レベル1、効果なし、ステータス貧弱。デュエルモンスターズ隆盛のこの世界では使い道のないクズカードと呼ばれるカード達。

未来のエリートデュエリストを養成するデュエルアカデミアでもその価値観は変わらず、場合によってはゴミのように扱われて捨てられることさえもある。

そんなカードと共にデュエルアカデミアの門を叩く一人の少年の姿があった。

「今こそ反逆の時! さあ、お前達の力を証明しよう!」

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遊戯王GX~最弱達の下克上~

ここは童実野町。デュエリストならば知らない者はいないデュエルキング武藤遊戯出生の地であり、デュエル産業において世界的に有名な海馬コーポレーションのお膝元といえる決闘(デュエル)聖地(メッカ)

そこの代表的な建物海馬ドームでは現在、未来のデュエル界を担うと言っても過言ではないエリート決闘者(デュエリスト)を養成する機関――デュエルアカデミアの高等部入学実技試験が行われていた。

 

「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ、先生!」

 

……とは言っても既に試験はほぼ終了しており、現在は電車の事故による遅刻という特例によって本来の時間よりも遅れて実技試験を受けている者達を残すだけになっているのだが。

 

「な、何故ナーノ? 何故ワタクシーが、あんなドロップアウトボーイにー……」

 

敗北した試験官が、自身のモンスターに押し潰された(ソリッドビジョンのため身体に影響はないが)ようにうずくまりながら悔しそうに呟き、「いえ~い! 勝っちゃった俺~!」と言って嬉しそうに小躍りする受験生を睨みつける。

 

 

「いいぞー! 110番!」

 

観客席に立つ水色髪に眼鏡の小柄な少年が、そんな小躍りしている少年に歓声を送る。しかしその周りの生徒達はその試験官の敗北に動揺を隠しきれていなかった。

 

「受験番号59番、若西(わかにし)清一(せいいち)君」

 

するとそんなアナウンスが聞こえ、その水色髪の少年の隣に立つ黒髪を長く伸ばして後ろで一本にまとめた、まるでどこかで武者修行でもしていたような雰囲気を見せる少年がそれに反応。ニヤリと笑みを浮かべた。

 

「おっと、俺の番みたいだな」

 

「あ、そうなんすか? 頑張ってね、59番君」

 

「ああ。ありがとな、119番」

 

互いに試験会場で偶然会っただけなので名前も知らず、先ほど試験を受けていた少年よろしく受験番号で呼び合う。黒髪の少年――清一は実技試験を受けるために階段を降りていき、試験会場であるデュエルアリーナへと向かっていく。

 

「ようこそ主人公、我らがデュエルアカデミアへ」

 

「?」

 

その途中突然そんな声が聞こえ、その変な台詞が気になったのか足を止めて振り返る。しかしそこは自分達と受験生や、デュエルアカデミアの制服を着用した恐らくは実技試験の見物にでも来たのだろうデュエルアカデミアの学生でごった返している。

誰がそんな変な言葉を言ったのか判断する事も出来ず、清一は「まあいいか」でその記憶を脳内から削除、その場を歩き去って行った。そして清一はデュエルアリーナへと入場――小さなエレベーターのような足場がアリーナへの入場口となっている、妙に凝った仕掛けだった。

 

「お、清一だっけ? 次はお前だな、頑張れよ!」

 

「ああ、サンキュ。110番、遊城だっけ?」

 

「おう!」

 

さっきまで試験を受けていた少年――受験番号110番こと遊城何某は清一に嬉しそうに笑いながら声をかけるとさっき彼が乗ってきたエレベーター型の足場に乗ってアリーナから退場する。ちなみにそれによって生じる穴は自動的に蓋が閉められるし、後でまた足場が上がってくるだろう。

しかしとにかく今は関係ないというように清一はデュエルアリーナの感触を確かめるようにぎゅっと足に力を入れて立ち直すのであった。

 

「ボンジョールノ!」

 

「受験番号59番、若西清一です!」

 

「シニョール清一、私はクロノス・デ・メディチ! 今回の試験官を務めさせてもらうノーネ!」

 

試験官として立つのは先程遊城何某に敗北していた男性。恐らくは既に特例による実技試験の受験が二人も差し込んだ上に彼が最後の一人のため、さっさと連戦した方が時間のロスを減らす事にも繋がるという判断だろう。

二人の受験生と連戦する程度で疲れる程軟ではデュエルアカデミアの教師などやっていけないという彼らの自信も感じながら清一は再びニヤリと笑い、デュエルディスクを展開する。

 

「「デュエル!!!」」

 

そして清一とクロノスの声が重なり合った。

 

「先攻は受験者に譲るノーネ!」

 

「では遠慮なく。俺のターン、ドロー!」

 

クロノスの言葉に対し清一は遠慮なくと返してドロー。合計六枚になった手札をさっと見るとまるで思わず漏れ出たようにふっと笑った。

 

「ふむ、どうやらいい手札のようナノーネ」

 

その微笑が見えたのか、いい手札のようだとクロノスも呟く。

つい先ほどは不覚を取って実技試験に遅刻するような心構えもなっていない上に筆記試験の成績もどん底レベルのドロップアウトボーイに負けてしまったが、今度は実技試験の結果によってはラーイエローに入れる可能性もある成績を収めた秀才が相手。ここで素晴らしいデュエルを行いその汚名を返上すればいい。そう彼は考えていた。

 

「俺は[ギゴバイト]を守備表示で召喚!」

[ギゴー!]

