ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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感想を書いてくれたkatanaさんに一言。


何故分かった!?


冒険譚52

街の復興作業が行われ、重軽傷を負った住人達は多くも死亡者は0という結果が発表されるのはしばらく経った頃であった。運動会は当然ながら中止となって街の復興に尽力を尽くすオラリオの住民達。運動会を楽しめれる状況ではなくなったので来年に持ち越しという知らせに神々や冒険者達はひじょーに残念がった。そして一方・・・・・・。

 

「アレーティア・ガルディエ・ウェスペリティリオ・アヴァタール。それがお前の名前か」

 

「・・・・・うん」

 

金髪の美少女の事情聴取が行われていた。場所は防音の部屋で行われている。部屋の前には『事情聴取につき立ち入り禁止。破った者はバニルによって恥ずかしいことを暴露される』と札が掛けられている。

『幽玄の白天城』に連れて帰り、何故デストロイヤーの中にいたのか、それ以前にどうしていたのかバニルの協力も加えてプロフィールに書き留める。

 

「どうしてあんなところに封じられていたんだ?」

 

「・・・・・裏切られた」

 

「裏切られた?誰に?それが封印された理由になってないけど、話せれるなら話してくれ」

 

一誠の促しに彼女は封印された理由を語り始めた。

 

「私、先祖返りの吸血鬼・・・・・凄い血から持ってる・・・・・だから国の皆のために頑張った。でも・・・・・ある日・・・・・家臣の皆・・・・・お前はもう必要ないって・・・・・おじ様・・・・・これからは自分が王だって・・・・・私・・・・・それでもよかった・・・・・でも、私、凄い力あるから危険だって・・・・・殺せないから・・・・・封印するって・・・・・それで、あそこに・・・・・」

 

ポツリポツリと語る女の子の話を聞きながら一誠は呻いた。なんとまぁ波乱万丈な境遇か。しかし、ところどころ気になるワードがあるので、湧き上がる何とも言えない複雑な気持ちを抑えながら、一誠は尋ねた。

 

「アレーティアは、どっかの国の王族だったのか?」

 

「・・・・・(コクコク)」

 

「殺せないってのは吸血鬼特有の再生能力があるからか?」

 

その問いに赤い目を見開く。

 

「どうして、知ってるの?」

 

「俺の家族にも吸血鬼が数人いるからな。吸血鬼の能力もそれなりに知っている」

 

「嘘・・・・・吸血鬼は他の種族とは共存をしない」

 

「あー、普通はな。でだ、今まで自分がどこにいたのか分かってたか?」

 

「・・・・・迷宮なのは分かった」

 

迷宮?バニルに視線を投げどういうことなのだと訴える。

 

「ふむ、神の反逆者の一人が創り上げた大規模な迷宮であるらしい。我輩の夢を叶えるための迷宮として実に理想的な迷宮である」

 

「そこまで凄いのか。神の反逆者ってのは?」

 

「言葉通りのままよ主。そこな吸血鬼の小娘のいた世界では神を討ち滅ぼさんとする人間が複数いたらしいが、それが叶わずいずれ神を滅ぼす者が現れることを願って、それぞれ異なる場所で創造したようだ」

 

デストロイヤーの中が迷宮と化していた?しかし、それにしては規模が小さすぎて迷宮とは言えない。カズマ達の世界の古代兵器の中にいた彼女の話とは明らかにおかしすぎる。

 

「神の名前はわかるか?」

 

「エヒト・・・・・神の眷族、人類からそう呼ばれている」

 

「うん・・・・・取り敢えず言わせてもらう。この世界はお前が知っている世界じゃないぞ」

 

どういうこと?と不思議そうに首を傾げる少女に一誠は語る。

 

「この世界では、一つしかないんだダンジョンが。そして天界で生きることを飽き飽きした神々が娯楽と刺激を求めて人間界に永住するため降臨し続けている。そんで吸血鬼の存在は今のところお前だけだ」

 

「・・・・・えっ」

 

