ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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長い間お待たせしました。次はあのアニメキャラ達を参加させました。
展開が速いのであしからず。


冒険譚46

「ミアハー頼み事ってなんだ?」

 

『青の薬舗』から連絡が入り訪れた一誠を出迎えた群青色の長髪を伸ばす男神。

 

「うむ、モンスターの卵の収集を頼みたい。【ロキ・ファミリア】からの依頼で二属性回復薬(デュアル・ポーション)の大量生産をしたいが現在、在庫が尽きてしまい作るにも素材も底がついてしまったのだ。報酬は完成した二属性回復薬(デュアル・ポーション)でどうだろうか」

 

「ん、いいぞ。うちもそのポーションの需要が高いからな。直ぐに取り掛かろう」

 

「すまない。待っているぞ」

 

軽く冒険者依頼(クエスト)を受託した一誠はセオル樹林に向かうべく準備を始めた。

 

 

 

 

『ルオオオオオオオオオオオオオオッ!』

 

「ちょっとー!?あれをどうにかしてよぉおおおっ!」

 

「無駄口言ってないで走り続けろっー!ジャイアントトードより凶悪なモンスターに喰われたくないだろうがぁーっ!?」

 

「ならば私の爆裂魔法で吹っ飛ばしましょう!」

 

「お前を背負って逃げれるわけないだろうっ!?そこらじゅうにモンスターがいるんだぞ!」

 

「では、私が囮にっ!」

 

「喰われるのがオチだ!ちくしょうっ、どこなんだよここはっー!?何でこんなところにいるんだよー!」

 

一人の少年と二人の少女に一人の女性がセオルの森林の中を迷走していた。四人を喰らわんと唾液を滴しながら大きな顎を開けて全力で追いかけ、必死に逃げ惑う四人は見知らぬ森から抜け出したい気持ちなのだが、森の外の道は一切分かっていないまま走り続けた。

 

『ルオオオオオオオっ!』

 

「あうっ!」

 

「あっ、めぐみんっ!」

 

トンガリ帽子を被った赤い服を着ている少女が、横から現れた二匹目のブラッドサウルスにマントを噛み付かれて地面から足が浮き、宙吊りたなった少女は今にでも喰われそうになった。

 

「た、助けてくださぁーいっ!?食べられちゃいますーっ!」

 

「どうしようっ、ねぇ、どうしようっ!?まだ程よく肥えてないめぐみんだから、食べられたら満足できず次は私達の番よ!」

 

「ちくしょうっ、こんなことになるならもっと豪華な料理で贅沢させて肥らせていたのに!」

 

「お前達、めぐみんになんて事を言うんだ!?はぁああああっ!」

 

ブラッドサウルスに向かって飛びかかり、金髪のポニーテールに碧眼の女性が振り上げる剣が勢いよく振り下ろされる直後、最初に四人を追いかけていたブラッドサウルスが獲物を横取りされた怒りでタックルしたので、狙いをスカした女性はそのまま巨大な足に踏まれてしまった。

 

「ダクネスゥウウウウウッ!?」

 

「うおおおおおおいっ!?」

 

絶叫を上げる残された二人の頭にべちゃりと生暖かい粘液が降り注いだ。嫌な予感を覚えた二人がゆっくりと後ろへ振り返ったら、三匹目のブラッドサウルスが涎を垂らしながら見下ろしていたのだった。

 

『グルルルルルルルッ・・・・・』

 

「わ、私を食べても美味しくないわよ?ほら、こ、こっちのヒキニートが一番美味しいわよっ?毎日自堕落な生活をしていたからお腹に脂身が乗っててきっと美味しいと思うのっ」

 

「おま、この駄女神!俺を売ろうとしても次はお前も喰われることを分かってて言ってんのかっ!」

 

「はっ!?カ、カズマさぁん!どうにかしてよぉおおおおおっ!私死にたくなぃいいいいっ!」

 

「だぁー!抱き着くな、俺が逃げられないだろう!?」

 

「酷い!私を置いて逃げるなんてそうはさせないわよ!」

 

