスターが特殊召喚されたときにも、発動できます!」

「!つまり、また600ダウン?!」

「正解!」

 

《ファーニマル・ペンギン》 ATK 1100→600

 

《ファーニマル・ドッグ》 ATK 1100→600

 

《デストーイ・シザー・ベアー》 ATK 2600→2000

 

「そして《EMチアモール》の効果!元々の攻撃力と異なる攻撃力を持つモンスター1体を選び、そのモンスターの現在の攻撃力に応じて2つの効果が発動します!元々の攻撃力より高い場合は、その攻撃力がさらに1000ポイントアップ、元々の攻撃力より低い場合は1000ポイントダウンします!そしてこの効果は《EMソード・フィッシュ》の効果発動後に、《デストーイ・シザー・ベアー》に対して発動します!」

「《ソード・フィッシュ》の効果でダウンするのは600、それを2回だから1200…ギリギリ、元々より下回っているね」

「はい、攻撃力3200となった《デストーイ・シザー・ベアー》でも、1200もダウンさせれば元々の攻撃力2200より低い、攻撃力2000となる!」

 

《EMソード・フィッシュ》の分身の突撃が終わった後、《EMチアモール》が《EMソード・フィッシュ》に応援のダンスを見せる。…これにはもう1度気合いを入れねばとでも言うのか、《EMソード・フィッシュ》が無数に分身し、今度は《デストーイ・シザー・ベアー》にそれら全てが突撃していく。

 

《デストーイ・シザー・ベアー》 ATK 2000→1000

 

「バトル!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!《デストーイ・シザー・ベアー》を攻撃!その二色の眼で、捉えた全てを焼き尽くせ!螺旋のストライク・バースト!!そして!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が相手モンスターとの戦闘で与えるダメージは、2倍となる!」

「《デストーイ・シザー・ベアー》の攻撃力は、1000…」

「そして《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の攻撃力は2500、戦闘ダメージは1500の2倍の、3000!これにてクライマックス、リアクション・フォース!」

『キュアアアアア!!』

 

渦巻く黒い炎を纏う赤い光線が《オッドアイズ》の口から放たれ、《デストーイ・シザー・ベアー》は両手を前に出し踏ん張るものの…破壊され、そのダメージが素良へと届く。

 

「うわああああ!!」

 

素良 LP 2600→0

 

 

 

 ☆

 

 

 

「あーあ、負けちゃった……」

「約束、覚えてるよな? 俺が勝ったからお前を弟子には出来な……」

「すっごく面白かったよ、遊矢(・・)とのデュエル!」

「はぁ? それになんで呼び捨て……」

 

 どうやら素良はデュエルに負けた事に関してはあまり気にしてないようだ。それより遊矢は「師匠」と呼んでいた素良が急に呼び捨てしてきた事に驚いたようだ。

 

「だって弟子にはしてくれないんでしょ? だったら僕、遊矢の友達になる! 友達なら呼び捨てでいいよね?」

「はぁ? 何勝手に言って……」

「そうかそうか、君達二人は友達になったのか! 塾生の友達は皆塾生! どうだ君、我が遊勝塾に入らないか?」

「わーい! LDSなんかよりずっと面白そう!」

「じゃあ早速申込書持ってくるからな!」

「はあ……」

 

 師弟がダメなら友人として接すると割り切った素良に対して、塾長は好機到来とばかりによくわからない理屈で素良を引き入れてきた。

 結局最終的に何も変わらないとわかった遊矢はさっきの苦労は何だったのかとため息をついてしまった。

 

「そういやどこで融合召喚を覚えたんだ?」

 

 融合召喚は高度の召喚方法であり、舞網市の中でも使えるデュエリストはLDSに所属している者ぐらいである。

 さっきのデュエルでLDSの生徒でない素良が使っていたのを見て遊矢は少し気になっていたのだ。

 

「皆普通にやってたよ?」

「普通にやってたって、どこだよ? 外国?」

「まあいいじゃん、そんなことは。 僕と遊矢は友達なんだしさ!」

「俺はまだお前を友達だと……」

「よろしくね、遊矢♪」

「勝手に決めるな~!」

 

 

 

つづく


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