ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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冒険譚56

狸人(ラクーン)とヒューマンの三人組の男達が歓楽街で一人の女戦士(アマゾネス)小人族(パルゥム)のまだ幼い少女を娼婦として連れてきた。真の話は伏せて小銭稼ぎとして目的に連行した三人の思惑、心意に関心がないアマゾネスは未成熟もいいところの少女を買い取って引き取った。

 

「・・・・・」

 

自分を置いて立ち去る男達に感情の色がない目で向ける小人族(パルゥム)を淡々と見下ろし、この淫沌の町に埋もれる娼婦の一人として、死ぬまで金で体を売る日々を過ごすこれからの生活を送ることになるのは、この歓楽街に売られた時点で決まったんだと、理不尽な結果に憐れみを抱いた。

 

 

 

両成敗を終えた翌日の昼頃、アスフィとアミッド、ナァーザを誘いアクアの浄化魔法で至った聖水を素材にした新しい道具(アイテム)の製作を臨む。

 

「異世界の水の女神の聖水ですか。興味深い物を用意しましたね」

 

「今後も聖水で湖が出来上がるぐらいの量を量産してもらうつもりだから好きなだけ使えるぞ。まずは回復薬(ポーション)を作ってみよう。この聖水で素材に加えたら変化するか試してみたい」

 

「うん、わかったよイッセーさん」

 

「異論はございません。しかし、イッセー様が作るとなると普通ではなくなってしまいますがね」

 

それは言わないお約束だと苦笑する一誠と共に三人は仕事を分担して作業を始めた。黙々と手を動かし今までにない素材を足して出来上がった回復薬(ポーション)はどんな効果をもたらすのか、想像もつかないまま試作の第一号が完成した。

 

 

神聖回復薬(セイクリッド・ポーション)

 

呪詛(カース)を無効化する。

 

 

「違う・・・想像してたのと違う」

 

「そうでしょうか?」

 

「そもそも呪詛(カース)の武器か魔法を有してる冒険者がどのぐらいいるのと、敵対しない限りこの効果じゃあ使い道がないぞこれ」

 

「そうかもしれませんが、まだ未確認のモンスターにもそういう類の攻撃をしてくる可能性がありますので、解呪できるアイテムは増やしておいて損はないと思いますよ」

 

アミッドの未来想定の話に否定することもなく、黙々と使う機会が来ないことを祈りつつもしもの為にと未来を見据えて量産を続けた。

 

「因みにイッセーさんが作りたかったものとは?」

 

「新しい状態異常に対する特効薬」

 

「なるほど、状態異常の中で極めて厄介な例を挙げれば、毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)ですね。あのモンスターの劇毒はポイズン・ウェルミスのドロップアイテムである『体液』で作らねば完治できません。確かに一種類しかない特効薬を増やせるならば欲しいです」

 

アスフィも前向きに賛同する言葉を口にしては、製作の方法を変えてみようと提案。ならば―――と。

 

一角獣(ユニコーン)の角と万能薬(エリクサー)を上手く調合できないかな」

 

「・・・・・さらっと言いますが素材に使えますか?」

 

「何事も挑戦だ。ただ、手軽に量産できない難点だから今回は使わない。ただの思い付きだし」

 

「その思い付きでイッセーさんは失敗しないで何度も成功しているから凄いよね」

 

ナァーザの一言はアスフィ達も同感だと頷く。

 

「行動で失敗しない主義だからな」

 

「というと?」

 

「試作段階でだと何度も失敗しているってことだよ。俺一人よりもこうして皆でしている方が成功しやすい。一人一人の考えは個々によって違うし、何とでもない会話で天啓を得たり成功の道のヒントに気付いたりという理由でな。そういう意味では凄く助かるし頼りにしてる」

 

状態異常の回復薬(ポーション)の量産の作業に入る男の言葉で、アミッドとナァーザは気持ちを高揚、くすりと小さく微笑むアスフィだった。

 