泣きじゃくりながら縋り付く水色の髪に同色の瞳、青い衣服を身に包み桃色の羽衣を着飾る少女を引き剥がそうとする緑色の肩掛けに軽装の出で立ちの少年。揉み合いと言い合いをしている獲物に向かって大きく顎を開けて襲い掛かるブラッドサウルスであった。

 

『グォオオオオオオオッ!』

 

「ぎゃああああああっ!?」

 

「いやぁあああああっ!?」

 

抱き合って迫りくる捕食者に襲われ悲鳴を上げる二人の声に駆け付ける、何か大きなものが開いた口の中に投げられて入った。

 

『・・・・・ッ』

 

思わず口を閉ざして咀嚼するモンスター。そしてその後、芳醇で食欲をそそらせる香りが森の奥から嗅ぎ取れると二人から意識を変えて餌へ向かって地響きを鳴らしながら歩き始めた。その様子を硬直して見ていた二人は目を丸くする。

 

「た、助かったの・・・・・?」

 

「何故か知らないがそうみたいだな・・・・・あ、めぐみんとダクネス!」

 

「―――この二人の事か?」

 

唾液塗れの少女と恍惚の表情を浮かべる女性の傍らに立つ、大きいバックパックを背負っている長身の真紅の長髪、濡れ羽色と金色のオッドアイの男性が声を掛けた。

 

「あ、あんたは・・・・・?」

 

「さっきのモンスターの卵を採取に来ていた。遠くから聞えてくる騒ぎに駆け付けてみれば喰われかけていた少女をいたもんで助けた。あと、こっちは踏まれていたのにかなり丈夫だな?普通潰れたトマトになるんだが」

 

「ああ、そいつは硬さと力だけが取り柄のクルセイダーだからな」

 

「・・・・・クルセイダー?」

 

なんだそれは?と言いたげに首を傾げる男にカズマと呼ばれた少年も、うん?と疑問を浮かんだ。

 

「取り敢えず自己紹介でもしないか?俺はイッセーだ」

 

「あ、どうも。カズマです。こっちはアクア。で、粘液塗れのはめぐみんで変態な顔をしているのがダクネス」

 

「カズマ・・・・・?変なこと訊くが、出身地はどこだ?」

 

どうしてそんなこと聞くんだろうとカズマは質問に答えた。

 

「日本だけど」

 

「・・・・・お前、日本人か。しかも他の三人を見た感じ、どうも異世界から来たようだな?」

 

「異世界ですって?じゃあ、ここはどんな世界だって言うの?」

 

「世界で唯一、一つだけしかないダンジョンがあり世界中にモンスターが跋扈している魔法と剣の世界、としか言えないな。迷宮都市オラリオって名前は?」

 

知らないと首を横に振るカズマとアクア。

 

「逆に訊くけど、アクセルの街って知らないか?」

 

「知らないな」

 

「マジか・・・・・クエストの最中にいきなり光に襲われたと思ったらこの森の中にいたんだよ俺達は。どうなっているんだ?」

 

「異世界に転移させられたんだろ。俺もそうなんだよ。他にもこの世界に転移した人間や転生者もいるし」

 

「マジかよ!じゃあ、あんたの日本の名前って」

 

兵藤一誠だ。と答えるイッセーにカズマは更に質問をしようとしたがモンスターの唸り声が聞こえてきた。

 

「話はオラリオに戻ってからにしようか」

 

「オラリオってどのあたりにあるんだ?」

 

「馬車だと半日も掛かるぞ」

 

「ちょっとー、半日もこんな気持ち悪いままで歩かなきゃいけないわけ?私、嫌なんですけどー」

 

アクアの不躾な言い分に頭を抱えるカズマ。次の瞬間、「なら綺麗にしてやるよ」と言うイッセーは指を弾き、魔方陣を展開すると四人の身体の汚れが光に包まれ綺麗になっていった。

 

「うお、もしかして魔法か?綺麗になった」

 

「へぇ便利じゃない。濡らしてから乾かす手間もなくていいわ」

 

「俺の故郷の世界のな。俺が住んでいた世界もファンタジーで神々や魔王もいるんだ」

 

「そっちも魔王がいるのか。俺も転生した異世界にも魔王がいるんだ」

 

