「はーくんー、何処に行ったのー?」
セラフォルーの声が聴こえる。しかしハヤテは気にする様子もなく木の上で寝ようとしていた。
「どうです?ハヤテは見つかりましたかお姉様?」
「駄目、はーくん見つからないわー。」
『上の方にどうやらいるみたいやねー、仕方あらへんし、わいが捕まえて来よか?』
「そうですか。ではお手数ですがリオン捕まえて来て貰えますか?」
『お安い御用やー、ソーナ様』
ホワイトタイガーの様なトラと女性二人な不思議な会話を聞いたハヤテは逃げる準備を始めるもののリオンに首根っこを掴まれてしまう。
『ハヤテ...速さでわいに勝てるわけが無いんやから素直に捕まってソーナ様達に怒られてーや。』
「リオン...君は僕の眷属のはずだ...なら何で主人の命令よりも姉さん達の命令を重視するんだ!?」
『そりゃ、しゃーないわハヤテよりソーナ様の方がわいの主人みたいなとこあるし、自分わい眷属にしたはええけど寝る時以外わいの事側に置いてくれんからソーナ様にわい色々使われてんやで?』
もはや、その事を言われてしまえばハヤテは何も言えずなすがままにリオンに連れられて二人の姉達の前まで連れて行かれるのだった。
「ハヤテ...またどうして貴方はそう自由気ままなのですか今日は貴方に仕事が入っているのですよ?分かっていますか?」
「分かってますよ、ソーナ姉さん。」
ハヤテは拗ねたようにソーナに返答する。
「まあまあ、ソーたん怒るのはその辺にしてはーくんはもう仕事に行けるよねー?」
セラフォルーはハヤテに笑顔を向ける。
「分かってますよ、リオン行くよ。」
『分かってるってそんな事より準備出来てはるん?』
ハヤテは出来ていると言う様に太ももにつけたポーチを叩きリオンへ見せる。
『りょーかいや、んなら早く乗りー』
「はーくん危ないと思ったら直ぐに帰ってきて良いんだからね?」
ハヤテが頷くのを見るとリオンは颯爽と走る。
リオンの走る速度はまるで風と一体化するかの様に感じさせるほど速く目的地までは後数時間で着くだろう。
『なあ、ハヤテー今回の仕事って何するん?』
「聞きた話によると僕の王としての資質を見るためとどれ程領民の為に役立てるかを見るんだとさ...けど今回は多分やばい奴もいるんだと思うよ。」
『どないしてそう思うん?』
「今回仕事を依頼してきた村の話によると作物を荒らされている様だけどその荒らし方がどうやら獣の様なんだ...しかも森では不可解な死に方をしている動物達の死体が転がっているらしい。」
『あぁー、それ絶対確定やん、めんどくさいなぁ』
話をしている間に村に着いた様だ。村に活気などはなくどんよりとした雰囲気を纏っていた。
ハヤテが村人を一人で見つけるとその村人が気づいた様でハヤテのもとに走って来る。
「シトリー家の方ですか?」
「はい、ハヤテ・シトリーと申します。」
「良かった...これで討伐に出た馬鹿どもも助かる。」
村人はどうやら安心した様でハヤテが来るまでに起こった事を話し出す。
どうやら話は簡単でハヤテが来るまでに大きな亀の様な怪物が出た様でその怪物を倒す為に村の青年団が討伐隊を組み森へ入っていった様だ。
『ハヤテ、話し聞く限り多分そいつはわいと同類や。』
「そうだね、多分死者は出ないだろうけど急がないと負傷者は多くでそうだね?」
『せや、やから急いで助けに行ってやらんとまずいで。』
そう言いハヤテがリオンの背中に乗り森の中を走ること数分。
その場には数人の男達が何かに槍や斧魔力による攻撃をしているのが見えた。
ハヤテはその光景を見るとその場にいる全員に聞こえるように叫ぶ。
「そこまでだ!全員武器を置き攻撃をやめるんだ!」
男達は自分達の目の前にきたハヤテを呆然と眺めていた。
ハヤテは男達が攻撃していた場所を見ると結界が張られてあり、そこには亀の肉体を待ち尾が蛇の怪物がいた。
「やっぱりか...」
『案の定やったなぁ』
ハヤテとリオンは自分達の想像していた通りの生物が目の前にいた為何とも言えない気持ちになる。
「村の討伐隊の皆さんは村に帰ってください。この子の処理は僕がしますので。」
「なっ?!何の権限があってあんたにそんな事を言われなければいけないんだ!」
「「そうだ!そうだ!!」」
ハヤテの言葉に討伐隊として参加していた男達の数人は批判の声を上げる。しかしハヤテはそんな彼らに対して脅しに近い発言をする。
