どもパッチェです。
二話目です。
———無限書庫
それは管理局が管理を受けている世界の書籍やデータが全て収められた超巨大データベース。
ユーノ、誠、リニスの三人は"ギル・グレアムの使い魔でありクロノの師匠の一人"リーゼロッテと共に闇の書を調べていた。
それと共にクロノの辛い暗い重い過去も聞いていた。
「……それじゃあクロノのお父さんは11年前の闇の書事件で…」
「……死んだよ。クロノのお父さん"クライドくんは私たちの目の前で護送艦ごと沈んでいったよ……」
「……ふーん……」
「あら、冷たい反応ね」
リーゼロッテからつっこまれるが、これでもユーノと誠は最近のクロノに一応心配していた。
クロノもだがこの三人には男友達というものが存在していなかった。誠はなのは達と一緒にいたため男子の嫉妬を買い、ユーノは周りに同世代がいなかったし、幼い頃から管理局にいたクロノは力を付けるためにロッテ、アリアに教えを請い同世代と力の差があり過ぎてエイミィぐらいしか友達もいなかったのだ。(男女の友情は成立しないが…)
だからこそ同等の、初めての男友達を一応心配はしているのだ。ただし———
「おれは人の家庭の事情に深く突っ込む気はねぇーよ」
冷たい反応のように感じるが、リニスは一人苦笑していた。
リニスは誠が幼い頃から一緒にいるからこそ分かるのだが、確かに誠は家庭事情に関しては良いものではなかった。
昔の、それこそなのは達と出会う前の誠はかなり捻くれていた。リニスも初めはかなり苦労した思い出だが、今は笑い話だ。逆にあの時があったから誠の側にいると言ってもいい。
(全く……相変わらず根本は変わらないのですね。まぁ、そこが良いところでもありますが、少しは素直になれば良いのに……)
自分で甘い考えだ、と思ってしまうも保護者としての女としての弱みだとリニスは感じている。最終的には甘やかしてしまうのだ。それが良いことなのか悪いのか、そんなことを考えていたら探す手が止まっている。
その間にもユーノと誠は捜索魔法を使いながらクロノ愚痴を言っていたが、そんな様子を見たロッテはクスクスと笑いながら
「それじゃああたしは仕事があるからもう行くよ。クロノをよろしくね」
そう言い残し、偽りの仮面を被っているロッテはこの場を後にした。
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「お世話になりました」
すずかの姉"月村忍に頭を下げてお礼を言っていた。
「そんなに畏まらなくても大丈夫よ。はやてちゃんなら、うちにいつでも来ていいからね。数少ないすずかの友達だから…」
それは社交辞令とかでは無く、本心の言葉だ。忍からしたら可愛い可愛い妹である、すずかの友達というのはそこら辺にいる100人の人間より大切なものだ。
もちろんそこまでの気持ちは、はやてに伝わってはないが"ありがとうございます"と返しておく。
忍との会話が終わるとすずかとアリサの方に向き、感謝の気持ちを述べる。
「すずかちゃん、アリサちゃんありがとな。初めてのお泊り楽しかったで!」
「私もだよ!はやてちゃんと一緒で楽しかった。また来てね」
「そうね、私も楽しかったわ。今度はあたしの家に招待してあげる。楽しみにしてなさい!」
「ふふ、楽しみにしとくわ。次は私の家族も紹介するで」
「うん、楽しみにしとくね」
「こっちもなのは達を連れてくるわ」
「じゃあな。すずかちゃん、アリサちゃん!」
新たな約束を交わし、月村姉妹とアリサに見送られて、はやてはノエルの車に乗せられ八神家に帰るのであった。
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〜八神家〜
「………そろそろ、はやてちゃんが帰って来ますね」
先ほどノエルからの連絡を受けた美鈴は、時計を見るとはやてが帰ってくる五分前になっていた。車椅子のはやては一人で車から降りられないので誰かが迎えに行く必要があるので、美鈴は腰をあげる。
「藍さん、シグナムさん、はやてちゃんを迎えに行ってくるので夜様をお願いしますね」
「あ、ああ……」
「た、頼んだぞ」
そう言って外に出て行く美鈴を、藍とシグナムは止めなかった。それは、はやての迎えには美鈴一人で良いのと———
「ふふ、はやてちゃんが来るまでに———害虫処理をしときましょう」
———金色の龍眼に変わっていたのだから。
外に出た美鈴の目の前には仮面の男が立っている。見た目の特徴からしてシャマルが言っていた仮面の男と同じだろう。
「一体何用ですか?此方は連絡などは受けておりませんが?」
満面の笑みで嫌味のような言葉を仮面の男に言う。
それに対して仮面の男はスカしているのか、そう言う奴なのか、仮面の男はややカッコつけ気味に言った。
「ふ、私が来たのは警告のためだ!」
「……それはどう言う意味で?」
「そのままの意味だ。これ以上八神家に関わるな!痛い目を見たくないだろ」
仮面の男はそう言うとカード型のデバイスを片手に出し態とらしく見せている。
(この人は何を言っているのでしょう?)