「・・・・・あ、ヤバい」

 

「どうしました?」

 

「聖水で作れそうな物がまた浮かんだ。ということで場所を移そうか」

 

思いついた物は全部作ってみたいという一誠の欲求に従い、一誠とアスフィの秘密の空間ともいえる時間の流れを任意に変えることが出来るスノードームの中で作業を始めることにした。初めて訪れたアミッドとナァーザは凄く驚き且つアスフィに羨望の眼差しをジッと送った。

 

「あの・・・なんでしょうか?」

 

「「羨ましい」」

 

「何に対して羨ましいがる・・・・・?」

 

特殊な空間の中で一日過ごせば、外の世界が過ぎる時間はたったの一秒にもその気になれば設定できる、と説明をされた二人の気持ちは―――このスノードーム中にいれば時間を気にせず、一誠と好きなだけ過ごせれるという甘えだった。

 

故に数日、数週間、数ヵ月間も時間が遅くした空間の中で、聖水で作る道具(アイテム)開発に集中して精も出した四人は幾つも開発に成功して見せたのであった。特に一誠が望んだ特効薬も完成できたので満足。後の世、それが表に販売されるようになった時、オラリオ中の人達の間で大人気の商品となり、風の噂で聞いたとある国がとうとう重い腰を上げた事をこの時の一誠達は知る由もなかった。

 

 

とある日―――一日一爆裂勝負を終わらせ、めぐみんを自室へ運ぶカズマの後ろ姿を見ていた。

 

「はぁ、威力の勝負をしても成長していないんじゃ変わらないだろ」

 

「すみません、めぐみんのわがままでご迷惑をおかけします」

 

「迷惑もそうだが素朴な疑問なのが大きい。モンスターを倒さなきゃスキルポイントは得られない話なんだろ?前教えてもらいながら見せてもらったが威力向上にポイントを振れないんだったら、同じ威力で毎度毎度勝負してくるようなもんじゃないのか」

 

「そうなのですか、モンスターを倒すのにダンジョンの中だとめぐみんは魔法を撃てませんから・・・・・」

 

狭い空間の中で自分自身の魔法により巻き込まれる危険性は高い上に、天井や床が崩れてしまう極めて危険な事にもなりかねない。誰でもあの爆裂魔法を見てすぐに悟ってしまうだろう。

 

「魔力の消費を・・・・・」

 

「失礼ですけど、めぐみんが手加減なんてすると思いますか?」

 

「・・・・・できない、というか絶対にしないだろうな。ただ、爆裂魔法を撃てれる空間はあるんだ。ゆんゆんの世界のダンジョンの方だってあるだろ?」

 

異世界の未知のダンジョン。一つぐらいはめぐみんも活躍の場がある筈だと思っている一誠の思考を、おさげと首を横に振って否定した。

 

「ダンジョンはどこも狭いと聞きます。それに私自身もダンジョンを探索したことがないので実際、あるのかわかりません」

 

「そうか・・・」

 

「逆に本当にめぐみんが爆裂魔法を撃てる空間はあるのですか?そこに連れて行けば、上手くモンスターを倒せそうな気がします」

 

「あるにはある。ただ、その空間は各階層の一部だけなんだ。自分の目で確かめるか?」

 

いいんですか?という赤い瞳からそんな視線を送られても一誠は前向き的に首肯した。

 

「ただ、明日の早朝から行こう。ダンジョンは広くて階層を降りるごとに辿り着く時間も長くなる」

 

「わかりました。あ、準備も必要ですか?」

 

「いや、必要ない。テレポートで地上とダンジョンを行き来するからその日の探索を繰り返すだけだ」

 

話が進み翌朝、ダンジョンに行くことが決まった。ただし、一誠は二人きりで行けるとは全然思っていなかった。

その日の夜、明日のことをリヴェリア達に報告してから明日に備えて就寝。そして事前に用意していた軽食をそれぞれ自室で食べて打ち合わせした時間以内に玄関ホールで待ち合わせしたのは、当然二人だけで終わらなかった。

