ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか 作:ダーク・シリウス
「ここが、階層主とやらが出てくる場所ですか」
洞窟の印象を残したまま広い空間の中を進む一行。どんなモンスターでも暴れるには十分すぎる大
「まさかとは思うが、この壁から出てくるわけないよな?」
「そのまさかだが、ああ、言ってる傍からもう現れるぞ」
気配を察知した一誠の一言の後。バキリッ、と壁面に罅が勝手に入った。しかも巨大な亀裂が、大壁の上から下にかけて、雷のように走っていった。壁が罅割れる音は続き、バキッ、バキッ、と響きを大きくしていく。次第にそれは喘ぎ、苦しみ、嘆くような重々しい声音へと姿を変え、大広間全体を震わした。雪崩れ込むかのような音の津波に、鼓膜が悲鳴を上げている。増していく嘆きの叫喚。より大きくより深くなる何条もの亀裂。鳴動する17階層。臨界が近づき、一層強い衝撃が内側から壁を殴りつけた―――次の瞬間。巨大な破砕音が、爆発した。岩の塊が弾け飛んで崩れ落ち、地に横転していく轟音。それに巻き込まれ押し潰されないよう防壁の結界を張って散乱してくる巨大壁の破片を防ぐ。
そして、ズンッ、と。巨大な何かが大地に振り立ったような、一際大きな、着地音。
「「「「・・・・・」」」」
カズマ達の目には立ちこもる土煙の奥に、それが映り込んだ。
大き過ぎる輪郭。太い首、太い腕、太い脚、人の体格に酷似したその形。薄闇の中で一瞬捉えた体皮は、灰褐色だった。後頭部に位置する場所からは、脂を塗ったように照り輝くごわごわとした黒い髪が、首元を過ぎる位置まで大量に伸びている。
「イッセーさん、イッセーさん。―――これが、階層主ですか?」
「そうですよカズマさん。これがこの階層のボスモンスター『ゴライアス』だよ」
総身七Mにも届こうかという、巨人。
『―――ォォ』
次第に晴れていく煙の向こうで、人の頭ほどある真っ赤な眼球が、動いた。その目玉の中に見上げている一誠達の姿を映し、ゆっくりと、地響きを伴う足音を鳴らして、こちらに一歩踏み込んだ。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』
けたたましい咆哮を上げゴライアスは一向に迫った。その巨人の足が振り下ろされるたびに地面が割れ地鳴りが起き、大広間を傲然と震撼させる。
「めぐみん、撃って良いぞ」
「その前にっ、こっちに来ているんですがって、うあああああ!?」
巨大な足の裏が降ってくる光景をめぐみんやカズマ達が絶叫する。ユエが両手を突き出して何かしようとしていたが、アイズとアリサが大丈夫だと手で制する。不敵の笑みを浮かべる一誠の結界がゴライアスの足と接触、押し潰され―――ることはなかった。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』
壊せない結界に地団駄踏むがごとく、何度も踏んだり蹴ったりもするがびくともしない。
「俺がいる以上、誰一人傷がつくことは安心しろ。ほら、さっさと撃て。じゃないと俺が撃っちまうぞ。それともビビってちんけな爆裂魔法も撃てやしないって?」
「なにおうっ!?私の爆裂魔法がちんけと言い抜かすとはいい度胸ですね!その目でちんけかどうか見るがいいです!」
「因みにイッセーさんや、めぐみんが至近距離で爆裂魔法を撃つ気満々なんですが、大丈夫・・・だよな?」
「死ぬことはない前提で大丈夫だと思う」
少し、自信はないけどな・・・・・と心中で言えない言葉を吐露した矢先。勇ましく高らかに「エクスプロージョンッ!!」と叫んで魔法を放つめぐみんの声。
ドォオオオオオオオオオオォォォォォンッッ!!