ギゴバイト 守備力:300

 

「……はぁ?」

 

よって、目の前の少年が召喚した小さな鰐のような顔をしたモンスターを見たクロノスが呆けた声を出したのも仕方がないというものだ。

彼が召喚したモンスターはわんぱくそうな子供とでもいうべき風貌で、周りの受験生の女子からは「可愛い~!」と黄色い声が飛び交っているがそんなものデュエルには何の関係もない。ステータスはレベル1という最低レベルに見合う脆弱さであり、しかも何か特別な効果を持っているというわけでもない。最弱の烙印を押されてもなんの文句も言えないようなカードである。

 

「リバースカードを一枚セットしてターンエンド!」

 

その後ろにさらに一枚のカードをセット、彼はターンエンドを宣言する。

 

 

ギゴバイト

通常モンスター

星1/水属性/爬虫類族

攻 350/守 300

今はまだおだやかな心を持っているが、邪悪な心に染まる運命を背負っている…。

 

 

「……ちょ、ちょっと待つノーネ……ま、まさかデッキを間違えたとか……」

 

「いえ。これが俺のデッキですが?」

 

「な……」

 

もしや使うデッキを間違えてしまったのでは、とクロノスは尋ねるが清一は首を横に振ってそれを否定する。

 

「そ、そんな雑魚カードを使うデッキなど……さっきのドロップアウトボーイといい……」

 

その言葉にクロノスの額に怒りマークが浮かぶ。単体で役に立つことのない雑魚カード、そんなデッキを使う者がエリートデュエリストを輩出するべきデュエルアカデミアの生徒となる。そんな事は許さないと彼の闘志に火が点いた。

 

「私のターン、ドロー!」

 

叫び、デッキからカードをドローするクロノス。それを確認するや否や彼はドローカードをそのままデュエルディスクに叩き付けた。

 

「私は[レッド・ガジェット]を召喚し、効果発動! レッド・ガジェットの召喚・特殊召喚に成功した時デッキからイエロー・ガジェットを手札に加える。この効果にチェーンして手札から速攻魔法[サイクロン]を発動! あなたの伏せカードを一枚破壊するノーネ!」

レッド・ガジェット 攻撃力:1300

 

クロノスは一体のモンスターの召喚から立て続けにカードを発動、清一の伏せカードの破壊を狙う。

 

「待った! サイクロンの発動にチェーンし、ギゴバイトを選択してリバースカードオープン[同姓同名同盟]!! このカードは自分フィールド上に表側表示で存在するレベル2以下の通常モンスター一体を選択して発動し、自分のデッキから選択したカードと同名のカードを可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する!」

 

「ならばさらにチェーンして速攻魔法[サモンチェーン]を発動! このカードは同一チェーン上で複数回同名カードの効果が発動していない場合、そのチェーン3以降に発動が可能。このターン私は通常召喚を三回まで行う事ができるノーネ!」

 

 

「既にクロノス教諭はレッド・ガジェットの召喚を終えている。つまり通常召喚の権利は実質あと二回……」

 

「それでも、なんて強力なカード……」

 

観客席で実技試験を見学している男女の生徒がそう言葉を漏らす。

通常召喚は一ターンに一度とルールに定められている。しかしカードの発動に厳しい条件が課せられているとはいえ、その絶対的なルールを一時的にとはいえ歪め、通常の三倍の通常召喚の権利を得るのはたしかに強力と言えるだろう。

 

「チェーンの逆順処理を開始するノーネ! チェーン4のサモンチェーンの効果処理が終了し、チェーン3の同姓同名同盟の処理を開始するノーネ!」

 

「ああ! 来い、二体のギゴバイト!」

[[ギゴー!!]]

ギゴバイト ×2 守備力:300

 

ギゴバイトの横に同名のモンスターが二体登場、互いに右手を乗せるように合わせて同盟を組む事を確認する。

 

「続いてチェーン2のサイクロンの効果処理を開始するノーネ! あなたの同姓同名同盟を破壊!」

 

「ぐっ……」

 

クロノスの場のサモンチェーンのカードが光を放った後消滅。続けてその横にあったカードから水色の竜巻が放たれて清一の場の同姓同名同盟を粉砕した。

 

「そしてチェーン1のレッド・ガジェットの効果により、イエロー・ガジェットを手札に加えるノーネ。今手札に加えた[イエロー・ガジェット]を通常召喚! イエロー・ガジェットの効果発動! 召喚・特殊召喚に成功した時、デッキからグリーン・ガジェットを手札に加えるノーネ!」

