ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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冒険譚51

過ごしやすい暖かな気温が猛暑を振るう予兆を覚えさせるその日。二度目の運動会を開催するためのチーム選びが今年になって二度目の神会(デナトゥス)で行われていた。羊皮紙に【ファミリア】名と赤と白―――二大最大派閥の代表者として、ロキとフレイヤのどちら側に参加するか記入してガネーシャが持つ箱の中へと投入する。

 

「ねぇロキ。私と賭けをしない?」

 

「なんや自分からそんなこと言い出すなんてよっぽど自信があるんやな?」

 

赤がロキ、白がフレイヤと決まっていることで記入する必要がなく手ぶらでいた時に賭けの話を、否、運動会が続くまで継続するつもりの賭けをフレイヤが隣に座るロキに提案した。

 

「自信じゃないわ。神でも予測できないことを楽しみたいだけよ」

 

「あっそ。で、何を賭けるんや」

 

「勿論イッセーよ?流石に私と貴女だけで勝った方が独占、何てできないでしょうけれど今年の間だけイッセーが勝った側の【ファミリア】の優先権を得るっていう」

 

どうかしら?と瞑目して問う。直接見ずとも結果は分かり切っているとばかり悠然とした佇まいで耳を傾けていたら、口端を吊り上げ笑みを浮かべるロキを簡単に浮かべた。実際、その通りに笑みを浮かべているロキが楽しそうに言い返した。

 

「ほほーう・・・・・それを聞いたら俄然勝たないといけへんなぁ?前回勝ったんのはフレイヤだったんやけど今度はうちが勝たせてもらうで?」

 

「ふふ、楽しみが増えて嬉しいわ。本当にイッセーが来てからというもの、神を殺す退屈の毒がなくなって代わりに魅力的で素敵な彼を中心にここまで退屈させなくなったわ」

 

「せやな。イッセーの行動力がそうさせるんだからおもろいんや。今度は何を仕出かすかうちはワクワクしっぱなしやで」

 

話し合う二柱の女神達を他所に神会(デナトゥス)は終わりを迎え、騒々しい言動をするガネーシャは集めた名簿を持ってバベルの塔の次に高い白亜の天城にいる真紅の髪の男の下へ駆け出していった。

 

 

「イッセー、私達は運動会に参加するの?というかできる?」

 

「主神がいない【ファミリア】だが、運動会の主催者として担っているから参加できる。ただ、今回の運動会は通常の競技以外の種目も用意した。皆にはそれに手伝ってもらうつもりだ」

 

「手伝うってまた、ダンスをするの?」

 

「当たり前だろ?運動会の華じゃないか。俺達が中心となって盛り上げるんだ。これ以上のない楽しいことだぜ」

 

「ここ最近、ガネーシャ様が来てるのって・・・・・」

 

「ふふ、これ以上のない適任者だからな。色んな打ち合わせをしているんだ。そしてこれはまだ他の皆には教えていないんだけど―――かくかくしかじか・・・・・・」

 

「―――え?」

 

 

大通りは、確実に熱を帯び始めていた。迫る運動会を知らせる絵羊皮紙(ポスター)がオラリオの至る所に張られて日に日に熱していく機運に多くの者達が声を上げ討論を交わし、酒の肴にして盛り上がる。迷宮へ潜る足が自然と少なくなっていく冒険者達、些細な物の流れにも敏感になる商人、労働に中々手が付かなくなる一般市民。路傍で遊び回る幼い子供達も街の雰囲気を感じ取り、あどけなく笑っては、興奮に身を委ねた。オラリオは、静かに、確実に、熱気が爆発する瞬間を待ちわびていた。

 

 

そして―――二度目の運動会が開催する日となった朝を迎えた。早くから全ての酒場が店を開き、街の至る所で出店が路上に展開している。今日まで通りの壁を彩って来た無数の絵羊皮紙(ポスター)は一誠の要望で神々が散々周囲に喧伝(けんでん)した結果だ。絵の内容は赤と白で塗られた白亜の摩天楼施設バベルの塔だった。今回勝負するのは【ファミリア】同士の戦いでもあるが神の代理戦争ではないため、神々や冒険者が住むオラリオの象徴を選んだ。

 

太陽の熱い日差しが地上を照らし振るう猛暑によって神々と人類を焦がすように気温が高い中、ステージの中心に立つ一誠が開催の合図を待っていた。場所はオラリオ内の南東にある五万人も収容できる円形闘技場(コロッセウム)。既に客席は満員御礼でざわめきつつも待っている一般市民もいて同じ時を臨んでいた。

 

『第二回!チキチキ、戦争遊戯(ウォーゲーム)IN運動会を始めるぞぉ~っ!!!』

 

『『『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ~~~~ッッッ!!!!!』』』』』

 

その時がとうとう訪れた。鳴り響く玲瓏で厳かな美しい大鐘楼の音がオラリオ全体に広がって、運動会の開催の宣言と共に豪快なカラフルの爆発を巻き起こした。

 

『一年に一度の大祭りこと運動会は今年で二度目!そしてそれを主催する俺は「異世界食堂」の店主にて異世界からやってきた異邦人のイッセーだ!皆、今日一日よろしく!』

 

耳に掛け口元に伸びる拡声器に向かって叫ぶ一誠に呼応して客達も喉が裂けそうなぐらいに歓喜の声を張り叫ぶ。

 