「ここは世界で唯一ダンジョンがある迷宮都市オラリオ。お前も俺もこいつも、それぞれこの世界に転移されてしまった存在だ」

 

己も含めてバニルとアレーティアに指しながら言い続ける一誠の言葉にアレーティアの思考が停止しかけた。

 

「・・・・・転移って?」

 

「異世界に飛ばされたってことだ。俺達が住んでいた馴染みある国や世界とは全く異なり全然知らない世界の中に。ちなみにこいつは悪魔で俺はドラゴンだ」

 

席から立ち上がって龍化してみせてアレーティアの目を見開かせた。

 

「竜人族・・・・・?」

 

「いや、正確に言うとドラゴンに転生した元人間だ。俺の魂をドラゴンの一部の肉体で構築したこの身体に定着させてある事情で死の淵から甦ったんだ」

 

元の人の姿に戻って語る一誠の説明に開いた小さな口が塞がらない心境で驚嘆するアレーティア。

 

「魔法でもないのに人間がドラゴンに転生できるなんてすごい」

 

「はは、そんなこと言われたの初めてだわ。大抵驚かれる方なのにな」

 

「恐がられてる?」

 

「恐がられちゃいないが、公に教えていい話ではないのは確かだ。勿論、お前が人間ではなく吸血鬼であることもだ。この世界は人間や亜人、獣人以外の種族。それもモンスターや人間の天敵の類の存在は忌避しているから、自分の出生のことはこの城にいる人間以外、外にいる人間や神々には絶対に教えちゃダメだぞ」

 

「ん、わかった」

 

素直でよろしい、と頷いてからようやく本題に入る。

 

「アレーティア、この世界はお前がいた世界ではないが今後どうしたい?生活力があるなら、住む場所を探して衣食住を提供する。それか元の世界に帰りたいか?」

 

「・・・・・」

 

首を小さく横に振る。

 

「元の世界に戻っても帰る場所や行く当てもない。だから、貴方の傍にいさせて。・・・それと、アレーティアって名前は呼ばれたくない。別の名前で呼んで欲しい」

 

「別の名前?なんでだ」

 

「前の名前はいらない・・・・・お願い」

 

切なげに懇願され急に別の名前を要求されるとは思いもせず、困ったように眉根を寄せて考え始める一誠は彼女の外見の特徴を参考にした。

 

「吸血鬼=夜、そしてその月のように綺麗な金髪を考慮して考えると『ユエ』だろうな。この城にユエルって名前の獣人がいるが、呼ばれるたびに紛らわしい思いをさせると思うがどうだ」

 

「ユエ?・・・・・ユエ・・・・・ユエ・・・・・んっ。今日からユエ。ありがとう」

 

「どういたしまして。ああ、俺の名前はイッセーだ。よろしくな」

 

そんなこんなで事情聴取は終わり、表に出る三人はLDKへ戻ると。

 

「戻ってきましたか、さぁ、私と一緒に爆裂魔法の勝負をしてもらいましょう!」

 

めぐみんが一誠に向かって杖を突き出し、瞳を赤く光らせ勝負を吹っ掛けてきた。対して一誠はどうでもよさげにスルーしてカズマに声を掛ける。

 

「おいカズマ。子供が危ない遊びの誘いをしてくるぞ。ちゃんと保護者としてきちんと躾をしとけ」

 

「って、おいっ!誰が誰の保護者ですか!寧ろ私がカズマの保護者的な立場でいますよ!」

 

「毎度毎度お前が人に迷惑を掛ける度に謝り回っている俺に感謝を感じていないどこぞのポンコツアークウィザード。この口か?生意気なことを言うのはこの口なんだな?おら、歯を食いしばるように口を閉じてろ。その口を糸で結んでやっからよ。そうすりゃあ爆裂魔法が撃てなくなって、毎度毎度面倒な爆裂魔法の散歩に付き合わずに済むからな!」

 

「ごめんなさい!冗談ですっ。冗談ですから眼帯を引っ張らないでください!いきなり放されると目に当たって痛たそうだからゆっくり、ゆっくり―――あれ、この展開どこかでしたような―――(バチーン!)いったっ!?目がぁああああっ!!!」