親近感が湧いたカズマに一誠も話に乗る。

 

「そうなのか。じゃあ、冒険は好きか?」

 

「大好きです」

 

口端を吊り上げるイッセーがカズマと握手を交わした。

 

「ウェルカムだカズマ。この世界も冒険ができるぞ。ただしこの世界には魔王はいないが快楽主義の神々が地上に降臨している。主に人間臭い神らしくない神ばかりだ」

 

「あーそうなのか。でもこっちも似たようなもんだぜ。酒を飲んで酔っ払って道端でゲロ吐いてはお調子者で借金を作るわ人に迷惑をかけるわで、もうほんと駄女神なんだよ」

 

「こっちも酒好きの女神がいて料理に使う酒を勝手に飲まれたことがあるわ。もうその女神に対して駄女神って言ってしまう」

 

「本当に勝手な事されると困ったもんだよなー。無関係なのにこっちにまで飛び火が来るとさ、その尻拭いやら後処理に追われてよ」

 

「もうな、怒っても怒ってもキリがないって感じだよな。一度痛い目に遭わないと絶対分かってくれないアレだ」

 

「分かるわー。こっちの気持ちを知らないでよくトラブルを起こすんだようちの駄女神は」

 

あーだこーだと駄目な女神の駄目なところのトークを繰り広げていてカズマは気付かないでいた。拳に神聖な力を宿して暗い顔でこちらを殴ってこようとしているのを。

 

「ねぇ、ヒキニート」

 

「誰がヒキニートっておい!その拳を仕舞え!」

 

「そうだぞ、命の恩人を殴るなんて神の風上も置けないぞ。駄女神」

 

「ゴットブローッ!!!!!」

 

怒りの右の正拳突きが放たれる。慌てるカズマの隣で一誠が右手を突き出してアクアの拳を掴み止めた。

 

「ん?異世界の神の力ってこんなものか?弱いな」

 

「違うわよ!人間界に降りちゃって本来の神の力が殆んど失っちゃったのよ!」

 

「それでも神の力が振るえるのか。チートじゃん。だけど生憎、この世界にはゴースト系のモンスターはいないぞ。スケルトンはいるけど」

 

「私の浄化の力で倒してやるわよそんな雑魚なんて」

 

「異世界同士のモンスターの強さは異なるから、断言できないなぁ・・・・・とりあえず、これに乗れ」

 

バックパックから魔法の絨毯を取り出して開くと、宙に浮きだす敷物の上に乗る一誠。空を飛ぶ絨毯にカズマ達は凄く興味津々で感嘆の念を抱いた。

 

「すげぇ、魔法の絨毯だ」

 

「ほほう、これは凄いですね。是非とも私の専用の魔道具を作ってもらいたいものです」

 

「これがあれば旅や冒険も楽になるだろうな」

 

「いいわねこれ。私にちょうだいよ」

 

「稼いで買え。そんじゃ行くぞ」

 

オラリオへ向けて飛ばす。その頃オラリオでは・・・・・。

 

「あの、バ二ルさん・・・ここは一体・・・・・」

 

「ふむ、どうやら我輩達が知る世界ではない様子だポンコツ店主よ。我輩達にこのような真似をできるとすれば恐らく神の仕業に違いない」

 

「どうしてこんなことを・・・・・?」

 

「それが見通せば苦労はせん。ポンコツ店主、まずは情報収集だ」

 

 

「こ、ここってどこなの?私、確かめぐみんが住んでいる家敷に向かう途中だったのに・・・・・」

 

「そうだね。参ったねー。どうもここはアクセルの町じゃないみたいだよ」

 

「あ、クリスさん!良かったです。一人じゃあ心細かったですっ」

 

「あはは、私も馴染みの顔が見れてホッとしたよ。とりあえず、聞き込みをしよっか」

 

 

新たな異世界から来た者達が紛れ込んでいたのを一誠達はまだ気づいていなかった。

 

 

「ほら、あれがオラリオだ」

 

「おお、なんと大きい塔だ」

 

「我が究極奥義の爆裂魔法の練習には持って来いのものですね」

 

「天辺が見えないわね。一体どこまで伸びているのかしら」

 