 

 

「ま、待って!? サモンチェーンでまだ一回の召喚権が残ってる! これって……」

 

「そう。レッド、イエロー、グリーン。三色のガジェットは召喚時にそれぞれ他色のガジェットをデッキからサーチ出来る」

 

クロノスのプレイングを見た女子生徒が気づくとその横の男子生徒が首肯する。

クロノスの発動した強力な召喚サポートカード、サモンチェーンの唯一の弱点は手札消費の多さ。しかしガジェットは召喚時に仲間を手札から加えることが出来、その効果により手札消費を実質ゼロに抑え、その唯一の弱点を封じることが出来るのだ。

 

「そんな雑魚モンスター共には勿体ないデスーガ、冥途の土産に見せてあげましょう! 私はレッド・ガジェットとイエロー・ガジェットを生贄に捧げ、[古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)]を召喚!!」

 

赤の歯車戦士と黄の歯車戦士が光に包まれ、その光が膨張、破裂と共に彼の場に古めかしい様相をした歯車で動く巨人が姿を現した。

 

「バトルナノーネ! 古代の機械巨人でそのチビスケの一体を攻撃!! 古代の機械巨人が攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できないノーネ! アルティメット・パウンド!!」

 

クロノスが攻撃を宣言すると巨人の動力となる歯車がギシギシと音を立てて動き出し、巨人の名に恥じない巨大な拳が振りかぶられた。

 

[ギ、ギゴゴー!?]

 

その瞬間、先程同盟を組んだはずの二体のギゴバイトが一番最初にいたギゴバイトをまるで盾にでもするように巨人の拳の前に差し出す。

強大な力の前には弱者の同盟など何の意味もないと示すようなそれに、攻撃対象となったギゴバイトは跡形もなく粉砕。辛うじて拳の向かう先は逸らす事は出来、命が助かった二体のギゴバイトはほっと安堵の息を吐いていた。

 

「古代の機械巨人が守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与えるノーネ!」

 

「ぐあああぁぁぁぁっ!!!」LP4000→1300

 

しかしその拳の向かう先は清一本人。ほとんど威力を減らす事すら叶わず彼のライフポイントは一撃で半分以上削られていた。

ちなみに二体のギゴバイトは清一の悲鳴を聞いて彼の方を向き「あっ」といいたげな顔を見せた後、清一に向けて両手を合わせて頭を下げていた。

 

「ふっふーん。私はこれでターンエンドナノーネ!」

 

一発の攻撃のみで相手を瀕死に追い込んだクロノスは得意気にターンエンドを宣言するのであった。

 

 

レッド・ガジェット

効果モンスター

星4/地属性/機械族

攻1300/守1500

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。デッキから「イエロー・ガジェット」1体を手札に加える。

 

イエロー・ガジェット

効果モンスター

星4/地属性/機械族

攻1200/守1200

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。デッキから「グリーン・ガジェット」1体を手札に加える。

 

古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)

効果モンスター

星8/地属性/機械族

攻3000/守3000

このカードは特殊召喚できない。

(1):このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

(2):このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

 

サイクロン

速攻魔法

(1):フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

 

サモンチェーン

速攻魔法

(1):同一チェーン上で複数回同名カードの効果が発動していない場合、そのチェーン3以降に発動できる。このターン自分は通常召喚を3回まで行う事ができる。

 

同姓同名同盟(どうせいどうめいどうめい)

通常罠

自分フィールド上に表側表示で存在するレベル2以下の通常モンスター1体を選択して発動する。自分のデッキから選択したカードと同名のカードを可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。

 

 

「さっきの受験番号110番といい、あいつといい……あんなモンスターで一体何が出来るっていうんだ?」

 

「ふん。ただの雑魚だろう? 気に留めておく価値もない」

 

さっきの男女生徒とはまた別の、座り姿からも傲慢な雰囲気を覗かせる男子生徒は取り巻きらしい男子生徒の言葉を鼻で笑い、一蹴する。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

そんな生徒から見下されているとも知らず、清一はデッキからカードをドローしていた。

 

「魔法発動[手札抹殺]! 互いのプレイヤーは手札を全て捨て、その枚数分新たにデッキからカードをドローする! 俺の手札は四枚、その全てを捨てて四枚ドロー!」

 

「ふふん、雑魚モンスターしか手札にないデースカ? せいぜい少しはマシなカードが来るように祈るノーネ。私の手札は三枚、全て捨てて三枚ドローナノーネ!」

 

清一が発動した手札交換カードを見たクロノスは鼻で笑いながら手札を交換。良いカードを引いたのかニヤリと口角を持ち上げる。

 

「よし。俺はギゴバイトを生贄に捧げ、魔法カード[痛み分け]を発動! このカードは自分フィールド上に存在するモンスター一体を生贄に捧げて発動し、相手はモンスター一体を生贄に捧げなければならない!」

 

「なぬ!? 私の場のモンスターは古代の機械巨人のみ!?」

 

「よって、あなたは古代の機械巨人を生贄に捧げなければならない!」

 

ギゴバイトの一体が仲間をやられた仕返しにと(自分達が押し付けたのを棚に上げて)古代の機械巨人へ特攻。がしりと相手の足にしがみつくと自分諸共に墓地へと引きずり込んでいった。

 

「にゃ、にゃにゃにゃにゃんと!? ワタクシーの古代の機械巨人があんな雑魚モンスターに!?」

 

「ギゴバイトを攻撃表示に変更し、バトル! ギゴバイトでクロノス試験官にダイレクトアタック!」

[ギゴー!]

