所長がカルデアスに飲み込まれるシーンだけリピートすればいいよな!
「やだ、死にたくない。生まれからただの一度も、誰からも褒められなかったのに!」
……はっ、あまりにアレなレフ教授の中ボスムーブと、所長の死亡フラグムーブに驚きを通り越して放心していた。
所長の考えなしー!
と叫びたいぐらい、見事に死亡フラグが成就しようとしている。
真っ赤なカルデアスへ、宙に浮いた所長が飲み込まれようとしている。
「所長!」
駄目だ間に合わない……。
仮に間に合ってもレフ教授が妨害するだろう。あれは危険だ、人間の天敵だと本能が叫ぶ。
「冗談じゃ、ねっぞ……!」
それをアンティも感じるのだろう。声が震えている。
それでも、黄金の義賊は走り始める。
アンティ!
「ああああああああああああっ!」
「ふん、サーヴァント風情が」
レフ教授が腕を振ると、眼が生えた禍々しい触手がアンティへと伸びる。
「“
!?
アンティとのパスを通じて、アンティの視界が私にも共有される。
触手の眼の一つ一つから、魔力が照射されるのが見える。
『>>>爆破系、避けるのは面倒、出だしを潰す』
『――――予測、実行します』
その、一つ一つの眼の前に、バッグ歯車が射出される。
振り切ろうと触手のうねりが激しくなるが、まるで元から一つの生き物であるかのようにピタリとくっついて離れない。
「なっ! 小賢しい!」
慌てて、直接ぶつけるように触手を伸ばす。
だけど
「
触手に足の歯車を噛ませ、触手を伝うように更に加速する。
眼が封じられている以上、触手はただアンティを運ぶレールでしかない。
「くそがああ!」
レフの余裕が消える。
ゾッとした。
見えていたから、私には分かった。
防げるのか?
防ぐしかない。
マシュ! 宝具展開!
「はい!」
触手の眼が魔力を放出を止める、その代わりに眼の中で魔力が一気に膨れ上がる。
放出しなければバッグ歯車は魔力を吸い込むことができない。よって、ゼロ距離の魔術行使。
自爆
触手が一斉に爆ぜた。
「ぐぅぅぅぅ!」
マシュ! アンティ!
パスは感じる。
アンティは生きている。
だけど、それはあまりに弱々しい。
爆発した触手の体液と、体液が蒸発した蒸気の隙間から、アンティが見えた。
ボロボロだった。
メドゥーサの攻撃で傷一つつかなかった装甲にヒビが入り、ヒビから血液がこぼれ落ちる。
左腕は爆発から身を守ったのか特に酷く、ズタズタに引き裂かれ、肩のところから千切れかけていた。
当然だ。
生きているだけで驚異なのだ。
爆発まで利用して、所長の所へ飛び出しているなんて、どれだけ……。
「とっど、けえええええ!」
「憐れだ」
スカッ
所長に触れたはずの右手が、宙を掻いた。
「あ?」
「カルデアスはカルデアに、異なる位相に存在している。オルガマリーも当然、すでに位相が異なるのだ。死んでいるからこそ出来る事だがね」
体液と蒸気がおさまった後、そこに自爆したはずの、無傷のレフがいた。
「ああ、そうだ金のサーヴァント。死んでみるのはどうだろう。そうすれば消滅前に異なる位相に手が届くかもなぁ」
悪意。
邪悪が人の形をすれば、こうなるのだろう。
その悪意すら黄金は跳ね除ける。
「うっせえよ」
「ふむ?」
「うっせっつったんだよ、このゲス野郎」
「は……ははは! 勇ましい事だ、だが満身創痍の小娘一人で何ができる。精々己の無力さに泣き喚くがいい」
「ああ、そうね。あんたの言うとおりだわ。私は一人なら何も出来ない、小娘よ」
『>>>ボクさぁ、ああいう自分の有利を疑ってない顔を歪ませるのって好きなんだよね』
『――――クルルカン:壊滅的な趣味ですね。ですが、今回ばかりは同意します』
【 安嬢のめんこい顔に、よぉ傷つけてくれはったな 】
< これは倍、じゃあ、割に合わないねぇ >
{{ 私の恩人に好き勝手言ってくれて……ピエロちゃん、さっさとやっちゃいなさい }}
「マスター」
ええ。
令呪を以て命ず――――
アンティ、
全力、全霊、
「了解! クラウン!」
『────アナライズスキャニング。
▼レイシフト情報を逆探知。カルデアスの流路構成を捕捉完了
▼令呪により、制限されていた機能が一部開放されます。
▼スリーフォウ基幹スキル:"
私の脳内にパスを通じて映像が流れ込む。
アンティの記憶。
悲劇の城を、すでに終えてしまった悲劇を見て、人ならざるものが感じた「なんとかしてあげたい」という
未来から過去へ。
幻は現実に。
悲劇を喜劇に。
それは、こちらでは魔法と呼ばれる大偉業。
『────時空間検索。
▼カルデアス流路座標を追従。
▼あわせ──、3、2、1、リンクしました。
▼未来時間の時限結晶体とコネクト中……接続しています。
▼媒体にエネルギー出力を検出。動源確保。』
《時間旅行》
奇跡はここに再演される。
『――――▼
――――キィィン
運命の歯車はここに反転する。
◆◆◆
『バカな、バカなバカなバカな! 有り得ない! 有り得ない有り得ない! 時間旅行だと!? レイシフトのような紛い物でなく、本物の! そんな事がっ!』
「カルデアにアンティちゃんの英霊反応確認! っていうか、そこにいるよ! 見えてるよ! 本当に時間旅行をしたっていうのか!」
そんな声が聞こえる。
目の前には真っ赤なカルデアス。
そこに、今にも飲み込まれそうなオルガマリーさんが見える。
オルガマリーさんを見て……私は背筋が凍る思いをした。
やべぇ。
これ、助けらんないかも。
あまりに普通にやり取りをしていたものだから、思い浮かばなかった。
“
オルガマリーさんは、霊体だった。
手は、スカった。
バッグ歯車は、生き物判定で弾かれた。
『ふ、ふは、なんだ、なんだなんだ時間旅行までしておいて、まさか助ける算段はなかったのか。とんだ道化師だな! おっとすでに道化師だったか!』
スピーカーから腹の立つモジャ男の声がする。
にゃろう……!
しかし、実際、試行錯誤する時間は、もう無い。
オルガマリーさんの絶望した瞳がアナライズカード越しに見えた。
ああ、仕方ない……やれることはやった。
どうしようもないのだ。
「ごめん……オルガマリーさん」
その瞳から……私は目を反らした。
どうにかしたかった……。
この手段以外で。
『――――同期開始
▼【疑似地球環境モデル・カルデアス】流路結合します』
◆◆◆
「私のカルデアスぅぅぅぅうううううっ!!!」
カルデアに戻った私が見たのは、泣き叫ぶ所長の姿と、涙目のアンティ、アンティの王冠を弄くり回すモナリザ。
それと歯車に囲まれたカルデアスの姿だった。
な に こ れ
そういえば12日10連で孔明あたりました。
ガバ小説書いてた効果でしょうか。
種火とQPと素材と時間とやる気ください