「本当にな。なぁイッセー。あれって何の塔だ?」

 

バベルの塔だと言い返す。高い外壁で囲まれ木造や石造りの建造物が巨大な白亜の塔に密集するように、八つに切り分けられたホールケーキのように区分しているダンジョンがある都市、オラリオに着いた一行。

 

「ここまで連れてきたが、お前等以外に誰かこの世界に転移させられた人はいないか?」

 

「分かりませんね。あの森にいたのは私達だけでしたので」

 

「そうか。一先ずお前らを保護する。衣食住も提供するから安心してくれ」

 

「すまない。感謝する」

 

「それとこの世界の文字の読み書きを学んでもらうしかないがいいな?」

 

「あー、やっぱり違う世界だと違う文字なんだな」

 

「ふふん、私は女神だから問題はないでしょうけどね」

 

一人怪しいが気にせず一誠はオラリオの上空を飛び、路地裏に構えている人体模型のような看板を飾った店の前に寄った。

 

「ここは?」

 

「とある神とその眷族の店兼ホームだ。冒険者のお馴染みの道具屋の一つだ。ミアハ、戻ったぞー」

 

群青色の髪で高身長、美麗な目鼻立ちの青年が入店した一行を朗らかに出迎えた。

 

「おお、イッセー。すまないな手伝わせてしまって」

 

「問題ない。あのポーションをこっちにも回してくれれば手伝ってやるさ」

 

「うむ、さらに改良して質のいいポーションにしてみせよう。ところで彼女達は?一人、私達神に似た異なる神威を放っているな」

 

「異世界から来た神と冒険者パーティだ」

 

「そうであるか。であれば今後とも良き隣人としてよろしく頼む。私は【ミアハ・ファミリア】の主神ミアハである」

 

「どうも、サトウカズマです。あのこの世界の神様は働くのですか?」

 

「天界での生活に飽き飽きした私達神々は下界に娯楽を求め降り立つのでな。子供達のように生活をして永住する楽しみをしているのだよ」

 

感嘆の息を漏らして意味深にアクアへ目を向ける。いつの間にか興味津々で商品を手に取っていた。

 

「それ以外だと国を経営している神がいれば人類とスローライフしている神もいるぞ。神々も下界、この人間界で自由に生きているのさ」

 

「そんな世界もあるのかぁ・・・ところで【ミアハ・ファミリア】ってのは?」

 

「神を中心に人間を眷族にすることで成り立つパーティの異名みたいなもんだ。神の眷族になる事で神の恩恵、ファルナってのを与えられ背中にステータスが刻まれる。刻まれたステータスの徽章がその神の眷族の証として他の人達から認知されるようになる。そして眷族になった者は強くなれる」

 

他に質問はあるか?と訊く一誠に露骨に嫌そうな顔を浮かべ、アクアへ指差すカズマ。

 

「じゃあ、うちの駄女神の眷族にならないと冒険者になれないってことか?」

 

「あらあら、それじゃあ仕方ないわねカズマさん。私の眷族にならないとお金も稼げないなら、仕方がないわよねぇ~。ほら、この機にアクシズ教に入信しなさいな。この、水の女神アクア様の眷族になるなら当然のことよねー?」

 

そんなカズマの肩に伸し掛かりながらドヤ顔を浮かべカズマをこき使うことができる優越感に浸るアクア。であったが。

 

「アクシズ教ってもしかして神に信仰する集まりのソレか?」

 

「ええ、そうよ。この世界の神々でも神を崇めるでしょ?」

 

「崇めはするけど、この世界の人間は神に信仰を捧げないのが殆どだ。というか、神に祈っても意味ないだろうって共通の認識だぞ。そしてお前は異世界の神だから眷族を集めることは絶対にできない。カズマ達は他の神の眷族になれるから、お前は独りぼっちになる。それでいいならカズマ達を紹介するぞ」

 

「そ、それは困るわ!だってカズマ達は私のパーティだもの!私を置いてどこかに行くだなんてそんなの許さないわ!」

 

「言っとくけど、ダンジョンの中に神は入れないからな?アクアがダンジョンの中に入ったらどうなるか分からないけど、強くないなら地上でお留守番しているかアルバイトをしているかの選択を―――」

