「乙坂有宇くん、おかえりなさい!」
彼女がそう言った。何も覚えていないのに少し前までここにいた事をおぼえているかのように、懐かしいような落ち着くような気がした。
彼女は僕の恋人だと言った。記憶を失くす前は彼女に恋をして、そして信頼していたのだろう。だったら不自由が減るまでこの身を委ねるのもいいのかもしれない。
僕は不思議と安心感を覚えていた。
「ちょっと待っててくださいね」
「君は何をしているの?」
「『君』じゃないですよね?」
「奈緒は何をしているの?」
「よろしいです。あなたのために料理を作ってあげてるんです。その状態じゃ、何も出来ませんよね?」
「ああ、そうみたいだ。まだ立てそうにないや」
「だったら大人しくしててください」
「奈緒は怒っている?」
「怒ってなんかいませんよ。彼氏に手料理を食べてもらうのは彼女冥利につきますから!」
そう言った彼女は、とっても嬉しそうな誇らしいような顔をしていた。
「病院食じゃないのは体調自体は優れているらしいのですが、運動神経が欠如しているからとの事です。記憶障害の患者は記憶を失くす前の状態に戻すことが大事だそうなので。でもこれって前の状態じゃないですよね」
「僕が出ていく前は付き合っていなかった?」
「そうですよ。あなたが私に告白してきたんです。その時にあなたが無事に帰ってきたらその時に恋人になりましょうって私が返答しました。」
そうだったんだ。前の僕は頑張ったんだな。
「はい!出来ましたよ~!」
いい匂いがする。優しい匂いだ。
「特に医者からは何を言われているわけでもないんですが、私の気遣いだとでも受け取ってくれれば」
そう言って奈緒はお茶碗を俺の前に置いてくれた。
「これは、おかゆ?」
「正解です。あなたの妹の歩未ちゃんが風邪引いた時も、みんなでこうやっておかゆを食べていたんですよ」
「みんなって?」
「あなたと私、そして歩未ちゃん、西森さん。西森さんは有名なアイドルなんですよ」
仕事が終わったらすぐにでもお見舞い来てくれるでしょうからその時にまた紹介しますね」
「ああ、よろしく頼む」
奈緒は少し驚いた顔をしたがすぐに元の顔に戻した。
「それより早くおかゆ食べちゃってください。冷めちゃいますよ?」
「ああ、そうだな。いただきます」
「どうぞ、召し上がれ」
少し緊張しながら1口。
「あ、美味しい」
「それなら良かったです」
奈緒は満足そうな笑顔をした。おかゆとこの笑顔で少し落ち着いていくような気がした。
その後ガツガツとおかゆを掻き込んだ。
その時。
バタン!!
病室のドアが急に開いた。そこに居たのは金髪の女の子とメガネをかけた男性だった。
「乙坂くん大丈夫ですか!!??」
金髪の女の子が俺の手を握ってきた。顔が近寄る。髪の毛から漂う良い香りが鼻腔をくすぐる。
「あ、すいません。記憶…ないんでしたよね」
「えぇ……」
俺は奈緒に説明を求めた。
「ほかの女の子に手を握られて鼻の下伸ばしてる浮気者には教えません」
「友利さん嫉妬してて可愛いです」
「別に嫉妬なんかしてねーし。とりあえず説明するとその金髪の人が西森柚咲」
「ゆさりんこと西森柚咲で~す!」
「ゆさ……りん?」
「はい!私は高校生、つまり乙坂さんが高校生の頃はアイドルをやらせてもらっていました!今は女優とかの仕事やらせてもらっていますが」
「そうなんです!今のゆさりんはアイドル業界だけでなく俳優業界にさえもその名を轟かせているのです!」
「うん、分かったがこの暑苦しいやつは?」
「暑苦しいとか言わないでくれ~、熱き友情のカツカレーを食べた仲じゃないか!」
「ごめん、分からないよ」
「まぁそりゃそうですよね。記憶喪失ですから。私は高城丈士朗です。」
「ああ、分かった。よろしく西森と高城」
「これが高校の時の生徒会メンバーです」
ああ、だからか。
「これが……」
俺はなんとなく落ち着くような、ここが居場所だと言われているような気分を感じていた。

初めての連載で書き方はよく分かっていませんがこれからも月1で更新していきたいです!!
筆者は最近Charlotteを見まして数学の先生と語っていたところ続きを作ってみればいいんじゃねという話になり、こういう形になりましたw
これからも読んでいただけたら幸いです。
とりあえずこの小説を読んでいだいてありがとうございます!