ギゴバイト 守備力:300→攻撃力:350

 

自分の切り札であり誇りといえるモンスターがレベル1の雑魚モンスターに道連れにされたのが余程ショックだったのか狼狽するクロノスを前に清一は冷静に攻撃を指示。ギゴバイトは雄叫びを上げてクロノスへと突進していた。

とはいえ雄叫びはまるで子供の声のようであり、突進も擬音をつけるとすればよちよちというもので周りの女子生徒からは「可愛い~」という感想が飛んでいるのだが。

 

「ギーゴー!」

 

「!? え、今なんか触れたノーネ?」LP4000→3650

 

右腕をぐるぐると振り回しての全力パンチも例えれば「ぽかっ」という感じの攻撃でダメージにはほとんどならず、自分の切り札がやられて狼狽していたクロノスが正気に戻る程度の衝撃しかなかったようだ。

 

「メインフェイズ2に入る。俺はギゴバイトを墓地に送って、魔法カード[馬の骨の対価]を発動! このカードは効果モンスター以外の自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター一体を墓地へ送って発動でき、デッキからカードを二枚ドローする。カードドロー!」

 

ギゴバイトが光の粒子となって消滅し、主の新たな手札を呼び込む糧となる。その新たな手札を見た清一が微笑んだ。

 

「これが俺の希望の光! 来い、[キーメイス]!! リバースカードを一枚セットしてターンエンドだ!」

キーメイス 守備力:300

 

清一の場に呼び出されたのは小さな妖精。その後ろに新たなカードも伏せられた。

 

 

キーメイス

通常モンスター

星1/光属性/天使族

攻 400/守 300

とても小さな天使。

かわいらしさに負け、誰でも心を開いてしまう。

 

(いた)()

通常魔法

自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースして発動する。

相手はモンスター1体をリリースしなければならない。

 

(うま)(ほね)対価(たいか)

通常魔法

効果モンスター以外の自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を墓地へ送って発動できる。

デッキからカードを2枚ドローする。

 

 

「私のターン、ドロー!」

 

クロノスが勢いよくカードをドロー。ドローカードを見てニヤリと微笑んだ。

 

「私は魔法カード[貪欲な壺]を発動! 自分の墓地のモンスター五体をデッキに加えてシャッフル、その後、デッキから二枚ドローするノーネ。私はレッド・ガジェット、イエロー・ガジェット、グリーン・ガジェット、古代の機械巨人、古代の歯車(アンティーク・ギア)をデッキに戻してシャッフルし、カードを二枚ドロー!」

 

クロノスの墓地に眠るモンスターが巨大な紫の壺に吸い込まれて彼のデッキに戻り、その壺が主に新たな手札を与える。その手札を見たクロノスは自身のデュエルディスクの端をオープン、そこに一枚のカードを差し込んだ。

 

「フィールド魔法[歯車街(ギア・タウン)]を発動! このカードがフィールドゾーンに存在する限り、お互いのプレイヤーはアンティーク・ギアモンスターを召喚する場合に必要な生贄を一体少なくできる。さらに私は[古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)]を召喚し、魔法カード[カード・アドバンス]を発動するノーネ! 自分のデッキの上からカードを五枚まで確認し、好きな順番でデッキの上に戻す」

 

その言葉と共にフィールドが正に歯車の街とでもいうべき風景に変化。さらにクロノスが発動した魔法カードの効果により彼のデュエルディスクのデッキゾーンの上から五枚のカードが抜き取りやすいようにはみ出、クロノスはその五枚のカードを確認する。

 

「ふむふむ成程ナノーネ……ではこの順番に直してデッキの上に戻しマスーノ」

 

そしてその五枚のカードの順番を好きに並べ直してデッキの上に戻した。だがクロノスはまだ終わりではないと目つきを鋭くする。

 

「カード・アドバンスの効果はまだ終わりじゃないノーネ! このターン自分は通常召喚に加えて一度だけ、モンスター一体を生贄召喚できる。そして歯車街の効果により生贄を一体少なくし、古代の機械兵士を生贄に捧げ、[古代の機械巨人]を召喚!」

古代の機械巨人 攻撃力:3000

 

クロノスは流石はデュエルアカデミアの実技担当最高責任者とでもいうべきプレイングで、最小限のカードで無駄なく己の切り札を再び呼び出してみせる。

 

「バトルナノーネ! 古代の機械巨人でキーメイスを攻撃!!」

 