 

次の瞬間。アクアが一誠に縋り付いた。子供のように泣きながら駄々をこねて。

 

「嫌ぁー!そんなの嫌ぁ~!私だけ置いてけぼりにして冒険するなんて、一人でお留守番やアルバイトをしてる間に私を放っておいて行かれるなんて嫌よぉ!ねぇ、どうにかしてよ!一人は寂しいの!うわぁぁぁぁぁん、うわわわわぁぁぁぁぁん!」

 

こいつ、面倒くせぇと心中吐露する一誠とカズマの気持ちが一致した。

 

「ふむ、異世界にはこのような女神もいるのだな。イッセーよ、彼女を寂しがらせないよう気を使ってやって欲しい」

 

「はぁ・・・・・しょうがないなぁ・・・・・」

 

仕方なくと『幽玄の白天城』に招いた。広い庭園を見てカズマ一行は驚きを隠せなかった。

 

「何なのだここは?何もない空間からこの場所の扉が開くとは」

 

「魔法で隠しているのさ。この先に俺の城があるからな」

 

「城ですって?この森の中にあるなんて変なの」

 

「ここは全部庭園だぞ」

 

「なんと、では城はもっと先なのですか」

 

その先まで案内すれば広大で綺麗な泉を中心に果実や宝石を実らす木々と植物が生えていて、そこに動く金属製のゴーレムが徘徊している。

 

「あれってゴーレムか?」

 

「ああ、俺が作ったから襲ってこないぞ」

 

「色んな物を育てているのだな。この世界の植物なのだろうな」

 

「あれ全部、売れば金になるぞ」

 

実ってる樹木に近付き、四つ採るとカズマ達に手渡す。

 

「食べてみろ。ダンジョンの中でしか食えない高級果実だ」

 

「高級!?いっただきまーす!」

 

「おいこら!ちょっとは躊躇―――!」

 

カズマの静止なぞ微風のごとく聞き流して齧り付いた直後。アクアの目は吃驚して丸くなった後に顔が輝いた。

 

「うーんまーい!なにこれっ、果実なのにステーキみたいに肉の味と触感がして滴る果汁も濃厚だわ!」

 

「確かに、これは美味ですねっ」

 

「ああ、高級肉にも劣らない美味しさだ。カズマも食べてみるといいぞ」

 

「お前らまで、あーもうしょうがねぇな・・・・・美味い!」

 

「美味しさが分かってもらったところで城に向かうぞ」

 

どこに?と疑問符を浮かべるカズマ達の目の前で光る道が出来上がる泉の上を歩きだす。その後ろに恐る恐るとついて行き、泉の中心に立ち止まると足場が降下し始めて縦型の水族館の中にいる気分になりながら神殿がある所まで降りていく。

 

「あれがお城ですか?」

 

「違うぞ。あそこから城へ移動するんだ」

 

「なんでそんな面倒くさいことをするわけ?」

 

「遊び心だがなにか?」

 

「俺にはわかるよ。密かに作った自分だけの特別な何かを自慢するわけでもなく、作るなら仕掛けの一つは欲しいし完成した時の瞬間を楽しみたいだけだもんな」

 

「ほう、そんなこと言ってくれた転生者や転移者の日本人はお前が初めてだ。なら、この先の光景も驚いてくれるだろうな」

 

幾何学的な円陣の中に踏み込む一行が眩い閃光に一瞬で視界を奪われたが直ぐに別の場所へ移動した。その周辺の光景を見回すと驚嘆の息を漏らすのだった。

 

「ようこそ、俺の家こと『幽玄の白天城』へ」

 

バベルの塔の次に高い一誠の城に繋がる道に転移した。胸壁から身を乗り出して眼下を見れば先ほどまで歩いていた庭園からオラリオの街を一望できる。

 

「おお、これは凄い。これがオラリオの街か。アクセルの町もこれぐらい広いのかもしれないな」

 

「お前達の世界はどんなところか知りたいもんだよ。ほら、行くぞ」

 

催促されて足を動かす途中で巨大な黄金の大鐘楼を見て「削って―――」「削ったらあの森に置いていく」と不穏な会話のやり取りがされたが大きな白亜の城の前に辿り着いた。

 