結界ごとゴライアスに爆裂魔法が直撃する。至近距離で聞える轟音に驚くもの、結界は破壊されず巨躯を誇っていたゴライアスだけ吹き飛ばして見せた。
「ふっ、どうですか。これでもちんけな爆裂魔法と言いますか」
「お前が倒れていなきゃ拍手を送りたかったがな」
「それは仕方のない事なのですよ。ということでどうか魔力をください」
「撃つなよ?撃ったら爆裂魔法を一週間も封印してやるからな」
釘を刺して魔力を分け与える。
「ああ、言っておくが・・・・・ゴライアスはまだ健在だからなめぐみん」
「・・・・・なんですと?」
『オ、オオオオ・・・・・ッ』
原形は保っているも損傷が激しく深いダメージを負っているゴライアスが、めぐみんと同じように地面に倒れていた。
「カズマ、今のうちに倒せるぞ行ってこい」
「言って来いってお前、あんなのどうやって倒せばいいんだよ」
「胸のところにある魔石を狙って刺せば一撃で倒せるぞ。アイズ、アリサ。腕と脚を斬っておいてくれるか?」
「「んっ」」
起き上がろうとするゴライアスに飛び掛かり、それぞれ四肢を剣と大剣で立てなくするために両断する。
「す、すげぇ・・・・・めぐみんと同じぐらいの年齢なんだろ」
「上から二番目に強い冒険者だからな。弱ったゴライアス相手なら二人だけでも倒せる」
カズマの襟を掴んで一緒にゴライアスの胸の上に飛び乗って、ここだと場所を教えて促す。動けない相手なら攻撃はしやすいと、短剣を両手で持って勢いよく魔石に突き刺すつもりで突き立てた―――が、思った以上にゴライアスの体皮が硬く、短剣が突き刺さらなかった。武器の威力が足りないのかカズマ自身の力が低すぎるのか、あるいは両方か。
「・・・・・」
「・・・・・何だか、すみませんでした」
これには一誠も予想外だった。二人の間で何とも言えない空気が漂い、己の非力さを知られて見られたくないと顔を逸らすカズマ。
「・・・・・明日から、筋力トレーニングなお前」
「・・・・・うっす」
結局ダクネスがトドメを差してレベルが上がった。
17階層から侵入できる南端の洞窟から抜け出て森を越えて北上すると、まず現れるのは
水晶が散在する大草原だ。階層の中央地底に広がる青々しい野原は、晴れ渡る地下の蒼穹と
相まって壮観と言っていい。草原の中心には中央樹と呼ばれる巨大樹がそびえており、
樹の根元に空いた樹洞から一誠達が20階層に行く為に通過する19階層へ向かうことができる。
北には雄大な湿地帯、南から東にかけて広がるのは緑の森林、そして西には紺碧色の湖畔と
そこに浮かぶ大島。
幻想的な水晶と神秘的な空に包まれる大自然が息づいていた。
この風光明媚な景色―――地上では巡り合うことができない地下の楽園を一目見たいが為に、とある富豪は冒険者に
18階層はモンスターが生まれない
初めて訪れる階層でもあり、とりわけこの階層は、別名『
無数の水晶が隙間なくびっしりと生え渡っていた。中心には太陽のように輝くいくつもの白水晶の塊。
そしてその周囲には優しく発光する青水晶の群れ。咲いた菊の大輪を連想させる水晶が
それぞれ光を放つことで、18階層には地下でありながら『空』が存在している。
多くの冒険者達の目を奪ってきた、ダンジョンの神秘だ。形作られたこの地下の『空』は
時の経過によって水晶の光量が落ちていき『朝』『昼』『夜』の時間帯を作り上げる。
また時間帯の変化は一定ではなく、地上とは少しずつずれが生じ、時差は多くなったり小さくなったりと変動していた。発光する美しい水晶は18階層の名物と過言ではないし、天井だけではなくこの階層の至るところに生えており、森や冒険者達の手によって創られた
「ここが、18階層・・・・・凄い。ダンジョンの中なのに光や森があるじゃないか」
「本当です。岩窟やモンスターばかりなのがダンジョンである筈なのに、驚きの光景です」