『さぁ、今日まで待ち望んでいてくれたかもしれない皆をこれ以上待たせるのも申し訳ない。早速今回の主役達の登場する姿を見ようじゃないか!』

 

神々が唯一神の力の行使を許された『鏡』を用意てオラリオの外へ映し出される。どこまでも広がっている草原に対の闘技場並みのE字の客席は未だ無人。映し出された矢先、これから戦いの場となる対となっている客席の中心に紅白に輝く光の線。その光の前にステージがありそこには設置されていた様々な楽器で黒子達が演奏を始めた。人の心が高揚して盛り上がる楽しい音楽に合わせて片方の客席の下の出入り口から赤い霧が漏れ出し、それをかき分けるようにして選手達が入場してくる。

 

『最初は紅組の選手達の入場だ!』

 

大きな赤い旗を掲げ持ち先導するのはフレア・フローラ。彼女に続いて歩くのは紅組の代表のロキ。更にその後ろは五列に並んで歩く神々と冒険者達。全員、頭や腕に赤い布を巻いての出場だ。

 

『紅組の代表各な神々を紹介しよう。誰もが知る人ぞ知るオラリオ最強最大派閥の一角を担う派閥、【ロキ・ファミリア】の主神ロキ、同じくオラリオで最大数の団員を保有する派閥【ガネーシャ・ファミリア】の主神ガネーシャに続き、歓楽街を支配する女王【イシュタル・ファミリア】の主神イシュタル!冒険者の武具を作り生み出す鍛冶最大派閥【ヘファイストス・ファミリア】の主神ヘファイストス!他の神々も紹介していくぞ!』

 

威風堂々と胸を張って歩く神々の名を全員告げ、ステージの右半分に輝く紅色の枠へと入っては並んでいくのを見ながら次の紹介へと移る。

 

『続いて白組の選手達の入場!』

 

客席の反対側から漏れ出す白い霧を分けて大きな白旗を掲げ持つラトラの後ろから追従するフレイヤに続き、五列に並ぶ白組の神々と冒険者達。こちらも白い布を頭や腕に巻いて登場する。

 

『白組の代表的な神々の紹介をしよう。最大最強派閥【ロキ・ファミリア】の対の存在【フレイヤ・ファミリア】の主神して老若男女神問わず自他共に認める美の女神フレイヤ、同じくオラリオに在籍しながら極東の西を統べる最大派閥【イザナギ・ファミリア】の主神イザナギ、東を統べる【イザナミ・ファミリア】の主神イザナミ、南を統べる【アマテラス・ファミリア】の主神アマテラス!前回の運動会を勝利した代表的な【ファミリア】が揃っての入場だ!彼の四柱に続く神々も紹介していくぞ!』

 

白い光の枠に入り整列していくフレイヤ達も紅組の選手達と肩を並ぶ形でステージの前に立っていく。全ての選手が揃うと演奏は止み、楽器を片付けて退散する黒子達と入れ替わって登場するのは一誠だった。

 

『さーて、またこれだけ多く運動会に参加するとは前回の楽しみをまた味わいたい神々と冒険者達に関してもう一度説明しよう。戦争遊戯(ウォーゲーム)IN運動会に参加するための条件はLv.2以上の上級冒険者を保有しかつ神会(デナトゥス)に参加できる【ファミリア】だ。今回も運動会に参加できなかった零細派閥は来年に向けて頑張ってくれ。それじゃ今回の運動会のルールを説明する』

 

 

武器・防具・魔法の装着及び行使は厳禁。

 

 

競技中の妨害や暴行厳禁。

 

 

出場中の登録した【ファミリア】の団員以外の入れ替わり不可。

 

 

競技の規則を違反しない。

 

 

『この四つを守る条件で運動会を楽しんでくれ。そして二回目の運動会を勝利した紅組か白組達に―――賞金前回と同じ一億ヴァリスに続いて各種目で最も評価が高い者達には頑張った賞で十万ヴァリスと「異世界食堂」割引券の授与を送るぞ!』

 

一誠の真後ろに展開する魔方陣から金色に輝くヴァリスの山が現れて、神々や冒険者達のやる気と活気がヒートアップ。

 

『因みに司会進行は俺、イッセーと実況の―――』

 

金貨の山の後ろからひょこっと顔を出す三人の男女。

 

『前回に引き続き異邦人のアスナ、そして新たに紹介する異邦人の大和大輔に海童剛が務めさせてもらう』

 

『『『よろしくお願いします』』』

 

『てなわけで役者が全員揃った!さぁこの世界の神々よ、人類よ。この瞬間は肩書も地位も忘れて娯楽を大いに楽しむ者として異世界の行事である運動会を盛り上げるんだ!』

 

『『『『ただいまを以て運動会を開催する!』』』』

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーッッッッッ!!!!!