「私達の屋敷より大きいですね。一人で住んでいるんですか?」

 

「お前達のように異世界に転移した異邦人がいれば数人の女神やその眷族、俺のパーティ仲間が同棲兼同居している。殆んど女ばかりだから気は楽だろ」

 

「ハーレムかよ!?」

 

「お前もハーレム状態だろ?外見だけ見れば美人と美少女だ。モテない男からすれば繋がりがあるだけでも羨ましい状況だぞ」

 

「性格が駄目なんだ!ダクネスは攻撃が当たらずモンスターの攻撃を受けたがるドMだしめぐみんは一日に一回しか魔法が撃てないポンコツで頭のおかしい一族の娘だしアクアは馬鹿すぎて人に迷惑を掛けないと生けない全てが駄目な駄女神だし!」

 

無言で彼女達を見るイッセーにアクアとめぐみんは冷めた目でカズマに指を突き付けながら言う。

 

「そこのカズマさんはヒキニートでクズでカスでゲスな言動をするわよ」

 

「あと女性のパンツを盗んで喜ぶ変態ですしロリコンです」

 

「ふふっ、私にとって全てご褒美だがな」

 

・・・・・どうしよう。初めて保護することに後悔しちゃったぞ。

 

「・・・・・悪影響にならないといいんだがな」

 

「・・・・・何というか、すいません」

 

「お前自身も事実なわけね。言っとくけど、人の家族に不埒なことしたら・・・あの森に送り返すからな?お前が喰われようが死のうが俺の知っちゃこっちゃないからな」

 

「気を付けます」

 

改めて城の中へ招く。パーティができる広い玄関ホールのある間隔等に並ぶ石柱の間を通り、更に奥へ進むとLDK(リビング・ダイニング・キッチン)に続く扉に近づき開けて四人も入らせる。

 

「そろそろ昼飯の時間になるけど食うか?」

 

「よろしいのですか?ではお言葉に甘えていただきます。出される料理は全部食べるのでお願いします」

 

「わかった。カズマ、故郷の料理を作る。何が食べたい?何でも作ってやるぞ」

 

「何でもかぁ・・・・・本当に何でもか?」

 

「時間が掛かっていいならそれも含めて何でもだ」

 

「じゃあ、牛丼を頼む!」

 

カズマのリクエストに応え牛丼を作り始める。身近な椅子に座って出される料理を待つカズマ達。

 

「カズマカズマ、ぎゅうどんとは何ですか?」

 

「ご飯の上に牛肉が乗った状態の料理だよ。俺の遠い故郷じゃあ人気な肉料理なんだ」

 

「人気の料理ならさぞかし美味しいのだろう。楽しみだ」

 

「そうね。はーお腹が減ったわー。ねーご飯まだー?」

 

「いや、今始めたばかりだから」

 

「いや、もう完成したぞ」

 

四つ分のどんぶりを乗せた盆を持って来た一誠。

 

「朝残った味噌汁もあったから丁度いい組み合わせだな」

 

「味噌汁も作れるのか。本当に何でも作れるんだな」

 

「俺は嘘は言わん。ほれトッピング付きだ。遠慮なく食え」

 

「「「おおー」」」

 

初めてみる肉料理に目が釘付けとなる。出来立てで湯気が立ちその匂いが四人の鼻を、食欲を刺激する。

そして、我慢する必要もなくスプーンを片手にどんぶりを持ったり添えて食べ始める。

 

「な、懐かしい味!久しぶり過ぎて手が止まらない!」

 

「これは美味しいです!揚げたり挟んだりする以外でこんな作り方もあるのですね!」

 

「実家でも様々な肉料理は食べてきたが。このぎゅうどんという肉料理の方が好みだ。・・・ふぅ、このスープもいい。肉の脂っこさを消してくれてまだ食べ続けられるように考えられているのだな。素晴らしいぞ」

 

「ジャイアントトードのから揚げだって負けてないわよ。でもまあ、認めなくともない美味しさだわね」

 