「あの光だって太陽のものではないのだろう?ただ明るく発光しているだけのようだが、一体どうやって光っているのか不思議だ」
「奇麗ねー。ねぇ、ここってどんなところなの?」
「ここはな、この階層にもモンスターはいるけどモンスターが生まれない安全な階層こと
「ダンジョンの中に街とは凄いですね。根性があります」
心の底から感心していると感嘆の息を漏らすゆんゆん。さらに追加の詳細をする。欠点の方を。
「と言っても販売している商品は地上の価格より数倍高いからな。ぼったくりの街でもあるぞ」
「それはいくら何でも横暴ではないか?何故誰も異を唱えない。ギルドは認知しているのか」
「しているぞ。そして誰も異を唱えないのは売買しなきゃいいだけの話だからだ。街に暮らす冒険者達は地上のルールに縛られるのが嫌いだから、ダンジョンの中であれば違法な売買をしてもギルドの目には届かない、無法地帯を築き日夜好き勝手にしているのさここで。だから街の冒険者は荒くれ者やならず者が多い、一応気を付けな。盗みやスリなんて当然のようにしてくるからな」
「ダンジョンのモンスターより性質悪くない?」
「悪いぞ。ああ、それと街に治療院を構えているアミッド達がいるから様子を見に行くか?更に下に行きたいなら大瀑布の滝が見える水の都にも案内するぞ」
水の都と聞いてアクアがあからさまに反応して行ってみたいと主張する。街で休憩を挟んで更に階層を降って案内する先は25階層。数時間も掛けて歩いて、歩くのが疲れたと駄々をこねるアクア、巨大な茸に扮したモンスターに襲われ吃驚するカズマ、猪型のモンスターのバトルボアに撥ねられ、数体のバグベアに集れ悦ぶダクネス、アクアの存在で大量に引き寄せるモンスターを纏めて爆裂魔法で吹き飛ばすめぐみん、爆発音を聞きつけて襲ってくるモンスターを魔力の光剣で薙ぎ払うゆんゆんと安全安心が無縁な戦闘を幾度も繰り返し、一言述べる。
「あいつ等だけで探索したらヤバいだろな」
「「「「・・・・・」」」」
アイズ達も同感だと揃って頷いた。
そんなこんなで、何とか目的の階層に辿り着く一行の目の前は傲然と音を奏でる、凄まじいまでの大瀑布。谷や崖を形成するのは水晶の頂。霧のごとく飛び散る水しぶきとともに空中を羽ばたく
「すげえ・・・・・」
カズマ達は目の当たりにする。ダンジョンの中に存在する大自然の景色に誰もが放心する中、特に皆の目を奪うのが、視界の正面に位置する大瀑布だ。離れているとはいえどうどうという地響きにも似た音が、何百Mも離れた一行のもとにも届いて鼓膜を震わせてくる。
『
下層域25階層から始まる文字通り巨大な飛瀑。目算でも幅は約四百M、高さは優にその倍はあるだろう。光の反射の関係か、流れ落ちる水は
「森の次は滝なのかよ。どうなっているんだこのダンジョンは」
「さぁーな。でもま、心が躍るだろ?まさにファンタジーだ!ってな」
「そうだな。確かに目の前の光景を見たら思わずにはいられない」
「誰でもそう思うだろうな。それとだが、27階層に白い二つの頭を持つ竜が階層主として現れるぞ。まだ現れる時期じゃないから戦うことはないから」
ホッとするカズマ。ドラゴンと戦いに来たわけじゃないから安堵で胸を撫で下ろすカズマの目の前、一誠の背中におぶさってるめぐみんが残念そうに言う。
「見て見たかったですね。まぁ、私は白より黒か赤の竜が好きですけど」
「竜の色の好みなんて聞いていないから。とりあえず、記念撮影でもするか?」
「おっ、いいな。でもめぐみんは立てないが?」
「セクシーポーズ的な姿勢で寝転がせばいい」
「おい、私の扱い方を雑にしないでもらおうか」
大迫力を伝える撮り方を臨む一誠は、大瀑布の滝のど真ん中でカズマ達を並ばせながらキメポーズをしてもらい今日一日の思い出として撮影した。皆で撮ったたくさんの写真を生涯の宝として大事に保管するゆんゆん。その写真を枕の下に置いて眠る日が日課となっていることを誰も知らない。