「待った! バトルフェイズに入る前に永続罠[強制終了]を発動する!」

 

クロノスの攻撃指示を遮り、清一の場の伏せカードが翻る。

 

「今更何をしようとも遅いノーネ! 改めて古代の機械巨人でキーメイスを攻撃! アルティメット・パウンド!! この瞬間古代の機械巨人の効果により、あなたはダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない! これで終わりナノーネ!!」

 

古代の機械巨人の名に恥じない巨大な拳が振りかぶられ、小さな妖精目掛けて振り下ろされる。さらにクロノスは何か追撃のカードを発動しようとしている雰囲気を見せていた。

 

「強制終了の効果発動!」

 

「なぬっ!?」

 

しかしそこに清一の声が割り込む。

 

「古代の機械巨人の効果によって封じられるのは“カードの発動”! つまり既に発動を終えているカードの“効果の発動”は封じられない! 強制終了はバトルフェイズ時にのみ効果が発動でき、自分フィールド上に存在するこのカード以外のカード一枚を墓地へ送る事で、このターンのバトルフェイズを終了する。俺はキーメイスを墓地に送り、バトルフェイズを強制終了させる!」

 

キーメイスが光の粒子になって消滅。同時に古代の機械巨人がまるで不可視の鎖に縛り付けられたかのように動きを止め、徐々に動作を巻き戻すかのようにクロノスの場に立ち直した。

 

「ぐぬぬ、雑魚モンスターでの小癪な時間稼ぎナノーネ……私はリバースカードを一枚セットし、ターンを終了するノーネ」

 

トドメを刺せたはずの一手をしのがれ、クロノスは悔しそうに唸りながら最後の手札を伏せてターンエンドを宣言した。

 

(だがしかし、次の私のドローカードは[ダブル・サイクロン]。あんな雑魚モンスターしかいないデッキで機械巨人を倒せるはずがありマセーン。このターンをしのぎ、次のターンダブル・サイクロンであの強制終了と私の歯車街を破壊、相手の防御手段を奪った上で歯車街の効果でデッキから[古代の機械巨竜(アンティーク・ギアガジェルドラゴン)]を特殊召喚すれば、もはや相手になすすべはないノーネ! ノヒョヒョヒョヒョ)

 

クロノスは先程のカード・アドバンスの効果によって次のドローカードを確認しており、一足早く次のターンの戦略を立て始めていた。

 

 

古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)

効果モンスター

星4/地属性/機械族

攻1300/守1300

(1):このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

 

貪欲(どんよく)(つぼ)

通常魔法

(1):自分の墓地のモンスター5体を対象として発動できる。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

歯車街(ギア・タウン)

フィールド魔法

(1):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、お互いのプレイヤーは「アンティーク・ギア」モンスターを召喚する場合に必要なリリースを1体少なくできる。

(2):このカードが破壊され墓地へ送られた時に発動できる。自分の手札・デッキ・墓地から「アンティーク・ギア」モンスター1体を選んで特殊召喚する。

 

カード・アドバンス

通常魔法

(1):自分のデッキの上からカードを5枚まで確認し、好きな順番でデッキの上に戻す。

このターン自分は通常召喚に加えて1度だけモンスター1体をアドバンス召喚できる。

 

強制終了(きょうせいしゅうりょう)

永続罠

自分フィールド上に存在するこのカード以外のカード1枚を墓地へ送る事で、このターンのバトルフェイズを終了する。

この効果はバトルフェイズ時にのみ発動する事ができる。

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

対する清一は気負いなくカードをドロー。ドローカードを見てよしと微笑んだ。

 

「俺は速攻魔法[サイクロン]を発動! その伏せカードを破壊する! チェーンはありますか?」

 

「む……いや、通すノーネ!」

 

清一の発動したカードの狙いはクロノスの場に存在する一枚の伏せカード。クロノスは僅かに思考を挟んだ後に通すと答え、その答えを聞くや否や発生した竜巻がその伏せカード[リミッター解除]を破壊した。

 

(く、万一攻撃力を上回られた時の保険として伏せたのが仇になったノーネ……)

 

もし相手が万が一にも攻撃力を上回って攻撃をしてきたところを返り討ちにしてやろうと伏せていたカードが破壊され、クロノスは悔しそうに表情を歪める。

 

「クロノス試験官、その判断を後悔しないでくださいね?」

 

「なんデスート!?」

 

だがその時、清一はニヤリと微笑んでそう言ってみせ、その言葉にクロノスがびっくりした声を上げる。

 

「俺も魔法カード[貪欲な壺」を発動! 効果はご存知の通り、俺は墓地のギゴバイト二枚、プチモス一枚、ダーク・プラント一枚、骨ネズミ一枚をデッキに戻してシャッフルし、カードを二枚ドロー! まだだ、魔法カード[マジック・プランター]を発動! 俺の場の表側表示の永続罠カード、強制終了を墓地に送ってカードを二枚ドロー!」

 

清一はさっきのターンでクロノスが発動したカードをこちらも使い、手札の増強に成功する。しかしまだ終わらないというようにさらに手札を取った。

 