何も思っていなかった。
怯えも焦りも怖がりも恐怖も哀しみも憐れみも何も……何も思っていない。
———無感情
それが今の美鈴の状態だった。
前々からちょろちょろと虫がいたのは知っていたが、態と泳がせていた美鈴は余りにもつまらない結果に只々落胆していた。
仮面の男からしたら脅しているつもりなのだろう。ただそれは同じ
最上位の龍……かつて王の地位まで昇り詰めた美鈴にとって力の差が分からない弱者の脅しは意味がわからない。
人間で例えるなら、1匹の日本の蟻が喋ったとして、同じことを言ったら、脅してきたら人間は恐怖するか?怯えるか?答えは…何も思わずただ潰す!だ。
美鈴にとってそれが人間だったということ。だから美鈴はただ追い返すだけのつもりだった。価値のない者の為に使って良い時間はないから。
禁断の言葉を言わなければ…………
「だんまりか?関わらないと早く言え!でなければ———貴様の主にも危害を加えるぞ!」
「———あ?」
この言葉にあるスイッチが入る。
もちろんゴミごときが夜をどうこうする事は出来はしないのは分かっている。
しかし命を懸けて守り、
嗚呼———排除しなければ
私たちの愛する愛する愛する愛する愛する愛してる夜にが汚れたら大変だ。愛しい愛しい愛しいあの子に埃がついたら大変だ———穢れてしまう。私の————夜様
————ポトリ
何かが地面に落ちる音がした。
それは仮面の男の近くで鳴っており、何かと思って音がした方を向いたら見覚えのある腕があるではないか。凍りつく体をよそに首を動かして自分の腕を見ると、不思議な事に片腕がない。
———あれは自分の右腕だ
「あ、あああ、ぎゃアアアアアアアアアアアアアアッ!?」
体がの一部が欠損したのを意識が理解した為、傷口から噴水のように血が溢れ出る。
更に痛みを感じる前に、ガシッと首を掴まれて10センチほど浮いている。
「オイ、何つった?夜様を危害を加える?ゴミごときが、夜様の視界に収めることさえ許されてないんだよ!聞いてんのか!!」
仮面の男はカポ…と口から音を立て、首を絞めている美鈴の左手は力がどんどん強くなっていく。
美鈴の結膜が赤く染まり、口元には牙が見え隠れしている。いきなりの豹変……というより戻った、が正しい。いつもニコニコしてるのも素顔と言えるが、美鈴の場合こっちも素である。夜の前では絶対に見せない貌なのである。
「……ぐ……かぁ……」
何も話せそうに無い仮面の男。
脳に酸素が回らず、意識が遠くなる。目の前が真っ暗になり、天にも登る感覚が襲ってくる。残っている左手で足掻くが力が入らなくてどうする事も出来ない。
———ブン……ンンン…
「…ッ!?この音は………しまっ」
これは美鈴だから聞こえた音…車がこちらにくる音。
そちらに一瞬の気を取られ、ほんの僅かに緩んだ手から仮面の男は抜け出し、すぐさま転移で逃げ切った。
「チッ……おっといけません。この顔でははやてちゃん怖がられます。いけないいけない。手を出す気は無かったのですが、やはり夜様のこととなると、どーも気が早くていけませんね」
いつもの優しい笑顔の美鈴に戻り、気を収める。
「ああ、本当に運がいい。はやてちゃんが来てなかったら……」
———肉片にしてやったのに……
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仮面の男ことリーゼロッテは逃げた場所で恐怖に身体を震わせていた。
(な、何なのあれは!?あんなの人間じゃない!?)