 

 

『まずは前回に引き続きLv.1、2、3、神と言う順に徒競走をしてもらう!純粋な脚力で勝敗が全て決まる。足に自信がある神と冒険者達は気軽に参加してくれ。参加人数は今回も各Lv.ごとの冒険者を十人ずつ。神も三十人。最初はLv.1の冒険者から。走る者は細く白いラインが描かれたランニングコースのところにいる、冒険者依頼(クエスト)で協力してもらっている冒険者達のところまで足を運んでくれ』

 

 

「Lv.1の冒険者は僕の元へ来てくれ」

 

「Lv.2の冒険者は儂のところに来るんじゃ」

 

「Lv.3の冒険者はこちらに来い」

 

「神はこちらであるぞ」

 

 

去年と同じくスタッフとしてフィンとガレスにリヴェリアと椿が神と冒険者達をコースへ誘導する。

 

『実況の三人。今年もどんな結果になると思う?どっちが勝つ?』

 

『私は白組かな?去年フレイヤ様のチームが勝ったからね』

 

『俺は紅組だと思うな。海童はどうよ』

 

『まだ始まったばかりだから決め兼ねる。どっちも去年善戦したから今年も白熱した勝負をしてくれることを、今回は特等席から楽しみにしているからな』

 

そして始まる徒競走。ゴールの先には元の世界の計測機器や映像を記録する大きく立体的な機械が設置されていて、走る冒険者達がゴールの先でテープを持っている『異世界食堂』の女性店員まで走り抜けた瞬間を詳細に測る。

 

『ただいまのLv.1の冒険者が走った中で一位でありながら更に速くゴールをした者を発表する!―――【ゴンザレス・ファミリア】のイディア!前回の一位の走者が再び勝利をもぎ取った、頑張った賞を授与する!』

 

『『『お~!』』』

 

二回連続同じ冒険者の名前とゴールまで走り抜けた記録が挙がり、ガッツポーズをする駆け出しの冒険者に頑張った賞の証としてバベルの塔を模した黄金に輝く丸いメダルが運動会のために用意された制服に身に包むレイラから手渡される。

 

『続いては上級冒険者の徒競走を始める。己が上級冒険者の中で一番速く走れる証明をここで見せろ!女性が危機の時に駆け付けれる格好いいところを見せれるチャンスでもあるからな!アスナ、彼等に一言を』

 

『応援します、頑張ってください!』

 

「「「アスナさんのために頑張りまーす!」」」

 

『おい、今返事した冒険者はうちの常連客だよな?』

 

『そうなのか?』

 

『そうだ。だから後で体育館の裏に―――』

 

『『この世界にそんな建物はないからな』』

 

不穏な雰囲気を纏う一誠にツッコミを入れられても競技は進んで、冒険者の徒競走が終われば神の徒競走に入る。参加する女神ヘファイストスは同じ列に並び競う良好な関係の女神に話しかけた。

 

「ねぇ、アマテラス。フレイヤとロキが運動会に勝った方がイッセーの優先権を得る賭けをしたって聞いた?」

 

「知らないわ。二人して何を話をしているのかと思えばそう、そういうことね」

 

「そういうことよ。だから、お互い負けられない戦いよね」

 

「意地でも、ね。フレイヤにはそんな賭けをしたことに感謝すれど私は自分のために勝つわ」

 

紅眼と深い蒼眼から火花が散る。一誠を愛する女として負けられない戦いが一誠の知らない所で勃発した。

 

 

『最初の徒競走の勝利チームは紅組!だが、まだまだ運動会は始まったばかりで序盤も序盤!ここから白組も勝ち越していくだろう!さぁ、次の種目を発表しよう!次は―――』

 

今年も行われる運動会は晴天の下で始まったように見えた。

 

 

運動会同時刻―――。茫漠とした砂だらけの荒野にとある【ファミリア】の眷族達が砂を掻き分け、何かを探している様に掘り起こしていた。広大な砂の領域、砂漠の中でたった一つのものを探すのは極めて困難な作業であるが、彼等は運よく見つけ出すことに成功した。必然的に皆が大喜びをする中で立った一人、そのお宝をお調子者が笑うような軽薄な笑みを浮かべながら今回の為に敢えて用意した檻の中にいるモンスターへ近寄った。神から面白い話しを聞き見つけたら試すつもりでいた彼の行動に訝しい目で見つめる団員達だったが。

 

「・・・・・おい、あんなところに穴なんてあったか?」

 

「は?穴だ?」

 

一人の不思議な言葉に怪訝と振り返れば、奈落の底を彷彿させる巨大な穴が音も無くポッカリと虚空に開いていた。本当だ、なんだありゃ?と他の団員達もその穴を注視―――ヌゥと何か出てきた瞬間まで見ていた。

 

―――その後、彼らの運命は絶たれたのだった。

 

彼等の亡骸を残し巨大な影は、砂漠の中を移動して進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

それは少し昔の物語。それは最も新しい、偉大な伝説。―――古の時代、地の底より現れし獣が、この地を滅ぼした。その体躯、夜の如く。その叫び、嵐の如く。大地は揺れ、海は哭き、空は壊れゆく。漆黒の風を引き連れし、絶望よなんと恐ろしい、禍々しい巨獣よ。訪るはとこしえとこしえの闇(常闇)。救いを求める声も、星無き夜に溺れて消える。そして、約束の地より、二つの柱が立ち上がる。光輝の腕輪()をはめし雄々しき男神。白き衣をまといし美しき女神雷霆(らいてい)(ひかり)の鬨が満ち、女王(おう)の歌が響く。立ち向かうは、導かれし神の軍勢。見るがいい。光輝の腕輪()が夜を弾き、白き衣が夜を洗う。眷族の剣が突き立った時黒き巨獣は灰へと朽ちた。漆黒は払われ、世界は光を取り戻す。嗚呼、オラリオ。約束の地よ。星を育みし英雄の都よ。我らの剣が悲願の一つを打ち砕いた。嗚呼、神々よ。忘れまい、永久に刻もう。その二柱の名を―――。其の名はゼウス。其の名はヘラ。称えよ、彼等が勝ち取りし世界を。受け継ぐがいい、彼等が遺した希望を―――。それは最も新しい神話であり、英雄譚。世界に希望を齎した、偉大な日・・・・・。