「僕はシトリー家の者だ...この討伐隊自体我々の知るよしもない所で組まれた勝手なもの僕に逆らうのであればそれはシトリー家に逆らうと言うものそれが分かっての発言か?」
「知らなかったならば今の君達の発言は聞かなかったことにする...しかし、すぐに村は帰らないのであればどうなるかは分かるね?」
ハヤテは顔に笑みを浮かべ彼らに選択の余地を与えた。
村人達は逆らえる訳もなく全員村へと帰って行った。
「さて、村人は居なくなった事だし話し合おっか。」
「四神の一匹玄武といってもまだ成長のしきっていない子供だろうけどね?」
『ふふ、確かにまだ完全な四神の玄武と比べると私は子供ね。けれど貴方に比べれば長生きだし、負ける気はしないわよ?』
「別に戦おうって訳じゃない話し合おうと言っているだけさ。」
「単刀直入に言おう僕の眷属にならないかい?」
『貴方?正気、まだ成長途中とはいえ四神の一匹数えられる神獣を眷属にするですって?馬鹿なの?』
「至って正気さ。」
『なら、貴方の強さを見せてほしいわ。私がそれで貴方を認めたら貴方の眷属になってあげても良いわ。』
「まあ、そうなるよね。仕方ないからリオン。」
ハヤテはリオンを呼ぶ。
【我が名において命ずる汝我よりつけられしその忌々しいその虚名を祓おう さあその真名を解放せよ】
【白虎】
その名を呼び終わるとそこには先程までの虎の様な姿のリオンはおらず、その場所には森の木々の中間地点までは在ろう大きさの虎の姿へと変わり、足には風を纏っていた。
「これで満足頂けると助かるんだけど?どうだい?」
『そう、貴方は四神をすでに一人で従えていたのね。貴方は面白い子ね。良いわ、貴方といると退屈をしなさそうね。貴方の眷属になるわ。』
「なら、駒はビショップで」
『良いわよ。』
「我が名において命ずる今日から君は僕の眷属で名をネイ、そう名乗ると良い。」
『分かったわ我が主様。』
二人の四神が普通の獣の姿に戻るとネイが口を開く。
『主様、違うわねぇ...そうねぇ、私もハヤテって呼ぶわね。』
「別にどう呼んでくれても構わないよ。」
『そう...ならハヤテこの後は本当に怪物退治に行かないと行けないわよ?』
そう色っぽい声でネイが話す。
ハヤテもこの村を荒らしている怪物がネイである訳がないとほとんど分かっていたのだ何故なら玄武であるならば村を荒らすどころかその村の守護をするのだから。
「分かってた、けどやっぱりしんどいなぁ...だってネイでも狩るのに苦労してるんでしょ?」
『そうね、私の場合は守る事に特化してる節が否めないから火力不足も良いところだからハヤテとリオンが一緒なら多分楽なんじゃないかしら?』
『わいらは手伝ったらあかんでネイ。』
『えっ?どうゆう事?』
ネイは驚きを隠せないように疑問を口にする。当たり前よ反応だろうネイはリオンとハヤテと自分の3人で退治すると思っていたのだから。
『ハヤテの親御さんからのお願いでなわいらは討伐に関われんのや。』
『はっ? ちょっと待ちなさいよそれってやばいんじゃないの?』
『そんな事ないでハヤテはそこら辺の悪魔と違って一応強いしな。それにただの魔獣如きに負けるやつやあらへん。せやからこっからわいらは待機や。』
リオンはハヤテを見つめ、笑いながら口を開く。
『期待しとんでぇわいの主はん。』
ハヤテはやれやれと言うかのように首を振りながら森の奥へと歩みを進める。
どれ程経ったのだろう森は暗くなり視界は暗いしかし、ハヤテは周りから気配を感じたり相手の居場所を探っていた。既にこの近くにいるのは分かっているかのように。
川に近づくにつれてハヤテは自分の心臓の後が早くなっているのにふと気がつく。
本能的に察しているのだろうもうすぐ出会えるのだと自分が対等に戦えそうな獲物に。
川に出るとそこにはハヤテが待ち望んだ好敵手がいた。
その生物は頭を3つ持ちその龍を連想させる、しかし4本足で肉体を支え羽などはない。
「何だ...あいつ...進化の過程をすっ飛ばしすぎじゃないか?もはや自然的に成長して良い部類を超えてるんだけど。」
ハヤテは思考をする。
一体何が起こればあのような進化を遂げるのか...もしこれが人為的に進化させられこの場に放置されたものならば早々に対応せねばならないだろう。
ハヤテがそう考えているとどうやら相手はハヤテに気づいたようで大きな唸り声をあげハヤテへと向かってくる。
「どうやら考えるのは後のようだね。早く仕留めなければ村も危なそうだ。」