「まぁまぁ、良い話もある。王冠くんがカルデアスの完全な観察に成功した結果、なんと七つの特異点全ての時代の特定に成功した」
代わりにその特異点に行く手段がなくなったけどね!
ダ・ヴィンチちゃんの発言を各自確認して「エラーが! エラーが!」「マジだよ、ふへ、あかんでぇ……」「ああ、ママ、先立つ不孝をお許しくだ……あ、皆先立ってたわ」などと、阿鼻叫喚、絶望感のあふれるカルデア管制室。
こういう状況でまとめるのは所長の仕事なんだろうけど、所長だけは未だにカルデアスショックから抜け出してない。
生き返ったなら仕事しろ。
いやぁ、アンティが何で泣いてるのか分かったわ。
たかが知らない女性(男性だった訳だが)にクラウンを持ってかれてる
多分、先輩だかクラウンから、レイシフトへの影響の話を聞いてて、取り返しのつかない事しちゃったー! ってテンパっちゃったんだわ。
はぁ、全くもう。
「あ、あの、わ、私」
『>>>マスター』
アホ。分かってるわい。
私は、クラウンがいなくなってがら空きになっているアンティの頭に、手をポンと置いた。
「え?」
アンティのお陰で所長は生きてる。ありがとう。
「で、でも、レイシフトできなかったら今度はオルガマリーさんだけじゃなくて、皆……」
アホ、勝手に殺すな。
アンティのお陰で、今、皆で生きてんのよ。
「でも」
この程度何とかするわ。ロマニが。
「ボクがかい、ぐっふぅ」
余計な事を言いそうだったロマニをダ・ヴィンチちゃんが黙らせたのが見えた。よくやった。ロマニ空気読め。
クラウンも、謝罪なんてしないの。私達に出来ない事をあんたはやったんだから。胸を張りな。
『――――……』
はは、ちょっとノイズなんて出して戸惑ってるわ。
あのね、アンティ以外は皆、誰だって本当に取り返しがつかないーなんて思っちゃーいないんだぜ。
だって、誰も手ぇ、止めてないでしょ。
「あ……」
管制室を見れば誰もが? あー、泣き続ける所長と、腹を抱えてうずくまるロマニ以外は、頭をかかえたり、発狂しそうになりながらもコンソールを叩いたり資料を読んだりしている。
あたしらの仕事は、特異点を修復して、所長助けて、とりあえず一旦おやすみなのよ。
あとは専門家にぶん投げちゃえば良いのよ。
「え、い、いいのかな?」
いーのいーの。ね?
「王冠くんは解析に協力して貰いたいが、特異点を特定するのに使うはずだった時間が浮いたからね。何とかしてみせるよ」
わお、頼もしい。
って事だから、作業の邪魔にならないよう退散しようか。
ロマニ、空いてる部屋教えて。出来れば工房か管制室の近くの。
「ああ、アンティの部屋だね。分かった準備しておくよ」
マシュはアンティの案内ね。案内が終わったら、命令があるまで自室に戻って寝ること。
「は、はい! ……え? あの、私もこちらで何かお手伝いをしたいと」
あー……お風呂もアンティと一緒に入ろうか。私も一緒で。
「いえ先輩。そういうことではなく……」
あ、じゃあ、所長を連れて寝かしつける事。ここに居られちゃ気が散るばかりで邪魔だかんね。
仕事しやすい環境を作るのがマシュの仕事。いいね!
「え、ええ、あの」
じゃーレイシフト組は解散しまっす。しょーじき疲れて眠いっす。おつですー。
「あはは、立香くんおやすみ。こっちは任せて」
ん、ロマニ、任せた。
無理しない程度にね。
◆◆◆
立香くんが出て行ったあと、マシュが所長をお姫様抱っこをして出ていって、それにアンティがついていった。
マシュ、デミサーヴァントになったからなのは分かるけど、あの非力だった子が外見はそのままに、人一人を軽々と持ち上げるようになるなんて。慣れそうにないな。
「いやー凄いね」
「立香くんがかい?」
さっきダ・ヴィンチちゃんに殴られた時の力が凄かった……なんて頭に過ぎったけど、言うのはやめておこう。
「一般採用だっていうから、
「まるで人類最後のマスターになる為に来たようだ。ね」
……
「ああ、正直恐ろしいくらいだよ。どうしてあんなに冷静でいられるのか、僕には分からない」
「キミが寝ずに、ずっとカルデアで働いていた事も分かっていたようだしね。普通、こういう状況で他の人間を見る余裕なんてないものさ」
オルガマリー所長の様子を思い出す。あれがきっと普通の反応なのだろう。
僕とダ・ヴィンチちゃんは、立香くんの帰還に際して、極力平常であろうと考えていた。
レイシフトが出来なくなった事も、最初は伝えるつもりは無かった。
クラウンギアをダ・ヴィンチちゃんが確保していたのも、解析しているように見せかけて、立香くんにレイシフト不能の情報を伝えないように
レイシフト不能などという些末ごとより、人類最後のマスターが壊れる方がダメージが深いと考えていたからだ。
「脅しているのがすぐバレたのは驚いたよ。開口一番、
そしてレイシフトの話も伝えて大丈夫だと判断した。いや、伝えるべきだと判断した訳か。
元々レイシフトの話は立香くんに伝わらないように、僕とダ・ヴィンチちゃんの所で止めていた情報だ。他のスタッフには後で伝えるつもりでいた。
それは僕らへの批判、罵倒ですめばよし。スタッフから発狂や自殺者が出ることも覚悟していたのだ。
それを、彼女はあっさりと覆した。
『だって、誰も手ぇ、止めてないでしょ』
それは……レイシフト不能であるという現実を受け入れられない為に、その現実を見て、発狂に至るまでの行動だった筈だ。
それを諦めずに何とかする為の行動にすり替えた。あの子の言葉で、何とかしようという気持ちがスタッフ間に生まれたのを感じた。
「人理修復。7つの特異点。
「彼女がマスターで、彼女の期待に私達が答えればね。さ、お仕事お仕事」
ふぅ。忙しくなるね。
えーいくっそ、難しいな二次創作って!
アンティの出番を!アンティの出番を!
でもぐだ子も好きなんやもーん!