―――†―――†―――†―――
「おはようございます!」
何時にも増して元気いっぱいなゆんゆんの挨拶に、LDKにいた一同も各々と返事を返す朝で一日が始まった。
東方で3つの城が組み合わせられた巨大と広大を誇る【ファミリア】のホーム『大和の日輪』。世にも珍しく3つの派閥が共生共存しているのはオラリオに存在する数多の派閥の中、例外を除いて唯一この派閥だけだ。
【イザナミ・ファミリア】、【イザナギ・ファミリア】、そして【アマテラス・ファミリア】。
個の派閥だけでも冒険者を抱える最大数は【ガネーシャ・ファミリア】を凌駕する。以前までは争いを起こし、数多の死者と大量の血を出す戦争を繰り広げていたが、たった一人の男のなし崩し的な行動で解決した。その後、紆余曲折で手を取り合って永住している本国の極東の島国を発展すべく、三国同盟を結び協力をしている。
三国同盟の一つ【イザナミ・ファミリア】の城の中で、対面の形で正座している仮面を身につけている女神と獣人の四人。
「・・・・・ダメ」
女神イザナミは首を横に振る。
「何度も言わせないで、お前達は諜報部隊を総括する者達。同時にその地位だけでなく【ファミリア】から脱退したいなどと簡単には許されない。【ファミリア】の戦力的にも困る」
「「・・・・・」」
「あまつさえ、脱退の理由はあの子のところに住みたいなんて・・・・・私だって本音は全てを捨てて未来永劫、昼夜問わず場所も問わず愛し合ったり甘い生活してあの子の子供を作って生みたい。【ファミリア】を脱退するだけで可能にするお前達子供が心底羨ましいのに、立場上そんなことできない私もお前達と同じ思いをしている」
主神の方針や命令に逆らうな、とどこにでもいる戦力の減少やその他諸々な理由で脱退を許されないでいる眷族は世界中を探せばいないわけではない。
「お前も二人の背中を押すとは意外」
イザナミが仮面越しで見つめる先にいる
「申し訳ございません主神様。しかし、私はこの子達を育てた者として血で血を洗い争うことが無くなったのならば平穏で幸せな人生を過ごしてもらいたいのです」
「・・・・・私だって今は考えられる余裕が出来て、子供達の幸せを叶えたいとは思っている」
「心中お察しします・・・・・げほっ、げほっ」
「・・・・・あまり無理をするな。本国より高いオラリオの医療技術で以前より改善したとはいえ、強力な毒はまだお前の中に巣食っている」
ふと、イザナミはそこで天井を見上げた。誰にも癒せない自身の傷を癒したあの力ならば・・・・・と。
「主神様?」
「・・・・・当てがある」
着物の袖をめくり金色の腕輪の宝珠に触れる。これから会うことになる男に連絡を入れようとしながらも、久々に会える切っ掛けを作った眷族に感謝した。
イザナミから連絡が入り、事情を聞いてすぐに駆け付けた一誠は毒に侵されてる
そして、しばらく時間が掛かるかと思われたが、花の花弁が開くように目を閉じた女性が翼から解放され、静かに青紫色の瞳を開けてイザナミを見つめる。
「どう?」
「・・・不思議です。身体がすごく軽くなりました。この方は一体・・・・・」
「二人が夢中になってしまってる、三國を同盟に導いた英雄だよ」
「では、貴方が・・・・・」
誰なのか知るや否や、その場で姿勢正しく頭を垂らし出した。
「お会いしたかったですイッセー様。私は天城―――この三人の忍びの師であり赤城の姉でございます」
「姉?そうか、姉妹だったんだな。姉がいたとは思わなかった」
「はい、いずれまたお会いした時にお話をしようと思われましたが、この様な機会で天城姉様の身体を侵していた毒を浄化してくださって感謝しています」
「どういたしまして。手の届く距離にいるなら誰でも助けてやれるから困ったことがあれば何でも言ってくれ。ま、俺が出来ること限定になってしまうが」
