転生先は学校という名の箱庭   作:レモネード

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第2箱 親しみを込めて

転生してから2年が経った。

 

あれから俺は、ただひたすらに心身を鍛えていた。途中で飽きるかとも思ったが、こう目に見える形で身体能力が上がるのをみると、飽きるなんてことは無かった。

 

おかげで、今の俺の身体能力は100m1秒ジャスト、力は拳を振れば走る電車を吹っ飛ばせるぐらいにはなった。と言っても、そこまでに辿り着いたのはほんの一週間前で、まだまだ感覚が追いついていない状態だ。全力を戦闘で出すにはまだ無理だろう。

 

「ふう……」

 

近くにあった岩に腰掛ける。今いるのは最初に身体能力を計った場所だ。広いし、手頃な岩もあるため、鍛練場にしている。

 

「かれこれもう2年……意外と早いな」

 

澄み渡る空を見上げる。

 

「修行が順調なのはいいんだが、いつまでこうしてるかだよなあ、やっぱり……」

 

実際、俺はいつ動くかを決めあぐねていた。原作を知らないので、主人公達がどのタイミングでどこで動いているか分からない為、どうすればいいのか分からない状況だ。前にチラッと見た感じじゃ学園物らしいが、学校はいっぱいある。決め手にはならないでいた。

 

「んー……適当に散策してみるか、鍛練を続けるか……んー……」

 

目を閉じる。顔を撫でる風が心地良かった。

 

「やれやれ、こんな所にいたのかい?」

 

思わず目を開ける。目の前に何かがあった。

 

「うおおおおおおおおお!?」

 

俺は反射的に飛び退いて腰掛けていた岩から5m程離れる。

 

「はあ…はあ……人………?」

 

「まったく、そんなに驚く事は無いだろう? 流石の僕もそこまでびっくりされると傷ついてしまうぜ」

 

息が整ってきたところで、改めて俺を驚かせた人物を見てみる。

 

女性だった。それも、かなり整った顔立ちをしている。可愛いと言うより、美人と言う方が当てはまるだろう。年は大体同じぐらいか。髪はかなり長い。地面に着くか着かないかぐらいの髪を膝辺りでまとめている。服は何故か知らないが、巫女装束だった。

 

一言で言うなら、大和撫子。そんな感じの女性だった。

 

「そんな誉めないでくれよ。照れるぜ」

 

「……何で俺の考えてる事が分かるんだ?」

 

「人生経験が豊富だからね。他人が考えてる事が分かるくらいのことは出来るよ」

 

「それ絶対『くらい』どころの話じゃないだろ」

 

他人が考えてる事が分かるくらい人生経験豊富とか、どんだけ修羅場潜ってんだ。

 

「……で、あんたは誰だ? 俺に何か用か?」

 

「ま、最初の質問から答えさせてもらうよ」

 

先ほどまで俺が腰掛けていた岩に座って、淡々と述べる。

 

「ーー僕の名前は安心院なじみ。親しみを込めて安心院さんと呼びなさい」

 

 

「ふーん……で、なっちゃん」

 

「安心院さんと呼びなさいって言ったのに、何でなっちゃんなんだい?」

 

「いや、どうせ親しみを込めるなら、姓より名前をいじった方がいいかなと思って」

 

「僕が呼びなさいって言ってるんだから安心院さんでいいんだよ」

 

「うーん……でもやっぱりなっちゃんの方が「僕の名前は安心院なじみ。親しみを込めて安心院さんと呼びなさい」そんなに嫌なのか……」

 

中々意志が固い人のようだ。

 

「じゃ、安心院さん」

 

「なんだい?」

 

この態度の変わり様。生前も思ったが、やっぱり女性は難しい。

 

「何で、俺に会いに来たんだ? 用件は何だ?」

 

もしかしたら、会いに来た訳ではないのかもしれないが、最初の言葉からするに用があるのは間違いないだろう。

 

「そうだね、別に会いに来た訳じゃないし、用がある訳でもないかな。ただ興味が湧いただけさ」

 

「興味? 俺にか?」

 

「ああ。他ならぬ君にね」

 

「何でだ? 俺の事は知らないだろう?」

 

「知らないよ。だから会いに来たんじゃないか」

 

……? どういう事だ?

