今回はシグナム視点です。
これは旧にはなかった話です。
———光を見た。
あの日、私は貴女という光を知ってしまった。
初めての感覚でした。
人に、主に仕える喜びを感じたのは……こんなに人としての意思を思えたのは。
私は…私達は生まれた時から道具です。そこに、私達の感情は存在しません。存在意義こそが道具としている事でしたから。
そう考えると貴女はある意味異端かもしれませんね。普通本から出てきたものを家族とは言えませんよ()
でも、それが貴女の良いところです。
———人を惹きつける才
それは誰にでもある訳ではない。開花させるものでもない。すでに持っているもの。生まれ持った才能…私はそう感じました。
私達は生まれて1年と半年しか一緒にいません。他者からすればたった一年。でも、その一年が私達の数百年にも勝る時間なのですよ。
———だからこそ
「……もう……イヤや」
独りで嘆く貴女の側に居られない事が、酷く辛くて……自分の力無さが恨めしい。
「やっぱりはやてちゃんは無理してましたね……」
「ああ…主はやてらしいと何というか……」
「あまり褒められた事じゃ無いッスけど……」
病室の外でドアに近い壁に寄りかかっている3人。
「珈琲あるますけど飲みます?」
「……貰おう」
美鈴から投げられた缶を片手で取る。ホットの缶コーヒーの暖かさが手に広がり、口に含んだ時の苦味が今の心を表してる気がする。病院の廊下というのはずっと立っていると寒い。それがこの珈琲一つで変わるぐらいには現代に馴染んでしまった。
「長時間立っているくらいなら中に入ればいいじゃないッスか。そっちの方があったかいッスよ」
「……私が中にいると主はやてが強がって、逆に気を使わせてしまう」
「あー、分かるッス。夜さん自分が影にいるの察している時、弱音とか吐かないし、意地でも倒れないッスから」
「夜もそうなのか?何というかいつも一緒にいるイメージだが……」
———意外
その二文字がすぐに浮かんで来た。
私の目から見てもこいつらは常に誰かが夜の側にいる。私達といる時はいない時もあるがほぼ一緒いる。
「別にいつも一緒では無いですよ」
「……顔に出ていたか」
「そういう訳では無いですが、大体の考えは読めますよ」
「そうか……」
ムカついた訳でないが飲み終わった缶を潰した。もう一度言うがムカついた訳でない。それを察してか美鈴は一人で話を進めていく。
「まぁ、色んな人たちから同じこと言われますが、一緒にいるとは言えませんね。私達は夜様の後ろにいるんです。あの方の背中を見ているしかないんです」
それはどう言う意味だ?と言わなかった。
何故なら、これ以上深く突っ込むと箱に入っている闇を開けてしまいそうだから。
(本当に…それでいいのだろうか)
美鈴の言いたい事が分からなくはない。それもまた一つの仕えるという事だろう。
しかしこいつらは余りにも——達観しすぎている。それなのに見ているだけだ。
———すでに諦めてるような
思えば眷属達と出会った時から自分はある違和感を感じていたのかもしれない。
主と眷属の絶対的な信頼関係があるにも関わらず、何処か…何処か決定的な部分がすれ違っている矛盾。
あれ、それ、これ、で会話が出来るのに、夜はハサミが欲しい『あれをくれ』と言ったら、美鈴は『これですね』と包丁を渡すように。でも切れるから夜は包丁で我慢している。
側から見ると———歪
だから彼女達は
「自分達から…離したのか」
「何のことです?」
「いや、お前のリークのせいで夜が石田医師から怒られてると思うとな」
「まぁ、夜様は強制的に休ませないといけませんから。はやてちゃんと一緒なら逃げ出すことは無いでしょうし」
ふふ、と3人の笑い話に落ち着くが、多分美鈴は『話す』と『離す』を勘違いしたのだろう。誤魔化せた。
「そろそろ私達は帰るか」
扉の向こうから二つの寝息が聞こえる。
夜と一緒なら主はやても安心して共に過ごせる。もう私がここにいる意味は無い。それより早く蒐集をしなければならない。
それが———家族を救う希望だから。皆が傷付かなくて済むから。
「レヴィさん、夜様とはやてちゃんは頼みましたよ」
「おK丸ッス」
レヴィなら確実に主はやてが闇の書の主人であることを隠蔽できるだろう。隠すことにおいての信頼はレヴィが1番ある。
「それじゃあシグナムさん行きますか」
———闇の書の主"八神はやて"の剣として
———ヴォルケンリッターの将として
———八神シグナムとして
「ああ、行こう」
私は剣を振るう。
【あとがき】
なんか急にシグナムの話が書きたくなったから書いた。
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