謙遜を含んだ苦笑いを浮かべる一誠へイザナミから「お礼をする」と言われる。振り返る一誠の目の前で手を叩く音からすぐ、控えていた侍女が襖を開けてから何かを持って入ってきた。
「貴方に連絡する前に用意した細やかなお礼」
イザナミの前に置かれたそれは―――台の上に積まれたアップルパイの山。既に一誠の眼はそれに夢中になるほど釘付けで、イザナミが促す。
「食べていいよ?」
「わーい!頂きます!」
「「「「・・・・・え?」」」」
獣耳と九つの狐の尾を生やして小さな子供の姿となり、アップルパイを頬張る一誠は心底から幸せな顔をして美味しそうに食べる。そして、そんなことが出来る人物とは知らない天城達は目を疑った。
「しゅ、主神様・・・・・これは」
「この子は貴方達より、全人類より特別な存在の一人。イッセーはアップルパイを食べる時はいつもこの姿になって食べる」
「特別な存在・・・・・」
「天城の毒を浄化した力も私達にとって特別なもの。だから極東が平和になったのも、彼無くして三国が同盟を結べていたとは考えにくい。故にイッセーの存在は極東にとって必要不可欠。その為、私に使える者達の中からより三国の同盟を固くするべく政略結婚を目的に選んだ者と嫁がせてもらった」
「正式な結婚はしていないけどな。これ重要!」
誤解して欲しくないためにアップルパイを夢中で食べていた一誠が話を補足する。
「主神様、この方は九尾様なのですか?太古に存在していたという
「違う、でも・・・・・実際はどう?」
イザナミも微妙に気になっていたのか尋ねた。食べるのを止めて事実を伝えようと一誠は天城達の顔を見ながら言う。
「俺の中に九尾の狐・・・・・
「それは、一体どうやって・・・・・」
「うーん・・・・・イザナミ、口硬い?」
暗に、己が異世界から来た異邦人の説明をした方が混乱せずに済むと訊いた。イザナミはコクリと頷き四人に警告を促す。
「これから話すことは他言無用、漏洩は連帯責任と知れ」
「「「「はい」」」」
言質は取ったとイザナギの眷族を信用して自身がドラゴンであること以外説明した。当然ながら天城達は唖然、驚嘆、感嘆などの反応を窺わせとても興味津々に時間が許される限り一誠に質問をし続けた。
「イッセー様、毒の浄化をしてくれたお礼をしたいですが、何かお望みはございますか」
「イザナミからアップルパイを貰ったからお礼は十分だぞ」
「私個人からのお礼です。私にできる事ならば何なりと・・・・・」
「ん~・・・・・じゃあ、させて?」
させて?一体何をだろうと天城が心の中で小首を傾げていると、ポケットに手を突っ込んですぐに抜いた手の指の間にはお手入れする小道具が挟んでいた。
「その耳と尻尾を俺の気の済むまで触らさせながら手入れをさせて?」
「「―――――」」
「それだけでいいのですか?」
天城は気付いていない。赤城と加賀が途端に顔を染めて羨望の眼差しを向けていることを。体の関係を迫るような要求をしてこない相手の要望に軽く了承する天城は知らなかった。一誠の手入れは幸せと快楽が同居していることを。
―――数十分後。
「はぁ・・・はぁ・・・ひゃっ、ま、まだ・・んっ・・・です・・・あっ・・あんっ・・・かっ?」
「あともう少し、ふふ、触り心地が抜群なもふもふだな・・・・・」
「んっ、そ、そうですか・・・・・ひゃんっ」
もはやそこが性感帯ではないかと、耳や尻尾を触れて身体を小刻みに震わせ真っ赤な顔と共に熱い艶が籠った吐息をする天城。それら以外全くかすりも触れていないというのに、甘美な快楽を得てしまっている動揺や困惑、快感が混ざった感情が天城の中で渦巻いていた。気丈でいようと声を漏らさないように気を食いしばっているが、逆にそれが触れられて感じているのだと一誠以外教えているようなものだった。