「魔法カード[苦渋の決断]を発動! このカードは一ターンに一枚しか発動できず、デッキからレベル4以下の通常モンスター一体を墓地へ送り、その同名カード一枚をデッキから手札に加える。俺はデッキのレベル1の通常モンスター[ワイト]を墓地に送り、同名カードである[ワイト]を一枚手札に加える」

 

その魔法の効果によって彼の墓地に骸骨の骨が散らばり、彼の手札にその骸骨が組み上がった形であるモンスターが入る。

 

「また雑魚モンスターで時間を稼ぐつもりナノーネ!? そんな行き当たりばったりで私に勝てるはずがアリマセーン!」

 

「さっきから雑魚雑魚って、何か勘違いしてませんか? クロノス試験官」

 

「なぬっ!?」

 

クロノスの言葉に清一はそう、不敵な笑みを浮かべて言い放つ。

 

「俺のデッキのモンスターは全てが俺のエースモンスター、全てが俺の切り札となり得る者達だ。そこに雑魚は一人もいない、いるのは勝利のために力を合わせる同志だけだ」

 

「フン! 先ほどドロップアウトボーイに教えた特別講義、あなたにもしてあげマース! デュエルにくだらない御託はいらない! そんなその場しのぎにしか使えないモンスターを切り札やエースモンスターと勘違いするあなたには勿体ない言葉でしょうネ!」

 

「俺の言葉がくだらない御託か、今分からせてやる! 俺は墓地の[キーメイス]、[ギゴバイト]、[ワイト]を選択して魔法カード[トライワイトゾーン]を発動! 墓地からレベル2以下の通常モンスター三体を特殊召喚する! 戻って来い、キーメイス! ギゴバイト! ワイト!」

キーメイス 攻撃力:400

ギゴバイト 攻撃力:350

ワイト 攻撃力:300

 

[やってやるです!]

[ギゴー!]

[カタカタ!]

 

清一の場に三つの墓石が出現。かと思うと墓石が光に包まれ、その光が消えると彼の場に先程のターン墓地に送られたモンスターを含めた三体のローレベルモンスターが蘇る。

 

「まだまだ! 魔法カード[トライアングルパワー]を発動! 俺の場のレベル1通常モンスターの攻撃力は2000ポイントアップする!」

キーメイス 攻撃力:400→2400

ギゴバイト 攻撃力:350→2350

ワイト 攻撃力:300→2300

 

清一の場のモンスターが不可思議な光に包まれ、その攻撃力が一気に上級モンスター並に膨れ上がる。

 

「フ、フン! 三体のモンスターを一気に上級モンスターレベルの攻撃力にしたのは褒めてあげましょう。ですが、トライアングルパワーの効果により、このターンのエンドフェイズにあなたの場のレベル1通常モンスターは全て破壊される。結局、そんな雑魚モンスターでは私の古代の機械巨人には敵わないノーネ!」

 

しかしあくまでも上級モンスター並。最上級モンスターである古代の機械巨人には届かず、クロノスは逆にそのカードのデメリットによりこのターンのエンドフェイズに彼の場のカードは全て破壊される。と自慢げに指摘した。

 

「ああ、その通り。だけどこのターンで決めればそんな事関係ない!」

 

そのクロノスの指摘を肯定しつつ、清一はニヤリと笑ってさらなるカードをデュエルディスクに差し込んだ。

 

「装備魔法[下克上の首飾り]をキーメイスに装備!」

 

キーメイスの首に首飾りが飾られ、キーメイスは鍵を構えてぶんぶんと振り回しやる気充分な様子を見せる。

 

「バトルだ!! キーメイスで古代の機械巨人を攻撃!!!」

 

「ナンデスート!? 諦めて自爆の道を選ぶつもりナノーネ!?」

 

清一の宣言にクロノスが驚愕の声をあげ、試験会場からもざわめきが走る。しかし既に攻撃宣言は終了、キーメイスは勢いよく古代の機械巨人目掛けて突進していた。

 

「ふん、叩き潰すノーネ! 古代の機械巨人! アルティメット・パウンド!!」

 

それを見たクロノスは鼻で笑いながら古代の機械巨人に反撃を指示、それを聞いた古代の機械巨人が動き出し、巨大な拳をキーメイス目掛けて振り下ろす。古代の機械巨人の鉄拳とキーメイスが剣のように構えた鍵がぶつかりあった。その瞬間、清一とキーメイスの口元に笑みが走る。

 

「いけ、メイ!」

 

[うおおおぉぉぉぉっ!!!]