 

「・・・・・」

 

とある書物に一柱の初老の男神。静けさを保っている神の部屋の中でただ一人、不意に目を通したくなった衝動を抑えきれず一誠が開催する運動会の最中ホームの中で一冊の本で読書を始めた。綴られた文字はそれ以外なく他は未だ白紙だらけの項目(ページ)のみ。それでも一柱の男神は気にせず読み終えた項目(ページ)を閉じて机に置いた時だった。

 

三大商会の一角の【ファミリア】―――【ヴァベルー・ファミリア】。ヴァベルーは通信を受けて眷族と対話できる状態に腕輪の宝玉を触れた。立体的に映る眷族の顔色は焦っているようで冷静ではないことを察し、訳を聞くと・・・・・。

 

「あの砂漠から見た事が無い超大型のモンスター、ですか?」

 

焦りの色が濃く浮かんでいる、腕輪から立体映像を映している眷族の顔とその報告に初老の男神はいつものスマイル顔を崩し、真剣な面持ちで対応していた。

 

「そこに、新たなダンジョンが?」

 

『わ、わかりません。ですが・・・・・・ああ!』

 

現地で新たな変化が起きたのか、眷族が信じられないと叫ぶ。

 

『ま、まさかあの方角は・・・・・!しゅ、主神様、直ぐにギルドに報告してください!巨大モンスターがそちらに、オラリオに向かっています!』

 

二度目の戦争遊戯(ウォーゲーム)IN運動会の最中。一誠の計らいで運動会の余韻としてオラリオは祭りを二日間開催することにした。爽快な晴天に恵まれてオラリオに住む全ての皆が前日の祭りが前夜祭(イヴ)だとして、今日は本格的な祭りだと笑顔を浮かべてはしゃぎ、たくさん祭りを楽しもうと大いに騒ぎ―――大いに歌い―――この日を称えようとする。ギルドはこれを機に乗じてこの日を『グランド・デイ』と名付けて祭りの開催をしたのだった。

 

 

その開催の合図の花火を打ち上げていた市壁にギルド員達がいた。彼等の役目が終えたことでギルドに戻ろうと足を運ぶ中、一人のギルド員が呆けた顔で地平線の向こうを見ていた。

 

「おい、何してる。開催の花火を打ち終えたんだ。もう戻るぞ」

 

「・・・・・・・・・・あれ」

 

「なんだ、何を言って・・・・・・なっ」

 

胡乱気に同僚の視線の先を釣られるように向いて視界に入れると、動く山と思わせる黒く巨大な物体が見えた。まだかなり遠くにいるものの、その存在をハッキリと主張する様に窺わせてるがただの物体ではない。真黒な、不吉を彷彿させる黒い身体を動かす八本の足。その複数の足を駆使してこちらに、オラリオに接近してきているのが明らかだ。

 

「な、なんだあれはっ・・・!?」

 

「わからないっ、と、とにかく報告だ!急げ!」

 

ギルドへ駆けだす職員達を慌てさせる原因の巨大な未知の物から何かが上空へ打ち上げられた後、真っ直ぐオラリオに向かった。

 

 

 

 

 

『さぁ、次の競技を始めるぞ。続いては―――ボール転がしIN障害物リレーだ!』

 

『え、障害物リレー?あれか?設置された障害物を乗り越えてゴールまで進むってやつ』

 

『ボール転がしもあれだな。巨大なボールをゴールまで転がす競技だったはず』

 

『経験者がいたか。大体はあってるが説明するぞ。その前にこの競技に参加する者は男性冒険者と男神と決めさせてもらう。そして競技の内容は、巨大なボールを手で転がしてゴールまで走り続けるが途中、ボールを転がすコースに待機してもらう味方と交代してボールを転がす。それを三回も繰り返して最初にゴールにたどり着いたチームが勝利だ。そして転がすボールはこれ』

 

舞台の裏側から透明な巨大ボールを転がすガレスとフレア、リヴェリアにキリュー。計四つのボールが横一列に並べられた。

 

『アレを転がしながらのリレーか。意外と普通―――』

 

『俺が普通な競技をやらせると思ったら大間違いだぞ?』

 

『え、何か仕掛けでもあるのか?』

 

『まーな。因みにこのボールは中にも入れる。交代する場所まで転がしたらボールの中にいた選手も入れ替わってくれ。参加する者は二人中から走って転がし外から三人ボールを押して転がす。二人の神はボールの中、三人の冒険者は外からボールを転がす。ということで競技に出たい神は六人、冒険者は九人。ステージに集まってくれ』

 

紅組白組から指定された人数の神と冒険者が意気揚々と客席から降りてきた。一度ボールがあるスタート地点へ歩いて―――。

 