 

「話せば長くなるんだけどねーー」

 

 

「ひと月程前、僕は久し振りに日本に戻って来たんだ。それまでは海外で色々やっていたんだが、それは今回の話とは関係ないので割愛しよう」

 

どうでもいいと言わんばかりに、首を振る。

 

「そんな訳で日本に戻って来た僕だが、そこで気になった事があった。君の存在だ。否、君の心の中の存在、と言った方が正確だろう」

 

俺の胸を指して告げる。心の中の存在、つまりーー

 

「僕は日本に戻ってくる度に面白い素材が出てきていないか調べているんだが、そこで気になったのが君だ。君のスキルだ」

 

「僕は結構長く生きているが、君程特異なスキルを持った人物を見たことはない。そこで、そのスキルの保有者に会いに行こうと思った訳だ」

 

 

「なるほどねえ……まあ、ツッコミたい所は色々ある訳だし、順番に消化していこうか」

 

「ああ、どんな質問にもちゃんと答えてあげるから安心したまえ(安心院さんだけに)」

 

これはスルーしとくか。

 

「で、最初の疑問なんだが、さっき調べてるって言ってたがそれは日本規模でか?」

 

「そうだよ。じゃなきゃ意味がないだろう?」

 

「そんな広い範囲、どうやって調べるんだ? 少なくとも自力じゃ無理だろ?」

 

「簡単な話さ。僕のスキルを使ったまでだよ。中々便利なスキルでね、調べ物をするときには重宝するんだ」

 

「ふむ……じゃあ次の質問ーーあんたは何個、スキルを持ってる?」

 

「……僕のスキルが今言ったスキルだけ、とは思わないのかい?」

 

「それにしては不可解な言動が多すぎる。それらを全て説明するには、スキルを複数持ってると考えた方が妥当だろう」

 

最初にいきなり現れた時もそうだ。まだ未熟とはいえ、二年鍛えた俺の身体能力は人の気配も察知出来るようになった。範囲は20mぐらいだが、間違いなく察知出来る。

 

そんな俺に、少しリラックスしていたとはいえ気付かれずに近づくことなど普通は無理だ。だが、スキルを使ったと考えれば説明がつく。さっきは流してしまったが、俺の思考が分かったのもスキルによる物だろう。なんて恐ろしいスキルだと思わずにはいられない。

 

「最低でも五個……まあでもそんな中途半端な訳はないだろうから、もっとあるだろうけどな」

 

「中々良い読みだね。じゃあ逆に質問するけど、僕は何個スキルを持ってると思うんだい?」

 

一つ気づいた事がある。

 

それは、この安心院さんが確実に原作キャラだということだ。

 

ここまで特徴があると、原作に関わっていないという考えを持つ方が難しくなる。こんなのがモブキャラだったら怖いわ。

 

とにかく、原作キャラ、それも複数のスキルを持つとなるとかなりの量のスキルを持ってるんじゃないかと思えてくる。今分かってるだけでも種類が豊富だし。

 

「となると、五十個……いや、百個ぐらいか?」

 

もっと多くしてもいいかもしれないな。多すぎるぐらいでちょうど良いかもしれないし、間違っててもそのときはそのときだ。

 

「……決めた。千個にしよう」

 

「ファイナルアンサー?」

 

「ファイナルアンサー」

 

「では、正解を発表しようか。僕のスキル数はーー」

 

 

「7932兆1354億4152万2901個の異常性(アブノーマル)と4925兆9165億2611万318個の過負荷(マイナス)、合わせて1京2858兆519億6763万3219個だ。惜しかったね! もう少しでニアピン賞だ!」

 

予想を遥かにぶっ飛んだ答えが返ってきた。

 

「多すぎるだろ! ニアピン賞でも何でもねえよ!」

 

京の単位を実際に使っている人なんて初めて見たな……使わないのが普通だろうけど。

 

「わっはっは。これで分かったろう? 僕はただスキルを少し多く持っているだけの、平等な人外さ」

 

 

俺と安心院さんの対話は続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投稿が大分不定期になってますね。すみません。
それでも、執筆はしっかりとしていくのでよろしくお願いします。
今回の話は長くなりそうだったので分割しました。しばらくは安心院さんとの掛け合いですね。
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