 

新たな居候が加わったことでだいぶ騒がしさ+賑やかさが増した感が強くなった気がしなくもない。

 

「はい、注目。大体予想しているだろうが今日からこの城に住むことになった新しい居候のユエだ。異世界から転移してきたみたいだから、分からないことを聞かれたら教えてやってくれ」

 

『よろしく』

 

『よろしくね』

 

「よ、よろしくお願いします」

 

ほぼ女性しかいない大勢から挨拶を一度にされて緊張気味に返すユエ。

 

「因みにユエはヘファイストス達神々を除いてバニルの二番目に年上だからな。外見だけで判断するなよ」

 

『―――――』

 

バニルの二番目・・・・・?

 

「えっと・・・・・本当?身長と顔的にまだ幼いよね?」

 

「ユエの種族は吸血鬼だ。見た目より年上だぞ」

 

「吸血鬼か!そりゃ、見た目で判断して勘違いしてしまうなぁ・・・ロリ吸血鬼とか」

 

信じられないとユエを見る目が殆どで、その手の知識を培っている一部は本物の存在を見れて好奇心に顔を輝かせる。

 

「なぁ、吸血鬼って言えばやっぱり血を吸うのか?吸ったら眷族にしてしまえるのか?」

 

「吸える。眷族も増やせる。相手の血を吸いきってから吸血鬼の血を与えれば」

 

「太陽の下で活動は?」

 

「ん、私はできる。出来ない吸血鬼もいる」

 

海童の質問に答えていくにつれ分かっていくユエの能力や体質。

 

「バニル、そっちの世界にも吸血鬼いる?」

 

「いるとも。能力も体質も同じであろうな。主の世界には?」

 

「いるぞ。能力と体質も同じだと言いたいところだが全部が全部そうじゃないだろう」

 

「かもしれぬな。時にリッチーとヴァンパイアは仲が悪いことは知っているかな?」

 

「「え、なにそれ?」」

 

海童も聞こえたか一誠とハモった。そして思わずウィズを見てしまう。

 

「え?あ、あの、私達がいた世界のヴァンパイアの話であって、別の世界のヴァンパイアと仲が悪いわけではないですよ?」

 

必死に弁明を言う彼女を見てヴァンパイアとリッチーの仲が悪いとは思えない。特にウィズの事を知る者としてはなおさらだ。なので「じゃあ、ヴァンパイアの嫌いな特徴を言ってくれるか?」と訊いてみたら。

 

「そうですねぇ・・・弱点まみれの半端者のくせに不死の王と名乗るナルシスト。ヴァンパイアの真祖からのおこぼれをあやかった腰ぎんちゃくアンデットのくせに本当の不死の王のリッチーに悪口を言ったり喧嘩を売ってくるのがムカつきますね」

 

あの腰の低いウィズから出る言葉とは思えない発言に軽く目を瞬きして耳を疑った。

 

「ユエ、彼女がヴァンパイアの、吸血鬼に対する感想に対しての気持ちを言ってくれるか?」

 

「言われている体質や吸血鬼の社会のことは大体本当。私の世界にもリッチーはいるけど、基本的に不干渉だったから仲がいいのかわからない。でも、私の事ならともかく昔の家臣に対して言われると思うと・・・・・酷く、ムカつく」

 

ちょっぴり不機嫌そうな顔となってしまったユエに必死に頭を下げて謝罪の念を送るウィズ。小さい女の子に大の女が謝る奇妙な光景を見せられるとは一誠達も思いもしなかった。

 

「ご、ごめんなさい!ユエさんの世界のヴァンパイア達に言ったわけではありませんから!」

 

「しかし、世界が違えど同じ種族だから言ってるようなものだぞポンコツ店主よ」

 

「酷いですバニルさんっ!!!」

 

結果、ウィズが抱く吸血鬼に対する思いを聞いてユエはそっとウィズと線を引いて接することになった。

 