ガラァン、ガラァン!!と。突如に空を震わせる、けたたましい鐘楼の鐘の音が鳴り響いた。北部の方から。何より打ち鳴らされる音の激しさが現状起きているモンスターの襲撃に負けないぐらい異常ではない。まるで、かき鳴らしている側の人達も動揺を来しているかのように。その意味はオラリオに住む者なら一生に一度は聞くか聞かないか、ギルド本部が保有する大鐘楼―――緊急事態を告げる、迷宮都市(オラリオ)への警報だ。ギルドの方から轟くその警報に相まって一誠達を唖然とさせた。

 

『―――緊急放送、緊急放送!オラリオにいる全【ファミリア】に告げます!オラリオに存在する、全【ファミリア】に告げます!』

 

ギルドからの放送にオラリオにいる全ての者達が作業の手を止め、足を止め、意識を聞えてくる放送に耳へ集中した。

 

『全ての者は、これよりギルド指揮下に入ってください!ギルドは、「強制任務(ミッション)」を発令します!』

 

「『強制任務(ミッション)』だと?」

 

「しかも、全【ファミリア】に・・・・・?オラリオの総戦力?何でだ?」

 

『作戦内容は「討伐」!現在、オラリオに接近している巨大モンスターの排除!』

 

「え、今!?」

 

現在こちらに向かってきている巨大モンスターという事実。オラリオの全【ファミリア】及び一般市民達にとって信じられない内容に目を見開く。

 

次の瞬間、オラリオから連鎖する大爆発が轟いて聞えてきた。誰がどう聞えたってオラリオが襲撃されていることは明らかだった。拡声器越しに一誠は全員に伝えた。

 

『冒険者はギルドの指示に従いここへ接近してくる巨大モンスターとやらの討伐の準備!神々は安全な場所か分からないところへ迅速的な行動で避難!ほら、動け!オラリオが攻撃を受けている!』

 

神々と冒険者は各々と動きオラリオへ戻る最中、アイズ達が一誠達のところへ駆け寄ってきて自分達はどうする?というような視線を向けてくる。

 

「巨大モンスターとやらを見てみよう」

 

立体的な魔方陣から浮かぶ映像を展開する一誠によってオラリオを中心に見える光景や景色。全体を見回す中で一点、黒くて地を張って動いてる蜘蛛を彷彿させる巨大な物体がオラリオに接近してきながら背中から何かを打ち出していた。それらがオラリオの至る所に落ちた後、人や建物を巻き込む大爆発が起きたところから、黒煙から姿を現す数Mの全身が金属で作られたゴーレム。身近にある物、人に向かって破壊や攻撃を始めオラリオ中が阿鼻叫喚に包まれ始める。

 

「これが、モンスター?」

 

「何か、違うね」

 

「モンスターというよりは・・・・・」

 

「ロボットぽいよな?」

 

異邦人、転生者しか分からない単語にこの世界の人類のアイズ達は首をかしげる。

 

「ろぼっとって、なに?」

 

「『幽玄の白天城』の庭園にいるゴーレム達の親戚みたいなもんだ。俺達の元の世界の人達の中には鉄の塊を自分一人で勝手に動くように作れちゃうんだ」

 

「では、あれもただの鉄の塊なのか?とても信じられない話であるな。一体どうやってあの巨体が動く?」

 

「膨大な力のエネルギーで動いているんだろう。ただ、どーみても、これは普通じゃないだろ。明らかにこの世界で作られた物じゃない。俺でもこんな巨大な物は作った覚えはない」

 

あったらあったで、それは納得してしまう自分にもう何も言えなくなる一同の心中だった。

 

「動く鉄の塊というならば、儂等だけでもことが足りるか」

 

「仕掛けがなければな。これだけ速い機動力は足を数本の折れば動かなくなるだろうさ」

 

「ンーそうだねって言ってる間に近づいてきているよ。僕達がいるのは南方だ。このロボットっていう物は北方から来ている」

 

フィンの言葉に北の草原の方へ目を向ければ、蜘蛛のように足を動かしてこっちに接近してくる巨大な黒い怪物。知的と理性が窺えず何が目的でオラリオに向かってくるのか不明のままだが、近づかせるわけには行かない。一先ず、一誠達も行動を開始することにした。『幽玄の白天城』に同棲、同居、居候している皆を集め接近してくる巨大蜘蛛の事を説明した時だった。

 

「デストロイヤーじゃないか!」

 

「何でこの世界にいるのですか!?あれは私の爆裂魔法で木っ端微塵にしたはずですよ!」

 

「デストロイヤー?話を聞かせてもらおうか」

 

すぐ目の前に謎の巨大起動蜘蛛の事を知っていた面々から事情聴取が始まった。

 

「えっと、俺達がいた世界に転生した昔の先輩の転生者が造ったっていう古代兵器で起動要塞なんだ」

 

「要塞?搭乗できるのか」

 

「ああ、できる。あの巨体を動かせているのはコロナタイトっていう宝珠があるからだ。それ一つで永久機関を作れるほどの魔力が秘めている」

 

「是非とも欲しいアイテムだ。でも、破壊したってことは」

 

「暴走状態なんですよデストロイヤーは。以前、動きを封じるとコロナタイトを暴発させて自爆する危険がありましたし、コロナタイトを取り外してもデストロイヤーの中で溜まっていた熱で焼け野原になり兼ねないことがありました。だが、しかーし!その時に私の最強の爆裂魔法で跡形もなく消し飛ばしてやりました!」