 

「点呼を取るぞー。名前を呼ばれたら元気よく返事をすること。いいな。んじゃ、まずゆんゆん」

 

「は、はい!」

 

「アイズ」

 

「はい!」

 

「アリサ」

 

「はい!」

 

「ラトラ」

 

「はい!」

 

「ユエ」

 

「はい!」

 

誘った覚えのないゆんゆん以下のメンバーの四人『だけ』を見て頷く。

 

「しょうがない、行くか」

 

「えっと、いいんですか?」

 

「こんな朝早くから起きて準備されちゃ無下な扱いはできない」

 

なんだかんだで甘い一誠の性格を熟知しているアイズ達も一誠と居られるならば、と行動力を発揮するのだ。新参者のユエすらこの城に住むことになったその日の夜―――一誠の部屋に忍び込んで皆が寝静まった頃を見計らって添い寝を企む行動を取ったが、目の前で一人の男に群がって繰り広げる濃厚な営みをする数多の女性達に目を奪われ、そして小さな吸血鬼も次の行動を取る時間はかからなかったほどだ。

 

「ということで―――」

 

「おい、私の存在を無視とはいい度胸ですね」

 

「出発するぞ」

 

何か声が聞こえるが幽霊でもいるのかな?と思う程度で扉を開け始める最中でも、謎の声が止まない。

 

「無視ですか、いいでしょう!私の存在が無視できないとっておきの事をしてみますよ!その目にしっかり焼き付けて見せ―――て、あ、待ってください。割とガン無視されるとちょっとアレな気分になるのでせめて目だけでも合わせてくださいお願いします」

 

「ふふふ・・・・・!ここまで眼中にないとは逆にクるではないか・・・・・うんんっ!」

 

「だから言っただろ。絶対にイッセーの迷惑を掛けるって。あからさまを通り越して清々しいぐらい俺達は空気扱いされてるじゃないか。ほら、部屋に戻って二度寝すんぞ」

 

「何言ってるのよ!ここで私の凄さを見せつけてあいつに―――って、行っている間にとっとと行っちゃってるじゃない。追いかけるわよ!」

 

結局いつものように振り回される羽目になる想定が難しくなく、どうかイッセーの迷惑を掛けないで欲しいと辟易な思いを抱くカズマの心情を知らないで追いかけるアクア達。

 

 

まだ太陽が顔を出していなくても一部の世界がうっすらと明るい時刻の中、早朝から起きて白亜の摩天楼施設(バベルの塔)に向かっているのは一誠達一行だけではなかった。中央広場(セントラルパーク)に移動する装備を整えた命知らずな冒険者達が、各区画から合流するようにして姿を現しダンジョンへ向かって移動していくのだった。その中の一人だとばかり足を動かす一誠達についていくゆんゆん、めぐみん、ダクネスは新鮮な気持ちを抱いた。

 

「こんな早朝からたくさんの冒険者がダンジョンに向かうのですね。アクセルの街の冒険者とはまるで違いますよ」

 

「この世界のダンジョンは無限に様々なモンスターや宝が尽きないからだろうな。レベルも上がれば名声と知名度も高まる話だ」

 

「装備も凄いし、凄そうな冒険者達もいっぱいだわ・・・・・」

 

ダンジョンに繋がる巨大な穴を塞ぐように聳え立っているバベルの塔の入口へ吸い込まれていく冒険者達と交じって一誠達も序盤も序盤の場所、『上層』一階の階層に続く螺旋階段へ足を踏み降りて行った。

 

「イッセー、今日はどこまで行くの?」

 

「一先ず18階層だ。少し早めに移動するけどな」

 

「どうして?」

 

「階層主が出てくるからだ」

 

ユエの質問に返す一誠の言葉でアイズとアリサの目がキランと輝いた。

 