「俺の世界にもいるみたいだけど、リッチーは会ったことないな。ま、一先ず話はこれでお終いだ。そろっと飯の準備をしようか。時にユエ、普通に人間の食材で作った料理は食べられる?」

 

「んっ、食べられる。でも血の方が効率的に栄養が取れる」

 

「そっか。んじゃ、俺の血、吸ってみるか?元の世界にいる吸血鬼の家族の評判じゃあ至高の味だってさ」

 

「・・・・・いいの?」

 

一誠が首肯して了承すると、膝を折って体勢を低くすればユエは一誠の首筋に歯を立てるように噛みついた。生で見る吸血鬼の吸血の光景に緊張するアスナ達。そしてドラゴンの血を吸うユエは一口吸った直後、目を見開いた。体の奥底から湧き上がる凄まじい力を経験したことが無く動揺するも、異世界の吸血鬼の間で至高と言うぐらいの美味な血の味に恍惚な表情を浮かべた。それからどれだけ吸い続けたのか分からないが、ユエの身体にも変化が起きた。百四十cmの身長が大人の体型にまで成長し、金髪が更に伸び小さかった胸が豊満に膨らんだ。迸る色気。男女の区別なく魅了する魔性の美。妖艶を体現したような大人モードのユエに目を白黒するアスナ達。

 

「・・・・・ストップだユエ」

 

「ん、もうちょっと・・・・・」

 

「流石に俺でも血が減ると困るし、自分の身体を見ろ。俺でも驚くことになってるから」

 

頭上に疑問符を浮かべる元少女は気付かぬ間に成長した自身の身体を見下ろす。目を見開く。

 

「ど、どういうこと・・・・・?」

 

「俺の血の影響であるとしか思えない。それか吸う血の量だ」

 

羽織る純白のローブで大事な部分は隠せているが、隠せない部分が皆の視界に飛び込んでしまう。目の前にいる一誠も例外ではなく、羞恥で顔を真っ赤に染めて「イッセーのエッチ」と言われ心外だと眉根を寄せた。

 

「アスナ、衣類の買い出しを任せていいか。大人用の服でも問題ない子供服のな」

 

「えっと、それってまた血を飲ませるの?」

 

「そいつは本人次第だな。俺は何時でも受けの姿勢でいるから・・・・・そこ、俺の血って身体を成長させるの?的な好奇心で見てくるな。これは吸血鬼限定しか効果が出ないんだ。人間が俺の血を飲んだらどうなるか俺すら分からないんだからな。ユエの成長も一時的な変化だと思うし数時間後、もしくは明日になれば戻っている」

 

「じゃあ、毎日血を吸えば何時か吸わなくてもこの身体に変身できるようになれる?」

 

「自然な成長で身体を大きくしてくれ。何時か俺の身体が干物になってしまう」

 

「んっ、大丈夫。加減するから安心して」

 

妖艶な空気を醸し出すユエを、女性達の中で一種の危機感を覚えた。自分達にはない何かが持っていてそれを自覚して武器にされてしまえば、一誠を奪われかねないと女の本能が警鐘の金を鳴らしていた。

 

ここに来て更に新たな騒動を引っ張ってきたアクアが勢いよくバン!と扉を開け放って一誠に抗議してきた。

 

「ねぇ!この世界の冒険者は何でジャイアントトードの良さを知らないのよ!?頭おかしいんじゃないの!」

 

「いきなり何だよ?一体何の良さなのかこの世界の人類や神々すら知らないことだぞ」

 

「じゃあ教えてあげるわよ。ジャイアントトードは食べられるのよ。唐揚げにしたらすっごく美味しいんだから!」

 

この世界の冒険者からすればモンスターなんて食べること自体頭がおかしいのではないかと思っても仕方がない。この千年、モンスターを食べたという人類の事例は皆無であり、モンスターの素材(ドロップアイテム)の加工や売買が当たり前で常識なのだ。一部を除いて。

 

「へぇ、そっちの世界のモンスターは食べられるのか」

 

「見た目は蛙だから食えるのかな?って気にはしてたが・・・唐揚げにして食えるのか」

 