「(ああ、狂おしいほどに羨ましいですわ。やはりこの方に触れられたら姉様も・・・そうなのですね)」
「(天城・・・・・オチるか。お前も今感じている快感に逆らえずか・・・・・くくく)」
「(あ、あんな天城さんの表情今まで見たことが無い・・・。なんなのだ、この男は・・・・・。私にまで求められたらどうなる・・・・・)」
達観、嘲笑、動揺の三者三様の思いを胸の中で過らせ、一際身体を激しく痙攣した天城を見て赤城達も肩を震わせた。絶え絶えで熱が籠った呼吸を繰り返し、潤った瞳は涙目になってどれだけ快楽を与えられたか物語っていた。対して―――。
「ふぅ・・・満足・・・・・」
テカテカと艶が顔から出ている一誠はとても幸せだと言わんばかりに満面の笑みを浮かんでいた。この二人の反応を比べて見た目だけは卑猥なことっぽいのに、実際は卑猥なことをしていない不思議な感じだなと見る人にそんな印象を与えた。
「ありがとうな。大満足したよ」
「い・・・いえ、喜んでいただけたのであれば何よりです・・・・・」
「今度会ったらまた触らせてくれ」
耳元で囁かれ、またこの快感を味わうことになってしまえばもう正気でいられる自信がない羞恥心でより一層に顔を赤く染めた。
「―――それでしたら、今度とは言わず私のを触れます?」
「ん・・・まだ触りたいなら私のも触ってくれても構わない」
ここぞとばかり自己主張する期待に満ちた目を向ける二人の
「ん?いいのか?」
「ええ、構いませんとも。姉様の妹として、私もお礼を・・・・・」
「師である天城を苦しみから救ってくれた礼だ。存分に触れるといい。土佐―――よいな」
「わ、私も・・・?」
約一人、巻き添えを食らい面を食らうその隙に一誠は喜々として動いた。その後、三人の
「はっ、はっ・・・二人がイッセー様に夢中になる理由はわかりました。確かにこれは、凄いんっ」
「ふ、ふふ・・・・ひゃっ、分かっていただけて嬉しいですわ天城姉様、はあん・・・!」
「んっ・・・・・はぁ、はぁ、まだ触れられた快感の余韻で敏感に・・・んはっ」
「し、尻尾と耳を触れられてるだけなのに、な、何故・・・くぅっ」
床に顔を押し付けて臀部を高くあげる姿勢で一誠に尻尾を触れられている。屈辱感よりも強い快楽や快感を覚えて貪欲的に求めて感じたり、貧欲的に感じてしまう
「・・・・・」
物静かに眷族達が寵愛を受けている光景を見守っていたイザナミが立ち上がり、徐に着物の裾の中に手を突っ込み高級そうな瓶を取り出す。その意味を理解する時は―――。
「・・・・・イザナミさん。今、何を飲ませた。この展開デジャブを感じるんだが」
「精力増強剤と媚薬。前のより滅茶苦茶物凄くて一週間も効果がある―――赤城達忍びが作成した新薬」
「しゅ、主神様!なぜそのような物をこの方に使われたのですか・・・!」
「ふふふ・・・・・でも、効果は直ぐに出てますわ天城姉様。ああ、可哀想に今すぐ解放してあげますわ」
「お、雄々しい・・・・・まさに雄だな・・・・・」
「ま、待て・・・雄々しいと表現にしてもあれは異常すぎるではないかっ・・・・・!?
いや、それよりもこの甘い匂いはなんだ・・・・・?」
またしてもイザナミの奸計に陥ることになろうとは・・・・・すっかりイザナミへの警戒心を緩んでいたところ、しかも事情を聞いて駆けつけてはこんな展開、自身のホーム内で事を起こすことはないとすら慢心になっていた隙を突かれて深く、ふかーく己の慢心に呪った。
「イザナミ・・・・・お前はそこまで変態だったとは」
「あなたの前だけなら変態でもいい。それだけあなたのことが愛しいから」
「・・・・・あーもう、嬉しいと思ってしまった自分が悔しいぞちくしょうっ・・・・・」
「ふふ、大好きイッセー」
口元を緩ませて一誠を押し倒し、眷族達がまだいるにもお構いなしに目の前で情事を貪り出す。激しく乱れる主神を目の前にして