 

リスクもある事が判明したことで対処方法は限られた。

 

「永久機関を作れるアイテム・・・・・」

 

しかし、一誠は目を輝かせてコロナタイトを手に入れた暁にはどんな物を作ろうかと長考に入っていた。長年の付き合いからして一誠が何を考えているのか分からないわけがない数人がいた。

 

「あ、イッセーの欲求が・・・・・・」

 

「今回ばかりは諦めろイッセー。そんな代物をオラリオやこの城の中に置いておくのはあまりにも危険すぎる」

 

「流石に欲しいと思わないで頂戴ね」

 

周りからの否定的な言葉に心底から残念がり、首を項垂る一誠。

 

「・・・・・お前らの世界の物だから、お前等に任せていいか」

 

「勿論ですとも、任せてください」

 

「ねぇー、デストロイヤーを止めたら高級なお酒をいっぱい頂戴よね」

 

「その程度なら百本でも二百本でも用意してやるよ」

 

「そういうことならば我輩も手を貸すとしよう。主に何でも要求できる機会は見過ごせないのでな」

 

「何でも・・・・・ま、迷いますっ」

 

何故かやる気を出す者達も続出するが、オラリオを守るためだと任せることにした一誠に問うのはリヴェリア。

 

「いいのか?お前の方が確実だと信頼しているが」

 

「経験者に任せた方がいいし、出来ると断言したからにはやってもらうよ。最後、詰めが甘かったら出しゃばらせてもらうが・・・・・ゆんゆん」

 

「は、はいっ!」

 

「ゆんゆんも紅魔族だったよな?得意な魔法、それと効果も教えてくれるか?」

 

「わ、私の魔法ですか?得意というより私も紅魔族が好んで使っているのは主にライト・オブ・セイバーです。結界でも何でも斬り裂くことができます」

 

「だからこの城に張った結界も消したわけか。じゃあ、めぐみんの爆裂魔法と合体、融合して放つことは?」

 

と、訊かれ悩む仕草をしながらも可能だと言い返すゆんゆん。

 

「んじゃ、この二人だけでも十分そうだな。頑張ってくれ」

 

「ちょっ!流石に私の爆裂魔法だけでは倒せませんよ!」

 

「片足だけでも機動力が奪えない?」

 

「ウィズにも協力してもらってやっとだったからな」

 

カズマからの言葉に納得できた。

 

「とにかくできるなら頑張ってもらわないと。バックアップは任せろ」

 

そんなこんなで異世界からやってきて数日のカズマ達は、二度目のデストロイヤー討伐をすることになった。

 

 

準備を整え北方の壁に転移すると、門の前には多くの冒険者が集っていた。その中には第一級冒険者のフィン等の姿も交じっていて、更に前方ではその巨体をはっきりと窺わせる距離にまで接近してきているデストロイヤー。

 

「フィーン、今から攻撃するけどいいかー?」

 

「イッセー?わかった、やってくれ」

 

了承を得たところで一誠は全身から天に衝く勢いで立ち昇る膨大な真紅の魔力を奔流と化にしながら、二人に魔力を与え両手に金色の宝玉がある紅い籠手を発する魔力の光と共に装着する。

 

『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Bosst!』

 

『transfer!』

 

籠手から音声が流れ倍加の能力をめぐみんとゆんゆんに譲渡する。すると、体の中から湧き上がる魔力や力に全身で感じ取れる変化に二人は驚愕するのだった。

 

「ち、力が漲るーっ!?これは、う、うおおおーっ!」

 

「こ、これって・・・・・っ!?」

 

「俺の魔力とこの籠手の能力だ。一定時間ごとに二倍の力が倍加・増加する。今の二人の魔法はいつも以上の威力と規模を発揮するだろうさ」

 

「いつも以上!?では、さらに爆裂魔法の威力が高まっているということですか!」

 

「それは自分の目で確かめろ。ほら、もうすぐ目の前まで来ているからやってくれ」

 

地響きを感じさせるところまで接近してきているデストロイヤー。一誠の催促により二人は力強く魔法を解き放った。ゆんゆんが魔力を集束した左手を天に向かって振り上げ、真紅色が帯びた巨大な魔力の光剣を具現化させた。

 

「ハァアアア~~ッ!『ライト・オブ・セイバー』ッッッ!!!!!」

 

「黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり。万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!」

 

幾重の爆裂魔法の円陣をライト・オブ・セイバーに重ねるめぐみん。

 

「これが人類最大の威力の攻撃手段、これこそが究極の攻撃魔法、そしてどんな不可能を可能にする最強の魔法!―――『エクスプロージョン』ッッッ!」

 

爆裂魔法を纏ったライト・オブ・セイバーが飛び出す弾丸のごとくデストロイヤーに向かって駆けた。門前の前にいたフィン達も見たことが無い壮絶な魔法を目で追いかけ、成り行きを見守った。防壁の結界を展開するデストロイヤー。二人の融合魔法にオラリオへの進行は初めて停止した。

 

「「はぁあああああああああぁっ!!!」」

 

抑え込まれそうになっているデストロイヤー。だがしかし、一向に結界を突破する気配が感じられない。

 