キーメイス 攻撃力:2400→5900

 

「ナ、ナナナナンデスート!?」

 

清一の叫びとキーメイスの雄叫びが重なり、キーメイスの攻撃力が急激に上昇。古代の機械巨人の攻撃力を遥かに上回り、クロノスは驚愕の叫び声を上げる。

 

「下克上の首飾りを装備したモンスターが装備モンスターよりレベルの高いモンスターと戦闘を行う場合、装備モンスターの攻撃力はダメージ計算時のみレベル差×500ポイントアップする! キーメイスのレベルは1、古代の機械巨人のレベルは8、その差は7! よって攻撃力は3500ポイントアップ!!」

 

慣れたようにそう説明を終えると共に古代の機械巨人の拳にヒビが入る。そしてそのヒビによって生じた穴の中にキーメイスは飛び込んで内部から古代の機械巨人の腕を破壊、その腕から飛び出して古代の機械巨人の身体へと肉薄する。同時に清一は思い切り右拳を振り上げた。

 

「さあ、下克上の時間だ! 雑魚と侮る奴らにお前の力を見せてやれ!!」

 

[やってやるですよー!!]

 

清一の叫びに応えるようにキーメイスも声を張り上げ、思い切り振り上げた鍵を剣のように振り下ろし一閃。古代の機械巨人の装甲表面を僅かに斬る。

 

[……またつまらぬものを斬ってしまった……なのです]

 

そしてキーメイスは古代の機械巨人の目の前で振り返り、古代の機械巨人に背を向けて目を瞑りながら呟く、と古代の機械巨人の装甲表面に出来た傷口がどんどん広がっていき、ついに古代の機械巨人が爆散した。

 

「にぎゃあああぁぁぁぁ!!!」LP3650→750

 

そして降り注ぐ古代の機械巨人の破片がクロノスを傷つけライフポイントにダメージを与える。その破片の山から顔を出したクロノスは、しかし信じられないものを見るような目を向けていた。

 

「そ、そそそそんなまさーか、マサイ族――」

「言ったはずだ。その判断を後悔するなってな」

「――っ!!??」

 

クロノスの呆然とした顔での言葉に清一が不敵な笑みを浮かべて返し、その言葉にクロノスの表情が固まる。もしもサイクロンにチェーンしてリミッター解除を発動していれば古代の機械巨人の攻撃力は6000。少なくともこのターン、キーメイスに下克上の首飾りが装備されたとしてもギリギリ破壊される事はなかった。

 

「反逆の時は来た! 今こそ雑魚と侮る者達にお前らの力を証明する時だ!」

 

[ギゴー!]

[カタカタ!]

 

しかしそんなIF(もしも)にもう意味はない。清一の攻撃指示を受け、残るローレベルモンスターの軍勢がもはや守るもののないクロノスへと特攻を仕掛けていた。

 

「にぎゃー!!! 痛い痛い痛い!!! やめるノーネー!!!」LP750→0

 

そしてギゴバイトのぽこぽこ攻撃、ワイトの骨だけの頭骨による頭への齧りつき攻撃によってクロノスのライフは0を示したのであった。

 

 

ワイト

通常モンスター

星1/闇属性/アンデット族

攻 300/守 200

どこにでも出てくるガイコツのおばけ。

攻撃は弱いが集まると大変。

 

マジック・プランター

通常魔法

(1):自分フィールドの表側表示の永続罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。

 

苦渋(くじゅう)決断(けつだん)

通常魔法

「苦渋の決断」は1ターンに1枚しか発動できない。

(1):デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を墓地へ送り、その同名カード1枚をデッキから手札に加える。

 

トライワイトゾーン

通常魔法

自分の墓地に存在するレベル2以下の通常モンスター3体を選択して発動する。選択したモンスターを墓地から特殊召喚する。

 

トライアングルパワー

通常魔法

自分フィールド上に表側表示で存在する、全てのレベル1通常モンスター(トークンを除く)の元々の攻撃力と守備力は2000ポイントアップする。

エンドフェイズ時に自分フィールド上に存在するレベル1通常モンスターを全て破壊する。

 

下克上(げこくじょう)首飾(くびかざ)

装備魔法

通常モンスターにのみ装備可能。

装備モンスターよりレベルの高いモンスターと戦闘を行う場合、装備モンスターの攻撃力はダメージ計算時のみレベル差×500ポイントアップする。

このカードが墓地へ送られた時、このカードをデッキの一番上に戻す事ができる。

 

 

 

 

 

[これで、デュエル・アカデミア本校の入学試験実技試験を終了します。試験の結果は~]

 

全ての受験生の実技試験が終了し、アナウンスが流れる。

 

「……なかなか、興味深いデュエルだったな」

 

「あの110番? ええ、ちょっと面白いと思うわ」

 

実技試験を見学していたクールな様相の青年が呟くと、手すりに頬杖をつきながら見学していた少女が遊城何某を思い出しながら面白いと思うと評する。

 

「いや、あの110番もそうだが。59番もだ」

 

「59番? ええ、たしかにレベル1のしかも通常モンスターだけでクロノスを倒したのは凄いと思うけど……」

 

「彼は全てのモンスターがエースであり切り札になりうると言っていた。たしかに彼のデッキはモンスター単体でこそ非力だが魔法を駆使してそれをひっくり返す爆発力がある。それに特定のモンスターに依存しているとは思えないプレイング……たしかに、彼のデッキのモンスターは全てがエースであり切り札というわけだ」