「言っておくけど、倒してもらうのはしょうがなくだがめぐみんだからな」

 

「「・・・・・なんで?」」

 

思いっきり不満です!と表情を浮かべる二人に「ダンジョンのモンスターを体験させるため」だと説明する。

 

「ということだから、ゆんゆんはそこまで現れるモンスターの露払いを頼む。キツくなったらアイズ達にも手伝わせるから遠慮なく全力でやってくれ」

 

「わかりました。頑張ります」

 

完全な他力本願。カズマは思わずと言ってしまった。

 

「イッセーは何もしないのか?」

 

「俺は説明と案内を徹底する。というか、アイズ達が無双するだろうから俺の出番なんて皆無に等しいんだよ」

 

ユエ以外、既に身長はめぐみんより高くダクネスより低い程度に成長しているアイズとアリサ、ラトラ。三人の内、二人は剣、一人は両手に嵌めた赤い突起(スパイク)付きの籠手とこれも突起(スパイク)、というより爪がある金属靴(メタルブーツ)の装備だけでダンジョン探索に赴いた。腰に佩いた日本刀に似せた片手剣を揺らしながら大丈夫なのか?と心配するカズマの気持ちはあっさりと無下に返された。

 

「ライト・オブ・セイバー!」

 

無詠唱で放つ光剣が数多のモンスターを屠り、せっせとマズマが魔石とドロップアイテムを回収していくこと片手では数えきれなくなった。普通にこの世界のモンスター相手にも通用するんだなと感心している一誠もミネラルウォーターが入った水筒をゆんゆんに手渡す。

 

「順調だな」

 

「はい、私の魔法でも倒せると分かって最初はホッとしました」

 

「上級魔法がどこまで通用するのか知りたい反面、ゆんゆん一人だけの実力でもここまで降りれたことに驚嘆している。・・・・・が、気になる事が浮上したんだが」

 

気になる事?水筒を受け取って水だと思って飲んだら、味がある水に驚きで目を丸くしているゆんゆんから意識を周囲に向ける一誠は言う。

 

「妙にモンスターの遭遇や出現が多い過ぎる。出る幕がないと思ったアイズ達が対処しないといけないぐらい異常にな」

 

「えっと、ダンジョンのモンスターはこのぐらい多いのでは?」

 

首を横に振って違うと否定する。

 

「何というか、異様な興奮状態で襲ってくるのが特に気になる。このダンジョンのモンスターは殺戮と破壊衝動で支配されてるから襲ってくるのは当たり前なんだが・・・・・何でだろう」

 

カズマは知っている。その原因はよーく知っていた。相手がアンデッドでもないのにモンスターが襲ってくる原因が隣にいる駄女神のせいだということを。意味深で疑心な眼差しを振り向いてアクアを送る一誠にカズマの心臓はバクバクと激しい鼓動を打ち鳴らした。

 

「・・・・・やっぱり入っちゃいけなかったのか?」

 

その言葉は自分に向けられていること察して意味が分からないと言い返すアクア。

 

「はぁ?何言っているのよ。どうしてダンジョンに(めがみ)が入っちゃいけないわけ?」

 

「俺でも分からないオラリオの七不思議のひとつなんだよ。冒険者はともかく一般人も同然な神々が危険な魔の巣窟に入ってはいけないギルドの決まりがあるんだ」

 

「なぁ、アクアが入っちゃダメだったのかやっぱり?この世界の神様がダンジョンに入るとモンスターが異常なまで襲ってくるとかだからか?」

 

「今は何とも言えない。まぁ、対処できる範囲だから問題はないが念のために魔法だけは使うなよ。以前、悪い神がこのダンジョンの中で神の力を開放したら、異常な強さを有したモンスターが現れて大変だった。ギルドもそれに感知してブラックリスト、危険人物一覧に載せて犯罪者扱いしているから気を付けろよ」