「私の時より結界が強くなってるのかしら?」

 

「んじゃ、二陣のアクアとウィズ。出番だ」

 

「は、はいっ。わかりました!」

 

ドラゴンの魔力を与えられたアクアが持つ杖の蕾が開き、それを両手で振り回す。

 

「『セイクリッド・ブレイクスペル』ッッッ!」

 

神聖な魔力を迸り前方に五つの金色の魔方陣を展開すると、杖を魔方陣に突き出してアクアは魔法を放った。めぐみんとゆんゆんの魔法でも打ち破れなかった結界に続いて衝突した。

 

「黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ。『エクスプロージョン』ッ!」

 

ウィズが放った爆裂魔法がデストロイヤーの結界にダメ押しとばかり直撃、ここでようやく結界を破りデストロイヤー本体に届いたのだった。爆裂魔法とライト・オブ・セイバーの合体魔法がデストロイヤーを直撃、跡形もなく原型も残さず大爆発で木っ端微塵となった。

 

 

フィンの右手の親指が不自然に疼いた。何か予想外なことが起きる?そんな前兆の前触れに警戒するよう一誠達に向かって伝えようとした時だった。

 

 

―――訪れる筈のそんな未来を一誠達は見事に裏切られた。結界が破壊された直後、デストロイヤーが身を低くして真上へ一気に跳躍してこっちに、オラリオに跳躍してきたのだ。

 

「はっ?」

 

「はぁっ!?」

 

「ちょっ!!!」

 

蛙のように巨体で跳躍を繰り返すその動き方に誰もが驚倒一色に染まるも、念のために防壁魔法を幾重も発現してオラリオの市壁より高く張る。

 

「おいカズマ、あんな動き方もするのかデストロイヤー。予想外過ぎて困るんだが」

 

「俺に言われても・・・」

 

「ちょっと、どうするのよあれ!蜘蛛のくせに蛙みたいに跳んでくるんですけど!」

 

罠を張るしかないだろう。デストロイヤーの移動予測地点に広大な魔方陣を仕掛け、そしてその魔方陣の上に着地したデストロイヤーは、下から引き寄せられる引力によって動きが強制的に停止された。

 

「や、やったの・・・?」

 

「おいっ!フラグを立てるようなこと言うなよ!」

 

「ということは?」

 

動きを封じられたデストロイヤーの顔の部分が二つに分かれて横に開きだした。すると、その中から―――見たことが無い様々な体色の巨大な蛙の群れが一斉に飛び出してきた。他にも様々なモンスターが出てきてそれにはカズマが酷く愕然した反応を窺わせた。

 

「ジャ、ジャイアントトード!?なんでデストロイヤーから出てくるんだよっ!?」

 

「あの蛙の名前か?異世界のモンスターなら強いのか?他にも何か色んなの出てくるし」

 

「打撃にはめっぽう強い!でも、他は弱い。それと捕食してくるがその食べる最中は動きを止める。他は説明する余裕はないけど普通に倒せれる!」

 

「―――だ、そうだフィン!」

 

下にいるフィンも聞こえているだろうと話しかける一誠に槍を掲げる仕草で返された。

 

「総員、目の前の敵を駆逐せよ!オラリオに近づかせるな!」

 

「「「「「おおおおおおおおっ!」」」」」

 

出番を窺っていた駆けだすオラリオの冒険者達。ジャイアントトード等と接戦する時間はあっという間だった。捕食せんと舌を伸ばす巨大蛙に武器を振るい、魔法を操る魔法使い。素直にすげーと感心していたカズマの横から荒く熱っぽい息を吐くダクネスが話しかけた。

 

「カ、カズマ!ジャイアントトード等まで現れてしまっては討伐していかねばならない!私も行ってくるぞ!」

 

「お前は蛙の粘液塗れになりたいだけだろうがっ!「そんなことはない」その興奮した顔で否定しても説得力はないからな」

 

「自己責任でいいだろ。あれだけデカいなら攻撃も当たるだろうし、捕食されたらされたで無視すればいい」

 

「お前、何気に冷たいのな」

 

「自分の欲望に忠実な騎士なんて人を守る事なんて心底どうでもいいって思っているだろうし、何よりこの世界の冒険者は弱くない。ダクネスがいようがいまいが戦況に影響は出ない」

 

行くなら勝手に行けと促しの言葉を送られたダクネス。興奮していた気持ちが冷や水に掛けられたように冷え、一誠へ真摯な顔で言い返した。

 

「聞捨てにならないことを。私は仲間や守るべき人々を差し置いて欲望に走る女だと決めつけるのは止めてもらおうか」

 

「じゃ、訊くぞ。騎士の矜持に反しない行いを、今まで見ず知らずな男相手やモンスターに興奮したことはないんだな?正義感に溢れ真っ当な騎士のお前は一度もそんなことしていないと、言い切れるんだな?言い切れるなら先の言葉を撤回して謝罪する。―――どうだ?」

 

真剣な眼差しを向ける一誠の視線に、一瞬だけ目を泳がせてしまったダクネス。

 

「し、してない」

 

「・・・・・本当だな?嘘吐いたら酷いお仕置きをするからな」

 

「お、お仕置き・・・・・っ!ど、どんなお仕置きをするつもりだ・・・っ」

 