一誠と海童が興味を示したことで、まさかと信じられない目で二人を見る数多の者達。

 

「・・・イッセー、あのおっきな蛙を調理しようなんて思ってないわよね?」

 

声が震えてるアスナに向かって純粋無垢な目で言い返す一誠。

 

「興味はあるぞ。そもそも両生類の蛙って焼けば食べれるし、俺もよく焼いた蛙を食ってたから抵抗感は全くない。カズマ、アクアの言うことは本当か?」

 

「アクセルの街だと普通に受け入れられているぞ。作り方は分からないけど骨付きの唐揚げにしたジャイアントトードの肉はちょっと筋が多くて硬いけど、食べられないわけじゃないし味も美味しいけど。な、めぐみん、ダクネス」

 

「この世界に来てまだ日が浅いですが、またジャイアントトードの唐揚げが食べられるというなら嬉しいですね」

 

「うむ、もう食べられる機会はないだろうからな」

 

めぐみんやダクネスまで認めるジャイアントトードの唐揚げという料理の存在に、頷く一誠。

 

「同じ味にできる保証はないが、そこまで言うならその要望を応えてやるよ」

 

『えっ!?』

 

「お、作ってくれるのか。興味あったんだよ、本を読んで本当にモンスターの肉は美味しいのかなって。俺も協力するよ」

 

好奇心旺盛で一誠の考えに賛同するようなことを言う海童―――と。

 

「あの蛙を食べるアルか?私も食べてみたかったから早く調理するアルよ」

 

胃袋がブラックホール並みの神楽までもが乗り気だった。なので後始末していた者達から全てのジャイアントトードを回収して、初めての食材に試行錯誤をして何度も失敗を繰り返し、神楽やアクアに味見をしてもらい異世界の唐揚げを再現すること数時間・・・・・・。

 

「これよこれ!元の世界で食べてたジャイアントトードの唐揚げよ!あなた、中々いい腕をしてるじゃない!」

 

「美味しいアルよ!」

 

「おお、再現してしまうとは凄いです」

 

「困難を極めてただろうに、凄いではないか」

 

異世界の料理の味の再現を出来て一誠と海童はよしっ!と思いでハイタッチをする。そして二人も実食。

 

「あー、こんな感じか」

 

「フライドチキンに似てるかな?確かに少し硬いけど美味しいのは確かだ」

 

「でしょでしょ?ほらほら、皆も食べて見なさいよ。せっかく大量に作ってもらったんだからさ」

 