 

後半は嘘だが、真実と織り交ぜて説明すれば警戒心は抱いてくれるだろうと思ってのことだった。

 

「捕まったら、どうなるのですか?」

 

「人間だったら朝日が見えない暗い檻の中に死ぬまで暮らす。神だったら心臓に短剣を突き差して天界に送還される」

 

めぐみんの質問に虚言で返せばジト目でアクアに釘差すカズマ。

 

「だとよアクア。絶対に魔法だけは使うなよ。いいな、絶対にだ」

 

「わ、わかってるわよ・・・もう、いったい私の事なんだと思っているのよ」

 

ぶつくさ言う女神を「「駄女神」」と真顔で言われる。

 

「言ったぁっ!今二人して同じことを揃って二回分も酷いこと言ったっ~!」

 

「ふ、二人共あまりアクアさんのことを悪く言っちゃあ・・・・・」

 

「しょうがないだろ。事実なんだから」

 

「全くだ。嘘言って逆に褒めたらもっととんでもない駄目なことを仕出かすに決まってる」

 

アクアへの信頼度が低いとばかりに二人から厳しい言葉を頂戴したアクアは逆切れを起こしそうになっていたが、一誠の睨みが怖くてヘタれてしまっているのでダクネスの後ろに隠れて盾にした。

 

「とにかくモンスターの状態がいつもよりおかしいこと以外は気にせず進もう」

 

「18階層には何があるんです?」

 

「ここが本当にダンジョンなのかって言うぐらい綺麗な景色だ」

 

まぁ、口で説明するより自分の目で見て実感してくれと言葉を残し歩みを再開する。カズマ達も後を追いかけ階層を降る。そして『中層』に進出する直前に異様な数のオークと出会った。

 

「あ、あれはもしや・・・オークなのか?」

 

「ああ、オークだ」

 

肥えた身体に豚頭のモンスターが両手を伸ばして襲ってくる。ダクネスが震えた声で確認を取り、肯定されるとゆんゆんが魔法を放つ前に何故かダクネスが飛び出してきて剣を構えた。

 

「相手がオークなら私の出番というわけだな!?」

 

「いや、何でだ?」

 

「さぁ来いオークよっ!私はクルセイダーの聖騎士のダクネス!私がいる限り仲間の元へは行かせんぞ!」

 

『ブギッ、ブォフオオオオオオッ・・・・・・!』

 

オークがその潰れた黄色い瞳で、ダクネスを射抜く。獲物を視認した豚の怪物は地響きを起こしながら木々の間を抜け、おもむろに手を伸ばす。そして、その巨腕で一本の木を―――引き抜いた。迷宮の自然の一部だったはずの枯れ木は、その瞬間、武骨な棍棒へと成り変わる。『迷宮の武器庫(ランドフォーム)』。ダンジョンの特性の一つ。この生きているダンジョンが、迷宮内を徘徊するモンスター達に提供する天然武器(ネイチャー・ウェポン)。それらを持つオークと持たないオークが分かれダクネスに襲い―――かからず何故か素通りして一誠達のところへ強襲する。

 

「・・・・・ちょっと試すか」

 

徐に無造作にアクアを伸ばす手で掴み、明後日の方へそう遠くない感じの距離に投げた。突然のことで受け身が取れず地面に転ぶアクアは怒りを露にする。

 

「ちょっとっ!いきなりなに―――!」

 

『『『ブゴォオオオオオオオッッッ!!!』』』

 

「え、ちょっと・・・?何でこっちに来るのよぉっー!?いやぁああああっ!!!」

 

急にオークたちが進路を変えてアクアへ押し寄せた。逃げ惑うアクアにしか眼中にないのか一誠達を襲うモンスターは0だった。ひたすら逃げ続けるアクアに追いかけるモンスターが、地面から這い出てきては追いかける側に加わって増えていった。その光景を見て一誠の中である確信が芽生えにっこりと笑った。