不安二割期待八割の気持ちでお仕置きの内容を知りたがってしまったダクネスに、清々しい顔で一誠は言う。

 

「ん―――三日間も痛覚を遮断、興奮も感じられないようにする。それからお前の記憶から父親を具現化させて『ララティーナ、可愛いな我が娘ララティーナ』と囁かせてやる」

 

次の瞬間、土下座をする勢いで何度も頭を下げだすダクネス。

 

「なっ!?そ、それだけは勘弁してください!許してください!ごめんなさい、嘘吐いてました!だから、だから―――!」

 

―――ダクネスは墓穴を掘った。

 

「へぇ、嘘、吐いたんだな?」

 

「っ!?っ!?」

 

「お仕置きか・く・て・い・だ」

 

ダクネスの額に小型の魔方陣が展開して直ぐに消失した。何をされたのか当人は分からないでいるが、一誠の悪魔のような悪い笑みを見て嫌な予感を覚えた。

 

「これから三日間、嘘吐いたことを後悔するんだな。お前の大好きな痛覚と興奮が感じられない生活を過ごせ」

 

「ま、待て・・・本当に・・・・・!?」

 

「さて、めぐみんとゆんゆん、ウィズ。もう一度魔法出来る?」

 

おい!?と詰めかかってくるダクネスをジャイアントトードから少し離れた距離の位置に転移魔方陣で送った。

 

「すみません。もう爆裂魔法を放つだけの魔力が・・・・・」

 

「私はまだ大丈夫ですけど・・・・・ライト・オブ・セイバーだけでは威力が」

 

「イッセー、また私に魔力を下さい。今度こそデストロイヤーを吹っ飛ばしてみせます」

 

魔力が足りない、威力が足りない。めぐみんの乞いに応じようとした時にバニルがここに来て制止の声を述べた。

 

「待つがよい。不思議なことにデストロイヤーの内部に誰かがいる。再びネタ種族のネタ魔法を放てばその者諸共消えてなくなるぞ」

 

「誰か?デストロイヤーの主?」

 

「我輩の口で知るよりも主の目で確かめた方がよいと吉と出でいる」

 

胡乱気にバニルを見てしまう。人の気配などデストロイヤーから微塵も感じられない。見通す力だからこそわかる事なのかと思いながらも、一人でデストロイヤーの内部へと侵入を試みた。適当なところから拳一つで装甲を破壊して難なく侵入に成功した。

 

本当に誰かいるのか・・・・・立ち籠る煙が治まっていく石造りの空間の中を見回しながら歩く途中、一誠はあるものを見つけてしまった。

 

広く暗い空間の中に四肢が石壁に埋まった状態の全裸な美少女を。そしてその背後にある物も。

 

「なるほど、あれがコロナタイトか」

 

危険な色を輝かせる宝珠から乱れある未知のエネルギーを感じ取りながら、目の前の少女に近づく一誠の後ろから何かが落ちてきた震動が床と空気を響かせる意識を変えざるを得なかった。

 

「よくある展開だな。でも、俺の邪魔をしてくれるなよ」

 

「・・・・・誰?」

 

ポツリと聞こえてくる幼い声。背を向けながら答える。

 

「ちょっとだけ待ってろ。すぐに終わらせてそこから助けてやるから」

 

そう言って敵意を向けてくる相手の懐へ飛び込み、黒く染まった拳で殴ろうと突き出した。

 

 

 

 

 

 

ジャイアントトードの討伐は程なくして終わり、魔石がないモンスターの処分をどうしようかと検討しているフィン達の視界に映るデストロイヤーから一誠が飛び出した。

 

「ただいまっと」

 

カズマ達は戻った一誠を出迎え、すぐ素朴な疑問をぶつけた。

 

「その子は?」

 

「中にいた」

 

まだ小学生のような身長の子供が一誠の大きな服を着ている姿で降ろされた。

 

「これでいいんだろバニル。どこまで見通しているのかあとで教えてもらいたいところだ」

 

「残念であるが我輩は信託を下す神ではないので悪しからず。して、あの古代兵器をどうする?」

 

「そうだなー。せっかくだ、めぐみん。お前の魔法をコピーさせてもらう」

 

「え、なにを言っているんです?」

 

カズマに背負ってもらっているめぐみんの背中に触れ、唯一無二の彼女の魔法を複製にして自身の魔法に加えた一誠は―――異世界の魔法の詠唱を唱えた。

 

「黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう」

 

めぐみんとウィズが展開した同じ魔方陣より二重に重なり広大で天を衝くように高く―――」

 

「覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ。『エクスプロージョン』ッ!」

 

開放した一誠の『爆裂魔法』の魔力がデストロイヤーに直撃の瞬間。

 

「あ、やべ」

 

加減が分からず宇宙から観測できる程の大規模な爆発を起こしてしまい、オラリオと外にいるフィン達を全力で守る障壁を張って衝撃に備え、何とかオラリオやフィン達に被害を出さず防いではデストロイヤーの討伐は成功した。

 

「間近でやるもんじゃないな。一瞬焦ったぞ」

 

「凄まじい破壊力だ。全力でやったのか?」

 

「いや、必要な魔力の分だけ放出した。これぐらいだったらまだ何度でも放つことができる」

 

手を見ながらそんな実感を口にする一誠へ赤い瞳の視線をむけられてた。

 

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