アクアの促しの言葉に躊躇する者と興味があって食べる者が二つに分かれ、食べた者は「こんな味か」と思いながら、特にアルガナ達アマゾネスが中心に平らげようとしていた。

 

~~~~余談~~~~

 

「・・・・・・ジャイアントトードの肉が売られてる」

 

ネットスーパーの一覧表にある筈のない異世界の食材が交じって増えていた。これに困惑して何でなんだと思い悩むことになった。

 

 

 

運動会が中止となって数時間後、一誠達も街の復興に協力するその頃―――帝国領土内にある大墳墓。

執務室にいるアインズは超距離にいる対象を映すことができる鏡で一誠達の様子を覗いていた。デストロイヤーの襲撃から討伐の瞬間まで。

 

「・・・・・む」

 

鏡の映像の中にいるユエを救出したところの一誠が視線を感じたのかアインズの視線とぶつかった。ジッと見つめても相手からは虚空に視線を送っているだけだが、その何もない虚空に向かって一誠が力強く正拳突きをすると、アインズの鏡に亀裂が入った直後に割れた。飛び散る破片がアインズの方にまで届いて控えていた従者が慌てた。

 

「アインズ様っ」

 

「いや、大丈夫だ。よもや気付かれるとは思いもしなかったがな」

 

情報収集目的で観察をしていたのがバレてしまった。しかし特に焦った様子を窺わせない主に女性従者、アルベドはメイドに破片を集め出させる。

 

「如何なさいますか」

 

「どういう意味だ」

 

「アインズ様はあの者に興味を持たれているご様子ですが、我々がこの世界で情報を集める中でやはり、あの者が厄介極まりない者であることは間違いございません。アインズ様のご命令であれば始末してさしあげます」

 

「止せ。現状、異世界を繋げる手段を持っているのはイッセーだけだ。金の卵を産む鶏を殺して自ら利益を捨てるようなことは断じてしたくない。私は利用価値あるものを殺さない主義なのはわかっている筈だアルベドよ」

 

「・・・・・出過ぎた真似を申し訳ございませんでした」

 

分かればよい、と話を打ち切り心中で思考する。

 

「(敵対するのは避けたいな。このナザリックをどうにか元の世界に転送できるように何とかできれば彼も何とかしてくれる話だったし)」

 

利害関係、協力者によく思わないでいる一部の配下がまた出会って

とんでもない発言をしないように気を配らねば、等とため息を吐く。

 

 

 

アインズのため息に釣られるように一誠もため息を吐く事が起きていた。自分に懐いたユエの行動にアイズ達がすっかりお冠なのだ。膝の上、背中、肩のどれかを占領するように居座ろうとすればアイズ達は黙ってはいられない。

 

「ユエ、イッセーの身体は皆のだから独占はダメ」

 

「というわけで、話し合いをしようよ」

 

「今イッセー様は作業中です。私達が不毛な言い合いするならば、イッセー様が怒りますから」

 

「・・・んっ、わかった。でもここで」

 

「「「・・・・・こっちっ!」」」

 

翌日の朝。子供バージョンに戻ったユエを掴みかかり一誠から引き離そうとするアイズ達と、地面に根を伸ばした植物のごとく、脚も使って全力で一誠に引っ付くユエ。

 

「面白い光景であるな。お子様の綱引きかなにかか?」

 

「それはそれで和む事だが、明らかに引っ張るものが違うから椿」

 

「ははは、それこそ和むではないか。慕われているお前もまんざらではないのだろう?」

 

まぁな。とLDKの隅に設置している数量分の畳の上に胡坐を掻いて、異世界買物覧(ネットスーパー)で異世界の買い物をしていた一誠とその様子を見ているカズマにバニル。

 

「マジで元の世界の買い物ができるんだな。金さえあれば便利すぎるだろ」

 

「今ではとても重宝している。何か欲しいもんはあるか?家電製品も買えるぞ。ゲームしか使えないけど」

 

「ゲームかっ!やってみたいな。どんなゲームがある?」

 

「色々としか言えないな。でも今はこっちが優先だ」

 

選んだポチっと商品を押し、不足しているヴァリスを画面の中へ金額分に入れ続ける。チャージし終えれば購入ボタンに指で押せば一誠達の周囲に虚空から幾つものの段ボール箱が発現する。

 

「なかなか便利なスキルであるな。取得できるならば小僧に取得してもらい、便利そうな商品を店で販売できるのだが」

 

「前から思ってたんだけどどうしてウィズのことヘッポコ店主って言うんだ?」

 

「商売が下手すぎるからだ。何一つ、冒険者にとって使えそうにならぬものばかり仕入れてくるのだから、常に赤字が続いて一度も黒字の利益をもたらしたことなど一度もないのだ。我輩の願望を叶えるためにヘッポコ店主の下で働いているにも拘わらずだっ」

 