震える身体でロッテは考える。
どうしてこんな状況になったのか。
夜達がはやてと出会う前からずっと監視していたロッテにとって今の状態は想定外だった。
はやてが闇の書の主だということは生まれた時から知っている。だからヴォルケンリッターがいることは想定内だ。
しかし、はやてと夜が出会ってから全てがおかしくなった。
孤独の少女は家族を得て、予想よりも早く守護騎士達が出てきた。それから監視を続けたが何事も無く一年が過ぎた。
ロッテは自分達の計画のためにずっと待っていた。守護騎士達が蒐集に動き出すのを。
そして10月ついに守護騎士達が動き出したが、そこには夜達の姿もあった。ロッテ達は計画に支障が出ると思い八神家から手を引くように警告をしに行った。
その行為が自らの首を絞めるとも知らず。
別にロッテは油断してたり傲慢になっていた訳ではない。実際ロッテは強い。それこそリニスと同レベルの強さであり管理局員としての経験もある。
それでも美鈴はレベルが違った。
美鈴の実力を知らなかった…それでは話にならない。
知らなくても……分からなくても、それで勝てるほど戦闘が簡単じゃないことは知っている。
だがロッテは美鈴を見誤った。
自分の存在にも気付かない人間ごときだ!と思っていた。
それが大きな間違いだと気づかなかった……いや、気付けなかった。
ロッテは知らない。
美鈴が力を隠していたこと。藍が一度、美鈴の事を『能ある鷹は爪を隠す』と言った。美鈴流に例えるなら『王たる龍は牙を隠す』という事をロッテは知らなかったのだから。
挙げ句の果てに龍の逆鱗に触れ後数秒遅かったら命は無かった。あれは本気だった。本気で殺す気だった。
(あ、ああんなの聞いてない…!!?)
リーゼロッテが逃げれたのは完全に偶然。
あの時、たまたま一瞬美鈴の気が緩み、掴んでいる手から抜け出せた。元となっている猫としての本能が逃げることに躊躇いを無くし、ロスなく逃げることができた。
自分は狩る者では無く狩られる者。そう思わせられたリーゼロッテ。
それでも計画のために父さまのために悲劇を終わらせるために、何とか拾った腕を付け何とかして足を動かすロッテであった。
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「…はやて…おかえり!」
「グフッ!?た、ただいまや夜君」
美鈴にドアを開けてもらい、はやてが家に入ると夜のおかえりの突撃をくらう。その間に続々と家族が集まってくる。
「おかえりなさいませ、主はやて」
「む!帰ってきたか」
「今、帰ったでー」
「夜様、はやてちゃん二階で遊んできたらいかがですか?夜様も久しぶりの休みですし」
「………ん、はやて遊ぶ」
「勿論や!今回は私が勝つで!」
そう言って夜のスキマで二階に行く二人を確認すると藍とシグナムが大きな溜息を吐き、その場で座り込む。
「美鈴さ……美鈴、いきなりの殺意は抑えてくだ…くれ…びっくりしたぞ。主よるも起きてこられたし」
先ほどの美鈴の殺意で周囲にいた人間達は意識を失い、疲れで寝ていた夜も殺意を感じて目を覚ましていた。
「それより何があったのだ?美鈴さ……お前があんな殺意を放つなど…」
「ふふふ、ちょっと下等生物がふざけた事を言っていたので、存在を抹消してやろうかと思いまして……」
目のハイライトが消え黒いオーラを出す美鈴を見て二人は思った。
((仮面の男は生きてるのだろうか?))
昔の美鈴を知ってる藍からすると、丸くなってる美鈴の方が違和感があるのだが、本気でキレると手がつけられない状態になるので、その状態にしてはならないと心に命じる。
「安心してください。次は———一撃で殺す。………肉片すら残さん」
「待て!?主はやては殺生を望まん!少し考え直せ!」
「落ち着いてください!美鈴様、気を落ち着かせて!」
思わず昔の口調に戻る藍と慌てすぎて藍の声すら聞こえないシグナムはとても良い笑顔で断言する美鈴を全力で止めるのであった。
【あとがき】
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