 

「……確かに変わってるわね」

 

青年の言葉を受け、少女も清一の評価を変える。かつてバトルシティを制したデュエルキング武藤遊戯も黒き衣を纏う黒魔術師をエースとして激戦を繰り広げていたように、通常デュエリストはかけがえのないモンスターというものが存在する。エース、切り札、象徴、様々な呼ばれ方をされるがそれはデュエリストにとっての心の支えでありそのデッキの軸となるもの。それは自分達にも例外なく存在している。

しかし清一は自身のデッキのモンスターの全てがエースであると言っていた。そして彼の戦い方はたしかに時にはギゴバイトが、時にはキーメイスが、時にはワイトが、恐らくは彼のデッキの全てのモンスターが時に主役、時に脇役となり得るデッキ。特定のモンスターに依存することがないそれは言い換えればどのモンスターが切り札になるのかが相手からはさっぱり分からないということである。

 

「まるでびっくり箱ね。弱いと思っていたモンスターが急に切り札になるんだもん、こっちからは驚かされる他にないわ」

 

効果もなく、ステータスは弱小、使い道のないはずのモンスターが突然こちらの切り札級になって不意に攻撃を仕掛けてくる。そんな光景を幻視したのか少女は参ったように両手を挙げて評価した。

 

「ああ……もっとも、そういう強襲はこちらも慣れっこだがな」

 

「まあね……って、あれ? そういえばあいつは?」

 

青年がくっくっと笑いを噛み殺しながらそう呟くと、少女も苦笑。そこで気づいたように首を傾げた。

 

「ああ、奴なら110番のデュエルを近くで見たいとか言ってどこかに行ったぞ」

 

「なによ、全く。あいつがちょっと見てみたいっていうから来たってのに……」

 

少女の疑問の声に青年がそう答えた途端、少女は苦虫を噛み潰したように表情を歪ませながらそう呟くのであった。

 

 

 

 

 

「いやー、流石はデュエルアカデミアだ。なかなかワクワクするデュエルが出来たな」

 

帰り道。無邪気に笑いながら、まるで誰かに話しかけているように言う清一。しかし彼の周囲には人っ子一人いない。無論誰かと電話で話しているわけでもなく、傍から見れば完全に独り言だった。

 

[もう、ワクワクするのはいいんですが。結構ギリギリでしたよね?]

 

しかしそれに返す声が存在した。彼の右肩に乗って呆れたようにそう言う妖精、それはキーメイスだった。その言葉に清一は笑みを引きつかせる。

 

「いやー、まあそれは……お前らテンション上がりすぎだろ? なんで最初の手札のほとんどがレベル1通常モンスターだけなんだよ。同姓同名同盟が最初の手札になかったりあのタイミングで手札抹殺が来なかったらほぼ事故だぞあんなもん」

 

[ギゴー]

[そんなの言い訳だー。だそうですよ]

 

清一がさっきの試験で使っていたデッキに非難の視線を向けると、彼の隣を歩くようにギゴバイトが出現して一鳴き、その声を聞いたキーメイスが通訳を行った。肩をすくめて呆れ気味に答えるそれは「自分も同感」と言外で主張していた。

 

「……ま、何はともあれ。デュエルアカデミアに入ることは出来たんだ」

 

[や、まだ結果は分からないでしょ?]

 

「あの人はデュエルアカデミアの実技最高責任者なんだ。それの本気のデッキを倒せたんだからほぼ決まりじゃね?」

 

[ん~、まあそうかもしれませんが……]

 

清一のキーメイスはそう話し合い、清一はにこり、と優しい微笑みをキーメイスに向けた。

 

「デュエルアカデミアに入学する。まずはそれくらいできなきゃ話にならないだろ? メイ、お前達の強さを証明するためにはな」

 

[……期待してますよ]

 

その優しい微笑みを目の当たりにし、言葉を聞いたキーメイスことメイは頬を赤らめてぷいっと顔を逸らすと姿を消す。ギゴバイトもその光景を見てくっくっと笑うと姿を消していき、清一はそんな二体の様子に一度首を傾げた後「まあいいか」で終わらせると帰路につくのであった。




こんにちはの方はこんにちは。初めましての方は初めまして、カイナと申します。

少し訳あってデュエル執筆のリハビリ的なつもりで今回のお話を書いてみました。ちなみに主人公こと清一のデッキがローレベルだったのは「ローレベルで書いてみようかな」と思っただけです。題名にもなった最弱とか反逆とか下克上とかその気まぐれから作り出した後付けです。

そんな感じの見切り発車にも程があるようなものなので、色々意味深な部分はありますが、これ読み切りのつもりです。何故なら俺レベル1通常モンスター縛りでデュエルを膨らませ続ける自信がないから!ぶっちゃけこの一発屋のつもりだからバニラローレベルで書いたというかね!
まあ遊戯王自体はとっくの昔に引退してますけど未だにタッグフォース新作を待ち続ける程度にはデュエルは大好きです。
こんな短編ですがご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。

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