好評な牛丼はお替りを強請れば何度も作ってもらい、何回も食べてどんぶりが数段積み重なった果てに腹が膨れるほど大満足したのであった。

 

「はふぅ・・・とても美味しかったです。ごちそうさまでした」

 

「イッセー、宮廷の料理人になる美味しい料理だったぞ」

 

「まぁー私から言わせればまだまだね」

 

「おい、じゃあお前はイッセーより美味いもん作れるのかよ。お前の料理よりイッセーの料理の方が何倍も美味いんだからできないだろ、できないんだろうこの口だけ駄女神が。できないんならイッセーに感謝しながら黙って食えこの駄女神が」

 

「酷い!駄女神って二回も言ったわね、言ったわね!だったらいいわよ、カズマの分の料理はもう用意してあげないんだから!」

 

「おー上等だ。俺は今後ともイッセーの料理を食べるグータラ生活を送ってやるぜ。違う世界に来てしまった以上、魔王討伐なんてやらなくてもいいんだからなー」

 

「ちょっと、それは困るわよ!カズマに魔王を倒してもらわないと私天界に帰れないじゃない!」

 

ワーワーギャーギャーと夫婦喧嘩?をする二人を一瞥してめぐみんとダクネスに尋ねた。

 

「アクアは女神って認識しているのか二人は?カズマはそういう風に認識してるけど」

 

「いえ、自称女神だと認識しています。そもそも神様は下界に降りて来ませんよ。カズマに関してはただああ言っているだけなのかと」

 

「たまにあんなことを言うが、イッセーもあまり気にしないでやってくれ」

 

「ああ、わかった。けど、この世界の地上には当たり前のように神々はいるぞ。そこのところについては?」

 

「ふむ、確かミアハという神と出会った時は不思議なものを感じました。言葉では言い表せないですが、私達とは違う存在感を放っているのは確かです」

 

「めぐみんと同感だ。あの者が神だというなら納得のいく。きっと私が崇拝している幸運の女神エリス様もきっと女神としての威厳や風格を持っているに違いない」

 

つまり、今のアクアからは女神としての風格や威厳が微塵も感じられないという結論に至り、イッセーはカズマと言い争うアクアの肩に手を置いた。

 

「・・・・・頑張れアクア、俺はお前を応援しているぞ」

 

「え、なに。何で可哀想な子を見る目を私に向けるの?ねぇちょっと聞いてる?」

 

多くは語らない。どんぶりの後片付けに入るイッセーだった。

 

それからしばらくしてー。

 

「ここが風呂場だ。何時でも何度でも入っていいからな」

 

「結構広いじゃない。湯船の数も多いしブクブクッて泡が涌き出てるし、お湯が流れてるお風呂もあるなんて面白いわ」

 

「木造の縁のお風呂もあるのですね」

 

「しかし、これだけ広くて多い湯船があるのは?些か多すぎる気がするが」

 

「それだけこの城に住む者が多いってことだ。男湯もこんな感じだが、この城の部屋にも風呂を備えてるから男が入るのはまずその部屋の中の風呂場で済む。泊まり込みで遊びに来る男連中以外は利用はしないし」

 

風呂場の次は地下の鍛冶場へと案内する。

 

「ここは俺の作業場の一つ、鍛冶をする場所だ」

 

「お前も鍛冶ができるのか。俺も鍛冶スキル持っているからちょっとした事ができるよ」

 

「へぇ、だったら何か作ってもらおうじゃないか。俺以外にももう一人、鍛冶の達人の鍛冶師がこの城に住んでいるから拝見させてもらうぜ」

 

「あんまり期待だけはするなよ?」

 

「興味があるだけだ。気にするな」

 

続いては地下施設。

 

「ここはプールだ。男性と女性用の水着が沢山あるからその中から選んでいつでも利用してもいいからな」

 

「こんなものまで作ったのか。凄すぎだろ」

 

「遊び心に限界はない。次は屋内で遊べる場所を案内するぞ。カズマ、バスケットしてみないか?体育館のような施設もあるんだ」

 

「本当に何でもアリだな!?」

 

その後は四人が暫く使う部屋を紹介する。

 

「今は何もないが、こういう部屋が四人の部屋になる。一人一部屋でもいいし

 アクア達が女同士で一緒に寝てもいい」

 