 

「おいカズマさん。説明してくれるんだよな?」

 

「・・・・・すみませんでした」

 

一先ず、その場で土下座をして深い謝罪の念を示すことで怒りを鎮めて欲しいと願うばかりだった。

 

「―――はっ、ま、待て!アクアを追いかけるなら私を追い回せっ!いや、アクア。私と代わってくれぇっ!」

 

「・・・・・めぐみん、魔法抵抗の支援魔法を二人に掛けるから一発爆裂魔法を撃て。この広さなら問題ないだろ」

 

「確かにそうですが・・・・・巻き込まれないでしょうか」

 

「一日に三回爆裂」

 

「わかりました。喜んで撃とうではありませんか!行きますよぉっ!」

 

仲間の心配より欲望を選んだめぐみんは興奮して瞳を赤く光らせた。杖をオークの群れに向けてマナタイトの宝珠に魔力を注ぎ込み、めぐみんは爆裂魔法の魔力の光を放った。

 

「エクスプロージョンッ!!!」

 

大輪の火の花を咲かせ地面と空気に震動で震わせながらオーク達を消し飛ばして・・・・・。

 

「あっはあああああああああんっ!」

 

「うぎゃああああああああっ!?」

 

歓喜と悲鳴をも鳴かせてみせた。その後、自然の摂理とばかりに魔力が枯渇しためぐみんは倒れた。すると報告が挙がる。

 

「あ、レベルが上がりました」

 

「おーよかったじゃんか。というか、この世界のモンスターからでも経験値的なもんが増えるんだな」

 

「そうみたいですね。ところで、魔力の補給をお願いします」

 

一誠に向けてお願いするめぐみんに一つ頷いてからカズマに問う。

 

「わかってるよ。えーとカズマ、『ドレインタッチ』ってしてみたいんだがコツとかあるか?」

 

「え、何でだ?できないだろ?」

 

違う世界の冒険者ではない一誠が異世界の特有の特殊能力を使えないはず。と思っていたら一誠はネタばらしをした。

 

「俺、触れた相手の魔法やスキルを任意でコピーできる能力を持ってるからだ。お前から使えそうなスキルをコピーさせてもらった」

 

「おま、いつの間にそんなことしていたんだよ?まぁ、教えるけど・・・・・」

 

ふと、ここで間違った情報を教えるか?なんて考えが過ったが、後で怖い目に遭いそうだと恐ろしくなって正しい方法を教える。

 

「心臓に近い部分に触れて使うと効率がいいぜ」

 

「じゃあ鎖骨だな」

 

仰向けにして躊躇なく手の平をめぐみんの鎖骨の部分に触れ、自身の魔力を送り始める。すると快感を得ているのか目を閉じて艶の入った声を漏れ出した。

 

「おおおー・・・これは凄いです。イッセーの魔力が感じますよ。体の奥底から力が湧いてくるこんな経験は初めてです・・・・・あっ、これはクセになりそうです」

 

「もうちょっといるか?」

 

「あ、お願いしますー。おおおーいい感じですよ・・・・・はっ!」

 

魔力の補充中、『天啓を得た』とばかり瞳を見開く。

 

「イッセー、イッセー、私は自分の天才さが恐ろしくなりましたよ!」

 

「頭のおかしさはカズマから聞いてるぞ」

 

「何ですとーっ!?いえ、それよりも私に考えがあります」

 

何のだと一同揃って首を傾げる。

 

「いいですか、私は爆裂魔法を撃つたびに直ぐに魔力がなくなって倒れます」

 

「うん」

 

「それは爆裂魔法に使う魔力が足りないと同義なのです。わかりますよね」

 

「うん」

 

「ならば!爆裂魔法を撃つ前にイッセーが私にドレインタッチによる魔力を供給を行う最中で爆裂魔法を撃つと、魔力が足りない私に流れ込んでくるイッセーの魔力で足りない分の魔力も補って本来の威力も発揮するに違いませんし、つまりは私は何度でも好きなだけ爆裂魔法を撃てるという考えに至りました!」