「使えないもんを作り続けるその職人との縁を切って別の仕入れ先と変更すればいい話じゃないか」

 

「それについては俺もそう思うぞバニル」

 

一誠とカズマから尤もな指摘に唸るバニル。

 

「我輩とてそう提示したのだが、あのポンコツ店主は頑なに拒絶の態度を示すのだ」

 

「じゃあ、仕入れ先の人のところにお前が直談判しに行けば?」

 

「行きたいところだが、我輩の留守の間にまたとんでもないものを仕入れて来ると思うと、おいそれと店から離れるわけには行かぬ」

 

「でも、結局はバニルがいてもおかしな商品を持ってくるんだろ?」

 

カズマの言葉は否定できないと、ため息混じりに首肯する異世界の悪魔。

 

「バニル、お前の能力で占い師や相談所でもすれば稼げると思うぞ」

 

「検討をしよう。ところで物は相談だが主よ。主は様々なマジックアイテムを作っている様子。他にもデストロイヤーから得たある物で作ろうとしているその知識を買い取らせてはもらえないか。サトウカズマの知的財産の一部を具現化したものを買い取ろうとしているところなのだ」

 

「へぇ、どんなのだ?」

 

「ジッポライターだ。他は炬燵」

 

カズマの口からでた日本人にとって馴染みある道具の名前に軽く目を丸くして、苦笑する。

 

「かぁー、それは盲点だったな。今度、俺も作ろ」

 

「イッセーは何を作ったんだ?」

 

「空飛ぶ船と海の上を走る列車。他にも色々と」

 

「はぁあああ!?」

 

驚くカズマの叫び声にLDKにいた一堂がなんだなんだと振り向く。

 

「列車って、あの列車?海の上を走るなんて聞いたことがないぞ」

 

「魔法と剣の世界、ファンタジーらしい乗り物だろ。とは言っても海に線路を別の島国と繋げて走らせてるから魔法の列車ではないけど」

 

「いやいや、それはそれで凄いぞ」

 

「物作りが趣味なものだから。今度乗せてやるよ。行き先は極東、昔の日本の江戸時代のような国だ」

 

「マジかっ!」

 

マジだと首肯する。バニルに顔を戻して話を戻す。

 

「俺の知識を買い取ろうとしても物にできないなら宝の持ち腐れだぞ?いいのか?」

 

「無論、そのようなことがない商品を限定する」

 

「というか、買うって金がないだろ?」

 

「これからカジノで稼げばどうとでもない。心配は無用であるぞ主」

 

その内、出禁にされるだろうなと思いつつ・・・・・まだ引っ張り合いの奮闘中のユエ達に告げる。

 

「まだかかるか?服が伸びるんだが」

 

「「「まだっ」」」

 

・・・・・仕方ない、と徐に今日はYシャツを着ていたので前のボタンを外し、脱いだYシャツでユエの顔に押し付けた。すると大人しくなってスーハースーハーと匂いを嗅ぎ始めた。

 

「・・・・・イッセーの匂い、それに温かい」

 

一誠の身体からYシャツに掴む手を変えて、頬擦りするユエ。

 

「アイズ達の言うこと聞けユエ」

 

「んっ!」

 

至極幸せそうに笑って頷くユエに一安心すむ間もなく、アイズ達からゴゴゴゴゴ、とプレッシャーを感じた。

 

「・・・・・なんだ」

 

「「「ズルい」」」

 

「イッセーの脱ぎ立ての服なんて誰でも欲しいに決まってるじゃん!ユエにだけあげるなんてズルい!」

 

レナの言い分はアイズ達の気持ちを代弁しているようでアイズ達がその通りだと頷いた。いや、あげたわけじゃないぞ。と言っても機嫌が治る相手ではないことを熟知しているので、嘆息と呆れ混じりの息を吐き。

 

「俺のいない間に部屋に入って持っていった服は、何時返してくれるんだ?」

 

「「「「・・・・・」」」」

 

不自然なまでに肩をビクッと震わせ、目を泳がしたり冷や汗を流したりと挙動不審なアイズ達。

 

「たまーになくなるんだよ。特にその日着ていた服が忽然と。どうしてなのかは、風の噂で聞いたからもう知っていいが。何時になったら返してくれるのか待っているんだよ?」

 

「な、なんのこと?知らないよ・・・・・?」

 

シラを切るつもりか、ならば・・・・・ユラリと立ち上がる一誠は邪な笑みを浮かべる。

 

「今からお前らの部屋に行って―――」

 

『っ―――(ダッ!)』

 

「待て!分かり易い反応をして逃げるんじゃない!」

 

物凄い勢いで逃げるように駆け出したアイズ達。その後ろにピッタリとくっついて追う一誠。盗まれた服は後日、取り返したがまた密かに盗まれることになった。

 

 

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