「できれば個室がいいわ。用意できるかしら?」

 

「勿論用意しよう。家具や寝具、衣類はこれから大金を渡すからそれで買ってくれ。この世界じゃ無一文だろ」

 

「元の世界でも無一文で借金を抱えているがな」

 

どういう生活すれば借金生活をするんだ?と心情を抱いてしまう一誠であった。他に案内しようと歩く最中。

 

「ところでどうやってお金を稼ぐのですか?冒険者がいるなら冒険者ギルドもありますか?」

 

「あるぞ。稼ぎ方はそっちの世界と同じだと思う。クエストを受けたり、ダンジョンの中で討伐したモンスターから得られる素材や壁の中にある鉱石の発掘、ポーションの素材の採取を手に入れてギルドや商人に売って稼ぐ他にも、俺のように商売するかカジノで稼ぐか、労働で身体を張って稼ぐとか色々だな」

 

「か、身体を張って・・・・・!ハァ・・・ハァ・・・肉欲を貪る獣と化した男達が無理矢理、私の鎧や服をはぎ取って嫌がる私の身体を性欲を満たすまで蹂躙される・・・・・くっ、身体を好きにできても心まで好きにできると思うなよっ・・・・・!」

 

「おい、そこだけ食い付いて興奮するな!イッセーが凄くドン引きしてるから!」

 

ドMな友人や知人、家族がいない一誠にとってその手の対応する免疫が全くなくどう扱っていいのか困惑してしまう。

 

「カズマ、ダクネスの対応を教えてくれないか?こんなあからさまな変態と一つ屋根の下で暮らすと他の皆にも悪影響が出かねないんだ」

 

「本っ当にすみません!もうこの変態の対処は自由にしていいから見捨てないでください!」

 

「くっ・・・・・今日あったばかりの男に変態呼ばわりされるとは・・・・・悪くないぞっ」

 

「わかった。早速そうさせてもらう。―――お前はもう黙れ!」

 

ダクネスの顔面を鷲掴みにして初対面の相手に電撃を食らわす。通常の人なら痺れて動けなくなるが。

 

「あっはぁぁぁあああああああんっ!しゅごぉおおおおおおいいいいいいいっ!」

 

「んだとっ・・・・・!?」

 

黙らすつもりで放った電撃が通用―――どころか顔を赤らめて快楽を覚えるダクネスに戦慄する一誠。

 

「魔法の耐性が異常に高いのかこいつ・・・・・?」

 

「いえ、単純に変態なだけです」

 

「気絶するレベルの雷魔法を食らっても気絶しないのは変態だからって済まされてたまるか!?それともクルセイダーって魔法耐性が高い何かか!」

 

「いえ、単純に防御力が高い職業でお腹に六つも割れた腹筋の変態なだけです」

 

「変態を付属品のように言ってくれるなよ『い、今のをもう一度してくれイッセー!』ってお代わりを要求するなよ!」

 

拳骨を食わらっても痛みで快楽を得るダクネスの顔は蕩け、とても幸せそうに笑む。

 

「ふ、ふふふっ・・・・・カズマからは罵声にイッセーからは体罰を越えた暴力・・・・・・二人に責められる生活も悪くないなっ。イッセー、至らぬ所があったら遠慮なく暴力を振るってくれ。いや寧ろ理不尽に毎日してくれても構わないぞ!そうしてくれれば私は毎日罵倒と暴力の生活を送れて幸せだ!」

 

「もうこいつ嫌だ!何なの変態って、変態ってこんな人種だったっけ?ドMってこういうのだっけ!?そういう対処方法は知らない、教えてくれリーラ!?」

 

混乱して我を失いかけ真紅の雷を迸ながら一誠が巨大な魔力を作り出す。

 

「お、落ち着いてくれイッセー!」

 

「ちょっ、あれから膨大な魔力が感じますよ!?不味いです、今すぐ逃げないと私達が死にます!」

 

「カ、カズマさんどうにかしてぇええええええっ!?」

 

「寧ろバッチコーイ!!!」

 

次の瞬間。城の一部から大爆発が発生した。

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