 

的を得た話だと素直に感心する。だが、言い換えればそれは―――。

 

「つまり、俺はお前の趣味を全力で堪能できる魔力タンクになれというわけだな?」

 

「言い方はアレですが間違ってあっはぁぁぁああああああああっ!?」

 

突如、背中に冷たい氷を入れられたような悲鳴を上げだすめぐみん。その原因はカズマは悟った。

 

「いくら何でもそれは人権を無視していないかなぁー?ていうことで補給した魔力を返してもらうぞ!」

 

「すみませんすみませんすみません!調子のいいことを言ってしまったことは謝りますから魔力を吸わないでください!あ、魔力どころか体力も奪うんですよドレインタッチは!」

 

「体力の方は別途で回復してやるから問題はない。歩ける程度にはな」

 

「ま、魔力もっ、魔力も回復してくださいお願いしますっ!日に三回爆裂魔法がぁあああああっ!」

 

結局、一人では歩けない体にされずに済んだが爆裂魔法を撃てる分の魔力は吸われ落ち込むアークウィザード。

 

「ていうかだ、精神回復薬(マジック・ポーション)で魔力を回復すれば?教えただろ」

 

「ダメです。あれは飲み過ぎると・・・・・その」

 

「・・・・・?」

 

もじもじと気恥ずかしそうに言葉を濁す少女。体に合わなかったのかと思いきや、カズマが説明した。

 

「魔力の回復できた経験が嬉しすぎて、調子に乗って爆裂魔法を撃つ=魔力を回復=また爆裂魔法を撃つ=また魔力を回復するの繰り返しをしてたらトイレに行く羽目になったんだ。本人曰く危うく漏れそうだったそうだ」

 

「も、漏らしてなんてないですよ!それに紅魔族はトイレに何て行きませんから!」

 

「・・・・・そう言われると試したくなる性分なんだが?丁度ここに精神回復薬(マジック・ポーション)が大量に」

 

「ごめんなさい、謝りますからそれを飲まさないでください。ダンジョンの中で大量に飲まされると私の中で溢れてくる膨大な何かが抑えきれないのでお願いします」

 

見せびらかす精神回復薬(マジック・ポーション)の瓶に体力が回復しためぐみんはその場で土下座をしだす。最悪な事態は避けたいから回復薬(ポーション)ではなく直接魔力で回復したいのは当然だろう。仕方なしに一回分の爆裂魔法を撃つ魔力だけ補給する。

 

「一回だけだからな」

 

「ありがとうございます。・・・・・あの、ところでアクアとダクネスは」

 

そういえば、さっきから静かだなと一誠も若干忘れていた。二人の方へ目を向ければ。

 

「・・・・・私、この世界に来てから扱いがさらに酷くなってるんですけど」

 

「・・・・・あはんっ」

 

一応、無事ではあったが膝を抱えて影を落としてる女神と大の字で横たわって恍惚の表情を浮かべてるクルセイダー。

 

「怪我はなさそうだな」

 

「代わりに精神的な意味で酷くなってるがな。ダクネスに至っては正常だけど」

 

「あれで正常かよ・・・・・階層主との戦いで絶頂しないよな」

 

「・・・・・・」

 

何とも言えないと口を閉ざし、二人を回収してから目的の階層までゆんゆんが奮闘して進んだその途中、三体のミノタウロスと遭遇してもゆんゆんは怯えもせず上級魔法を駆使して倒した。

 

「あ、私もレベルが上がりました」

 

「いいな。俺もそろそろレベルを上げたい」

 

「今度からダンジョンに行けばいいさ。さて、そろそろ18階層も目の前だ。気を引き締めろよ」

 

18階層へ繋がる通路に進み『嘆きの巨壁』に侵入した。

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